

脱北を真正面から描いた衝撃作「クロッシング」が待望のロードショー!
2010年4月17日 渋谷ユーロスペースから全国公開へ (写真は映画のワンシーン)
C O N T E N T S
新年号
| 年頭に当たって ……………………………………… | 加藤 博 | |
| 現地報告 春の種子 800kgの援助要請 | ||
| 第6回IPCNKR総会と国境ツアー | 加藤 博 | |
| 北タイで脱北者支援物資を寄贈 …………………… | 白浜和歌子 | |
| 第12回総会報告と会計報告 | ||
| 国連人権理事会での活動報告 …………………… | A・パタスキー | |
| 北朝鮮人権問題政策協議会に出席 ……………… | 野口孝行 | |
| 北朝鮮人権問題と脱北難民に関する提言 | ||
| 待望のロードショー!「クロッシング」 ……………… | 四谷みどり | |
| 旧・満州国の気儘旅 ………………………………… | 大河鹿史峻 | |
| お知らせ | ||
| 2010年の年頭に当たって | ||
| 物価は天井知らず、インフレスパイラルに 新星将軍・金正銀の権力継承に注目 | ||
| 加藤 博 |
今年は何か変化が起こりそうな気配を感じる。いま北朝鮮の一挙手一投足に目が離せない。昨年は、国連の制裁決議を無視して、北朝鮮は度重なるミサイル発射実験、核実験を強行した。武器輸出を企てた「カンナム号」が目的地を目前にしながら、南甫港に引き返すなどの事件もあった。ビルマ軍事政権と核開発の協力や、ビルマ国軍幹部の北朝鮮訪問、秘密軍事協力強化協定も取り沙汰されている。オスロに拠点を置く「ビルマ民主の声」は、軍事政権幹部による北朝鮮秘密訪問の情報漏洩で国家非常事態法に問われた軍人と外務官僚に死刑判決が出された、と明らかにした。
北朝鮮の国際的な孤立がますます厳しくなる一方、その出口を武器輸出や軍事協力協定強化による出口戦略を模索している。しかし、制裁決議の国際的な包囲網の中で機能させるのは容易ではなさそうだ。
現在、北朝鮮の新義州の対岸には、およそ200社の北朝鮮貿易会社が、経済協力関係の打開を図ろうと、外国資本による投資を懸命に呼び込もうとしている。しかしながら制限が厳しかったり、現金決済のために大型の商談ができないジレンマに陥っている。
北朝鮮の経済再建運動である「150日間戦闘」はさしたる成果が挙げられず、12月まで期間を延長して「100日間戦闘」を組織したがこれも失敗した。
同時に金正日総書記の深刻な健康問題も世界的な関心を集めた。病状は安定しているようだが、先行きは予断を許さない。独裁国家の常として、独裁者の後継者が誰になるのかが問題になる。現在注目されているのは、金正日総書記の三男で26歳になる新星将軍・金正銀(キム・ジョンウン)だという。朝鮮中央放送が新星将軍に関する「神秘現象」を伝え始めたことから、後継者の神格化が始まったと言える。
これからは、確実に権力を安定的に継承できるかどうかに関心が集まるだろう。
11月末に突然発表された北朝鮮通貨の切り下げ、新ウォン札の発行で一世帯あたり500ウォン相当分(旧紙幣で5万ウォン)しか交換できないことになった。交換金額を制限する指示が出されている。これによって、今まで細々ながら市場経済で蓄積してきた新興の商売人や「富裕」層は、一挙に文無しに転落することになった。市場経済の担い手たちを一挙に没落させることを狙ったものと言える。
1月には、外貨の使用を禁止することになり、国境は閉鎖され、物流は止まっている。当然物資の不足が起きている。市場が機能しない。市場にものがなくなり物価はうなぎ上りだ。デノミによるインフレスパイラルを招く結果になっている。
この経済政策の真の狙いは何処にあるのだろうか?市場経済の担い手たちを殲滅させ、外貨による取引を国家管理に一元化し、新興ビジネスマンの台頭を抑えることにあるのか。市場経済の担い手たちが、現政権を脅かすほどに成長してきていることを示している。強権的に社会的な富を独裁政権に集中させることは成功しても、経済制裁で食糧供給もままならない情況では、物価高は天井知らずの状況を招くことは避けられない。当然人々の間に飢えが始まっている。国境を渡って私たちのシェルターにやってくる人たちの数が増えている。通常の130パーセント増だ。この数字はこれからさらに増えることが予想される。
中朝国境の中国側は緊張が一段と高まっている。北朝鮮国内の緊張状態が、次第に沸点に近づきつつある気がするのだが。中国がこの状況をどう解決するのかによって北朝鮮の命運が決まる。北朝鮮と中国は互いにその間合いを計っている。中国側が金正銀新星将軍を後継者として容認しない可能性があり、事態の解決は相当長引くことが予想され、一般国民の辛苦もそれだけ厳しいものになる。北朝鮮の今年1年に明るい材料は何もない。6カ国協議で無意味な妥協が図られないように祈るばかりだ。そうなれば、東アジアの安全保障上の深刻な脅威になるからだ。
| シェルターJSHから春の種子 800kgの援助要請 | ||
| 唐辛子、トウモロコシ、白菜、大根の種子が好評 |
昨年12月、収穫の終わった北朝鮮から、当基金が援助した野菜の種子による生育、収穫に関する報告が届きました。特に北朝鮮の種子の品質の劣化、収量が悪化していることに悩みが深いようです。唐辛子の種子は市場で評判で生計にプラスになっていると歓迎されています。 (編集部)
はじめに、こちらの状況をお伝えします。最近、冬に入ってから川の向こう側(北朝鮮)は、例年よりも酷い経済難のため、食料事情も厳しいです。
特に、この頃は貨幣改革を行ったばかりで、市場も麻痺状態ですし、中国人の親族訪問、観光客も受け入れていません。
何故か知りませんが、中国からの品物を持っていけないように制限しています。
新貨幣がいつもの通り流通が始まった頃には、市場も例年通り営業するとの話もあります。今一部で新貨幣が使われているようですが、食糧価格は古い貨幣の時と比較すると、2倍以上に上がっています。咸鏡北道茂山物価状況:
100旧北朝鮮ウォン=1新北朝鮮ウォン
品目(キロ) 11月 12月
米
1,700旧ウォン 45新ウォン トウモロコシ 700 30 小麦粉 1,500 35 新貨幣が発行されてから、物価は安定せず、ずっと上がっています。市民たちの不満も大きいです。
唐辛子の種子が評判
春に援助いただいた種子の件ですが、新年度もトウモロコシ、唐辛子、白菜、ダイコンの種などを各地で支援したいと思っています。特に、今年ここから送った唐辛子の種が、非常に評判が良く、収穫したその唐辛子を売って、その収益金で又食糧を買うと非常に有利だと喜びの報告が届きました。唐辛子の種子の支援を要請する声が多いです。そして、白菜と大根の種子も良くて、収穫した野菜はよく売れ、代わりに食糧を買ったと言います。
今年は、昨年よりも多い800kgの種子の援助を計画していただけないでしょうか。
1haあたり5トンの産量、うれしい
大量に送ったトウモロコシの種は、昨年ほどには収穫が出なかったそうです。1ヘクタールで5トンの産量が出たと、知らせが来ています。しかし、今年のような凶年にも関わらず、産量がたくさん出たもようです。*1
ここ中国側も今年はトウモロコシの産量は良くない状況です。ちなみに、北朝鮮に隣接する中国側のトウモロコシの産量は、普通は1ヘクタールに8〜9トンです。今年は6〜7トンぐらいしか出ませんでした。
向こう側(北朝鮮)でそれだけの産量が出たということは、種子の品質が重要だということがはっきりしています。北朝鮮の種子を使った他の家の場合は全く収穫がない家もあると報告が来ています。収穫が良くできた農場の畑でも1ヘクタールに3トン程度しか収穫がなかったそうです。しかし、自分の畑ではそれ以上の5トン以上の収穫ができて非常にうれしい、とても感謝している、との連絡がきました。
この功績は私によるものではなく、色々な面で助けてくださった先生たちの支援があったからこそ可能になったのです。先生たちの支援に非常に感謝しています。
*1)2009年の収量減は、雨量が足りなく、旱魃が影響したためです。
| 脱北者難民が急増するタイのチェンマイで | ||
| 第6回IPCNKR総会及び国境ツアー | ||
| 加藤 博 |
11月28日、タイの古都チェンマイで行われた北朝鮮難民と人権に関する国際議員連盟(IPCNKR)の第6回総会に、オブザーバーの資格で、加藤博代表理事ら二人が基金から参加しました。
すでに新聞やTVのニュース報道でご承知のように、今回は中井洽・拉致問題担当大臣、中川正春文部科学副大臣が出席され、北朝鮮による拉致問題、人権問題についての積極的な発言があり、かなりインパクトの強い会議になりました。
一方で民主党新政権の対米姿勢を憂慮する韓国の国会議員からは、日本が北朝鮮難民と人権侵害問題に対して北朝鮮との取引があるのではないかとの疑念が出されました。
これに対して中井洽大臣が、そのような動きに対しては、厳しく抑制しており、問題は生じていないとの見解を示しました。
タイ・ビルマ・ラオス国境へ
29日は、中川正春文部科学副大臣はタイビルマ国境のメラの難民キャンプへ視察にでかけました。ビルマ難民の「第三国定住枠」の調整に関する案件があるとの話でした。ニュースメディアとわたしたちは、タイ・ラオス国境の北朝鮮難民の流入地点にあるゴールデン・トライアングル(黄金の三角地帯)にあるチェンセン警察署とメーサイ入国管理局を訪問。背景説明などを求めるためでした。
チェンセン警察署は、最初タイ王国王女様が来られるのでNGOや取材陣は受け入れないとの態度でしたが、「北朝鮮に拉致された人々を救援する会・チェンマイ」The Association for the Rescue of North Korean Abductees, Chiangmai(ARNKA)代表の海老原智治さんが、熱心に、かつ丁寧にねじ込んでくれたおかげで、パワーポイントを使ってのたいへんわかりやすい警察署長からの説明を受けました。ちょうど、警察署には北朝鮮難民14名が収監されており、聞き取り調査が行われていたところでした。
基金は最初、北の難民に対して石鹸、トイレットペーパー、薬などを準備しようと思っていたのですが、韓国大使館が毛布、医薬品などを提供してくれているので必要はないとの話になりました。
それで、韓国語=タイ語の通訳費が警察署長のポケットマネーから出ていると以前聞いていたので、それを負担しようとの申し入れをしましたが、それも捜査費用から捻出しているとのことでした。
署長は北朝鮮難民が政治難民であると理解
警察署長の説明では、北朝鮮からの難民は、不法就労の目的ではなく、政治難民であるとの理解をしていると繰り返し強調、それにふさわしい待遇をしているとのことでした。留置場は新たに床が新しいビニールシートに代わっており、清潔そうでした。
韓国大使館は、チェンセンの警察署所長、メーサイの入管局長など関係者を韓国に招待し、脱北者難民をどのように定住させているか視察の一部始終を紹介しました。
難民たちの間に情報部員が紛れ込んでこないかを調べる大成公社(国情院)のスクリーニング、ハナウォンの視察をしていることも分かりました。ハナウォンでの定住支援でコンピューター教育、職業教育などをしていることに大変感心した様子で、テレビも自由にみているし、活動も自由な雰囲気であったということです。
その訪問の経験がタイ政府にきちんと報告され、脱北者が不法入国であっても、不法就労でタイに来るわけではないので、強制退去で北に送り返すことはしないとの説明をしていました。
昨年比およそ140%増の脱北者難民
警察には最長で2日間拘置、すぐに裁判所に送られて不法入国の判決を受け、入管局に身柄を送られることになります。入管局でおよそ30日間の拘留ののち、ほとんどが、韓国に行くことになるとの説明でした。裁判所では不法入国で罰金刑になります。罰金は管轄の、チェンライの裁判所で2000バーツ(4000円〜6000円:為替レートによる)の支払いを命じられます。
金がなくて払えない場合は、勾留1日を200バーツの換算で計算するので10日間の拘留が行われることになります。
同警察署で2008年に留置した北朝鮮からの難民は156人(男23人、女133人)、今年2009年は10月末までにすでに425人に達しているとのこと。
私は一行と別れ、私たちの救援ネットワークの一人と面会するためにもう一つの国境の町チェンコンに行きました。
北タイのチェンセーン警察署に脱北者用支援物資を寄贈 白浜和歌子 10月22日、「北朝鮮に拉致された人々を救援する会・チェンマイ(ARNKA)」代表の海老原智治さん(パヤップ大学タイ日センター専任講師)のご協力により、北部タイ国境、メコン川のほとりにあるチェンセーン警察署への脱北者用支援物資の手渡し寄贈を実現することができました。
北京オリンピック後、再びタイへ流入する脱北者数が急増する中、チェンセーン警察署もその対応に追われ、収監される多数の脱北者の食事の確保はもとより、常備薬その他の日用品が不足して困っているとの情報を受け、今回、基金の救援活動の一環として同署への支援物資を手渡し寄贈した上、同警察署の署長さんから色々とお話を聞いてきました。以下、簡単に報告します。
監房にぎゅうぎゅう詰め
早朝チェンマイを車で出発、午前11時にチェンセーン警察署に到着。ちょうど脱北者を収監中であるとのことで、先ず脱北者専用の拘置所に案内されました。黒い鉄格子の狭い監房が数個あり、中央の監房には32人もの脱北者がぎゅうぎゅう詰めで、脚を伸ばすスペースも無いまま皆、無言で膝をかかえて座している光景に少なからぬショックを受けました。
前日到着した8人も含めて40人もの脱北者が収監されており、大半が20代・30代と思える女性で、男性はわずか3人、子どもが2人(中国人との間に生まれた子どもだとのこと)でした。ただし、監房の扉は開けっ放しにしてあり、数人は監房の外に座っていたりして、留置所といえども緊迫した雰囲気が無かったのが救いでした。
署長さんのおっしゃるには、脱北者は犯罪者ではないし、そもそも保護を求めて自ら出頭してくるので署から逃げ出そうとする脱北者はまずいないからだとの説明に納得。
チェンセーン警察署玄関で支援物資を寄贈
10月ですでに60名の脱北者が
今月だけで、収監した脱北者数は既に60人に達しているとのこと。タイは雨季が終わり乾季に入り始めているのでこれからさらに脱北者数の増加が予想されるので、今回の支援物資の寄贈は大変有難いとのことでした。
メコン川を挟んで、対岸はラオス、
左上流はゴールデン・トライアングルへと続く
中国からタイへ脱出するための費用が一人当たり約15万バーツ(約41万円)かかるが、脱北女性は大半が、中国で売春などにより脱出費用を稼ぐケースが多いとのこと。脱北者は殆どが船で来るが、メコン川のどこで降りて同警察署に行けばよいのかを中国人の付添い人(たぶんブローカー)が詳しく事前に教えるので迷うこともなく、チェンセーン警察署に来るとのことでした。
ところで脱北者の取調べのために雇う通訳の費用(500バーツ)は署長のポケットマネーだそうです。このような費用は韓国政府から出てもよいのではないかと思いますが。(注:実は捜査費用から捻出される)
一般的医薬品(頭痛薬・胃腸薬・軟膏など)は昨日チェンマイ市内で購入して持参したのですが、署内の担当者が、生理用品在庫が無くなりかけているため、脱北女性たちの間で奪い合いになっているとのことだったので、急遽、警察署近辺の店でダンボール二箱分2,400バーツ(約6,400円)を追加調達しました。
また、夜は少々寒くなってきていることもあり、就寝時の毛布が20枚ほどあればよいのだがとのことだったのでこれも近所の店で追加調達して渡しました。20枚で2,100バーツ(約5,670円)。
その後、メーサイのイミグレーション(入国管理所)に
チェンセーン警察署訪問後、車で45分余りの距離にあるメーサイのイミグレーションに行き、副所長と面談しました。脱北者は警察署から裁判所に送られ起訴・判決(通常は罰金刑)後にこのイミグレーションに移送され、目指す第三国に受け入れられるまで収容されます。韓国へ移送されるまでの収容期間は、現在約2ヶ月となっています。ここには韓国大使館から毛布・本の差し入れがあり、医者も定期訪問するとのことで、脱北女性が出産するので病院に連れて行ったこともあるとのことでした。
今回の面談中に、同副所長は韓国のハナウォン視察にも行ったとの発言もあったので、北朝鮮難民問題に対する理解が深まったという見方もできるでしょう。
チェンセーン警察署とは異なり、ここでは中央から予算が出ており、現在はその予算内で足りているとのお話に安堵しました。先週にはチェンマイの米国領事が同イミグレーションを訪問し、米国は脱北者をさらに受け入れる用意があると同所長に直接伝えたとの報告に、これも嬉しい動きであると励まされる思いがしました。
正味10時間もの長時間運転に加えて通訳もしていただいた海老原さんには大変感謝です。基金は近年、国内外のNGOとの連携をさらに強化していますが、今回も他のNGOとの協働で基金の救援活動範囲を拡げることができた実例といえるのではないでしょうか。
| 北朝鮮難民救援基金 第12回総会報告と会計報告 |
10月11日午後2時から、東京の文京シビックセンターにて、連携関係にある国際NGOからの代表、1人の脱北定住者を迎えて第12回総会が開かれました。
今総会は基金定款第26条に基づき、出席者数と委任状数、あわせて正会員の5分の1以上の出席によって成立しました。
『北京オリンピック後も、チベットや新疆ウイグル地区での続発する騒乱もあり、治安や秩序の維持に関する中国政府の警戒は厳しく、脱北者を不法入国者や不法滞在者とする政策は今も変わっていない。
こうした中で、慎重且つ確実に順調な救援活動に従事し、1人の拘束者も出すことなく推移したのは幸いであった。
また、「基金」の地味で目立たない日々の活動が評価され、東京弁護士会からの人権賞に結実したのは喜ばしい限りである。「基金」に関わる全ての人々と共に、この事実を素直に喜びたい。
しかしながら、財政的には年々困難の度を深めており、頭の痛い問題である』と報告の後、活動報告、財政報告、そしてそれぞれの方針が提起され、承認されました。
2008年度特定非営利活動(2008年9月1日から2009年8月31日)に係わる
事業会計貸借対照表(単位:円) 事業会計収支計算書(単位:円)
科 目 金 額 科 目 金 額
T資産の部 T収入の部 流動資産 5,743,366 会費収入 367,000 固定資産 498,000 寄付金収入 3,2,917,927 資産合計 6,241,366 雑収入 513,622 U負債の部 当期収入合計(A) 33,798,549 流動負債 3,349,440 U支出の部 固定負債 0 事業費 負債合計 3,349,440 安全確保事業 11,118,388 V正味財産の部 生活支援事業 10,429,677 前期繰越正味財産 △573,407 教育支援事業 1,635,365 当期正味財産増加額 3,465,333 広報事業 1,291,294 正味財産合計 2,891,926 事業費合計(B) 24,474,724 負債及び正味財産合計 6,241,366 管理費(C) 5,858,492
当期支出合計(B)+(C)=(D) 30,333,216 当期収支差額 (A)−(D) 3,465,333 前期繰越収支差額 (E) △573,407 次期繰越収支差額
(A)−(D)+(E)2,891,926
| 国連人権理事会での活動報告 | ||
| A.パタースキ |
昨年の12月2日〜10日、当基金の会員2人が国連人権理事会のセッションに参加してきた。当基金以外は拉致被害者家族会、アジア人権人道学会のそれぞれの代表、さらに弁護士1名がジュネーブに出かけた。
団体での初めての国連活動だったが、今回は私たちにとって最も良い機会だった。なぜかというと、人権理事会にUPR(普遍的定期的審査)という新しい人権レビュー・メカニズムができたこと、そのメカニズムでは4年毎にすべての国連加盟国の人権状況が審査されること。そして、今回は北朝鮮が人権状況を審査される番に当たっていたからだ。
今回の国連活動の準備としては、昨年の7月から当基金が人権理事会加盟国の在京の大使館を訪問し、北朝鮮の人権問題を紹介したり、どう勧告してもらいたいかを話した。
ジュネーブでもこのロビー活動を続けたほか、「サイド・イベント」と言われるパネル・ディスカッションや記者会見も行った。
北朝鮮のUPRへの対応は?
UPRは多くの国連プロセスとは違い、審査結果を「決議」するのではなく、「勧告」するのである。つまり、人権理事会加盟国とそのほかの勧告したい国が、審査される国に質問したり 勧告したりするのだ。審査される国には、その勧告に対して、<その勧告を受ける(賛成する)>・<否定する>・<3月まで参考にする>という3つの選択肢がある。
* 1
今回、北朝鮮は最も弱めたグレードの低い勧告にしか「賛成」しなかったのだが、「参考にする」と選択した勧告も少なくなかったのだ。つまり、すぐに否定しない勧告が多くあったということだ。
この結果が、どれだけ北朝鮮が国際社会に入る意思があるのかということを反映しているのかがわからないが、北朝鮮は今回のUPRに多少まじめに参加したとも言えるだろう。
*1)北朝鮮の人権状況に関する報告の後、それに対する北朝鮮の反論、弁明があった。
事前に申し出があった60カ国の代表部から各2分ずつ質問や意見が出され、それにたいして北朝鮮側が弁明や反対意見などの発言をし、3つの選択肢を選ぶ。
各国はただ、意見や質問を述べるだけで、議長国が発言時間の制限や最終的な終了を判断する。北朝鮮の持ち時間は60分、各国の発言時間と合計すると3時間であった。
北朝鮮に対するUPRの効果は?
一つの注目すべき点は北朝鮮の拉致問題に関する構え方だ。韓国の拉致問題に関して、北朝鮮のさまざまな人権問題に甘かった韓国には「拉致問題は存在しない」と述べた。一方、日本の拉致問題については、「この犯罪を起こした責任者は処罰された」と言うのだ。ということは、拉致問題に限らず、どの人権問題にしても北朝鮮には圧力をかけることが一番効果的なのではないだろうか。
では、このUPRというメカニズムは結局どの程度、効果があったのだろうか。北朝鮮の代表団が参加し、まじめに質問や批判を受けたことが一つのよい結果と思われる。しかし、それぞれの国が強制力の伴わない「勧告」しかできないということが、北朝鮮への勧告の効果を全体的に弱めたわけである。
今回のUPRはこれで終了するのではなく、今後のフォローアップも非常に大切なことである。したがって、これから当基金はフォローアップとして北朝鮮の人権状況をモニターし、プレスリリースなどをするつもりである。
| 韓国での北朝鮮人権問題政策協議会に出席 | ||
| 野口孝行 |
去る1月14日と15日の2日間、北朝鮮による人権侵害の問題を幅広く討議する会議が韓国ソウルで開かれ、当基金の代表として出席してきました。会議は、韓国国家人権委員会、北朝鮮難民と人権に関する国際議員連盟(IPCNKR)、北朝鮮人権団体連合会の共催でした。北朝鮮の人権問題に関し、政府とNGOが今回のような大きな規模で会議を開くのは初の試みらしく、2008年に親北政権から保守政権へと政権交代がなされたことが、こうした会議を可能にした最大の要因となったようです。
第8セッションまで行われた会議では、北朝鮮を変化させるための方策や、拉致問題の解決に向けての取り組み、脱北者定着のための政策などが語られました。NGO関係者らが提言という形で発言し、それらを今後の政策に反映させていくとのことでした。
私が発言を行うことになっていたのは、第7セッション「中国国内の脱北者の人権増進と脱北者救援活動を活性化する方策」です。5分間という短い時間でしたが、以下のような内容の発言を行いました。
中国の一般民衆との連携を
「脱北者救援に携わっているNGOにとって、中国は常に頭の痛い存在だ。仮に中国が脱北者に対する姿勢を人道的かつ国際法に則った形に転換してくれれば、脱北者問題はほぼ解決するはずだが、中国がそのような姿勢を見せることは共産党一党独裁体制が続く限りありえないだろう。しかも中国は北朝鮮が崩壊することを望んでいないと思われる。よって、脱北者問題に対する中国政府の方針の転換に過度な期待を寄せることは現実的ではない。
経済の発展に伴って中国は大きな力を持つようになった。その力を背景に、人権問題に関する国際世論に耳を傾けなくなる可能性は今後さらに高くなる。
その兆候はすでに見られている。現在、在中国の日本公館に日本行きを待つ脱北者たちが滞留しており、日本政府は中国に対し、人道的な措置として出国を要請しているが、保護してから1年以上が経過しているにもかかわらず、依然として出国が許されない。
中国との経済的な結びつきを強くしたい各国は、人権問題について中国に強く出ることができない現実もある。実際、今の日本経済も中国頼みであり、経済関係を犠牲にしてまでも、中国に対して人権問題で激しい論争を巻き起こすだけの気概があるとは思えない。
しかし、なす術がまったくないのかというと、そうでもない。中国が豊かになるにつれ、国民の権利意識は高まりつつある。毎年10万件規模の抗議デモが発生しているのはその表れだろう。政府が国民の権利を蹂躙するような事柄に対してはっきりと不服の意を表明する人が増え、彼らをサポートしようとする一般庶民も増えている。こうした流れの中で、中国国内には人権派弁護士が誕生し、国内の人権問題に取り組み始めている。
だが、彼らの存在は中国政府にとって望ましいものではなく、彼らは孤立無援の立場に置かれることが多い。そのため、彼らは価値観を共有できる外国のNGOとの協力を欲しているとの報告がある。そこで今後は、私たちと人権意識を共有する中国の一般市民と手を結んでいくことも中国政府に対する戦略の1つなのではないかと考えている」
以上の内容は、昨年末に開かれた「アジア人権人道学会」で語られたテーマをそのまま参考にした主張ですが、いくつかの団体から「非常にいい考えだ」「私たちも一緒に連携させてほしい」との評価をいただきました。今後は、具体性を真剣に探っていこうと考えています。
基金によって救われた元脱北者と面会
会議2日目、基金の助けによって1年前に韓国に来ることができた女性に声をかけられました。基金からはお金を要求されることもなく、脱北後たった20日で韓国に来ることができたと嬉しそうに話してくれました。自身の韓国行にお金を使わずに済んだため、そのお金で家族を呼び寄せたいそうです。「基金の皆さんに感謝します」とのことでした。*ウエブサイト編集部注
会議後 ソウルの仁寺洞において北朝鮮問題啓発パフォーマンスに参加しました。その模様がユーチューブにアップされましたので、ご紹介いたします。
http://www.youtube.com/watch?v=7dfFzHVev3Y
| 北朝鮮の人権問題と脱北難民に関する日本の外交政策への提言 |
9月16日、民主党の鳩山由紀夫代表が新首相に指名され、政権交代が行われました。私たちはNGOとしての立場から、北朝鮮難民問題に関して、また広く北朝鮮の人権問題に関して、新政権が取るべき政策に対し積極的に提言すべきであると考え、話し合ってきました。この提言書の原案はヒューマン・ライツ・ウォッチが英語表記で作成し、4つのNGOが推敲したのちに代表が署名しました。今回、提言内容を当基金会員にお知らせするために、和訳文をここに掲載いたします。 (編集部)
〒100-8968 東京都千代田区永田町1-6-1
内閣官房 内閣広報室
総理大臣 鳩山由紀夫 殿
2009年11月19日
拝啓 私どもは、日本の新政権に対し、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)における人権問題について、これまでの政権より積極的でリーダー的な役割を果たして頂くことを強く要請したく、本書簡をご送付申し上げます。
敬具
日本政府は、北朝鮮における人権状況、とりわけ日本人拉致被害者の人権状況に対する国際社会の認識を高めるため、重要な役割を果たしてこられました。国連総会や国連人権委員会における北朝鮮の人権侵害を非難する多くの決議の共同提案者ともなってこられました。また1990年代及び2000年代前半に北朝鮮で起きた飢饉の際には、日本は多大な食糧援助を行いました。
1970年代から80年代にかけて北朝鮮の工作員が13人の日本人を拉致した事実を2002年9月に金正日総書記が認めて以来、日本政府はこの問題を解決するために大変な努力を積み重ねてこられました。その結果、日本政府はそのうちの5人とその家族を帰国させることに成功しました。拉致され過酷な人権侵害の被害者となった自国民の保護に向けた日本政府の尽力と断固とした姿勢を、私どもは高く評価いたしております。
私どもは、貴殿の政権において、北朝鮮の人びとの悲惨な状況に対しても、同様の姿勢で取り組まれることを要請いたします。日本政府はこれまで北朝鮮の人権状況を強く非難してきたものの、例えば、日本への受け入れは、日本人の親族をはじめとする日本との関係を持った人に限られており、北朝鮮難民に門戸を開いてはおりません。
中国政府に対する脱北難民の認定・保護の働きかけや、日本に関連性のない脱北難民の受け入れ、過去に北朝鮮に渡ったものの日本へ帰国した人びとの受入れの継続などを、日本政府は進めていくべきと思量いたします。そうすれば、日本政府は、北朝鮮との今後の二国間対話において、北朝鮮で人権を促進し保護するために、さらに積極的で重要な役割を果たすことができると思量いたします。
北朝鮮における人権問題に関する多国間および二国間交渉の強化について
北朝鮮の人権状況は依然として悲惨であります。組織された反体制勢力、独立した労働組合、自由なメディア、独立した市民団体、宗教の自由のいずれも存在いたしません。また、重大かつ構造的な人権問題たる、恣意的逮捕・拘束・拷問や、被拘禁者に対する非人道的で品位を損なう処遇が行われ、刑事訴訟手続上の適正手続もございません。現体制を批判する可能性があると見なされた者への弾圧は非常に厳しく、政府に批判的意見を言う人物や活動家の北朝鮮内での存在は確認されておりません。
日本政府におかれましては、北朝鮮政府に対し、人権関連の議題も二カ国間協議に加えるよう要求していただきたく存じます。人権関連の議題には、北朝鮮に居住する日本国民、元日本国民、その配偶者及び子どもの消息を明らかにする事に加えて、以下に掲げさせていただいた主要事項を含むべきであると思量いたします。・ 公開処刑を、直ちにかつ永久的に禁止するとともに、死刑廃止に向けて対策を講じること。北朝鮮は、国家財産横領、食料買いだめなどの“反社会主義”とみなされた犯罪を理由に、人びとを(多くの場合子どもの眼前で)日常的に処刑しております。
・ 国連の人権機関に協力し、国連特別報告者の訪朝及び人権高等弁務官事務所の技術支援を受け入れること。なかでも、あらゆる形態の拘禁施設に対し、国連などの中立な国際専門家が視察を行うことと、こうした視察をもとにした勧告を実施することが特に必要とされております。
・ 政府の許可無く脱北し、その後自主的に帰国又は強制送還された人びとへの処罰をやめること。
・ 韓国の戦争捕虜や韓国や日本の拉致被害者とその家族のなかで、北朝鮮を出国して日本など国外に向かう希望を持っている者に対し、出国ビザを出すこと。各人の意思確認に際しては、赤十字国際委員会が、他の北朝鮮国籍の者の同席のない状態で聞き取り調査を行い、各人の意思を中立的に評価すべきと思量いたします。食糧援助について
北朝鮮は、数百万人が犠牲となった1990年代の飢饉からは立ち直ったものの、今も多くの人びとが食糧不足に悩まされております。2009年9月、世界食糧計画は、北朝鮮の女性と子どもの1/3が栄養失調であると発表。最も脆弱な立場におかれた人びとが食糧を食べられるためには、あと180万トンの食糧が不足しており、この不足分を輸入若しくは援助によって填補しなくてはならないとしました。
私どもは、人道援助は継続されるべきであり、人道援助が政治のツールとして使われることがあってはならないと考えております。一方で、そうした援助の分配をモニターすることが極めて重要であるとも考えております。人道援助は、幼児、高齢者、障がい者、妊婦、子育て中の女性など、最も脆弱な立場の人々に届くべきであり、ドナーは、援助が意図した人びとに届くよう確保すべきであります。
国家の食料配給制度が劣化し、援助食糧が市場の商品と化していくにつれて、食料の価格が高騰し、多くの北朝鮮の人びとは十分な食料を得ることができなくなっております。市場の“浸透(トリックルダウン)”効果は、経済構造の最下層にいる人びとが十分な食料を得られることを保証するものではありません。以上の理由により、私どもは、日本政府が北朝鮮に対し以下を働きかけるべきであると思量いたします。・食糧援助の支給に対し、透明性とアカウンタビリティの国際基準に則った適切なモニタリングを受け入れること。国際基準とは、援助の必要性を調査するための国内全域へのアクセスや、食糧援助支給の現場への視察の許可などを含みます。
難民について
北朝鮮を脱北した難民たちの悲惨な状況は、日本国内はもちろん国際的にも比較的良く知られております。1990年代半ばの飢餓以来、数十万人もの北朝鮮の人びとが、国境を越え中国に向かいました。これらの人びとの数は大きく減少したものの、広範な食料不足から逃れて収入を得るために国境を越える脱北者は、いまでも後を絶ちません。中国政府は、こうした脱北者を難民として保護する義務があるにも拘わらず、脱北者を、逮捕し強制送還することもたびたびございます。
強制送還された人びとは、拘禁、非人道的処遇、拷問、強制労働収容所送りや、いわゆる政治犯強制収容所送り、処刑など、激しい人権侵害の犠牲となっております。
日本の国境、大使館や領事館に到着する脱北難民の庇護希望は、1951年の難民の地位に関する条約及び1967年の難民の地位に関する選択議定書に基づき、審査されるべきであります。しかも、2006年に成立した「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」(北朝鮮人権法)のもと、日本政府は、脱北難民に対する保護と支援に関し、施策を導入することとされております。私どもは、日本政府に以下を提案いたします。
・ 正式な許可なしに北朝鮮を出国する国民に対する刑罰を廃止し、実務上刑罰を停止し、北朝鮮に強制送還された人や自主帰国した人を国際的にモニターできるようにするよう、北朝鮮に働きかけること。北朝鮮を出国した人びとに加えられる迫害のため、毎年何千人もの後発難民*1(refugees sur place)が発生しており、地域の不安定化の要因になるとともに、北朝鮮とその周辺国との緊張を深刻化させております。
・ 中国政府に対し、脱北難民の逮捕・送還を止め、1951年の難民条約で中国政府に義務付けられている、難民へのシェルターの提供と保護を行うよう要請すること。また、中国政府に対し、国連難民高等弁務官事務所が脱北者の地位を審査できるように脱北者へのアクセスを認め、安全で迅速な中国国内での定住または第三国へのトランジットを支援するよう求めること。
・ アジアの他の国々、特に中国政府と交渉して、日本の在外公館に保護を求めるすべての脱北難民が、日本を含む希望の定住先に向けて安全に移動できるよう、迅速な支援を受けられるよう確保すること。
・ 日本の在外公館に対し、脱北難民を受け入れて保護し、第三国へのトランジットを支援するのが原則であるというはっきりした指示を出すこと。
・ 日本の安全保障上の懸念を解決するための各地の入国管理局、海上保安庁、各地の警察の協力した措置を取り入れたうえで、北朝鮮からの難民たちの認定、身元確認、定住措置のためのわかりやすいプロセスを確立し、帰国者たちが自らの身元証明のために日本に住む親族に頼らなくてすむようにすること。
*1)自国を出たときは難民でなかったが、後になって難民となる意。脱北者は食うために越境したが、それが北朝鮮では過酷な刑罰を課される反逆罪とみなすため、難民とならざるを得ない。日本からの北朝鮮への大規模な移住について
北朝鮮の悲惨な人権状況によって、多くの日本人・元日本人・元日本居住者・その配偶者や子どもたちは、何十年にもわたり影響を受けてきました。しかし、その事実は、日本以外では必ずしも広く認識されておりません。1959年から1984年にかけて、93,300名を越す人々が、日本から北朝鮮にむけて、両国の赤十字社の合意に基づいて移住いたしました。北朝鮮に移住したなかには、1910年から1945年にかけて奴隷的労働力として日本に強制的に連行された朝鮮人や、日本で生まれ育ったその子孫や、そうした朝鮮人やその子孫と結婚した約6,000人の日本人などがいました。
脱北者(日本から北朝鮮に移住した後脱北した人びとも含む)によると、日本から北朝鮮に移住した少なからぬ人びとは、北朝鮮政府によって、最終的に強制労働収容所に送られたとのことであります。多くは、そこで、餓えや、医療を受けられないことや、虐待により、命を落としていったといいます。強制労働収容所送りを避けられた人びとも、その多くは、ほとんどの所有物を強制的に国家に寄贈させられ、限られた資産で北朝鮮での新しい生活を始めるよう強いられました。
北朝鮮に移住した人びとのすべてではないにしても、その多くは、北朝鮮の抑圧的政策や貧困に対する知識のないままに移住していきました。北朝鮮体制派組織による移住推進運動が始まった1959年から数年の内に、日本政府は、日本から北朝鮮に渡っていった人びとが困難に直面している事実を認識いたしました。その後20年にわたり、日本政府には、この事実を明らかにし警告を発する機会がありました。しかし、その機会は無視され続けたのであります。
これまで、日本政府は、移住していった在日朝鮮人だけでなく、その日本人配偶者(その殆どは女性)やその子どもの悲惨な状況にも、あまり(特に拉致被害者に対する関心と比較すると)関心を払ってきませんでした。北朝鮮に移住した多くの人びとは、高齢、病気、投獄や1990年代の飢饉などの結果、すでに亡くなっていると考えられます。しかし、その一部は、支援の手を必死の思いで待ち続けながら、今も生存している可能性がございます。
日本政府には、こうした人びとに対する道義的・人道的責任がございます。私どもは、日本政府に対し、これらの人々の身元に関する総合的なデータベースを作成するとともに、捜し当てて日本にいる家族や親族と自由に連絡が取れるようにするために北朝鮮政府と精力的に交渉するなど、問題を解決するための力強い措置を講じることを提言申し上げます。データベースが完成した暁には、日本政府は、長い間離別させられた家族や親族との定期的な再会を実現するため、北朝鮮と直接交渉を行うべきであります。
現在、日本政府は、脱北者に対し、日本在住の親族から身元を証明してもらうことを義務付けております。しかし、北朝鮮体制派組織に所属する親族が、脱北者の身元確認を拒否するケースがこれまでにも見受けられました。北朝鮮政府は、正式な許可のない出国を犯罪と見なしており、北朝鮮政府に忠誠を誓う人びとは、脱北者を裏切り者として遠ざける可能性もございます。全ての日本国民、元国民、元居住者、そうした人びとの配偶者及び子ども(北朝鮮で生まれた者を含む)が、日本国籍、永住権若しくは難民の地位を(その身元確認を親族に依存しなくても)回復若しくは取得できると、日本政府は明確に表明するべきであります。
私どもは、日本政府に以下を提言いたします。
・ 1959年から1984年にかけて日本から北朝鮮に移住した日本人・元日本人・元居住者・その配偶者や子どもの総合的なデータベースの作成。
・ すべての日本人・元日本人・元居住者や、その配偶者や子どもの日本帰国を認め、国籍若しくは永住権を回復させ、若しくは難民の地位を認めること。
・ 上述した移住者たちを捜すとともに、日本にいる親族と連絡をとって定期的に再会できるよう、北朝鮮政府と交渉すること。
・ 北朝鮮から日本への帰国者及び日本に定住する脱北難民に対し、必要な語学教育・職業訓練・医療サービスを提供すること。または、そのようなサービスを提供するNGO向けの基金を創設すること。北朝鮮のような国の人権状況を改善することが極めて困難であることは、私どもも十分に承知をしております。しかし日本政府は、日本人・元居住者・その家族・脱北難民、そして北朝鮮の一般民衆の今も続く苦悩をやわらげ、北朝鮮に対して人権状況を改善するよう強く働きかける機会を有しておられます。困難ではあるもののこの極めて重要な本件について、日本の新政権が指導的役割を果たされることが極めて重要であると私どもは思量いたします。
本件について、総理とお話し合いをさせていただく機会をいただきたく、あわせて申し入れさせていただきます。
敬具
ブラッド・アダムズ (ヒューマン・ライツ・ウォッチ アジア局長)
ユン・ヒョン (北韓人権市民連合 理事長)
加藤 博 (北朝鮮難民救援基金 代表理事)
三浦 小太郎 (北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会 代表)
| 待望のロードショー! 「クロッシング」 | ||
| 四谷みどり |
その公開が待ちに待たれていた映画「クロッシング」がいよいよ4月半ばロードショーということになった。
北朝鮮の庶民の暮らし、親を亡くし生きるために放浪の身とならねばならなかった子どもたちの姿、強制収容所の言語に絶する実態、そして苛酷な脱北のプロセスなどが、驚異的なリアルさで描かれているこの映画は、一昨年韓国で公開されると、百万人の人々が涙したという。
2008年韓国映画評論家協会賞音楽賞(キム・テソン)、イチョン春史大賞映画祭にて多数の部門賞受賞。2008 年米国アカデミー賞外国語映画部門韓国代表作品、2009年米国ハリウッド映画祭グランプリ受賞等々、すでに映画界において各方面で非常に高い評価を得ている作品である。
この映画のキム・テギュン監督は次のように語っている。
「私の人生で忘れられない記憶のひとつは/10年前に見た北朝鮮に関するドキュメンタリーである。/子供たちと家族が一緒にいるところで/テレビを通して余りにも胸の痛い映像を見てしまった。/コッチェビといわれる5、6歳の幼い子供たちが/道端に落ちているウドンを拾って、汚いどぶの水ですすいで食べていた。/私は言葉が出なかった。/私が存在しているということ、私が生きているということに対する/とてつもない懐疑にとらわれた。/すぐ近くで、すぐに行けるに違いない所で起きていることが信じられず、/恐ろしく、また恥ずかしかった」(太秦制作「クロッシング」パンフレットより)
私たちもああやって生き延びてきました
5年あまり前、私はソウルで初めて私たちの教育里子に会った。ちょうどその時期は韓国の国会議員会館内で北朝鮮の難民と人権問題に関するさまざまのイベントが行われており、私たちも元里子たちと一緒にその会場に行った。会場の一角のテレビ画面に、市場にいる痩せて汚れた身なりの男の子が映っていた。次の瞬間、その子はぬかるんだ地面から何か食べ物らしきものを拾い上げて一目散に走り去ったのである。
胸の痛む思いでその画面を見つめていた私に、すぐそばで同じ映像を見ていたJが「私たちもああやって生き延びてきました」と言った。彼女は十歳を少し過ぎた頃、亡くなった親を妹と二人で埋葬して、中国に逃れてきたのである。彼女は現在韓国に住み、結婚して赤ちゃんも生まれ、幸せに暮らしている。しかし、その背後にはどれほど多くの子どもたちが、大人たちのせいで無垢の命を散らしていることだろう。
私は「クロッシング」を一昨年試写会で2度観ているが、この映画にはそういう子どもたちが何人も登場し、重要な役割を果たしている。
どうか一人でも多くの方に見てほしい
この映画の制作に当たって、キム・テギュン監督と脚本のイ・ユジン氏は脱北者百人以上に会って取材を重ね、メインスタッフやエキストラに約30名の脱北者を起用したという。そしてモンゴルと韓国江原道に完璧な形で北朝鮮の田舎の村を再現し、中国東北部やモンゴルの砂漠でのロケを敢行した。「クロッシング」は映画としての完成度も極めて高く、かつて日本が植民地支配をしていた地で、今何が起こっているのかということを冷厳に認識させてくれる。そして、家族とは、国家とは、また人間らしく生きるとはどういうことかということを、まさに迫真のリアリティと凄みで観る者に訴えかけ、問いかけてくる。
まず渋谷のユーロスペースでの上映が始まり、その状況いかんで全国約50の映画館での上映が可能になるという。
どうか一人でも多くの方に、まずはユーロスペースに足を運んでいただきたい。
| 旧・満洲国の気儘旅 | ||
| 大河鹿史峻 |
硬臥寝台車で北京から満州里に
2009年12月7日。夜の北京駅で電光掲示されている長距離電車発着の全国版を眺めていると、翌朝10時台「北京」発、夕方6時半頃「満洲里」着の電車を発見した。同硬臥寝台車切符を428元で購入。日中走行するのに寝台車とは少し豪華かも、と思っていたら、到着は同日ではなく、何と翌日の夕方のことだった。翌朝、これが判明するに至って、今回の旅程を「満洲里」のみへと急遽変更。広大な中国を実感する片道32時間半の列車の旅を満喫した。同じ区画の3人とは特に親しくなり、彼等の「ハイラール」(原子力発電所があり、またビール特産でも有名な都市)下車時、漢族男と蒙古族女の若いカップルから、「此処で一緒に降りよう!「満洲里」には明日改めて出直したら?」と強く勧められる等、長旅で多少退屈ではあったものの、結構楽しい心の交流もあった。
零下20℃の満洲里を歩き廻る
内蒙古自治区「満洲里」は、ロシア、モンゴルとの国境の町らしく、ロシア人の買い物客が街に溢れていた。街路の表示も、中国語、ロシア語、更にモンゴル語の3通り。店の看板も中国語とロシア語。まるでロシアに来たかのような錯覚があった。寒さも半端ではなく、連日何と零下20℃前後。露出した肌は寒さで直ぐに痛くなる。2泊目のホテル室内は逆に全館暖房25℃と暑く、温度調整で何度か窓を開け放したりも。大いなるエネルギーの無駄がここにもあった。
10日、同地観光第1日目。ロシア国境の「国門」をタクシーで訪問。偶然、貨物の国際列車の通過を眺めたり、他には誰も客の居ないロシアの観光物産館(複数)や巨大なマトリョーシカの公園、大雪原の真ん中に忽然と現れるマンモスの彫像群、抱き合う巨大な男女像等々の中を、私はリュックひとつで歩き廻った。
ここで閉じ込められてしまったら
2日目午前中は、近場の市内観光とし、「満洲里市博物館」と「帝政ロシア時代の監獄」探訪へ。前者は冬季閉館中で、隣の病院で掃き掃除をしていた小父さんが一緒に博物館建物を一周。誰か職員が居ないか声を掛けてもくれたが、反応は皆無。そもそもは日本人が建て、小学校として使われていたこと、新中国成立後は博物館へ、という由来を話してくれた。
後者では、入口に大きな錠が掛かっていて、同様、今は観光客には閉鎖されている感じ。しかし、やはり庭を清掃中の番人を発見。物は試し、と声を掛けてみると、「地球の歩き方」には入場料30元とあるところ、10元で入場可とのこと。わざわざ私一人の為に、開門・開錠してくれ、更に全館の照明も点けてくれた。地下の審問室、其処で使われた各種拷問用具、水牢、冷たいコンクリートの地肌に若干の麦藁が敷かれ、他には大小便用のバケツや壺が置かれただけの、如何にも暗く寒々とした囚人房。他には誰一人として居ない中、フッと、若し番人に悪意があって、私が人知れず閉じ込められてしまったら、・・・忽ち、凍え死んでしまうのだろうナ、と思った。
華やぐクリスマス
街の中はクリスマスが近く、ロシア正教会信者のロシア人の為か、クリスマス関連のイルミネーションやデコレーションに覆われ、特に夜、とても華やかで綺麗だった。
また、街の至るところに、既に沢山の雪氷像が造られ、或いは大勢の人々が雪氷塊の上に上がり、スコップを振るって現に諸々の像を制作中だった。「ハルピン」の雪氷祭りは夙に有名であるところ、小規模かもしれないが、「満洲里」の雪像群も劣らず美しく、正に一見の値打ち有り!と確信したことだった。
11日午後、今度は国内線航空機で北京へ。やはり前掲書に例示してあるより遥かに安い810元の航空運賃で、丁度2時間の空の旅であった。
| お知らせ |
■ 1月29日 映画「クロッシング」の試写会があります!
この作品は2008年東京国際映画祭招待作品として上映され、好評を博しましたが、その後、日本では長く上映権が塩漬けにされてきました。このたび、この映画をぜひ上映してほしい、見たいという多くの方々の熱意が実を結び、一般公開へと動き出しました。当日は監督キム・テギュン氏、当基金の加藤博の挨拶、記者会見では元コッチェビであった、現在は大学生のお話もあります。
日時:1月29日(金)13:30 挨拶、14:00より上映、16:00より記者会見
会場:韓国文化院 2F ハンマダンホール
東京都新宿区四谷4−4−10 TEL. 03-3357-5970
交通:東京メトロ 丸ノ内線「四谷三丁目」駅1番出口より徒歩2分
http://www.koreanculture.jp/intro_access.php
■ 2月6ー7日 ワン・ワールド・フェスティバルで会いましょう!
今回はブース出展をするだけではなく、加藤博・代表理事による講演会「北朝鮮難民(脱北者)の現状と人権」を企画しています。当日のお手伝いをしてくださる方も募集しています。一緒にやりましょう。連絡は下記の当基金事務所まで。
日時:2月6日10時―17時、2月7日10時―16時
会場:大阪国際交流センター(アイハウス) 大阪市天王寺区上本町8-2-6
http://www.ih-osaka.or.jp/i.house/900/map.html
講演:2月6日 14:30−15:30
大阪国際交流センター3階 会議室5号
■ 「拉致と朝鮮総連」が出版されました
12月25日、鄭龍男氏ら共著、植田剛彦氏の総合監修による「拉致と朝鮮総連」が日新報道より出版されました。価格は1,890円。内容は拉致・核弾頭ミサイル・先軍恐怖政治の真の目的を情報公開し、北朝鮮政権・朝鮮総連・親北勢力の北東アジア工作を明らかにし、拉致犠牲者全員の救済と韓半島自由平和統一策を提言するという内容です。鄭龍男氏は民団中央本部平和統一推進委員会委員で、(NPO)ピープルリンク理事長もしておられます。 http://www.peoplelink.jp/