「約束事というものはよくよくにむずかしいものじゃ、人間と人間の誓いゆえ、なおさらにな……」
「なんといっても江戸は将軍さまのおひざもとだからね。いろいろとうるさいし、きびしい。近よらぬが得というものさ。」
「はい,はい。なにさま、お若い上に、そりゃもうお元気なお方ゆえ……」
「ひとつ、ぜひとも、長谷川様へお目通りをしたいものだが……」 「それは元締。むりというもので」
「左馬は、よほどに、その幼ともだちのことをわすれかねているらしい。情に厚い男ゆえな」
「前火付盗賊改方、長谷川平蔵の妻を、何用あって呼び出されましたか?」 「ほ……これは、すさまじい」
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