自立できない男たち 岡野厚子編「リコンの花道」他

 自殺に関する統計をみると、離婚経験者の自殺率は概して高い。しかし、女性の場合には全体平均の二倍程度にしかならないのに対し、男性の場合は五倍以上にもなる。離婚という経験は、女性より男性に対して大きな精神的ダメージになるようだ。これは要するに、男が精神的に自立できていないからである。
 岡野厚子編「リコンの花道」(主婦と生活社・一二〇〇円)は、離婚経験のある「元」妻たち五四人が「元」夫に宛てて書いた手紙を集めたものである。何と悪趣味な、と思われるかもしれないが、是非ご一読あれ。直接には個人に宛てられたものだが、全体として女たちから世の男たちに向けてのメッセージと言える内容になっている。
 自分の未熟さを反省する内容のものもある。しかし多くは、男たちのだらしなさ、わがままさ、無責任さを明らかにするものである。家事や子育てへの無理解、酒乱・暴力にマザコン、それに離婚後もまとわりついてくる男たち。経済力はあるかもしれないが、精神的には自立できていない男たちが、何と多いことか。
 特に、次の三種類の人びとに一読を勧めたい。まず、妻に離婚されたくない男たち。自分の夫としてのあり方を反省する材料に。次にこれから結婚しようと考えている女たち。結婚が本当に最良の道であるのかどうかを考える材料として。最後に、結婚生活に不満のある女たち。離婚という道が残されていること、そして多くの女たちが離婚を経て新しい幸せを見つけていることを知るために。
 いざ離婚して新しい生活をする場合、そして再婚しようとする場合には、いろいろと解決すべき問題もあり、新たな心構えも必要になる。木本喜美子編「セカンドマリッジガイド」(KDDクリエイティブ・一二〇〇円)は、そのためのノウハウが詰まった本である。全体に明るいトーンで書かれ、セカンドマリッジは「愉快婚」だ、という編者のメッセージに貫かれていて気持ちが良い。

(1995.11月配信)

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