マルコヴィッチの穴
Being John Malkovich

僕の点数:5.0
見た日:2000.10.4

1999
Country: 米国
アクション ホラー サスペンス ドラマ コメディー
映画館で見た


キャスト ジョン・キューザック
キャメロン・ディアス
キャスリーン・キーラー
ジョン・マルコビッチ
監督 スパイク・ジョーンズ
音楽
備考  15分間だけ、ジョン・マルコビッチになれるという奇想天外な寓話。人形遣いのクレイグはビルの71/2階にあるオフィスに就職する。そこで、何とジョン・マルコビッチの脳に通じる穴を発見してしまう。それを巡って、妻のロッテや、オフィスの仲間で、クレイグが片思いのマキシンがからんできて、パニックに。さらにはジョン・マルコビッチになれるということで商売を始める始末・・・。
 全く先の読めないストーリー展開に、久々にわくわくした(「時計仕掛けのオレンジ」以来)。全体を通して、カフカのように幻惑的で哲学的な世界が展開する。しかも、それが、深刻なテーマなのに、笑いで収まっているのが良い。
 ジョン・マルコビッチになりたいために群がる男達の悲しいサガ。クレイグもマルコビッチになったときだけマキシンに愛され、マルコビッチになって初めて、人形師として成功する。ロッテは突然、同性愛に目覚めて、マキシンを愛するし、マキシンの子供がロッテの子になってしまうおかしさ。そんなアイロニカルなアイデアが随所にほどこしてあって、ひねくれもののこの監督の個性が存分に発揮される。
 脚本のチャーリー・カウフマンのこの仕事ぶりは、「アメリカン・ビューティー」のアラン・ボールに匹敵する見事なもの。それに、CMやミュージッククリップ上がりのこの新人監督の映像遊びは、鮮やかで楽しい。チンパンジーの潜在意識が映像化されたときは拍手を送りたかった。そして、この映画特有の「そのものずばりの」一人称カメラ。これは一度体験しておく価値アリ。このような形式でラブシーンを撮った映画はこれが初めてだろう。
 そして「アメリカン・ビューティ」に負けないキャスティングの的確さ。これを見た後では、他のキャストは考えられない。キューザック&マルコビッチの舞台で鳴らしたジョンコンビに、今回、それにもまれて新境地を開拓したキャメロン・ディアス(上映中ずっと新人女優だと思っていた)。不思議な魅力のキャスリーン・キーナー。「俳優嫌い」の監督に、雨の中を走らされたり、バスから突き落とされたり、泥んこになったり、相当、いじめられているが、それが抜群のコメディを引きだしている。
 ともかく、楽しい112分であった。

written by Hideto Miyai's "映画スタック"


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