竹取物語


三、 佛の御石の鉢(石つくりの皇子の話)


この女見では、世にあるまじき心地のしければ、天竺にある物ももて来む物かはと思ひめぐらして、石つくりの皇子は、心のしたくある人にて、「天竺に二つとなき鉢を、百千萬里の程行きたりとも、いかでかとるべき」と思ひて、かぐや姫のもとには、「今日なん天竺へ石の鉢とりにまかせる」と聞かせて、----苦労して手に入れた鉢を見せる。---

海山の道に心をつくし果てないしのはちの涙ながれき

かぐや姫、光やあると見るに、蛍の光だになし。

おく露の光をだにぞやどさましをぐら山にて何もとめけん

とて返し出す。鉢を門に捨てて、この歌の返しをす。

しら山にあへば光のうするかとはちを捨ててもたのまるるかな---しら山は加賀の国の白山で、かぐや姫をたとえる。光り輝くかぐや姫に出会ったから光が失せたのではないか、鉢を捨てても、期待しています。---
と詠みて入れたり。

かぐや姫、返しもせずなりぬ。


物語の出で来はじめの祖と云われる竹取物語に白山が登場している。成立年代は弘仁年間(810-823)から天暦年間(947-956)まで諸説がある。