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「KANOM ロワイヤル」 第三章 死を超えたもの、栞

 次の誕生日まで生きられない・・。
 そう言われた。
 でも私は助かった・・全ては祐一さんのために・・。
 だから私は祐一さんのためなら死ぬことなど怖くない。
 死ぬことより祐一さんを失うことの方がずっと怖いのだから・・。

第三章 死を超えたもの、栞

 あゆは学校へ向けて必死に走っていた。
 飛んでいくことも出来たのだが、だがそれは誰かに見つかりやすいという欠点もあり
あゆは出来る限り裏通りを通って学校へ向かっていた。

 たったっ、あゆの足音だけが静粛な街に響き渡る・・・。
 暗闇の中いるのはあゆ一人・・そんな錯覚を起こさせる・・。

 ひゅん。

 ふいにあゆの頬に痛みが走った。
 いきなりあゆの頬から何かに斬られたごとく血を流していた。

「だれ!!」
 あゆは暗闇に向けて怒鳴った。
「その人形を渡してください・・。」
 暗闇から栞の声が響いた。反響をうまく利用しているのかあゆには栞の居場所が
よくわからなかった。
「ボクにはこれが必要なの!」
 無論あゆの返事は否定だった。
「そんな事言う人嫌いです・・。だって私にとっても絶対必要なものだから・・。」

 あゆは辛そうな表情を浮かべたが、すぐに気を取り直しスタンド能力で分身した。
「!!」
 暗闇から栞の驚愕が伝わってきた。
「ごめんね!ここは逃げさせてもらう・・。」
 あゆの分身はてんでばらばらの方向に逃げようとした。
「逃がしません・・。」 
 ひゅん。暗闇から糸のようなものが無数に延びてあゆの分身に襲いかかった。
 そのうちの一つがあゆの本体にあたりあゆは吹き飛ばされた・・。

「人形を渡してください・・。」
 暗闇から栞が現れた。その顔色はまるで死人のような土色をしていた。
「そのストールが・・!」
 栞のストールがほどけてそこから延びた糸が無数にうねっていた。
「あゆさん・・あなたも特別な力を使うようですが・・私には勝てません・・。」
「その力はスタンド・・いえそうではないみたいだけど・・。」

 君の身体はもう長くない・・。
 今の治療では直せないだろう・・。
 だがここに特殊な新薬がある・・これを飲めば・・。

 飲めば・・助かるのですか・・

 ああ・・・いや・・助かるというのはもしかすると語弊があるかもしれない・・
 なぜならこれは身体を治すものでなく精神の力を増幅するものだからだ・・

 精神・・の・・・増幅・・・

 ああ、これは精神を増幅させその力で動かなくなった体を動かそうというものだ。
 まあ一種の超能力だと思ってくれていい。
 君の身体はもう治療できない・・・いずれ動けなくなるだろう・・だが・・精神の力を
増幅させて無理矢理に動かすことなら出来るかもしれない・・・・

 ゾンビみたいなものなのですか・・

 嫌な言い方だね・・。まあそうとも言えなくはないが・・・。嫌かね?

 いいえ・・死ぬのは怖くないけど祐一さんに会えなくなるのは嫌・・、それだけは嫌・・

 では、飲むのだね。その前にこの書類に・・・・

 「私は本当はもう死んでいるのかもしれない・・。でも私はまだ動いている・・
祐一さんと話せるし・・抱き合うことも出来る・・。だから祐一さんを失いたくない。
私の意志の力は祐一さんへの想い!今ここにいる私は全て祐一さんだけのため
だけに存在しているのだから!!!!」

 あゆは、そう栞が叫んだ瞬間を狙い空へと飛翔した。
 一瞬あゆの背中に痛みが走ったが無視して空へと飛んでいった。
「逃がしません!」 
 栞のストールが四方八方に延びてあゆを包み込むように延びた。
「捕まらない、ボクは!」
 あゆはその隙間をかいくぐるように縦横無尽に飛翔した。

 ストールとあゆの追いかけっこは十分にも及び結果としてあゆは、民家の軒下
に追いつめられた。
「さあ、もう逃げられませんよ・・。」
「それはどうかな・・。」
 あゆはにっこり笑った。
 そしてゆっくり消えていった。

「幻影・・・・。」
 栞は特に落胆した様子もなく空へと振り返った。
 
「なんとか今回もうまく逃げれたみたい・・。」
 あゆは力つきたのか道路に座り込んだ・・。

「残念ですが・・逃がしません・・。」
 いつの間にか目の前に栞がいた。
「なぜ・・ここが・・!」
 栞はあゆの背中を指さした。
「えっ・・。」
 背中を振り向くと一本の糸が背中に刺さっていた。
「逃げるときに糸を付けておきました・・・。」
 栞が手を伸ばすと糸が一斉にあゆに襲いかかりあゆは吹き飛ばされた。
 そして人形は栞の手へとわたっていた。

                                          続く・・・・・・のかな?かな?
予告
捨てられた事が憎かったのではない・・。
ただ・・寂しかった・・会いたかった・・・。
人になれる期間は短い・・でも私は克服した・・。
全ては祐一のために・・。
                 第四章 神の使い、真琴

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