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「KANOM ロワイヤル」 最終章 戦場と化す学校 〜中庭〜

 激しい戦いで次々と倒れる少女達。
 強い想いと奥義が交差する中、誰が最後に残るのであろうか・・。
 長き戦いの決着が今つけられようとしていた・・・。

 最終章 戦場と化す学校 〜中庭〜

 長いこと枯れていてすでにぼろぼろな噴水のわきで二人は立っていた。
 奥の校舎にたどり着くためにはここを通らなくてはならない。
 だから二人は待つ。
 人形を持った栞を。

 満身創痍の栞は、二人を木陰からみていた。
 「この身体であの二人を相手にするのは難しいですね・・。どうしましょうか・・。」
 木枯らしが強く吹いた。思わず二人のうち小柄の方が背の高いほうに抱きついた。
 「真琴ちゃんは、甘えん坊ね。」
 秋子は聖母のごとく微笑みを浮かべた。
 「栞達はいつ、くる?」
 秋子は思わせぶりな笑みで答えた。
 「もう来てるわよ・・。」
 栞はその言葉で気付いた。もう一人が見えないことに・・。
 秋子の操りし人形・雪の姿が見えないことに。
 「あの人形は・・!」
 「ここです。」
 栞は背中の方から聞こえた声に背筋が凍り付いた。
 「何時の間に・・。」
 「私たちがここにいればきっと私たちを伺うはず・・。ならばその背後をつくの
はたやすい。」
 秋子は唄うように呟いた。
 雪が栞に対して背後から抱きついた。
 あっという間に栞が冷気で固まっていく。
 「そんな攻撃甘いです。」
 だがそれは糸で作られた人形だった。
 「ふふっ、そのパターンはもう飽きたわ。雪!ダイアモンドストリームよ。」
 秋子は栞の動きを完全に読んでおり雪に止めの指示を出した。
 雪の手から冷気が渦となり全ての糸に絡まりそして糸を伝って冷気が
縦横無尽に走り回る。
 「あっ!」
 栞は自分の持っている糸を手放そうとしたが、それは時、既に遅く伝わってくる
冷気にからめとられ栞は氷の彫像と化した。
 「一時間もすれば氷が溶けて出られるわ。その時はもう祐一さんは私のもの
ですが・・。」

 しゅん!!
 一瞬の風が栞の前を通りすぎた。
 「あらっ・・もう共同戦線は破棄かしら?」
 風は一瞬で人形を奪った真琴だった。
 「秋子さんが相手でも祐一は渡せない!!」
 真琴は九尾の狐の姿になった。
 そして、どこからともなく声が響く。

 九尾の狐は、九つの法力を持つ。その力、絶大なり。
 一つ、空の力。自在に飛翔する力。
 一つ、雷の力。雷雲を呼び雷を操る力。
 一つ、火の力。自在に炎を操る力。
 一つ、水の力。地面の下の水脈から水を呼び、自在に操る力。
 一つ、地の力。大地を割る力。
 一つ、風の力。竜巻を起こし操る力。
 一つ、光の力。高速に移動する力。

 ここで声は少し間を置いた。
 真琴と秋子の間に突き刺さるような緊張感が漂っていた。

 一つ、闇の力。視力を奪い相手を無力と化す力。

 こーん!その言葉とともに真琴は鋭く鳴いた。
 すると秋子は闇に包まれた。
 「眼が・・・。」
 秋子は闇に包まれ視力を一時的に失ったのを感じた。
 「ふふっ・・、こんな攻撃じゃだめよ・・これでは私を倒せないわ。」
 その台詞はなぜかかなしげだった。まるで自分を倒して欲しいといわん
ばかりに。
 秋子は見えていないのにまるで見えてるがごとく真琴に肉薄した。
 「私は子供の頃から殺しの訓練を受けていたわ。闇に生きるためにね・・。
だから闇は何の障害にもならない!」
 秋子の拳が真琴を吹き飛ばした。
 その時再び声が響く。

 一つ、神の力。全てを凌駕し全てを滅ぼす力。

 こーーーーーーーん!
 狐の身体が眩いばかりに輝いた。
 まるで地上に太陽が降り立ったかのごとく。
 全てが光へと飲み込まれていった。
 全てが・・・。

 そして、秋子は倒れ雪は消えていた。
 その中、元の姿に戻った真琴がボロボロの身体で立っていた。
 「これで裕一は私のもの・・。」
 真琴が辛そうに呟いたとき、ふと気配を感じた。
 目の前にあゆが立っていた。
 そして、あゆは真琴の腹に拳を見舞った。

 「真琴ちゃん、ごめんね・・。ボク、大した力ないからずっとこの時を待って
いたの・・。
 戦いの末にたった一人残るこの時を・・。」
 あゆは、悔恨の気持ちからぼろぼろと涙をこぼして呟いた。
 「ごめんね・・本当にごめんね・・。」
 真琴は最後の抵抗をしようとしたが身体に力が入らずあっさりとあゆに人
形を奪われ、そして倒れた。

 「みんなごめん・・。でも、ボクはずっと待っていた・・祐一君の恋人になれ
る日を・・。絶対、それだけは誰にも譲れないから・・。」
 あゆは、涙を拭いて屋上へと足を向けるのであった。

                                  もう・・・続かない・・。

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