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「KANOM ロワイヤル」 第五章 光放つもの、舞

 祐一と別れたくなかった・・。
 魔物はそのための嘘だった・・。
 でも私はそれを現実にしてしまった。
 祐一はそんな私を救ってくれた。
 せっかくまた遭えたのに・・心が通じたのに・・もう二度と祐一と別れたくない・・。
 絶対に・・そのためなら私は・・!!

第五章 光放つもの、舞


 ずきん・・。
 頭の痛みに舞は気がついた。
 頭からはうっすらと血が流れていた・・。
「痛い・・・。」
 舞は別に痛そうもない表情でそう呟いた・・。

 舞は剣を探して見回したが、あるのは粉々に砕けた剣の破片だけだった。
「・・・・・・・・・」
 舞はしばらく破片を見ていたが、適当な木の棒を見つけてそれをもって
学校の方へと歩き出した・・。

「人形を見つけないと・・。」
 舞は、いまだ人形を名雪が持っていると思っていた。

はぁはぁ・・・。・
 相次ぐ連戦で栞は明らかに疲れた表情をしていた。
「早く・・他の人と出会う前に学校に行かなくては・・。」
 栞はもう戦いたくなかった・・。
 これ以上人を傷つけたくなかったのだ・・。
 だが、それは楽観的な希望に過ぎず現実は厳しく目の前に舞が
歩いているのが見えた。
 栞はとっさに人形を隠した・・。

「確か栞・・?名雪を見なかった?」
 舞の問いかけに栞は首を振った。
 舞は一礼すると栞に背を向けて歩き出した・・。

 舞さんも人形狙っている!
 栞は。一瞬そう感じた・・。
 だが、それが良くなかった。その想いが一瞬殺気となったからだ。
 舞は、殺気を感じて栞に振り向いた・・。

「もしかして人形がどこなのか知ってる?」
 栞は激しく首を振った。そして思わず背中に回して手をより強く握った。
「後ろに隠してるのは何・・?」
「そ、それは・・・、舞さん!ごめんなさいです!」
 栞は、先手必勝とばかりに糸を繰り出した。

 舞は、軽いステップでそれを交わした・・。
「人形・・それを・・・・渡して・・!」
「嫌です。」
 続けざまに糸を放つ栞。舞は思わず持ってた棒でそれを跳ね返そうとしたが
あっさりと棒は細切れにされた。
「そんなのじや、私の糸は防げません。」
 華麗な動きで糸をかわすがさすがの舞も全ては避けきれず糸にはじき飛ばさ
れて地面を転がった。

「つっ・・!剣さえ・・。」
 舞は、剣が欲しかった・・。でも今剣はない・・。
 どうすればいい?剣が・・剣が欲しい!!!

 舞の想いは、光と化した!
 ふと気付くと舞の手には光輝く剣が握られていた・・。
「そうか・・魔物作れるなら剣も作れるのか・・。」

「そんなこけおどしには負けません・・!!」
 舞に四方八方から糸が襲いかかった。
 しゃらん。まるでそんな音がしそうなほど華麗な剣筋だった。
 一瞬の間に今度は糸の方が細切れにされた・・。

 そして、舞は一瞬で空中に跳んだ。
 そして一気に栞に襲いかかった。
 恐るべし身体能力である。
 身体能力という点で言えば、一般人にも劣る栞に剣を避けるすべは
ないようにみえたが、栞は糸で自分を浮かし後ろへジャンプして剣を避けた。
 舞は、足がついた瞬間さらに前へと跳んだ。そして剣を突く形で栞へと向けた。
「!!!」
 栞は、剣よりも早く後ろへ跳んだ。

 祐一は渡さない・・・。
 誰にも・・誰にも・・それが佐祐理だろうが・・
 絶対に渡さない・・・
 だって私の唯一の人なのだから・・

 舞の想いが剣に宿ったか、剣自体がぐんぐんと延びて栞の糸の速度を超え
栞を吹き飛ばした。
「きゃあぁっ・・・。」
 栞は地面にたたきつけられ息が一瞬止まった。
「勝負あった・・。人形を渡して・・。」

「意志で作った剣なら伸縮自在なのですね・・。でも意志の力なら私も負けません・・。」
 栞の目が月夜に光る。
 舞の周りの地面に散らばっていて糸の破片が浮かび上がり舞を包み込んで
舞を締め付けた・・。
「形勢逆転です・・。」
 栞は、糸に包まれた舞を遠くに放り投げた・・。

「はぁ・・はぁ・・・。」
 栞は人形を持って歩き出そうとしたが、さすがに心体共に限界だった・・。
「あっ・・。」
 栞は地面に倒れ、手から人形が落ちて地面を転がった。

 暗闇の中から暗闇に不釣り合いな歳の少年が現れた。
 でもなぜかその少年は闇に似合う感じがした。
 少年は、人形を拾うとにっこりと微笑み闇へと消えていった・・。

                                    続く・・・・・・ですかぁ?
予告
弟を失って寂しかった・・。
でも舞と出会った・・。心の寂しさが埋まるのを感じた。
そして、祐一さんと出会った。
祐一さんは私の寂しさに気づき優しく包み込んでくれた・・。
もう祐一さんなしの生活など考えられない・・。
でも・・舞も祐一さんと結ばれていた・・。さらに他の人とも・・。
私は泣いた・・。自分だけの祐一さんでなかったことに・・。
舞の想いも私に負けないものだと知ったことに・・。
でももう泣かない・・・そして負けない・・・祐一さんを私のものにする・・・・。
たとえ舞と争う事になろうとも・・。
                 第六章 常笑の少女、佐祐理

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