東京ディズニーランド(TDL)の観客動員数が減り始めたという。TDLの入場者の大部分が、繰り返し訪れる人々、いわゆるリピーターで占められていることは良く知られている。そして若いリピーターたちは、次にはここで働きたいと考え始めるようだ。青木卓著「ディズニーランド裏舞台」(技術と人間・一九五七円)は、こうした若者たちの姿を追った記録である。
著者はまず、人材派遣会社を通じてTDLにアルバイトとして雇われる。配属されたのは美装部、つまり衣装係。こうして5ヵ月間にわたる潜入取材が始まった。
TDLは夢の王国である。そこには虚構であることを感じさせない完璧さが求められる。そのために多くの仕掛けが作られ、規則づくめの管理が行われる。男性の長髪は禁止され、化粧や靴の種類も制限される。舞台裏で知ったことを人に話してはいけない。そして互いに笑顔であいさつをすること。虚構はこうして守られていく。
働く若者の多くは、低賃金で雇用の不安定なアルバイトである。彼ら・彼女らはディズニーランドで働きたかった、いつかはショーに出たいと話し、休日には観客として通う。こうした若者たちの情熱とエネルギーを、会社は吸い取っているのだ、と著者はいう。
TDLを扱った本は数多いが、その多くは人事管理や経営を扱ったビジネス書である。何冊か手に取ってみたが、いかにもオジサン向けの本づくりだ。これは経営学の本全体に共通のことである。
ところが最近、若い女性向けの素敵な経営学書が出版された。斎藤毅憲・幸田浩文編著「女性のための経営学」(中央経済社・二二〇〇円)である。これは「女性のため」と称して程度を下げた安易な本ではない。経営学の基本を押さえながらも、企業社会の中で女性が遭遇するさまざまな問題に焦点をあて、セクシュアル・ハラスメントなどの新しいトピックにも触れている。OLや女子学生に、文句なしに勧められる。
(1993.6月配信)