木村伊兵衛,木村伊兵衛 昭和を写す(全4巻),筑摩書房,1995年,各840円.
最近、昔の東京の写真を集めています。いずれ年をとり、計量研究から引退したら、趣味半分で研究の題材にするつもりです。これは20世紀の日本を代表する写真家の一人、木村伊兵衛の作品を集めたもので、合計すると800ページほどもあります。私の関心からは当然、第1巻の「戦前と戦後」、第2巻の「よみがえる都市」が役に立ちそうです。この人の写真家としての力量は、たとえば第1巻の表紙に使われている作品を見れば分かります。千駄木の魚屋の店先を撮ったものですが、人物の配置が奇跡的に決まっています。(2006.5.6)
田村武能,東京の戦後,筑摩書房,1993年,4500円.
これも、写真集。作者は木村伊兵衛の弟子とのことですが、たしかに人々をみる目線に共通点を感じます。しかし、広角レンズを駆使した作品が多く、画面に遠近感があり、群衆の姿がよくとらえられています。69年のカルチェラタン闘争の写真は、当時の雰囲気を伝えています。(2006.5.7)
富岡畦草,東京は変わった──定点観察50年,岩波書店,2004年,1700円.
「定点観察」という方法で東京を50年間写真に記録し続けてきた著者の作品のエッセンスをまとめたもの。自分の家族にも一つの焦点が当てられていて、銀座の同じ場所で撮影された娘の小さい頃、大きくなった頃、そして孫が生まれたあとなどが並べられています。しかし題名の割には、家族写真の比重が大きすぎたかもしれませんね。表紙には「一丁ロンドン」と呼ばれた頃の丸の内の写真が使われています。このころの姿を偲ばせる最後の建物が東京銀行協会ビルでしたが、すでに建て替えられてしまいました。残念なことです。(2006.5.16)
熊沢誠,若者が働くとき,ミネルヴァ書房,2006年,2000円.
この春に大学を退職された熊沢誠さんが、退職を機に学生たちへのメッセージとしてまとめた本です。熊沢さんのこれまでの研究や発言から、当然予想されるフリーター論、若年労働論ということができ、やや新味に乏しいと言えなくもありませんが、反面、新しい状況に対しても基本的スタンスをいささかもぶれさせることなく発言していくその姿勢は、一種の感動を与えます。結論的には、やはり若者は労働運動に参加しなければ救われないということになるのでしょうけれど、そのために必要な社会的諸条件は何でしょうか。職業教育を重視しようという氏の主張は理解できなくもありませんが、教育によって社会を変えようという試みの限界は明らかだと思います。(2006.5.20)
師岡宏次,東京モダン,朝日ソノラマ,1981年,4800円.
師岡宏次には「想い出の東京」「想い出の銀座」「想い出の武蔵野」の三部作がありますが、これに続いて1930年から40年までの作品を集めたのが、これ。オークションで競り落としましたが、普通の古本屋より2割くらいは安かったでしょうか。町並みよりも人に重点を置いた写真集ということができます。最初はそこはかとないユーモアをたたえて始まりますが、最後のほうは戦争の足音で締めくくられます。花見風景や電車のなか、通行人の表情など、何でもない写真が当時の姿をいちばんよく伝えてくれます。(2006.5.27)
勝沼町文化協会,写真で見るふるさと勝沼,勝沼町,1998年.
山梨県の旧勝沼町(町村合併により現在は甲州市勝沼地区)は、日本最大のワイン生産地で、私の大好きな所です。本書は勝沼町に残された明治5年から昭和30年代までの写真をテーマ別に編集したもので、現地のぶどうの国文化館へ行けば買うことができます。表紙には、日本におけるワイン醸造の草分けとなった高野正誠と土屋助次郎のフランス留学中の写真が使われています。明治期から昭和初期のワイン醸造の様子が詳しく記録されているほか、皇紀2600年記念の儀式で御神酒としてワインが使われている様子など、この地域に深く根付いたワイン文化を知ることができ、ちょっと感動的です。山梨で赤提灯の居酒屋に入ると、中高年男性が入ってくるなり「煮込みとワイン!」と注文するといった光景が見られます。勝沼ワインは近年、品質の向上が著しく、カベルネソーヴィニョンやメルロー、シャルドネなどを使ったワインなど、フランス産のAOCに劣りません。町は小さく、歩いていくつものワイナリーを見学することもできます。一度、出かけてみてはいかがですか。(2006.5.28)