待望のロードショー! 「クロッシング」
その公開が待ちに待たれていた映画「クロッシング」がいよいよ4月半ばロードショーということになった。
北朝鮮の庶民の暮らし、親を亡くし生きるために放浪の身とならねばならなかった子どもたちの姿、強制収容所の言語に絶する実態、そして苛酷な脱北のプロセスなどが、驚異的なリアルさで描かれているこの映画は、一昨年韓国で公開されると、百万人の人々が涙したという。
2008年韓国映画評論家協会賞音楽賞(キム・テソン)、イチョン春史大賞映画祭にて多数の部門賞受賞。2008 年米国アカデミー賞外国語映画部門韓国代表作品、2009年米国ハリウッド映画祭グランプリ受賞等々、すでに映画界において各方面で非常に高い評価を得ている作品である。
この映画のキム・テギュン監督は次のように語っている。
「私の人生で忘れられない記憶のひとつは/10年前に見た北朝鮮に関するドキュメンタリーである。/子供たちと家族が一緒にいるところで/テレビを通して余りにも胸の痛い映像を見てしまった。/コッチェビといわれる5、6歳の幼い子供たちが/道端に落ちているウドンを拾って、汚いどぶの水ですすいで食べていた。/私は言葉が出なかった。/私が存在しているということ、私が生きているということに対する/とてつもない懐疑にとらわれた。/すぐ近くで、すぐに行けるに違いない所で起きていることが信じられず、/恐ろしく、また恥ずかしかった」(太秦制作「クロッシング」パンフレットより)
私たちもああやって生き延びてきました
5年あまり前、私はソウルで初めて私たちの教育里子に会った。ちょうどその時期は韓国の国会議員会館内で北朝鮮の難民と人権問題に関するさまざまのイベントが行われており、私たちも元里子たちと一緒にその会場に行った。会場の一角のテレビ画面に、市場にいる痩せて汚れた身なりの男の子が映っていた。次の瞬間、その子はぬかるんだ地面から何か食べ物らしきものを拾い上げて一目散に走り去ったのである。
胸の痛む思いでその画面を見つめていた私に、すぐそばで同じ映像を見ていたJが「私たちもああやって生き延びてきました」と言った。彼女は十歳を少し過ぎた頃、亡くなった親を妹と二人で埋葬して、中国に逃れてきたのである。彼女は現在韓国に住み、結婚して赤ちゃんも生まれ、幸せに暮らしている。しかし、その背後にはどれほど多くの子どもたちが、大人たちのせいで無垢の命を散らしていることだろう。
私は「クロッシング」を一昨年試写会で2度観ているが、この映画にはそういう子どもたちが何人も登場し、重要な役割を果たしている。
どうか一人でも多くの方に見てほしい
この映画の制作に当たって、キム・テギュン監督と脚本のイ・ユジン氏は脱北者百人以上に会って取材を重ね、メインスタッフやエキストラに約30名の脱北者を起用したという。そしてモンゴルと韓国江原道に完璧な形で北朝鮮の田舎の村を再現し、中国東北部やモンゴルの砂漠でのロケを敢行した。「クロッシング」は映画としての完成度も極めて高く、かつて日本が植民地支配をしていた地で、今何が起こっているのかということを冷厳に認識させてくれる。そして、家族とは、国家とは、また人間らしく生きるとはどういうことかということを、まさに迫真のリアリティと凄みで観る者に訴えかけ、問いかけてくる。
まず渋谷のユーロスペースでの上映が始まり、その状況いかんで全国約50の映画館での上映が可能になるという。
どうか一人でも多くの方に、まずはユーロスペースに足を運んでいただきたい。