北朝鮮人権キャンペーン2008国際会議でのスピーチ
北朝鮮難民救援基金理事長加藤博
北朝鮮人権キャンペーン2008において講演させていただく機会をいただきましたことを感謝いたします。
私ども北朝鮮難民救援基金の主とする目的は、第一に、中国や東南アジアの国々で北朝鮮からの脱北者の人権を保護し、人道支援を提供することであり、第二に食物や医薬品を北朝鮮国内の人々に届けることにあります。2008年7月現在、中国の北東部に隠れている100000人の北朝鮮からの難民のうち、約70人から100人が、私どもLFNKRの保護下にあります
人権侵害のうち最悪なのが人身売買であると私は考えております。人身売買の犠牲者の数は、いまだに正確にはわかっておりませんが、その数は脱北者の70%に及ぶと私どもは推定しております。私どものシェルターがある村々で調査いたしましたところ、村民の10%から20%が北朝鮮人女性で、この村々の男たちに売られてきた人たちでした。60,000人から70000人の女性脱北者のうち、少なくとも半分は出産適齢期の女性です。漢民族と朝鮮民族との間に生まれた子供たちの数は30,000人から35,000人におよび、その殆どの子供たちは戸籍を持っておりません。
私が出会ったうちで最も若くして売られた犠牲者は、8歳で売られたということでした。彼女は、吉林省の和龍市の朝鮮族の家庭で育てられていましたが、14歳の時1500元で漢族の男に売られました。19歳の時に子供を産みましたが、子供が生まれると、ブローカーを介して他の男に売られました。残念ですが、彼女がどこにいるのか現在はわかりません。少女たちが出産後売られるケースは多発しております。
女性たちの値段は様々です。通常20歳までなら5,000元から10,000元(約77,000円から154,000円)です。30歳までなら3,000-5,000元、子持ちの40歳までなら2,000-2,500元、そして、子供たちは500-1,000元で売られます。
しかし、今年は値段が上がっています。20代女性なら20,000元で売買されています。女性脱北者の数が減っているからです。北京オリンピックで取締りが厳しくなったことや、生命の危険までもたらす強制送還を恐れて、北朝鮮人女性たちが脱北をためらう傾向が出てきたためと思われます。
北朝鮮人女性の取引が始まったのは1985年ころのことです。当時はまだ組織的には行われていませんでした。通常の方法では結婚できない農村部の中国男性とのお見合いという形で、ブローカーたちが仕切っており、中国政府もこれを歓迎しておりまして、逮捕や強制送還ということもありえませんでした。(しかし、現在では、これは組織的ビジネスのようなものになっています。)
中国の開放経済政策から取り残された中国北東部の3省から、若い女性たちは、仕事を見つけるために、中国南部の経済圏、日本、および韓国へと移住し始めました。結果として、こうした農村部の女性の人口がかなり減少しました。北朝鮮の女性への需要はもちろんより大きくなりました。中国人女性の代役として、若い北朝鮮女性の役割は、重要であると考えられました。ブローカーたちが、こうした時期に、この状況を利用しようとし始め、より組織的になり、より職業的な形をとりはじめたのです。
1990年代後期に北朝鮮の食料配給システムが崩壊しました。食料を求めて、北朝鮮人は中国に逃れ始め、1997年から大量の北朝鮮人が中国へ殺到するようになりました。中国に住む朝鮮族の人々はこうした脱出して来る同胞たちに食料や衣類を与えていました。しかし、北朝鮮人の中には、こうした朝鮮族の人たちの善意を悪用する人たちも出てきて、犯罪率が上がってきたことなどがあり、中国政府は脱北者に関する政策を厳格にし始めたのです。
2000年には、北朝鮮人女性の人身売買はより深刻なものになりました。より多くの女性が、命がけで中国に脱出して来て、ブローカーの手に落ちました。私どものシェルターの担当者たちが、これらのケースを数多くリポートしてきています。
中国の警察は、北朝鮮国家安全保衛部との秘そかに連絡を取り合い、農村部の中国人男性と違法に結婚しているこれらの女性を刑事訴追してきました。もし結婚した時に女性が子供を持っていて、刑事訴追されると、子供はもうどのような保護でも受けられず、孤児になります。子供は、通常、部屋と食事のかわりに牛の世話をしたり、耕作の手助けをして生き残ります。
北朝鮮人女性が産んで、中国人に売られた子供たちの将来は寒々しいものです。自分の国も親も選ぶこともできません。母親は自分自身を売る以外の道はないのです。
こうした女性たちは不法滞在しているのですから、子供たちは無国籍ということになります。子供たちは北朝鮮人でも中国人でもありません。教育を受ける権利も何の権利もありません。彼らには人権は認められず、違法滞在者でしかありえません。極度の貧困の中で、弱っていくしかありません。
昨年初期、5歳のキムヨンソンの母親が逮捕され、北朝鮮に強制送還されました。彼女の罪ですか?北朝鮮国内での飢餓から脱出し、生存する術を求めて中国に来たということのみです。
この女性が6年前に北朝鮮を脱出するとすぐに、彼女は中国人の男性に売られ、結婚を強制され、すぐに妊娠させられました。こうしてキムヨンソンは生まれました。この子は今、私どもLFNKR(北朝鮮難民救援基金)の里親制度の保護下にあります。
私どもLFNKRの中国国内スタッフはこの母親が帰って来ることはもうないだろうといっております。今回が、彼女の3度目の強制送還になるからです。
何故、中国の国家警察はこうした家族たちに慈悲を寄せないのかとお思いですか?彼ら人間的な感情などは持ち合わせていないかのように、冷酷に、子供を親たちから引き離すのです。
延吉、龍井や中朝国境地帯にある他の都市では、中国と北朝鮮の二つの国は協力して合同取締りを行っています。北朝鮮当局は中国の公安警察に脱北者の情報を提供し、その情報に基づいて、中国警察が情容赦なく逮捕に向かうのです。警察官たちは仕事熱心です。国が高い報奨金を払うからです。一人脱北者を逮捕するごとに、2,000元が彼らのポケットに入るのです。この報奨金は、中国では大卒者の一ケ月の給料に相当します。
何年もの間、人権に関わるNGOや、国際機関、諸外国の政府がたくさんの要請を送ってきました。中国国内の脱北者に関わる事柄について、中国政府に訴え続けてきたのです。
中国政府はこれらの訴えを無視し続けてきました。実際、何の返答をすることもなく、脱北者たちを、残酷な迫害が待ち受ける北朝鮮に送還し続けてきたのです。これは、明瞭な人道主義へのあくどい挑戦です。
UNHCRからの中国政府への要請もことごとく無視されています。北朝鮮難民を助けようとした罪で逮捕された活動家の韓国政府からの釈放要請も、北京はまた、無視し続けてきています。
過去の出来事から2つのことを学べます。第一に、中国は強い力で圧迫された時だけ反応を見せます。第二に、人道主義に関する考慮を中国政府に訴えても、効果はゼロだということです。中国は強いものには従順で、弱いものには無慈悲です。北朝鮮難民は諸外国大使館の保護下に入ると強い位置に立つことができ、これがないと極度にひ弱な状況に置かれることになります。
いま私は韓国の活動家および脱北者に公然と呼びかけます。この瞬間から先、あらゆる証拠、証人そして情報を集め、国際社会そして特に国連報告官に詳細を報告するよう努めて下さい。
更に、北朝鮮の人道に反する罪を暴露することができた今回のこの機会を深い感謝とともに、私たち皆がしっかり認識するべきです。米国議会で可決された北朝鮮人権法、国連で採択された一連の決議そして特に、昨年12月に国連総会で採択された北朝鮮人権に関する決議等を導入することができた数々の努力を誇りとすべきです。
次の段階として、国連安全保障理事会が、国際的人権査察チームを北朝鮮に送り込むように持っていくように努力することが肝要だと思っております。しかし、これは安全保障理事会における中国とロシアの存在が実現を危うくさせると思われます。この二つの国は、あらゆる努力を阻害しようとするはずです。
北朝鮮の罪はもっとも深刻です。ここで留まるべきではありません。私どもは、国際刑事裁判所にしっかりした証拠、立証された情報を提出し、取り上げてもらう努力を続けるべきです。こうした証拠を北朝鮮国内から得ることが、国際刑事裁判所を確実に動かす現実的な方法であります。なぜならば、最近、北朝鮮の役人たちは、より激しくなっている権力闘争の中で個人的危機に直面することが増えており、すっかりやる気を失っているからです。
北朝鮮内部から、否定できない信頼できる情報証拠をかき集める努力を倍増し、そうした強い説得力のある情報証拠が国際刑事裁判所を動かすことができるようにいたしましょう。
本日の私のスピーチを終えるに当たって、皆様からお許しいただいて、国際社会全体が北朝鮮の状況に決然と介入することをよびかけます。これは、国際的責任であることは間違いありません。
北朝鮮の人々そして韓国や日本のすべての拉致被害者の方たちが、世界中の人々から片時も忘れられたことがないということを知る日がいつか来るよう、つとめてまいりましょう。
有難うございました。