愛犬の老化と老犬性痴呆(犬の痴呆の診断基準)





 最近はペットも人間並みに高齢化が進んできました。
これには何より、飼い主の意識の変化が大きく関わっています。
近年犬猫が、単なる家畜の延長上的生き物から、
飼い主の人生により強い結びつきを持つ、
いわゆる伴侶動物としての役割を持つようになったのです。
犬猫は、一家の寄食者から家族の一員へと格上げされて、
栄養価の高い食べ物を与えられ、
病気ともなれば手厚い医療も施されるようになりました。
 今や日本の犬猫の多くは、種として与えられた寿命を全うし、
まさに人並みの悩みも抱え込むようになりました。
日々のストレスから来る様々な疾患に始まり、
運動不足と栄養過多による肥満、
果ては糖尿病に心臓疾患と、
犬猫の疾患はそのまま飼い主の疾患と、
あたかも合わせ鏡を見るかのごとくに発現してきました。
そして、人の長命の果てにある知的機能の黄昏は、
やはり犬猫にも訪れるのではありました。
呆け、痴呆、色々言い方はあるのでしょうが、
ようは、正常に発達した知的機能が、
老齢による脳の一次的障害や、
脳以外の全身性疾患や外因によって引き起こされた、
二次的脳機能障害によって、著しい低下を来すのです。
個人的印象では、犬の場合十五歳が一つの山場のように思えますが、
症例は着実に増えていることは確かです。
 加齢による痴呆には、有効な対策のない現状ではありますが、
専門誌に興味深い記載があったのでご紹介したいと思います。

 mVm,1996/3に掲載された、「脳神経の老化の臨床診断について」
と言う論文の中に、犬の痴呆の診断基準という表が載っていました。
年を取った犬を飼っている方にとって、何かの役に立てばと思います。
論文の執筆者は、動物エムイーリサーチセンターの内野富弥先生です。
内野先生は元日本獣医畜産大学の内科学の教授で、
とも先生のモデルとなった獣医の直属の先生であり、
パイのモデルとなった獣医のクラス担任でありました。
 ちなみに東京都あきる野市に在住の方は、
伊奈動物病院の先生としてご存じかもしれません。                           


犬の痴呆の診断基準

1.食欲
(1)正常
(2)異常に食べて下痢をする
(3)異常に食べても下痢をしない



2.生活リズム
(1)正常(昼は起きていて夜は眠る)
(2)昼も夜も眠っている時間が多い
(3)昼は眠っていて、夜は徘徊する



3.歩行異常
(1)正常
(2)とぼとぼ歩き
(3)一定方向にのみ歩く(旋回も含む)



4.排泄異常
(1)正常
(2)失禁
(3)垂れ流し



5.感覚異常
(1)正常
(2)聴覚の減弱
(3)嗅覚の過敏



6.姿勢の異常
(1)正常
(2)尾と頭部が下がる
(3)異常な姿勢を取る



7.鳴き声
(1)正常
(2)単調で大きな声
(3)真夜中または異常な対象に向かって鳴く



8.感情表出
(1)正常
(2)ボディランゲージの減衰
(3)ボディランゲージの消失



9.相互関係
(1)正常
(2)他人及び他動物との相互関係が消失
(3)飼い主との相互関係が消失



10.状況判断
(1)正常
(2)異常+
(3)異常++





⇒⇒⇒⇒10.状況判断:犬がある状況に対してとる行動が、今まで学習してきたことや、
              習慣的にしてきたことに比べ、
              変化があるのかどうかを判定します。
              具体例としては、
              *通常の排泄の場所が分からない
              *飼い主の制止が効かない(怒っても分からない)
              *便などで体が汚れると、綺麗にしてもらうまで鳴き続ける
              *狭いところへはまっても、後退せずに前進しようとする、
               あるいはその場で鳴き続ける



判定

20点以下         正常
21点〜29点   痴呆予備軍
30点以上         痴呆


<文責は岡田動物病院にあります>




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