「突然の雨の中で」
私がまだ小学生だった夏休み、いつも金色の髪を後ろで束ねた、
少し不良のような少年が夕刊の配達をするようになりました。
外見のせいか、近所での彼は、あまり評判が良くなく、
恐がってる人もいました。
しかし、私はなぜか不思議にそんな彼を部屋の中から
そっと見ることが日課となっていました。
そんな夏休み最後の夕方、いつものように、彼を待っていると、
突然、大粒の雨が降りだし私はあわてて洗濯を取り込んでいる途中、
上半身は裸のままの彼がやってきました。
よく見ると彼の上着は何と自転車のカゴにつまれた新聞の上に
かぶせてあったのです。そして私の所まで新聞を届け、
私の「ありがとう」の言葉も聞かず、目もあわせず自転車を押し、
隣の家へ行くと何やらタオルらしき物を取り出したのです。
私は気になり、彼の行動を見ていると彼はスッと郵便受けの口の部分をふくと、
新聞を入れたのです。その瞬間、私の心は熱くなりました。
そんな彼の姿を見るまで、何も知らず、心のどこかで彼を
”疑いの目”で見ていた自分に気づきました。
これほど、自分を悲しく、寂しい人間だと思ったことはありませんでした。
新聞。それは多くの事を人々に伝えるという働きだけでなく、
私たち人間関係の間で人からの”心”という大切なものを教えてくれる、
一番身近なものであると思います。
あの夏以来、一度も会ったことはないが、この季節になるとあの日の彼の姿、
あの日の私の心の動き、あの日のすべてを、思い出さずに入られません。
社団法人日本新聞協会
第3回新聞配達に関するはがきエッセーコンテスト
最優秀作 大分市 M.A.さん 20歳
小学生の頃の思い出をずっと持ち続ける20歳のM.A.さん。
見かけ不良の少年の”心”。
「新聞は、私たち人間関係の間で人からの”心”という大切な物を教えてくれる」
というM.A.さんの言葉。 |
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