シューマン ピアノ5重奏曲/ピアノ4重奏曲
デムス(pf)/バリリSQ
(MVCW-19027)
学生時代にグールドの演奏を聴いて以来、4重奏曲は私の愛聴曲のひとつです。即興的な叙情のグールド盤、アクロバティックな妙技を聞かせるエマーソンSQ盤もいいのですが、やはりこのデムス/バリリ盤。端正でしっとりした雰囲気が最高です。1956年のモノラル録音ですが、音質は良好。良質のLPのような音質で、変にステレオでないのが幸いしているようです。(2001.3.1)
フランク オルガン曲集
マルシャル(org)
(ERATO 4509-94828-2)
フランクは、教会のオルガニストでした。この二枚組の曲集には、ファンタジー、前奏曲・フーガと変奏、3つのコラールなど8つの作品が収められていますが、題名からもわかるように、バッハのオルガン曲と共通の宗教性をもつ曲が中心です。傑作ぞろいとはいきませんが、美しい主題をもつ前奏曲・フーガと変奏、壮大なドラマ性をもつ交響的大曲が印象に残りました。録音は1958年で、今では珍しいAADのCDです。特にフランク好き、オルガン曲好きの人でなければ、買うほどのものではありません。(2001.3.1)
バッハ ピアノ協奏曲集
グールド(pf)/ゴルシュマン指揮 コロンビア響
(CBS 60028)
仏CBSのLPです。収録されているのは、BWV1054,1056,1058の3曲。管弦楽の弱いのが難点ですが、あくまでもグールドを聴くためのユニークな一枚です。クラヴィーアと管弦楽のための協奏曲は、バッハの作品の中でも私の最も好きな作品群で、昔はラクロワ/パイヤール、最近ではコープマンの演奏を聴いています。たいていの曲は、オリジナルのチェンバロの方がいいと思いますが、BWV1058だけは例外。この曲のロマンティックな性格と、グールドの個性があいまって、名演になっていると思います。CDも入手できるはずです。(2001.3.1)
モーツァルト ピアノ協奏曲26番/同8番
デムス(Hammerfluegel)/コレギウム・アウレウム
(ULS-3126-H)
おそらく10年ぶりくらいで聴いたLPなのですが、いくつかの意味で驚きでした。若い人はご存じないかもしれませんが、コレギウム・アウレウムというのは60年代から70年代にかけて活躍した合奏団で、18世紀の古楽器を使っていました。つまりピリオド演奏の先駆者ということになるのですが、最近のピリオド演奏と違うのは、古楽器を使っていながら、演奏スタイルはモダン風だということ。つまり、最近流行の近代オーケストラによるピリオド・スタイル演奏の正反対ですね。デムスも、18世紀末のハンマーフリューゲルを弾いています。これが、何とも新鮮です。特に8番は、あまりの見事さに聞き惚れてしまいました。しかもライナーノーツを宇野功芳氏が書いていて、この演奏を「ロマンティック」だとベタほめしているというおまけ付きです。この人、古楽が嫌いなのではなくて、ロマンティックでない演奏が嫌いなのですね。コレギウム・アウレウムのLPは、数枚残っています。最近は、CDも再発されたようですね。これからときどき、聴いてみることにします。(2001.3.2)
ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲/ストラヴィンスキー 春の祭典/他
ブーレーズ指揮 クリーブランド管
(DG 459 057-2)
「春の祭典」は定評のある演奏。やはり定評ある旧盤(ソニー)に比べると、アンサンブルや楽器のバランス、明晰さという点では共通ながら、やや流麗で柔和な感じを受けます。私は、旧盤を取りますね。この柔和さが、ドビュッシーにはよく合うみたいですね。都内のショップでは1000円前後。お買い得です。(2001.3.8)
モーツァルト 歌劇「魔笛」
スウィトナー指揮 ドレスデン・シュターツカペレ/シュライヤー(t)/他
(RCA 74321 32240 2)
先日、結婚パーティーの司会をやりました。音楽好きの新郎新婦と相談して、バックに流す音楽を決めたのですが、ケーキカットの場面で流すことにしたのが、この「魔笛」のフィナーレ。場面にすばらしくマッチして、新郎新婦とも感激していました。ちなみに入場の時はパッヘルベルのカノン、そして最後の挨拶は「感謝の曲」である「田園」の第5楽章。音楽好きがちょっと考えれば、クラシック音楽で良い演出ができるということがわかりました。機会があったら(笑)、皆さんもいかがですか。(2001.3.8)
ブラームス 交響曲第1番/2番/他
オーマンディ指揮 フィラデルフィア管/他
(SB2K 63287)
最初にかけた1番の冒頭でびっくり。これは、すごい演奏です。自在な表情を巧みにつけながらも、何と自然に音楽が流れていくことか。4楽章の最後まで、間然することのない名演。格調もあり、迫力もあり、歌もあるという、交響曲演奏のひとつの理想といってもいいかもしれません。ジョージ・セルはブラームスを得意にしていましたが、1番の演奏に関しては、あまり評判がよくないようです。このオーマンディーの演奏を聴くと、セルの演奏に欠けていたものがよくわかります。他もいい演奏ですが、やはり1番には及びません。オーマンディーに関してはこれまで、「協奏曲の伴奏以外では感心したことがない」「華麗かつ空疎」などといい加減なことをこれまで書いてきました。オーマンディ好きの皆さん、ごめんなさい。これからはちょっと意識して、オーマンディを聴くことにしましょう。(2001.3.15)
モーツァルト ピアノ協奏曲第24番/26番
セル指揮 コロンビア響/カサドシュ(pf)
(COLUMBIA WL5127)
以前紹介した、英フィリップスのABL3060と同一音源で、モノラル録音の旧盤です。ただしABL3060では"ORCHESTRA CONDUCTED BY GEORGE SZELL"とのみ表示されていたオーケストラ名が、"COLUBMBIA SYMPHONY ORCHESTRA"と明記されています。しかし実は、演奏しているのはクリーブランド管弦楽団らしい、というややこしい話。この件については最近、Sugitaさんが興味深いことを書いておられましたね。さてこのレコード、ジャケットに注目です。「戴冠式」らしからぬ気味の悪い表の絵もさることながら、裏側に掲載された読みにくい文字。これは何かというと、カサドシュの所持していた26番のスコアの表紙裏メモのコピーで、彼がこの曲を演奏した年月とオーケストラ、指揮者を順番に記したもの。1924年から1954年1月のこの録音までの演奏記録です。判読は難しいのですが、20年代にはアンセルメ、モントゥー、シェルヒェン、30年代にはシューリヒト、ベイヌム、ヨッフムなどの名前が見えます。セルが登場するのは1950年、通し番号87、オーケストラはクリーブランド管です。そしてこの録音は最後の97番目で、管弦楽は"Columbia"と記されています。ただしその前と下に判読できない文字があるのが気になります。カサドシュはこのオーケストラを、「コロンビア」と認識していたのか、それとも「クリーブランド」と認識していたのか。どなたか、この文字が読める人はいませんか?(2001.3.16)
通し番号87-97のより鮮明な画像(254KB)は、こちらです。(2001.3.25)
他の部分の文字と比較した結果、通し番号97は「N.Y. Columbia recording」と読めることが分かりました。これは何を意味するのか……。近く文章にまとめますので、しばらくお待ち下さい。(2001.3.26)
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モーツァルト 木管のための協奏曲集
ドホナーニ指揮 クリーブランド管/コーエン(cl)/マック(ob)/マックギル(fg)
(UCCD-9036)
ソリストはいずれも、クリーブランド管の主席奏者たち。なかでもマックは1965年から、コーエンは1976年から現在まで首席奏者を続けています。それだけにオーケストラとソロのバランスや音色の統一感は完璧で、協奏曲演奏というもののあるべき姿のひとつを示しているといっていいでしょう。とくにオーボエ協奏曲は、とかく金属質で浮き上がってしまいがちなオーボエソロが、オーケストラに溶け込んでは姿を現わし、絶妙の演奏を繰り広げます。これに対してファゴット協奏曲は、ソロの音量が大きく、ソロがオーケストラと対峙するという、よくある演奏スタイルに近いようです。しかし、主席フルートを50年も務めたシャープに、フルート協奏曲の録音を残してほしかったものですね。(2001.3.23)
ベートーベン バイオリン協奏曲/交響曲第3番「英雄」
セル指揮 クリーブランド管/モリーニ(vn)
(FKMCDR-88/89)
品番からおわかりのように、海賊盤のCD−Rです。1967年5月11日に行われたコンサートの記録で、オール・ベートーベン・プログラム。「英雄」については1957年のスタジオ録音が残されていますが、これとはかなり演奏スタイルが異なります。アーティキュレーションが明確な1957年の演奏に対して、セルにしてはややレガート気味に音をつなぐコンティニュアスな演奏で、私はこちらの方が良い演奏だと思います。二つの演奏の関係は、シベリウスの交響曲第2番のコンセルトヘボウ盤と東京ライブ盤の関係に似ています。おそらく、来日公演での「英雄」はこれに近い演奏だったのではないでしょうか。モリーニとの協奏曲も大変な名演奏。モリーニという人は、もっと線の細い演奏をする人だと思っていましたが、これは大熱演です。1楽章が終わったところで拍手が始まりますが、それも仕方のないところでしょう。第2楽章の弦楽がすばらしく、思わず聞き惚れます。4600円もしますが、その価値はあるといっていいでしょう。(2001.3.23)
バッハ バイオリン協奏曲ト短調/タルティーニ バイオリン協奏曲/他
セル指揮 コロンビア交響楽団/シゲティ(vn)/他
(SOCU22)
二つの協奏曲は、上で紹介したモーツァルトの協奏曲とほぼ同時期に録音されています。そしてこのLPは、確か70年代の終わりに発売された国内版。外盤と国内盤の違いがあるので正確には比較できませんが、モーツァルトより音質が劣るようです。シゲティは、「即物的」な演奏スタイルで現代のバイオリン演奏に大きな影響を与えたとされる巨匠ですが、現代の演奏を聞き慣れた耳には、けっこうロマンティックに聞こえてしまいます。それだけ、バイオリンの演奏スタイルは大きく変わってきたということですね。さてRosenbergのディスコグラフィによると、バッハは1954年1月13日、タルティーニは同じく1月15日の録音ということになっています。2日しか違わないのに、Huntのディスコグラフィによると、録音場所は前者がニューヨーク、後者がクリーブランドです。Sugitaさんも指摘しておられたように、これはどう考えてもおかしいですね。そこで上のモーツァルトの録音場所が問題になります。モーツァルトの録音日は、1954年1月の12日と15日。Huntはその場所をクリーブランドとしているのですが、カサドシュのメモから、実はクリーブランドではなくニューヨークだったことが裏付けられました。したがって、この一連の録音は、すべてニューヨークだったと考えていいでしょう。さて、それでは、「コロンビア交響楽団」の正体は?(2001.3.26)
R.シュトラウス ドン・キホーテ
セル指揮 クリーブランド管
(ODYSSEY Y32224)
最近、300円で買った中古LPです。針を落としてまず、清らかな音質にはっとしました。確かにスクラッチノイズは気になりますが、繊細かつ芯があって、えもいわれぬ雰囲気をたたえています。CDも聴いてみましたが、クリアではあっても平板な印象が拭えません。やはりLPの音質は捨てがたいですね。今月はただでさえ画像が多いので紹介するのはやめておきますが、セルの指揮姿を4×4=16枚配置したジャケットのデザインも秀逸です。いい買い物でした。(2001.3.26)
ブラームス 二重協奏曲
セル指揮 クリーブランド管/オイストラフ(vn)/ロストロポーヴィチ(vc)
(VIC-3015)
これも300円で買った国内盤LPです。こちらの音質は、よくありません。ソロ楽器に焦点を合わせた録音で、管弦楽の輪郭や配置がはっきりしません。CDも聴いてみましたが、傾向は同じです。これは、この時期のEMIにはよくあることですね。この曲を代表する名盤のはずなのですが、残念です。3大巨匠の共演した貴重な記録。リマスタリングで何とか蘇らせて、後世に伝えたいものです。(2001.3.26)
マーラー 交響曲第4番/ベートーベン 交響曲第2番・第8番/他
メンゲルベルク指揮 コンセルトヘボウ管/ワインガルトナー指揮 ウィーン・フィル/他
(HISTORY 204552-308)
マーラーは、メンゲルベルクによる自分の曲の演奏を高く評価していたようですね。ポルタメントの多用や極端なルバートなど、古臭いとよくいわれるメンゲルベルクですが、マーラーの場合、とくにこの曲だからかもしれませんが、それがプラスに働くようです。良い演奏だと思います。ワインガルトナーは初めて聴きました。まったく違和感のない、現代的な演奏ですね。悪くいえば、現代においては存在意義のない演奏ともいえますが。いずれも音質は予想以上で、十分鑑賞にたえます。(2001.2.27)