GSC-ACT ファイルと情報

最終更新日 1999年12月16日

  • プロジェクトの概容
  • インターネットによる GSC-ACT データへのアクセス
  • 使用した方法
  • 結果の要約
  • GSC-ACT はGSC 1.xよりもどのくらい改善されるか?
  • 測光についてはどうか?
  • このデータの使い方

    プロジェクトの概容: GSC-ACTプロジェクトの目的は、Hubble Guide Star Catalog (GSC)version 1.1を、米国海軍天文台(US Naval Observatory)のACT (Astrographic Catalog/Tycho)データを用いて再較正することです。

    これを行う理由は、長くGSC 1.1 を用いている人には明らかでしょう。 GSC 1.1 は、写野中心が赤緯+2度付近かそれより北のプレートに対しては AGK3 星表を用いて較正され、写野中心がそれより南、赤緯−60度までのプレートに対しては SAO 星表、それより更に南のプレートに対しては CPC 星表を用いて較正されました。フィッティングは3次までの項を含めて行われました。

    現在我々は、1989年当時に利用できた星表よりも、かなり良い星表を持っています。 ACT はより良い位置とより多くの星を与えてくれます。 後者は、星の位置のフィッティングにより多くの次数の項まで含められることを意味しており、これはとても良いことです。 というのは、GSC 1.1で用いられた簡単な3次のフィッティングだけでは十分に表現できない高次の歪曲収差もこれらのプレートに含まれているからです。(GSC-ACTでは、5次の項まで含めました。)

    The Space Telescope Science Institute は、これらの問題のいくつかについて取りかかり、再較正の結果 GSC 1.2 星表が得られました。GSC 1.2 の最大の問題はアクセスです。 データは、小さなかたまりの形で、STScI の GSC 1.2 リクエストフォーム、またはフランスの Centre de Données Astronomiques de Strasbourg にある VizieR を通した GSC 1.2 リクエストフォームから利用できます。

    しかし、その他の形では利用することはできません。(つまり、CD-ROMに入れられたり ftpサイトに置かれることはありませんでした)。また GSC 1.2 には再較正用の星表として、TychoやACTではなくPPM星表が使われました。

    GSC-ACT のデータのインターネットを通じたアクセス: 現在、GSC-ACT を取り寄せるためのリンクが Université de Strasbourg にあり、そこでは CD-ROM や本サイトのソフトなしに GSC-ACT データの一部を入手することができます。 この方法でGSC-ACTにアクセスするためには、ここをクリック。

    天空のある一部分について、すべての GSC-ACT データを得たい場合には、上の方法は非常に便利です。 しかし、あるソフト、例えば Astrometrica のようなソフトでは、オリジナルの擬似FITS(pseudo-FITS)フォーマットの GSC を使います。 (このフォーマットでは、天空は9537の領域に分けられ、各領域に対して拡張子 .GSCをもつFITSファイルが与えられます。) これらの .GSCファイルは ftp で利用可能にすることができるかもしれませんが、多分1999年10月末以前は難しいでしょう。

    使用した方法: 再較正は以下のステップからなります。 第1に、Tycho星表の1つのバージョンが作られました。それは、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)によって与えられた tyc_main ファイルの中のオリジナルデータと、それに結び付けられた ACT 星表からの固有運動データから成っています。

    第2に、各々のレコードは GSC 1.1 の対応するレコードにそろえられました。(多くの星は複数のプレートに写っており、その場合、GSCでは複数のレコードになります。) 結果はプレート毎に保存されましたので、或るプレートに対して、そのプレート上の各々のACT星に対するデータを含んだファイルがあることになります。 データは、(完全な)Tycho のデータと、(もしあれば)ACT の固有運動と、(完全な)GSC 1.1 のデータから成ります。

    ここまででは、実数計算は実行させていません。レコードは単にクロスインデックスされ、GSC 番号順ではなく、プレート順に並べられているだけです。 しかし、この形式はとても便利です。再較正する場合、与えられたプレートに対する全データを容易に取ってくることができるからです。

    第3のステップは本当にキーとなるものです。 各プレートに対するデータがロードされ、ACT の位置データの固有運動が補正されました。 その後、GSC 1.1 と ACT の位置が(xi, eta)座標に変換され、残差(delta_xi, delta_eta)が計算されました。これを、最小2乗法によるフィッティングルーチンへの入力としました。 GSC 1.1 と ACT の位置の差が1秒角を超える星の場合は、疑わしいとして除外しました。(後で分かりますが、これは初めに思うほど厳しい制限ではありませんでした。大部分のプレートでは、較正が始まる前でさえ、90%を越える星がこの制限内に入りました。)

    各々のプレートについて、最小2乗法によるフィッティングは6回繰り返されました。一般に2〜3回の繰り返しで収束しましたが、余分のステップを要したプレートもありました。 プロセスは充分高速に走りました(200MHzのPentiumで約2時間)ので、余分の繰り返しもいやではありませんでした。

    このステップの結果得られたのは、42個の係数(xiに対する21個と、etaに対する21個)で、これらはそのプレートに対して(xi, eta)GSC 1.1 から(xi, eta)GSC-ACT への変換を定義するものです。 フィッティングを開始する前に1秒角の制限から外れていた星の数、フィッティング完了した後に1秒角の制限から外れている星の数、各々の場合についてのRMS誤差の表が作成され、係数が保存されました。

    このプロジェクトの「結果」は、この係数の表と、それを使うためのソフトなのです。

    以上の全プロセスにおいて、オリジナルのプレート定数が使われないままであることに、あなたは気づいたことでしょう。 この種の「微分」較正の場合には、それらを考慮する必要が特に無いのです。

    GSC-ACT は GSC 1.x よりもどのくらい改善されたか? この問題はいくつかのよく理解できる混乱の源でした。 短く言うと次のとおりです:1個の星について言えば、改善はいつも素晴らしいという訳ではありません。 しかし、もしあなたが或る領域の多数の星の位置を調べている(例えば、天体の位置測定の実行のため)ならば、改善は本当に素晴らしいものになり得ます。

    この理由を知るために、我々が天空の一部を見ていると仮定しましょう。 その場所では、GSC 1.1のデータは ランダムな位置誤差が約0.4秒角、系統的な位置誤差が約0.3秒角だとします。 換言すれば、もしあなたがこの領域で統計的に重要な星のサンプルを調査したとすれば、例えば東に平均して0.3秒角ほど正しい位置からずれており、そのずれた点のまわりに約0.4秒角にばらついていることがわかるでしょう。(これは含まれている誤差のレベルとしては悪くない例です。)

    GSC-ACTの場合、同じ領域で約0.4秒角のランダムな位置誤差を発生するでしょう。何故なら、再較正はこの種の(ランダムな)誤差を除くことはしていないからです。しかし、系統的な誤差はかなり徹底的にゼロに近づけられました。

    もしあなたがこの領域で1つの特定の星を調査すれば、GSC 1.1でのその星の総合の 誤差は、約0.5秒角になるでしょう。 (この数字は、誤差の伝播からくるものです:)

    total_error ^ 2 = systematic_error ^ 2 + random_error ^ 2
    
    (.5) ^ 2 = (.3) ^ 2 + (.4) ^ 2
    
    (訳者注:総合誤差の2乗=系統誤差の2乗+ランダム誤差の2乗、によって計算できる。)

    GSC-ACT で同じ星を調査すると、系統的誤差は基本的にゼロですから、総合誤差は丁度ランダム誤差に等しく、0.4秒角となります。この数字は、GSC 1.1 の20%の改善に相当し、あまり価値があるようには思われないかもしれません。

    しかし、たぶん天体位置測定のため、私たちは16個の星を使っているものと仮定しましょう。(小さなサイズのCCDカメラでも通常は16個のGSCの星を含みます。) 系統的誤差は星の数が増えても小さくなりません。悪い定規で何回測っても、悪い定規で測っていることに変わりはないのですから。 でも、ランダムな誤差については、用いた星の数の平方根だけ小さくなりなす。 したがって、両方のGSC(GSC1.1及びGSC-ACT)とも、ランダム誤差は0.4 / 4 = 0.1 秒角まで減少するでしょう。

    これは GSC 1.1 にとっては若干の改善になります。この場合、総合誤差は、(0.3) ^ 2 + (0.1) ^ 2 の平方根、つまり0.1の平方根で、約0.316秒角になります。 ここで問題なのは系統誤差です。いくら多数の星を使っても、系統誤差は0.3秒角のままですので。

    しかしここで急に、GSC-ACT を使用することが非常に良好に思えてきます。というのは、その総合誤差が今尚ランダム誤差に等しく、それが今や0.1秒角しかないからです。 GSC-ACT は、GSC 1.1 の誤差の80%をもつのではなく、33%以下の誤差しかもたないのです!

    同様なコメントが GSC-ACT 対 GSC 1.2 の場合にも当てはまりますが、この場合にはそれほど劇的な改善にはなりません。というのは、GSC 1.2 は、系統誤差を小さくする良い研究が既に適用されたたものであって、データの再較正による利益の多くを既に取り入れたものだからです。

    ところで、あなたの天文位置測定ソフトが大きく改善したようには見えるものではない、という点には注意すべきでしょう。 この観点から言うと、GSC-ACT を使うことによる主なインパクトは、GSC 1.1 を使った結果と比較すると、単に画像が約0.3秒角だけシフトしたように見えるだけのものです。しかしながら、もしあなたが、より長い期間にわたって多数の観測を得るのであれば、系統誤差を無くすことは軌道の残差を大きく減らすことを意味しているのです。

    私は、GSC-ACT が小惑星の位置観測に主として使われることを期待しています。 この目的に対しては、「GSC-ACT は GSC 1.x に比べてどのくらい改善されるか?」の問いに対する答えは、「それは誤差をたくさん減らします」です。

    測光についてはどうか?: GSC の測光への不十分さに関しては、何年にもわたって数え切れないほど多数の苦情がありました。 1999年の遅くに、私は光度の再較正を試みる研究を開始しました。これまでの結果は、あまり勇気づけられるものではありません。 GSCの光度の再較正の現在の状況を読むにはここをクリック。 第1に、適したデータが欠如しています。 Tycho のデータは11等級より明るい星の優秀な光度を与えますので、なるほど Tycho は明るい星の再較正に使うことができますが、もっと暗い等級の星(GSCの約90%を占めます)に対しては必ずしも使うことはできません。 (しかし、この反論はなくなるかもしれません。 Brian SkiffのLONEOS.PHOT 光度データは、良好な光度の範囲をとてもうまく拡張できるように思われます。)

    第2に、光度データをとても良好に改善することが可能かどうかが、はっきりしません。 GSC 1.1 の生の光度データは、十分に「ランダム」であるため、再較正を行ってもあまり多くの利益が得られないかもしれません。

    そして第3に、 Dave Monet が A1.0 のデータ(位置と光度の両方)を ACT を用いて再較正したことです。この結果は、GSC-ACTが狙っていたもの以上の良好な光度データとなりました。 (A2.0に関する情報はここをクリック。) そして、A2.0 もまた、LONEOS.PHOT を用いて更に改良されるらしいのです。

    結果の要約: ほとんどの場合、rms誤差(GSC - ACT)はほぼ半分に小さくなり、残差が1秒角を超える星の数もほぼ半数に減りました。 これにはいくつかのバリエーションがあります。かなり南天のいくつかのプレートではこれ以上に改善されました。 プレート毎の変換の影響を示す完全な表が、利用できます。

    実際には、RMS誤差の減少はこの表に示された値よりも多分もっと大きかったかもしれません。 GSC 1.1 を ACT と比較したときには、1秒角の制限から外れる星の割合が大きいのが普通でした。それらを除外することは、RMS誤差を過小評価することにつながります。 (同じ効果はGSC-ACTをACTと比較する場合にも言えますが、程度はもっと小さいです。というのは、この場合は除外された星の割合がより小さかったので。)

    また、再較正されていないままのプレートもあるということにも注意してください。 オリジナルの GSC 1.1 の較正データにリストされた1518個のプレートのみについて考察され、それらの中で、1つのプレート(プレート06EL)のみが収束しませんでした。(それ以外の1517個のプレートでは問題ありませんでした。)

    このデータの使い方: GSC 1.1 は2枚組のCD-ROMの形で利用でき、Space Telescope Science Instituteによって製造され、Astronomical Society of the Pacificによって販売されています。 理屈では、GSC-ACT の位置は同様の方法で配布可能なはずです。もし同じフォーマットを用いるならば、GSC 1.1の代わりに使うことができるのですが。 (実際私は、特にそれら必要とする人のために、そのような2枚のCDセットを2〜3組作ったことがあります。 もしあなたがそのような状況にあるならば、あなたがこのディスクを必要とする理由についてのいくらかのディスカッションを入れて、どうぞ私にe-メールしてください。 多分私はとにかくあなたのために2枚のディスクを焼くでしょうが、私はそれらがどのように使用されるのかを知りたいのです。)

    CDを作ることに関してはいくつかの異議があります。 GSC 1.1 は既に世界中に多数が出回っているため、これらのディスクのユーザーに対して新しいCDを利用可能にすることは、あまり本質的ではありません。 アルゴリズム的な方法であれば、ユーザーが GSC 1.1 から GSC-ACT へと容易に切り替えることができるため、両方の星表データを周囲に置いておく必要もありません。 また、アルゴリズムや係数が改良された場合にも、新しいデータをダウンロードして更新するだけですぐに走らせることができます。 (わたしは、この改良がすぐに生じることを全く望みませんが、新しい Tycho 2 星表が出来たらならば、仮に、再度計算して新係数を求める気になるかもしれません。 "仮に"と言ったのは、そのような再較正が本当に役立つようには思われないからです。) その上、私はディスクを販売するビジネスに参入することには全く熱心ではありません。

    以下のファイルは、GSC 1.1 のデータを GSC-ACT のデータに、アルゴリズム的に変換することを可能にするものです。

    あなたは先ず、ZIP(圧縮)されたデータ(約 560 KBytes)をダウンロードしなければなりません。 このデータの大部分は圧縮されたプレート定数です。それに比べてかなり小さいC/C++ のソースコードは、かなり良くコメントがついているため、容易に理解できるはずです。拡張子は'.cpp' が使われていますが、C++ 特有のコマンドは使っていないので、'.c'に変えても差し支えありません。

    アルゴリズムの中心は、GSC_ACT.CPP と GSC_ACT.H の中にあります。 これらの中には、プレートデータ構造の定義、赤経/赤緯とxi/eta(プレート座標)とを変換する関数、プレートデータにアクセスする関数、そして、GSC 1.1の位置とプレートが与えられるとGSC-ACTの位置に変換する関数、が含まれています。

    また、GSC11ACT.CPP も含まれています。これは、Space Telescope Science Instituteによって配布された GSC 1.1 の CD-ROM から .GSC ファイルを読んで、ACT のフレームでの位置をもった同じフォーマットのファイルを出力するプログラム例です。 このようなプログラムを供給する理由はいくつかあります。 第1には、かなり多数のソフトが既にこの CD-ROM を使用しています。このプログラム例によって既存のソフトで使用可能なファイルを作ることができます。 第2に、本プロセスがどのように機能するかを示す良い例になります。オリジナルファイルの中の各々の星に対してプレートデータがロードされ、もしプレートデータがうまく見つかれば位置が GSC 1.1 から GSC-ACT に修正され、結果が出力ファイルに書かれます。 位置測定の整約計算がどのように行われるかや、その背後の数学について詳しく理解する必要は本当はありません。

    このプログラムの最後の利点は、この変換の計算の別なチェックになることです。 同じ星が複数のプレート上に見つかったとき、測定値間の差分が、オリジナルの GSC1.1 と新しい GSC-ACT の両方で計算されます。 これらの差分のRMS平均は、一般に2倍程度小さくなります。 本当に重要なのは、たとえACTの星についてのみ再較正したとしても、暗い星の位置精度も改善されたことを、このことが示していることです。

    コードは他のプラットホームに容易に移植可能ですが、1つの小さな例外があります。 データが生のバイナリー形式で格納されています。このことは、違った endianマシン("wrong-endian" machines)では問題を起こすでしょう。 この制限を回避することは整数データの場合は簡単ですが、8バイト倍精度値を得るのはより大きな問題でしょう。 この理由のために ASCII 版を作ることは容易ですが、データサイズが約2倍に膨れるでしょう。もしこのようなファイルがあなたにとって有用であるならば、どうぞ私にEメールしてください。そうすれば、私はあなたのためにファイルを作るでしょう。