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「KANOM ロワイヤル」 第四章 神の使い、真琴

 捨てられてただ待っているだけの日々。
 憎い・・そう考えたこともあった。
 でも本当は寂しかっただけ・・ただ、彼に会いたかっただけ。
 短い間の邂逅・・それが・・自然の掟。
 でも・・私の想いは天に通じた・・。もっと彼の傍にいていいと・・。
 だからもう私は、彼のそばを離れない・・・。

第四章 神の使い、真琴

 栞は、人形を小脇に抱え早歩きで学校に向かっていた。
 一見とても無防備に見える彼女だが、その実糸の結界で守られていた。
 一瞬の油断も許されない・・栞にはそれがわかっていたのだ・・。

「それを渡して!」
 正々堂々と栞の前に現れたのは真琴だった。

「真琴ちゃん・・・・。そこをどいてください・・。」
 栞は、ゆっくりと糸を全身に展開させた。
 明らかに威嚇の意図が見えていた。

「ふん・・面白い力ね。でも、私の力も負けていないわよ・・。」
 真琴の目が妖しく光る。
「何をしようというの・・・。」
 栞は、その異様さから思わず一歩下がった。
 その瞬間、栞のいた場所に炎の鞭が通り過ぎた。
「あなたが糸を操るというなら私は炎を操れるのよ・・。」
 そういうと真琴の周りに炎がまるで蛇のように渦巻いた。
「そう・・・でも私の糸も馬鹿にしない方がいいと思います。この糸は色々な
材質の物を編み込んでいて色々な特質を持ってますの・・。」

 消える・・・私の・・存在が消える・・。
 もういいよね・・・祐一にまた、会えたのだから・・

 でも・・・もっと祐一といっしょにいたい・・・
 消えるのは嫌・・・寂しいのは嫌・・

 久方ぶりようのぉ・・・・
 全くこれだけの想いはひさしぶりじゃ・・
 ほんに、ほんに・・・

 誰・・・?
 私に話しかけるのは誰・・・?

 我らは天つ神・・・古来から中つ国を見守るもの・・

 神様・・・?

 まあ・・そうと思ってくれていい・・。
 汝・・我らの使いにならぬか・・・・
 昔は我らの使いとなるべきものはたくさんいた・・・・
 だがいまや・・その資格あるものはいなくなって久しい・・・

 でも・・私はもう消える・・

 返事は簡潔にせよ・・
 我らの使いとなり・・この世界に我らの意志を伝えるか・・
 このまま消えるかだ・・

 使いになれば助かるの・・?なら私は何にでもなる・・
 もう一度、祐一に会えるなら・・

 ならば・・力を与えよう・・・
 ならば・・力を与えよう・・・
 我ら天つ神の力を・・
 汝は、これから我らの使い、九尾の狐となるがよい・・・

「私は天つ神の使い・・・・・。炎を自在に操る九尾の狐になったのよ!」
 そう叫んだ瞬間、炎が渦巻き栞に鞭となって襲いかかった。

「九尾の狐・・なるほど・・・これがその力・・。でも攻撃が単調です・・。」
 栞は、炎を軌跡を読み最低限の動きでかわした。
 外れた炎は地面にぼっかりとおおきな穴が空いた。

「避けたわね・・・。もう、あたりなさいよ!」
 真琴は、癇癪を起こし次々と炎を乱発した。
「だから、単調だといってるのに・・。」 
 栞は、流れるような動きで炎をかわしていった。
「もうっ、なんで避けるのよ・・。」
「こんなに地面を穴だらけにどうしますの?」
 栞はくすっ笑った。

「今度はこっちの番です。」
 栞の糸が真琴に襲いかかった。
 だが炎が糸にからまりつき糸を溶かした・・。
「糸じゃ燃えるのは当たり前よね・・。」
「そうね・・。お互い手詰まりですね・・。」

 ふと真琴の顔が落ち着いた物に変わった。
「穴だらけにしたのは・・・・理由があるのよ。」
「えっ・・?」
 真琴が手を大きく振ると地面の穴から炎が一斉に吹き出してきて
栞に襲いかかった・・。

「きゃっ・・・!」
 栞はストールで全身をかばったがそれでも栞は炎に吹き飛ばされて
地面を転がった・・。

「ふふん、どうやら最後に勝つのは私のようね・・。」
 真琴は自慢げに微笑んだ。
「さあ、人形を渡して・・。」
 栞はうつむいて首を激しく振った。
「なら力づくで奪うのみ!」
 真琴は、とどめとばかりに炎を栞に打ち込んだ。
 栞は、炎に向けて糸を放った。
「無駄よ・・糸なんか解けて・・、えっ!」
 その糸は炎にも溶けず、炎を突き抜けて真琴に襲いかかった。
「きゃっ!!!」
 今度は真琴の方が地面を転がる事になった。
「なぜ・・・?」
「さっき言ったはずです。色々な材質の糸を織り込んでいると・・。
耐熱強化した糸も混ぜてあります。」
「手詰まりといったのに・・・。」
 栞はくすっと微笑んだ。
「そんな事言う人嫌いです。切り札は最後までとっておくのが基本ですし。」
 栞は真琴に背を向け学校の方に向かおうとした。

「嫌・・負けるなんて嫌・・・。祐一とまた祐一と一緒に・・ずっと暮らすの・・。」
 真琴は、痺れる身体を振り絞り立ち上がった。
 その瞳からはうっすらと涙がにじんでいた。

「!!!!」
 その瞬間、真琴の背後から糸が真琴の脚を貫いた。
 真琴の脚から血が吹き出て、真琴は声にならない悲鳴を上げた。
「じっとしていてください・・。これ以上は傷つけたくないので・・。」
 栞は真琴の方を振り向こうとはせず、言葉だけ投げかけた・・。

 真琴は絶望に顔を染めながら気絶した・・。

                                          続く・・・・・・といいなぁ?
予告
祐一と別れたくなかった・・・
魔物はそのための嘘だった・・・
でも私はそれを現実にしてしまった・・。
祐一はそんな私を救ってくれた・・
せっかくまた遭えたのに・・心が通じたのに・・もう二度と祐一と別れたくない・・。
絶対に別れたくない・・。そのためなら私は・・!!
                 第五章 光放つもの、舞

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