告知

妻には、病気の本当のことを告げる事ができなかった。 医師から家族には何度か病気についての説明があったが、 本人には結局本当の説明は無く、9月4日の手術のあと、 夫である私が良性とも悪性とも言わずに、ただ「腫ようだったよ」 と言っただけだった。

最初のうちは、本当の事を告げるべきだと考えていた。 雑誌やテレビを見ていると、最近はがんの告知率が上がっている と言っているし、真実を踏まえた上で残された日々を一緒に すごしたいと思っていた。

しかし、以前妻がお世話になったある方に相談したところ、 「告知は絶対にするべきではない」ということになった。 その方は精神医学の権威の方で、「がんの告知」についても 調査をされ資料をまとめておられたそうだ。 いわれたことをまとめると: 「がんの告知に耐えられるのは、年の功で60代位からだろう。 30代で子どもがまだ小さい状況では、悲観して、子どもを道連れに、 なんていうことを考えてしまうかも知れない。 告知をするからには、医療関係者などまわりのサポートが不可欠で、 アメリカなどではその体制が整っているが、日本ではまだまだである。 本人は、日々の生活だけでなく、自分の生きがいが満たされないと 満足できない性格で、がんになりやすい性格だった。 残念です」というようなことだった。 たしかに、はたから見るとそうは見えないかも知れないが、 ちょっとしたことで落ち込み、鬱になりやすいところがあった。 また、担当医も「告知なんてとんでもない」という感じだった。

良いことでも悪いことでも、とにかくそのままストレートに 物事を話してしまう人だったのに、一番最後になって、 自分の命について本当のことを知らされずに逝ってしまった というのは、皮肉としかいいようが無い。


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Last modified:1998.3.27