五条霊戦記

僕の点数:3.9
見た日:2000.10.14

2000
Country: 日本
アクション ホラー
映画館で見た


キャスト 隆大介
浅野忠信
永瀬正敏
国村隼人
岸辺一徳
監督 石井聰互
音楽 小野川浩幸
備考  中世。京の町で「鬼」に平家の武者が次々と殺される事件が勃発。それは源氏の末裔、遮那王(のちの源義経)によるものだった。そこにもう一人の「鬼」と呼ばれた僧・武蔵坊弁慶が不動明王の意のもと、命運を賭けた勝負を挑む。
 1000本の刀を集めていたのが弁慶ではなく遮那王だったり、平家が弁慶を利用しようとしたり、さまざまな新解釈を加えた発想力豊かな脚本。ラストでどんでん返しも待っているので、プロットとしては非常に秀逸。
 しかし、いかんせん長い。カット数はハリウッド映画を凌駕するのではないかと思えるほど多く、映像の凝り方は尋常ではない。監督の映像センスは決して悪くない。手法としては、動き回るカメラワークによるチャンバラやCGなど、これまでの邦画の常識を覆す様々な試みがなされていて、非常に興味深い。だが、詰め込み過ぎである。プロットがプロットだけに2時間以内で収めるべき内容である。一生懸命な努力と監督の若さがあだになった。
 カンヌで数多くの受賞作を発表している仙道武則プロデューサーの初の娯楽作ということで、大きな期待で臨んだが、本作はアートの域を出ず、エンターテインメントになり切れなかったのが悲しい。観客のボルテージを、長すぎるチャンバラで一気に下げた後は、延々、末世の暗い世の中の描写に移るので、ずっと救われない重い状況がラストまで続く。
 そして、単調で工夫の無い無能な音楽家のおかげで、暗い映画にさらに追い討ちがかかる。もし、音楽がクロサワ映画のような明るい曲との二重奏だったりすると、一気にテーマに深みがでるのに残念だ。また、浅野、永瀬の2大若手実力派を起用しているにも関わらず、あまりにも使い方がもったいない。無表情な隆では芝居が持たないのだ。弁慶を熱演しているものの、いい加減、飽きてしまう。
 「雨上がる」に負けない、日本の美しい景色をキャメラが捕らえていても、カットが短すぎて、目の休まる場所がない。ラストの五畳大橋の炎上はワイルドバンチを彷彿とさせるが、せっかくなら崩れゆくさまを魅せてほしかった。そして、切られる武者の叫び方が弱く、迫力に欠けるのも気になった。フラストレーションがたまってしまう。
 大ヒットが狙える素養があるにも関わらず、ムダに長い編集の稚拙さと、音楽家の無能さが、映画全体をぶち壊してしまっていて非常に心苦しい。試写会を経て、再編集した後に、劇場公開すべきであった。

written by Hideto Miyai's "映画スタック"


リストへ