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「KANOM ロワイヤル」 第八章 最後の参加者 美汐

 同じ想いをして欲しくなかった。
 だから最初は厳しい言葉を使った。
 でも、先輩はそれを乗り越えて奇跡を見せてくれた。
 私なんかじゃ先輩とはつりあわない・・・。
 そう思っていた・・。
 だから告白することができなかった・・・。
 それに先輩の周りには素敵な女の人がたくさんいた。
 でも、諦められなかった。
 どうしても先輩のことが好きで好きでたまらなかった。
 そして、知ってしまった。あの人形を持ったものが先輩と付き合えるって。
 あの人形を持って告白すれば私と付き合ってくれるかもしれないことを。
 ならばあの人形を手に入れよう。たとえどんな事をしても・・・・・。
                        
第八章 最後の参加者 美汐
 先輩・・。真琴・・・。
 あの二人は奇跡を見せてくれた・・。
 真琴にとっても先輩は大事な人・・。
 知っている・・それは、見るだけでわかる・・。
 でも、私も先輩のことを・・。
 この想いをあきらめられなかった。
 絶対譲れない・・。だから私は戦う・・、私の名にかけて。

「見えてきたわ・・」 
 視界の縁に学校を認めて秋子は柔らかく微笑んだ。
 しかしすぐに訝しげな表情をした。
「誰かいるわね・・・でもあまり感じたことない気配だけど・・。」
 秋子の前にゆっくりと美汐が姿を現した。
「気配を完全に消していたのですが・・さすがですね。」
「あら、美汐ちゃん・・。なぜ・・ここに。」
 考えていなかった少女の出現に秋子はちょっと驚いていた。
「私もこの戦いに参加させてもらおうと思いまして、魔聖母秋子さん・・。」
「その名を知ってると言うことはあなたも闇の住人だったの」
 美汐はゆっくり頷いた。
「あなたの力は聞いています・・・・だから、最初から本気でいきます。」
 美汐は、人差し指をちょっと噛みそこから流れた血で頬に線を引いた。
「シャドゥスキル・・!失われたとされる幻の拳・・。」
「そう・・私は最後の継承者・・。」
 美汐はゆらりと身体を左右に振った。
「我は最強・・我が拳に砕けぬものなし・・。」
 美汐の表情が能面のようになった。
「一種の催眠状態となり限界以上の力を引き出す・・噂通りのようですね。」
 秋子は、すかさず雪を呼び出した。
「いきます・・・!」
 美汐が雪に突っ込んだ。
 雪はすかさず美汐に拳を放った。
 しかし美汐はそれを軽く避け雪に蹴りをはなった。
 風が唸るような蹴りは雪を粉々に砕いた。
「さすがに凄い蹴りですね・・でも、雪はそれでは倒せないわ。」
 雪は、秋子の言う通りすかさず元の形に戻った。
「この程度で倒せるとは思ってません。」 
 美汐の声が秋子のすぐ後ろから聞こえた。
 秋子が振り向く前に美汐は秋子から人形を奪っていた。
「でも倒さなくてもその間に人形を奪えばいいだけですから・・・。」
 美汐は、大事そうに人形を抱えようとして表情を変えた。
「これは・・・。」
 美汐は拳に力を入れた・・。
 人形は砕けて花びらと化して散った。
「あら・・よく気付きましたね。」
「微かに花の匂いがしたから・・・私の五感は常人より鍛えてありますから。」
 秋子は、にっこりとした。
「ふふっ・・・、凄いですね。今度は雪の本気を見せてあげます。」
 雪が一瞬消えたかと思うと美汐の前に来ていた。
「ダイアモンドダスト!」
 雪の絶対零度の拳が美汐に襲いかかった。
 美汐の身体が一気に凍り付く。、
 
 可愛かった・・。
 大事だった・・・。
 だからいなくなったとき・・・失ったときは・・とても悲しかった。
 だから他の人にもこんな想いをさせたくなかった・・。
 だから忠告した・・。
 なのに・・先輩は・・。
 そんな先輩に強く惹かれた・・。
 だって私に出来なかったことを見せてくれたのだから・・。
 私に微笑む姿が素敵だったから・・。
 この想い・・誰にも負けない・・!!

 美汐がかっと目を開くと美汐を包んでいた氷が砕け散った。
「私は負けない・・!」 
 美汐が雪の横をすり抜けて秋子に突っ込む。
 そして、美汐の拳が秋子に襲いかかる。
 しかし、秋子は余裕の笑みでそれをかわした。
「ふふっ・・さっきはわざととられたけど今度はそうはいきません。」
「なっ・・。」
「私が雪より弱いとは限りませんよ。」
 秋子の気が美汐を圧倒する。
「さすが・・魔聖母と呼ばれるだけはあると言うことですね・・。」
「!!」
 美汐と秋子の表情が変わった。
 その瞬間二人の足下から網のようなものがのびて二人を包み込んだ。
 いや美汐の方は、素早く跳んでかわしていた。
「一人逃がしてしまいましたか・・。そんなことする人嫌いです。」
 栞がゆっくりと現れた。
「あら一人だけでないですよ。」
 とらえられていた秋子が花びらとなって砕けた。
 そして、暗闇から秋子が現れた。
 栞が苦々しい表情をした。
「この程度の罠ではダメと言うことですか・・。」
 三人は、互いに牽制しつつ視線をかわした。
「あっ・・・。」
 秋子の懐から人形がぽろっと落ちた。
 そして、とてとてと一人で歩き出した・・。
「なっ・・。」
 さすがに三人の表情が固まった。
「あはは・・さあ来て・・。」
 人形が宙を飛んだ。
 そして落ちた先には佐由理がいた。
「一弥、ご苦労様・・。」
 不意に一弥の姿が現れた。
「さすがに人形に取り憑いているのは疲れたよ。」
 そう、一弥はずっと人形に取り憑いていて佐由理をここに誘導したのだ。
「あら・・なかなか策士ですわね。でも、人形は返してもらうわ。」
 佐由理は、満面の笑みでちらっと後ろに視線を飛ばした。
 佐由理の視線の先には、猪突猛進に突っ込んでくる真琴の姿があった。
「佐由理!」
 秋子は真琴の姿を見つけ、その様子に声をかけようとした。
「真琴ちゃん・・!!だめっ・・。」
 秋子の言葉も聞かず真琴は辺り一面に雷を落とした。
 辺り一面に砂埃があがり視界を塞いだ。
「あっ・・・。」
 そして、視界が良好になったときには秋子一人が立っていた。
 で、佐由理と美汐の姿がなかった。
 栞は雷の直撃を喰らったのか地面に倒れていた。
「ふふっ・・真琴ちゃんの行動まで計算済みというわけ。これは強敵だわ。」

 佐由理は一人走っていた。
「ふう・・なんとかまけたかしら。」
「そうはいかないですよ。」
 佐由理の前に美汐が現れた。
「あははっ・・・どうやって追ってきたのです。」
「微かに足音が聞こえたから・・。私の五感は人一倍ですから。」
 佐由理は驚いたように微笑んだ。
「そうですか・・それは凄いですね。」
 そう言いつつ佐由理は美汐とは違う方を見ていた。
「舞・・。」
 ゆっくりと舞が姿を現した・・。
「佐由理・・その人形を渡して・・。佐由理とは戦いたくない・・・。」
 舞は厳しい表情で佐由理に告げた。
「あはは・・でも、その前にそこの後輩さんが舞と戦いたがっているみたい
ですよ。」
「えっ。」
 いきなり話を振られて美汐は目を白黒させた。
「邪魔する先に倒す!」
 舞は空中に跳び美汐に襲いかかった。
「ちょ、ちょっと川澄先輩・・!」
 美汐は舞の素早い攻撃をかわしつつ舞に話しかけようとした。
「ま、待ってください・・倉田先輩の口車に乗っては・・。」
 と言って美汐は佐由理の方に視線を飛ばした。
 しかし、そこには佐由理の姿はなかった・・。
「やられたわね・・。川澄先輩・・倉田先輩にいっぱい食わされましたね。」
「佐由理・・許さない・・。」
 舞は微妙に表情を変えた。
「そうだ、川澄先輩・・私と手を組みませんか?」
 舞は訝しげな表情を見せた。
「だって川澄先輩は倉田先輩にいいように操られそうですから。私も倉田先輩ほど
頭は良くないですが川澄先輩よりはましだと思いますけど。」
 舞は怒ったように軽く美汐にチョップを入れた。
「いたっ・・。でもいい話だと思いますが。」
 舞は少し考えて、そして頷いた。

「真琴ちやん、ダメじゃない。むやみやたらと攻撃すればいいというものではないで
すよ。」
 真琴は秋子に諭されしゅんとなった。
「ごめんなさい・・。」
 秋子には素直な真琴は、謝った。
「いいのよ・・。次回から気をつけてくれれば。」
 ゆっくりと秋子は真琴を抱きしめた。
「真琴ちゃん・・私と組まないかしら?どうも関わってる人達が多すぎて私だけでは
対処できないわ。」
 暖かい胸に包まれながら真琴はゆっくりと頷くのであった。

                                   続く・・・・・・のですか?
予告
 ついに戦場は学校へ移った。
 そして、祐一を想う者がここに集った。
 その想いは様々だが・・共通な想いは一つ。
 祐一と結ばれること・・・。
 死を賭した戦いの果てに彼女たちがみるものは・・。
 激化する戦いに誰が生き残るのだろうか・・。
                               第九章 戦場と化す学校 〜校庭〜

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