官僚批判の出版相次ぐ 日本経済新聞社編「官僚」他


 近頃、官僚たちがやけに目立つような気がする。政権が何回か変わり、政治家たちはそれなりに以前と違ったことをやろうとしている。ところが、それを官僚たちが邪魔しているらしいというのが、一般の人々の目にも明らかになってきた。特に、長良川河口堰のような開発プロジェクトや規制緩和の問題で、こうした傾向が著しい。
 日本経済新聞社編「官僚」(日本経済新聞社・一八〇〇円)は、いまや政策決定に国会や内閣以上の影響力を持つに至った官僚たちの生態を追ったもの。読むうちに明らかになってくるのは、官僚たちの強烈な統治者意識とエリート意識である。
 審議会の委員の元に膨大な資料を送り付けたり、何度となく足を運んで威圧する。公聴会に出席予定の人のところにも出向き、官庁側の見解を「ご説明」しようとする。こうして民意という名で「官意」が押し通されていく。
 そして、自らの役割に対する強烈な自負。官僚アンケートによれば七割近くが「官主導」を肯定し、八割が戦後の発展は官僚の功績だと答える。さらに、天下りは民間から政策ニーズを吸い上げるために必要だ、自治体が力不足だから地方分権はよくない、が多数意見だというから恐れ入る。
 後半部には何人かの政治家や財界人が登場し、官僚組織の今後について語っている。多くの人々が共通に指摘するのは、経済成長のような明確な目標がある場合には官僚の役割が大きくなるが、すでにそのような時代は終わった、ということ。政界は流動化の時代だが、求められるのは政党システムだけではなく、行政を含めた国家システム全体の改革なのである。
 大前研一著「平成官僚論」(小学館・一六〇〇円)は、利権のために税金を無駄遣いし、日本経済の活力を奪う諸悪の根元として、各省庁をバッサバッサと切り捨てていく。その舌ぽうはあいかわらず鋭いが、対案の部分になるとやや粗雑な議論も目立つのが難点である。

(1994.7月配信)

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