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「KANOM ロワイヤル」 第一章 名雪とセブンセンシヴ

 奇跡は起こらないから奇跡と言うんだよ・・・
 そう誰かが言った・・・
 でも・・・奇跡は起きた・・・
 しかし運命の無情は奇跡に代償を求めようとしていた・・

 そう・・奇跡だけでは愛は勝ち取れなかったのだ・・
なぜなら奇跡の数だけ愛があったから・・
いや・・・結果として奇跡の数より多い愛が・・・・

 そして、彼女たちは望んだ・・・
ただ自分だけを愛して欲しいという願いを・・・・
強く、強く望んだのである・・・

「KANOM ロワイヤル」

 彼は決して女たらしというわけではなかった。
ただおせっかいでその場の雰囲気に流されやすいだけだった。
だからほおっておけなかったのだ。彼女らを。
 そして、勢いで全員と関係を持ってしまっただけなのである。
 しかし、秘密とはいつかはばれるものである。
ましてや5人だけでなく夫のいない寂しさを内に秘めた女性と弟を失った寂しさを知って
いる少女まで手を出したとあってはばれないほうがおかしい。

 そして、彼は迫られた。誰を選ぶのかを。
だが、彼には誰も選ぶことができなかった。
 だから逃げたのだ。この廃校となった学校しかない廃村に・・。
 ここまでは追ってこないだろうとの甘い考えの元に・・。

 彼の考えが甘かったことはすぐに思い知らされた。
すぐに追いかけられ7人の彼女たちに囲まれることによって。
 彼はあせった。そしてその動揺から思わず口走ってしまったのだ。
彼が屋上で待っているから村に隠したぬいぐるみを見つけて屋上に来たものと愛する
と・・・。
 だが彼は大きな過ちを犯した。
 それは、このゲームに何のルールも設けなかったことである。

 奇跡・・・・。

 それを体験した彼女たちの想いは彼の予想を大きく越えていた。
たとえ全てを捨ててでも、自分の心を裏切ってでも愛されたいという強い気持ちを。
何度もあきらめようとした想いは、奇跡を経てより強いものへと変わっていたのだった。
 ルール無用のゲームが始まった。
 そして、それは殺戮ゲームの始まりでもあった・・・・。

第一章 名雪とセブンセンシヴ

 天性の勘だろうか・・・それとも一番長い付き合いからなのか・・・ともかく最初にその
ぬいぐるみを見つけたのは名雪だった。
 名雪は嬉しそうにぬいぐるみを抱えて学校へと走った。
 だがその前に無表情、いや名雪から見たら無表情なだけで佐由里や彼からみれば
その表情は迸る想いを押さえるのに耐えているという表情、の舞と出会った。
 舞は、そのぬいぐるみを指差し渡すように示した。
「舞さん、お願いここを通して・・。」
 舞は悲しそうに首を振った。
名雪は、横に逃げようとした。しかし、その先に舞が抜いた剣の先があった。
「怪我させたくない。おいてって。」
 舞は、ある意味冷淡な口調で呟いた。
 ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめ名雪は後ろを向いて走り出した。
「これは渡さない・・だってまだ遊園地もどこも行ってないのに・・・。」
 名雪には彼といっぱい行きたいところがあった。
なのにどこにもまだ行っていなかった。せめて一回でも遊園地にでも行っていたらここ
まで意固地になることもなかったかもしれない。
 だから名雪は逃げた。ただひたすらに。
 しかし、追いかける舞も必死だった。そして運動能力という点では舞の方が遥かに上
だった。

 名雪はすぐに追いつかれた。そして、舞は後ろから名雪に体当たりをした。
勢い余って転がる二人。
二人の服は砂だらけになり幾つか破れているところもあった。
 先に立ちあがったのは舞だった。
舞は軽く服の泥を払うと剣先を名雪に向けた。
 月光の反射できらっと光る剣を間近で見て名雪は泣きたくなった。
 それでも、あきらめたくはなかった。この想いをこの願いを。
「渡して・・。」
 舞は最後通告のごとく呟いた。
 名雪は力いっぱい首を振った。
 つうーっ。
脅迫の意か剣が名雪の頬を少し滑った。赤い滴が名雪の頬を滑り落ちた。
「渡して・・・。」
 舞はもう一度繰り返した。
「いやっ・・いやあ・・・。」
 名雪はいつのまにかぼろぼろと涙を流していた。
月光を通してみるとまるでダイアモンドのごとく奇麗に輝いていた。
 舞はその涙に怯むような表情をした。
怯むのは当たり前だ。なぜなら舞は人を相手に剣を振るったことなどないのだ
から。
舞は意を決して名雪の腕を軽く切りつけた。
「いたっ。」
服が裂け名雪の腕から血が流れ出た。
 焼けるような痛みに思わず手からぬいぐるみがこぼれた。
「あっ・・・。」
 悲しそうな声を上げ、急いでぬいぐるみを拾おうとした名雪よりも早く舞がぬいぐ
るみを取り上げた。
 そして、ゆっくりと名雪に背を向け学校へと向かい出した。

 名雪はすぐ追いかけようと立ち上がったがあせっていたため再び転んだ。
小さくなる舞の後ろ姿に名雪は心から叫んだ。

いやっ・・いやっ・・彼を誰にも渡したくない・・・そして彼と絶対遊園地に行く・・・

 名雪の心が熱く燃え盛った。いわゆる五感でもなく勘と呼ばれる第六感でもなく第
七感、セブンセンシヴと呼ばれる力が名雪に満ちてきた。
「いやーっ。」
 名雪の叫びと共に光の柱が立ち上る。
 そして、名雪は光を身に纏い立ち上がった。

 昔・・ギリシャにアテネを守るために超常の力を持った戦士達がいた。
その戦士達の名をセイントと呼んだ・・。
 名雪の父は、実はそのセイントの血をひいていてそのために命を落したのだった。
 そして、最初にぬいぐるみをみつけられたのもその力によるものだった。

 異様な気を感じて舞は振り向いた。
そして光り輝く名雪を見て舞は感じた。

 やらなければやられると・・・・それだけの強さが向うにあると・・・。

 一瞬で走って間合いを詰めた舞は、空中に大きく跳んで剣を振りかぶった。
そこに何百という名雪の拳が襲い掛かった。
舞は懸命に防御するが剣が折れると同時に激しく吹き飛ばされた。
 そして、生い茂った草むらの中へと落ちていった。
 名雪はぬいぐるみを拾い舞が落ちたと思われる方向に軽く頭を下げると再び学校に
向けて歩き始めた。

                                          続く・・・・・・かも
予告
ボクのことは忘れて・・
そう言ったこともあった。
でもあきらめなければ夢は叶うことを知ってしまった。
だからぼくは決してあきらめたりはしない・・。
                 第二章 翼を持つもの、あゆ

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