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「KANOM ロワイヤル」 第九章 戦場と化す学校 〜校庭〜

 ついに戦場は学校へ移った。
 そして、祐一を想う者がここに集った。
 その想いは様々だが・・共通な想いは一つ。
 祐一と結ばれること・・・。
 死を賭した戦いの果てに彼女たちがみるものは・・。
 激化する戦いに誰が生き残るのだろうか・・。
                        
第九章 戦場と化す学校 〜校庭〜
 ざあーっ。夜の冷たい風が校庭の砂を巻上げた。
「よっと・・・。」
 可愛い掛け声とともに裏門近くのフェンスを飛び越えて佐祐理が校庭に
降り立った。
「あはは・・。正門を馬鹿正直に見張ってはいないと思ったけど、あっさり見
つかっちゃいましたね。」
佐祐理の前に美汐・舞と秋子・真琴がそれぞれペアで現れた。
「何時の間に舞さんと美汐さん仲良くなったのです?」
 舞と美汐がいっしょに行動してるのが不思議なのか佐祐理は丁寧な言葉
で問い掛けた。
「佐祐理が私を騙すからいっしょに行動してる。」
 舞がぼそっとつぶやいた。
「まあそういうわけです。倉田先輩。」
 美汐が鋭い目付きで佐祐理を睨み付けた。
「名雪とあゆちゃんはここにはいないようね・・。正門かしら?二人とも思考が
まっすぐなところがあるから、ちょっと将来が心配ね。」
 秋子がのんびりとした口調でつぶやいた。
「まあ、でも栞ちゃんみたいに漁夫の利をねらおうと隠れてるというのもどうか
と思うけど。」
「そんなこという人嫌いです。病み上がりなんだからちょっとぐらいハンデがあっ
てもいいじゃないですか。」
 フェンス脇の木の影から栞が姿を現した。
「あはは・・、また一人出てきたですか。たいへんですね・・。」
 佐祐理は、全然大変そうじゃない口調で笑った。
「あなた佐祐理じゃない。」
 舞は光の剣を出して佐祐理に向けた。
「あはは・・、なんでそんなこといいます?」
「だって私のこと舞と呼ばずに舞さんと呼んだ。」
 佐祐理の顔から笑みが消えた。
「ふうっ・・、やっぱり姉さんの真似は難しいね・・。」
 佐祐理の姿が霞んでいき一弥へと変貌していった。
「佐祐理と人形はどこ?」
 一弥は、にやりと微笑んだ。
「僕はおとりさ・・もう今ごろ祐一さんの所に着いてるよ。」
 舞たちの表情に戦慄が走った。
「これで祐一さんの恋人の座はお姉ちゃんのものだね。」
 一弥は、得意げに言い放った。
「ふふっ、佐祐理ちゃんといっしょで嘘がうまいのね。」
 秋子は、慈愛の笑みを浮かべた。
「なんで嘘って決め付けるのさ。」
 一弥が秋子にくってかかった。
「ふふっ、真琴ちゃんから佐祐理ちゃんの力については聞いたわ。佐祐理ちゃ
んの力はあなたがいればこその力。ならば佐祐理ちゃんが単独行動するのは
正面突破より愚かなことだと思うのだけど。」
 一弥は、悔しそうに睨み付けた。
「多分だけどさっきの台詞もばれるようにわざとさん付けしたのでしょう?最初の
嘘がばれることで次の嘘をいかにも本当っぽくみせるために・・・。やっぱり中々の
策士ね、佐祐理ちゃんは。」
「くっ・・・だが一つだけ間違ってる。ばれた以上一気にいく!」
 一弥は、思いつめた表情で微笑んだ。
「いきます!憑依合体!オーバーソウル発動!」
 一弥と重なるように佐祐理の声が響いた。
 そして光とともに一弥の姿が消え佐祐理の姿が現れた。
「魔女っ娘さゆりん!いざ、見参。あはは・・。」
 そう、一弥は佐祐理を自分の姿で隠し、さらに自分の姿を佐祐理の姿で隠すと
いう二重の偽装をしていたのだった。
「まじかるシュート!」
 佐祐理は校舎に向けて光を放った。
 さらにそれを追いかけるように佐祐理が走り出した。
「真琴ちゃん!」
 秋子が真琴に声をかけて、真琴が肯いた。
「九つの法力の一つ、光の力・・。」
 そう呟くと真琴が光に包まれた。
「川澄先輩は後ろから!」
 声をかけると同時に美汐は走り出していた。
 そして、あっという間に佐祐理の前に立ちはだかった。
 同時に光の玉と化した真琴が美汐の横に飛んできて、光の玉から真琴の姿とな
り同じく立ちはだかった。
「はあっ!」
佐祐理が足を止めると同時に舞が後ろから剣を上段に構え飛び掛かった。
「あっ!」
舞の剣を避けようとした佐祐理は避けきれず、肩に剣がかすり服が斬れかすかに
血が飛び散った。
 そして、その痛みに佐祐理は、人形を手放してしまった。
 人形は、ころころと転がりそこに真琴と美汐が駆け寄った。
 その瞬間、栞の糸が人形を持ち去った。
 人形を追いかけようと立ち上がった佐祐理に舞が立ちはだかった。
「えっ、舞!?人形はあっちだけど・・。」
「まず佐祐理倒す。もう騙されるのは嫌。」
 佐祐理は、思わず手で顔を覆った。
「舞ったら変なところで執念深いんだから・・。」
 佐祐理からため息が漏れた。
「人形は取り戻す!」
 真琴の周りにちりちりと火花が散った。
「真琴ちゃん!それは・・。」
 秋子の止める間もなく真琴は栞の糸に対して雷を落とした。
 糸は切れ人形が地面を転がった。
「あっ、もう・・・・。そんな大きな音を立てたら名雪やあゆちゃんまで・・ってもう遅
いわね。」
 あゆが名雪をだっこして空中を飛んでいた。
そして、あゆは名雪を人形の前に放り投げた。
「いつのまにかあゆと名雪ちゃん、共同戦線はってるし・・、雪!」
 人形を取ろうとした名雪の前に雪が立ちはだかった。
 正門で待っていた名雪とあゆは、さすがにこの戦いを一人で制するのは難しい
と判断して手を組んでいたのだ。
「あはは・・みんな、タッグを組んでるみたいですね・・。」
 佐祐理は、舞から逃げながら視線を栞に向けた。
 その意図を読み取った栞は軽く頷いた。
 この瞬間、佐祐理・栞の共同戦線が張られたのである。
「まじかるシュート!」
 佐祐理は、人形に向けて光を放った。
 光は人形の近くの地面をえぐり人形は空中へと飛び上がった。
 そして、それをすばやく栞の糸がからめとった。
 佐祐理と栞は一言も喋らずにこのコンビネーションを目だけで相手の意図を読
み取りやってのけたのだ。
「まじかるさゆりん、奥義の一つ。光舞乱舞!」
 すかさず佐祐理が、ステッキを振るとあたりが光に包まれた。
 そして、名雪たちが目を開けたとき佐祐理と栞の二人の姿がいなくなっていた、

                                   続く・・・・・・のですぅ?
予告
 佐祐理と栞の最強タッグが張り巡らせた罠。
 古ぼけた体育館で舞と美汐の叫びがこだまする。
 知力と体力の戦いが待つ先には何があるのか。
 そして、誰が生き残っているのだろうか・・。
 死の足音が彼女達にゆっくりと忍び寄っていた。
                               第十章 戦場と化す学校 〜体育館〜

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