小松誠(V)
三鷹に住んでいる 歌を唱ってる
詩人である
よく電話が止まる
童顔である カラオケも歌うらしい
ドーパミンが好きに違いない
以上

運命の車は走るだろう
ぼくの知らない町を
流れ行く店や人たちをうしろに捨てながら
町の大通りを

ぼくはベッドから身をおこし
ぬぎすてたしわくちゃなズボンに車のキーを探す
そうだやつに話しがあるんだ
あの車の助手席の赤いドレスの女に

運命の車をさがせ、と
だれかが命じる
そのうしろ姿は親父に似ている
いや、年老いたぼくなのかも

ウインドウにひじをかけて
タバコに火を点けて
白い煙が女の姿になっていく
ぼくにウインクしたり体をくねらせてみたり

そう、そうしてるうちも今も
運命の車は走る
僕の知らない町を
ちっぽけな愛や人のやさしさを忘れ
もしかすればたやすいこの町を

運命の車は走っている
僕は追いつけないのか
それともずっと先を走っているのか
いま信号でならんだ車から
あの女

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