キャスト名は (1)ジーザス、(2)ジュダ、(3)マグダラのマリア、の順番
●1970
オリジナル・アルバム
イアン・ギラン、マレイ・ヘッド、イボンヌ・エリマン [MCAD2-11542]
1970年に発表されたLP2枚組みのオリジナルアルバムをCD化したもの。
今日の水準からから見れば、一部のキャストの歌唱技術の低さに思わず笑ってしまうが、それも一興。
しかし、その突き刺さるようなメッセージ性と、きらめく音楽性は、まさにオリジナルのもの。
アンドリュー・ロイド・ウェバー22歳。これがその原点。全ては、ここから始まった。
●1971
オリジナル・ブロードウェイ・キャスト(ハイライト盤)
ジェフ・フェンホルト、ベン・ヴェリーン、イボンヌ・エリマン [MVCM-382]
さすがにブロードウェイとなると、その演奏技術はオリジナルアルバムをはるかに上回っている。
全体的に少し速めのテンポで颯爽と進んで行くのが小気味良い。
また、歌い崩しが少なく、メロディーラインがきれいに聞こえてくるのが耳に心地よい。
キャストの中では、ユダ役のベン・ヴェリーンが黒人特有のノリとアドリブで圧倒している。
もちろん他のキャストもそれに劣らず拮抗している。
残念なことに、これはハイライト盤なので、あっという間に聴き終わってしまうのだ。全曲盤が欲しい。
●1973 DVD
ノーマン・ジェイソン監督(映画版)
テッド・ニーリー、カール・アンダーソン、イボンヌ・エリマン [UNIVERSAL 20524]
編曲・指揮としてアンドレ・プレヴィンが参加。
ロンドン交響楽団の分厚いオーケストレーションに心が弾む。
ジーザスとユダはブロードウェイ・キャストからではなく、
ロサンゼルス公演に出演していたニーリーとアンダーソンが抜擢された。
ブロードウェイからは、マリア役のイボンヌ・エリマン、ピラト役のバリー・デンネン、
カヤパ役のボブ・ビンガムがキャスティングされている。
なお、イボンヌ・エリマンと、バリー・デンネンは、オリジナル・アルバムから通して全てに参加している。
●1973 LP
上記映画版のサウンドトラックLP
テッド・ニーリー、カール・アンダーソン、イボンヌ・エリマン [MCA VIM9517-8]
●1973
上記映画版のサウンドトラックCD
テッド・ニーリー、カール・アンダーソン、イボンヌ・エリマン [MVCM 158-159]
●1992
20周年記念ロンドン・キャスト
ポール・ニコラス、キース・バーンズ、クレア・ムーア [RCA 09026-61434-2]
ジーザスのポール・ニコラスは、1972年のロンドン・オリジナル・キャストだった。
●2000 DVD
ゲール・エドワーズ監督(TV映画版)
グレン・カーター、ジェローム・プラドン、ルネ・キャッスル [UNIVERSAL 21156]
1996年のゲール・エドワーズ演出のロンドン公演をベースに、演出家が監督してTV映画化したもの。
大規模なセットを組んだオールスタジオ撮影。(舞台公演をそのまま撮影したものではない)
セリフが一切ないオペラ形式のミュージカル。
主だった役には、のきなみ2オクターブを超える音域が要求されている。
しかし、そのメロディーラインはきわめて美しく、全曲が名曲だといっても過言ではない。
作曲者、アンドリュー・ロイド・ウェバーは、もともと、クラシック音楽の家系に育ったらしく、この曲はロック・ミュージックの体裁をとっていながら、基本部分に常にクラシックのテイストがある。また、和音進行やオーケストレーション等に、時折、ストラビンスキーやワーグナー、リヒャルト・シュトラウス等が顔をのぞかせるので、私にとっては馴染みやすく、かつ、非常に面白く聴くことが出来る。
1969年にロック・コンサート用として作曲されたが、演奏会を行う前にレコード化されることになり、1970年6月5日、LP2枚組みのオリジナルアルバムとしてロンドンでレコーディングされた。イエス役にはロック・グループ、ディープ・パープルのヴォーカル、イアン・ギラン。ユダ役には、ミュージカル「ヘアー」ロンドン公演で主役をつとめたマレイ・ヘッド。等々、ロック歌手が中心となった。
物語は、キリスト最後の7日間を、ユダの視点から描いたもの。題材が題材なだけに、当初、神への冒涜として宗教団体などの反発が強く、舞台での上演は困難と言われた。しかし、保守的なイギリスよりもアメリカでロック世代を中心に圧倒的な支持を得て、この2枚組みのLPは、何とビートルズ並みの300万枚を売り上げた。
その後、全米各地をコンサート形式で巡演。その成果を受け、1971年10月12日、ついにブロードウェイのマーク・ヘリンジャー劇場で「ロック・オペラ」として幕を開けた。ジーザスの豪華な衣裳や、ユダ役に黒人を起用したこと等が反響を呼んだ。
翌1972年には、作者念願のロンドン公演が開幕した。
さらに翌1973年、オリジナル・アルバムの頃から興味を持っていたというノーマン・ジェイソン監督により映画化。ノーマン・ジェイソンは舞台公演のきらびやかなイメージを一切捨て、イスラエルの何もない砂漠の中でのオールロケを敢行した。その目論見は見事に成功し、ミュージカル映画の大傑作となった。ここでもユダ役に黒人を起用している。
この映画化により、このミュージカルは、宗教や音楽のジャンルに関係なく、万人に感銘を与え得る一級のエンターテインメントに昇格した、といっても過言ではない。その後30年以上にわたり、世界各国で、それぞれ独自のキャスト、独自の演出で現在も上演され続けている。
因みに私場合は、たぶん1978年くらいだと思うが(記憶が既に定かではない)、映画館でノーマン・ジェイソンの映画版に接したのが最初だった。刷り込みが映画版なので、それを基準にしてしまうのはご容赦を。
ちなみに三大ミュージカル映画とは、一般的には、「ウェスト・サイド・ストーリー」、「サウンド・オブ・ミュージック」、「ジーザス・クライスト・スーパースター」、だそうです。