皆さんは、CDを割ってしまったことがありますか? 割ったといっても、踏んづけたとか、上に座ってしまったとかではなくて、手で割ってしまったことが。わざとじゃないですよ。私は、あります。しかも、セルの大切なCDを。
今年はじめのことです。以前LPで聞いていたセル/フランチェスカッティによるメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲のCDを、米国からの通信販売で買いました。これは、オーマンディ/フィラデルフィアの「イタリア」や、セル/クリーブランドの「真夏の夜の夢」などが収められた、2枚組のメンデルスゾーン名曲集です。バイオリン協奏曲は、2枚目に入っています。まず2枚目を取り出そうとしたのですが、CDを止めている中央部のプラスチックの出っ張りが堅く、なかなかはずれてくれません。いつもよりちょっと力を強く入れました。CDが少し、しなりはじめました。これくらいは大丈夫だろうと、さらに力を入れたところ・・・・。
パキッ!
という音がしました。一瞬、何が起こったのか、理解できませんでした。我に返ってみると、中心部から外周部まで貫通する見事な割れ目ができていました。私は割れてしまったCDを、しばし呆然と眺めていました。体がへなへなと崩れ落ちるかのようでした。このCD、今はかなり品薄のはず。一時は、二度と入手できないことを覚悟しました。
結局はしばらくあとに、池袋のレコード店で見つけて買ったのですが、これは貴重な経験になりました。いままでも、同じくらいに力を入れたことは何度もあったと思うんですけどね。買い直したCD、取り出すときの緊張感ったらありませんでしたよ。まず中心の出っ張りを強く押さえ込んで、そろそろと・・・・。おかげで出っ張りが変形し、このCDはケースを開けるとすぐに外れる始末です。今度はケースの縁で傷つけるのを用心しなくてはなりませんね。
現在主流のCDケースは、決して優れたものではないと思います。まず、厚みがあってかさばる。2枚組のケースなんか、1枚用ケースの3倍くらいの厚みがあったりします。堅いプラスチックのため、CDを傷つけやすい。中心部の出っ張りで固定するのですが、これが頼りないか、あるいは外れにくい。最近では、以前あったLPのジャケットをそのまま小さくしたようなのを見かけるようになりましたが、この方がいいかもしれません。
しかし、別の問題もあります。LPと違って、CDは持ち運びやすいのが利点です。持ち運ぶことを考えると、堅いプラスチックのケースにはメリットがあります。カバンにぎゅうぎゅうに詰め込んでも、せいぜいケースにひびが入るだけで、CDそのものは保護されます。ケースの背中には曲名と演奏者名とともに、各レーベルが区別できる模様やロゴが入っている必要がありますが、LP式のジャケットでは背面積が小さすぎて、十分な情報が入りません。
というわけで、CDケースには今のところ、決定版が見つかりません。どなたか、良いアイデアはありませんか?
というわけで、セル/フランチェスカッティのメンデルスゾーンバイオリン協奏曲。バイオリンを目いっぱい演歌調に歌わせる演奏とは無縁の端正さの中に、曲そのものの持つ爽やかな叙情が最大限に生かされた演奏になっています。(2000.4.5)
米ソニークラシカルのメンデルスゾーン名曲集。オーマンディ/フィラデルフィア管の交響曲第4番「イタリア」、「真夏の夜の夢」の音楽他と、セル/クリーブランドによる「フィンガルの洞窟」、バイオリン協奏曲、それに副指揮者だったデビッド・レーン指揮による交響曲第1番を収めている。 (米ソニー SB2K 63251) 割れてしまったCDの悲惨な姿。二度と過ちを繰り返さないことを誓って、永久保存とする。