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「KANOM ロワイヤル」 第十章 戦場と化す学校 〜体育館〜

 佐祐理と栞の最強タッグが張り巡らせた罠。
 古ぼけた体育館で舞と美汐の叫びがこだまする。
 知力と体力の戦いが待つ先には何があるのか。
 そして、誰が生き残っているのだろうか・・。
 死の足音が彼女達にゆっくりと忍び寄っていた。
                        
第十章 戦場と化す学校 〜体育館〜
 佐祐理達を追って舞と美汐は古ぼけた体育館へと足を踏み入れた。
 うっすらと差し込む月明かりだけで体育館の中はほぼ暗闇が支配していた。
 みし・・みし・・。
 舞の足音だけがこだまする。
「佐祐理・・ここにいるのはわかってる・・。」
 舞はぼそっと呟いた。
 ズボッ。
 その台詞が合図となったのか、床から栞の糸が多数飛び出てきて舞達を
襲った。
「こんな糸・・怖くない・・」 
 舞は光の剣をだしあっという間に糸をばらばらに切り刻んだ。
 ずぼっ、ずぼっ。
 それでも次々と糸が現れて舞達を襲った。
 おかしい・・バックに倉田先輩がいるのに攻撃が単調すぎる・・
もしかして・・罠・・?
 美汐は、攻撃の単調さに思考をめぐらせた。
「そんなにしつこい人嫌いです。」
 暗闇から栞が姿を現した・・。
 舞は、それをみてまっすぐ突っ込んでいった。
「本体叩く!」
 美汐は思わず叫んだ。
「待って!そんな簡単に突っ込んでは!」
 舞が高く跳び、空中から栞に斬りかかった。
「あっ・・。」
 栞は避けるまもなく舞は栞を一刀両断にした。
 しかし、斬られた栞は、あっという間に糸となり舞に複雑にからみついた。
「川澄先輩!」
 美汐は、舞の元に駆けつけようとした。
 ふわっ・・。
 さっき舞に両断された糸達が空中に浮き自らくっついて元の糸に戻り美汐に
からみついた・・。
「なっ・・そんな斬られた糸が元に戻るなんて・・。」
「ふふっ、僕が糸に宿ってればこその技です。」
 糸から一弥が姿を現した。
 それと同時に隠れていた栞と佐祐理も姿を現した。
「はは・・これで私達の勝ちですね・・・。祐一さんのことは諦めて欲しいです。」
 佐祐理は、いつもの笑顔で舞達に話しかけた。
「嫌・・。佐祐理の頼みでもそれだけは嫌・・。」
 舞は頑なに拒んだ。
 その返事に佐祐理はその笑みを崩さなかったが、その瞳の中になぜか悲しげに
見えた。
「こんな糸に負けない・・。」
「我は最強・・わが力を抑えるものなし・・。」
 舞と美汐は、糸を斬ろうと力を込めた。。、
「そんな事する人は殺します。」
「あっ!」
 舞と美汐の胸に糸が突き刺さった。
 胸から血が噴き出しゆっくりと二人が倒れる。
「あはは・・舞が倒れちゃった・・。はははっ・・。」
 佐祐理は、相も変わらず笑顔だがその唇は青ざめ心なしか声も震えていた。
「さあ、佐祐理さん。行きましょう。」
 ぬいぐるみを持ってる栞は、なんの感慨もなく体育館から去ろうとした。
「ええ・・。」
 佐祐理は、舞の反対方向を向き出口へと歩み始めた。
「佐祐理さん?」
 しかし佐祐理は、ふと歩みを止めた・・。
「だめっ・・やっぱ舞をこのままほおっておけない・・!」
 佐祐理は、今まで我慢してた感情を押し出して舞の元に行こうとした。
「そんな人嫌いです。」
 駆け寄ろうとした佐祐理を糸が貫いた。
「舞・・。ごめんね・・。」
 佐祐理は、そう呟いた倒れた・・。
「お姉ちゃん!」
 一弥が、佐祐理の元に行くが一弥も消える寸前だった・・。
「佐祐理さんがいなければあなたも存在できないみたいですね・・。。」
 一弥の手が佐祐理の手と重なる瞬間、一弥も消えた。
 お姉ちゃん・・とただそれだけ呟いて。
「友達も自分の命さえも捨てる覚悟もない人にこの戦いに参加する資格は
ないです。佐祐理さん、あなたは戦うには優しすぎるのです。」
 栞は、やるせないという表情で呟いた・・。
「お二人にもその覚悟はありますか?」
 栞は、体育館の入り口の方を振り向いた。
 そこには名雪とあゆが悲壮な表情で立っていた。
「私には祐一が全て・・たとえどんな犠牲を払おうとかまわないわ。」
「ボクだって・・。」
 二人の言葉に栞は薄く微笑んだ。
「でもどうやって私に勝ちます?直線的な攻撃しかできない名雪さんと逃げる技し
かないあゆさんの二人で。」
 二人は、痛いところをつかれて俯いた。
 二人にもわかっているのだ、あきらかに他のメンバーの技と比べて見劣りすることを。
「でも私は勝つ!燃えろ!私のコスモ!!」
 名雪は、光を身にまとい栞に突っ込んでいった。
 すぐさま栞は名雪に糸を絡めようとした。
 しかし、糸は名雪に近づくだけでそのコスモに燃やされるように消えていった。
「単純な力ほど威力が強いですか・・。でも、そんなまっすぐな人嫌いです。」
 栞は本当に悲しそうに呟いた。
「はああっ!」
 名雪の拳はしかし、空を切った。栞に見えたものはやはり糸で出来ていた。
「あゆちゃん!あたりを探して!栞が隠れているはずよ。」
 あゆは翼をだし体育館の中を縦横無尽に飛び回った。
 そして、隅に隠れていた栞を見つけその身体を羽交い締めにした。
 名雪もすぐにそこに駆けつけた。
「さあ、ぬいぐるみはどこなの?」
 栞はその問いに薄く微笑んだ。
「体育館の外です。瓦礫に埋もれては困りますので。」
「え!?」
 バキバキ。嫌な音を立てて体育館を支えていた柱から糸が飛び出し次々と柱を
壊していた。
 愕然としている隙に栞はあゆから離れ、外の木に結ばれていた糸が延びてきて
栞はそれを掴み投げ出されるように体育館の外にでた。
「きゃぁっ・・」
 その瞬間、体育館はあゆと名雪を巻き込み崩れ去った・・。
 擦り傷だらけで血だらけの栞は、ゆっくりと立ち上がった。
「祐一さんは誰にも渡さない・・。全てを犠牲にしても・・誰にも渡さない・・。」
 栞は、その瞳に強い意志を込めて呟いた。

                                           続きます?
予告
 激しい戦いで次々と倒れる少女達。
 強い想いと奥義が交差する中、誰が最後に残るのであろうか・・。
 長き戦いの決着が今つけられようとしていた・・・。
                               最終章 戦場と化す学校 〜中庭〜

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