ピーター・グリーナウェイの枕草子

僕の点数:4.6
見た日:2000.10.11

1995
Country: 英国 フランス オランダ
ドラマ
テレビ/ビデオで見た


キャスト ヴィヴィアン・ウー
緒方拳
吉田日出子
ユアン・マクレガー
監督 ピーター・グリーナウェイ
音楽 マイケル・ナイマン
備考  書家の父と、中国人の母を持ち、清少納言の名を受けたナギコは、幼少期から誕生日には父からその名を体に書かれるという奇習を持っていた。軽薄な結婚の後、香港に飛んだナギコはそこで、父を辱めていた出版社の社長に再会する。そこで、社長の愛人であるジェロームと関係を持つようになり、彼の体に書を書くうちに、社長への復讐劇を思いつく・・・。
 日本や香港という、これまでのグリーナウェイ作品とは異質の舞台で展開するストーリー。だが、結局のところ、いつものシェークスピア的な復讐劇である。13章に及ぶ書を12人の男達に一つ一つ書いていくのは、「プロスペローの本」にも見られた監督の本へのこだわり。フレームを重ねる手法で、いくつもの画面をスクリーンに展開する。前半部は、清少納言とナギコのそれぞれの枕草子の引用が交錯し、後半部は、(「建築家の腹」では腹だけだったのが)全身を用いたアートが連発される。それにしても、ユアン・マクレガーの皮膚を引っぺがしてそのまま紙にしてしまうというのは、何とグリーナウェイらしいグロテスクなユーモアだろう。
 残念なのは、予想されたことだが、やはりオリエンタルな舞台美術が宙に浮いてしまっていること。さすがインテリのグリーナウェイだけにここでも蘊蓄を存分に発揮するが、どういしても奇妙な日本文化が登場してしまう(中国文化にしてもそうだろう)。また、登場人物が英語、日本語、中国語とゴチャゴチャに飛び交う会話は説得力を欠く。相当、キャスティングに苦労したようだが、それがストーリーテリングを、滑稽にしてしまっているのはいただけない。余談だが「始皇帝暗殺」でチェン・カイコー監督はコン・リーではなく日本人女優を使いたかったが、中国語か英語ができる女優がいなかったため諦めたという。金城武のような国際的スターが少ないことが悲しい。

written by Hideto Miyai's "映画スタック"


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