「た、たすけてくれぇ〜」
男が叫んでいる。
「手を胸のあたりにもっていけ!胸との間は拳一つ分ぐらい開けとくんだ!!」
別の男が横でそんなことを言っている・・・
何とも気分が悪い。
早いところ終わらせて風呂に入りたい・・・
「よし!殺れ!」
その声を聞いた瞬間俺は刀を振り上げる。
「ひぃ・・・!」
そして首の皮一枚を残して男の首を切る。
こんな芸当ができる人間はそういないはずだ。
男の首は胸元に添えてあった両手に見事に乗った。
大量の血があたりを覆う。
辺り一面真っ赤だ。
もちろん俺も返り血を浴びている・・・
「よくやってくれた!ほれ、金じゃ!!」
首のない男の横にいた男が俺に金を渡す。
なかなか金になる商売だ・・・
「風呂にでも入って帰るがいい」
「ああ・・・」
「ところでおぬし良い腕をしている。機会があったらまたやってはくれぬか?」
「・・・考えとく」
「そうか、そのときはまたよろしく頼む」
俺はその台詞を聞くか聞かないかの内にさっさと帰った・・・
後ろは一回として振り向けはしなかった・・・
―野を歩く一つの影があった。
北は蝦夷地より下りたる影。
いつの間にか何かからはぐれてしまった魂だ。
その姿は異形・・・
四百年を彷徨う人外の異形・・・
『いつからだろう・・・』
『いつ踏み間違えたのだろう・・・』
『抗ってやる・・・』
『この呪いに・・・』
こんな言葉が頭にちらつくが、どういう意味か解らない・・・
武神狩り
第一話 「始」
別に殺しは初めてだったわけでもない。
単に今日は二日酔いで気分が悪いのだ。
「・・・」
昨日のことを思い出そうにもあまり思い出せない。
久しぶりに幼なじみにあったので羽目を外してのんでしまった。
「・・・」
あの後どうなったのか全く思い出せない。
気付いたら俺は自分の部屋で寝ていた。
・・・考えてもしょうがない
とりあえず帰ってもう一眠りしたい。
俺の住む家は竹林のある森の中にあった。
まわりに人っけが少なく、じじいの隠居してる庵みたいな感じだ。
町を出てしばらくあるかないと着かない。
家の戸を開けて中へとはいる。
「・・・なんだこりゃ・・・」
家が滅茶苦茶に荒らされている。
別にいつも整頓されてるわけではないのだが、いつもの倍以上散らかっている。
「・・・ち」
どうやら野党か何かの仕業らしい・・・
そのとき近くに人の気配がした
敵は真後ろだ。
地面と水平に手刀を放つがそれは空を切った。
「!!」
よけられた。
「何者だ・・・」
俺は態勢を整えてから、敵と向き合ってきく。
敵はたくさんの刀を背に持ち、手に身長以上に長い刀を一本もっている。
まだ11,2歳くらいだと言うことがその顔かたちをみて解った。
「お前に名乗る名など無い」
「・・・ずいぶん生意気なガキだな、なぜ俺の家に入った」
「お前の妖刀村正を見つけるためだ」
「なんだと?」
村正・・・
「・・・しらんな」
「なに?」
ガキの顔が妙に険しくなる。
「そんなもんもってない」
「とぼけるな!」
ガキは構えをとって俺に向き合う。
「!!」
『こいつ本当にガキか!?』
とんでもない気迫だ。
普通の大人でもこの気迫にはビビるはずだ。
そして構えを見て俺はぴんときた。
「柳生家のものか!?」
「だったらどうする・・・」
「・・・」
「おとなしく村正を渡しな!」
そう言われても持っていないものはしょうがない・・・
?
そう言えば前に折った刀があった気がするな・・・
だが・・・
「おとなしく渡せばどうする?」
「・・・苦しまずに殺してやるさ・・・」
やはりそう来るか・・・
このガキはむしろ俺と戦いたがっている。
渡しても渡さなくてもこいつは俺と剣を交えるつもりだったんだ・・・
俺は刀を鞘におさめた。
「・・・お前!戦わずに殺されたいのか!?」
「・・・ふ」
「?」
「ガキ相手に本気になれるかよ・・・」
「・・・こいつぅ!!」
ガキが俺に飛びかかってきた。
流石の速さだ。
そこいらの侍では絶対に追いつけない。
だが俺にはこの程度では通用しない。
俺は紙一重で刀を避け、ガキとの間合いを詰め、右腕の根本に突きをやった。
「ぐぁ!!」
そのまま一発鳩尾に突きをやって地面に叩きつけた。
「ぐぶっ!!」
三メートルほど先にガキの身体はあり、俺の足元にはガキの落とした刀が落ちている。
俺はガキの身体をかついで家に入れた・・・
それから二、三時間たった。
「・・・ふん」
ガキはいっこうに起きる気配はない。
柳生・・・
俺がこいつを家に入れて寝かしているのはその家の名のせいだ。
「柳生・・・」
その名だけは忘れられない。
俺の妹はその名を持つ男に殺された・・・
親父も殺されたが、あんなヤツは親父とは思っていない。
妹とお袋にいつもひどく当たっていた最低のくそ野郎だ。
ヤツはろくに働きもしないで、お袋が働き過ぎで病気になって死んだ・・・
いや、あいつが殺したのだ。
そんなヤツは死んでもかまわなかった。
ただ・・・七つの妹が原形をとどめないほどにずたずたに殺されていた。
それがヤツを恨む理由だ。
今でも思い出す。
あの『柳生』と名乗った男・・・
俺はその日森へ幼なじみとともに体術の修行をしていた。
森の中でその幼なじみと別れ、俺は家へと戻った。
『!!』
親父が背中から袈裟懸けに切られ倒れていた。
俺はすぐにまわりへと視線を移した・・・
妹がいない。
俺はすぐに外へ飛び出した。
血が点々と続いていた。
それを俺は急いで追った。
すすきの生える野原でそれはとぎれていた。
無我夢中ですすきを分けて入っていく・・・
男が立っているのに気付いた。
俺はその男に近づいていった。
近づくにつれて鉄のにおいがしてくる・・・
どん
俺は足に何か引っかかったのに気付いた。
『そんな・・・』
たくさんの死体が転がっているのに気付いた。
その中にひときわ小さいものがあった・・・
赤い『モノ』だ・・・
俺はその『モノ』に走り寄った。
そして昔よくやったように抱き起こす・・・
体中血だらけで、前より軽く、腕や足が取れかかっている『俺の妹』・・・
そうか・・・『俺の妹』なのか・・・
立っていた男が近くに寄ってきた。
『お主の家族か?』
『・・・そうだ』
震える声で俺は答えた。
『気の毒にのぅ』
その男は合掌した。
そして去っていこうとした。
『待て!!』
男は振り返り俺を見る。
『お前が殺ったのか!?』
男の眼光は鋭く、目を合わせるだけでも腰を抜かすほどであった。
だが、このときの俺は妹のためにそうきいたのだ。
『・・・そうじゃ』
その答えを聞いて、俺は男に殴りかかっていた。
どうなったのかは憶えていないが、俺は右腕を切られ、野に伏していた。
『・・・これも柳生の仕事でのぅ』
そう言い残して男は去っていった。
ふと気付くと夜になっていた。
いつの間にか寝てしまったようだ。
「!!」
油のにおいがした。
そして次には焦げ臭いにおい。
「まずい!」
ガキが横でまだ寝ていたので揺すり起こす。
「おい!起きろ!」
「う〜ん」
「さっさと起きろ!死にたいのか!?」
ガキの頬を平手打ちする。
「いてぇ!何すんだ!」
俺は人中に突きを入れられる。
「ぐお・・・」
流石に痛い。
「こ、こんなことやってる場合じゃない!」
涙目になりながら俺はガキに言う。
「火を点けられた!早く逃げないと丸焼けになるぞ!」
「なんだって!?」
ガキはくん、と鼻でかいだ後に飛び起きて外に出ようとした。
「待て!」
ガキが外に出ると屋根の上から影が落ちてくる。
忍者だ。
「しまった!」
ガキはどうやら自分の迂闊さに気付いた。
少し考えれば解ることだ。
「ふん!」
俺はガキの頭越しに蹴りを放つ。
そして次に一歩下がって、家の中から壁をぶち抜いて首を絞める。
俺は壁にへばりついて待ち伏せしていた忍者がいるのに気がついていた。
「ぐあ!!」
この程度のことをするのはわけない。
首を絞められた忍者は白目をむいて落ちた。。
「あと八人・・・」
外には六人の忍者が構えをとって姿を現している。
そして二人が林の中に隠れている・・・これは気配で解る。
ガキは呆然として家の中から出てくる俺の姿を眺めている。
「ガキでもこれがどんなにやばい状況か解るだろう!長生きしたきゃ逃げろ!!」
ヤツらのねらいはたぶんこのガキだろう。
「あいつらのねらいは俺だ!俺が全部殺す!」
どうやらガキも解っているようだ。
だが・・・
「俺の家が焼かれたんだ。あいつらに恨みがあるのは俺だ。」
「何ぃ!?」
「それにガキは足手まといだ。手助けも必要ない。」
「く、貴様ぁ!」
言いあっていると忍者が襲ってきた。
飛び道具・・・
一、二、三・・・
八方手裏剣だ。
俺とガキは横に飛び退いてかわす。
「解った、林の二匹はお前が殺れ。」
「なんだと!」
「賢いヤツはこの場合は六より二をとるべきだってことだ。」
「俺は八人全員殺れる!」
強情なガキだ。
このガキの腕じゃ一人殺るだけでも難しい。
しょうがない・・・
一芝居うつか・・・
「くそ・・・なんだって騙されないんだ」
「?」
「こういった忍者は林を抜けたところにごろごろ仲間をおいてるもんなんだよ・・・知らないのか?」
「なんだと!?」
「お前が林を抜けたところでそいつらの気を引いてる隙に逃げようと思ったのによ・・・」
「・・・何人ぐらい居る?」
「ああ?」
「何人いるのか聞いているんだ。」
「まぁ・・・二十は下らんだろうな。」
「よし!俺が囮役になる!」
「はぁ?」
「しっかりやってやるからそいつらを片づけてさっさと逃げるんだな!」
そう言ってガキは林に入っていった。
二人がすぐに追い、残りの六人が続こうとするが俺は行く手を阻む。
「こんなにうまくいくとはな・・・」
わかりやすいガキだ・・・
二人でもガキには荷が大きすぎるかもしれないがそこまで責任は持てない。
死んだらそれまでの人間だったと言うことだ・・・
二十人というのは大嘘だ。
一人として待ち伏せしてるヤツはいないだろう。
こいつらは俺のよく知っている富士の樹海に棲む忍者だ。
特徴的な手甲をしており妙な技を使うやっかいな連中だ。
ガキはたぶんどこの忍者だか解らないはずだ。
そこにつけ込んだ作戦だ。
「ガキを狙ってるヤツがいてそいつに雇われたって訳かい・・・」
俺がそう言うか言わないかの内に忍者たちは襲ってきた。
三人同時だ!
俺は一人に当て身をし、あとの二人の攻撃は流した。
二人は飛び退き、残りの三人と合流する。
「・・・ちょいと本気を出させてもらおうか・・・」
俺は腰の得物をゆっくりと抜いた。
俺の得物は『斬馬刀』とも異名をとる『胴太貫』だ。
肉厚でも恐ろしいほどの切れ味を持つ。
俺は刀を左手に持ち、刀の柄から垂れ下がっているひもを左手首に巻き付ける・・・
「「!!」」
先ほどの行動を見て俺が何者か解ると忍者たちが一同に後ずさり、口々にある言葉を漏らす・・・
「片手技の悠玄か!?」
人は俺をそう呼んだ・・・
あとがき
なぜか書いてしまった時代劇物。
一応ファンタジーな感じにするつもりです。
時代背景とあっていない部分が多々あると思いますが、それはご了承ください(汗)
今回は「胴太貫はいつの時代の人が作ったのだろう?」と調べたりしましたが結局解らずじまいでした・・・
ちなみにこの話は一応江戸時代初期のつもりで書いています。
水無月の吉日
ある晴れた昼に・・・
途中から「何かに似てるなぁ・・・」と思いながら
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