北朝鮮の子供たちが使っている教科書の紙の質に驚く訪問者たち
             グローバルフェスタ JAPAN 2008
にて

                C O N T E N T S

  北朝鮮人権侵害啓発特集号   
     
   2008 北朝鮮人権侵害問題啓発週間 NGOイベント   
  投稿 北朝鮮人権侵害問題啓発週間によせて …………………  川島高峰
  当基金が東京弁護士会人権賞を受賞  
  中朝国境最近情況 2008年11月 ………………………………… 南 相南
  聞き取り 脱北定住者の今(U) ………………………………… 加藤 博
  第11回総会報告と会計報告   
  お知らせ  
 
  2008北朝鮮人権侵害問題啓発週間       ← Click here         
     
   投稿    北朝鮮人権侵害問題啓発週間に寄せて
    「アジア人権人道学会の設立準備」と
        「価値と情報の共有」が必要
         明治大学情報コミュニュケーション学部 准教授 川島高峰 


 日本版「北朝鮮人権法」が成立して3年目を迎えた。北朝鮮の人権侵害問題は北朝鮮、韓国、日本、中国という北東アジアだけの問題ではなく、いまや国際的な人権問題となったとみなされている。これまでの人権人道の活動をより発展させ、学術と活動の連携という問題意識にも発展してきた。ここに新たな問題提起をいただいたので紹介する。
                                  (編集部)

  そもそも、北朝鮮の問題に私が関心を持つようになったのは、そこに深刻で大規模な人権侵害問題があることに気づいたからです。今から11年前になりますが、東京都港区青山で北朝鮮に食糧人道援助を行うための大きな集会がありました。韓国のNGO・良き友による画期的な調査報告なども行われていました。主体農法への批判なども行われていました。しかし、会全体の目的は、人道援助上、最も困難とされる北朝鮮への食糧援助をどのように行うかというものでした。


小川先生の訴えとの出会い

 その時です。ある男性が一冊の本を片手に、懸命に大きな声で訴えたのです。北朝鮮の現状を皆さんはよく知らないのではないか、とにかく、この本を一度読んでみてください、読めばわかります、確か、そのように訴えていました。議事を、遮るような形で大きな声を張り上げるので、私は非常に驚いてしまったのですが、実は、これが北朝鮮の認識を変える大きな契機でした。私は、帰宅後、間もなく、その男性が手にかざしていた本を購入し、衝撃を受けました。安明哲『北朝鮮絶望収容所 完全統制区域の阿鼻地獄』です。間もなく、そのある男性が、守る会の小川晴久先生であったことを知りました。小川先生の訴えと出会わなければ、私は北朝鮮の食糧人道問題にもっと長く拘泥していたでしょう。
 
北朝鮮の人権問題を専門に扱う学会がない
 学会設立の説明に際し、なぜ、この話をするのかと言いますと、大学という情報の坩堝にいるはずの私が、北朝鮮についてより深く、より早く知る契機となったのは、外でもない大学の外部だったのです。そもそも、北朝鮮の人権問題を専門に扱う学会というものがないのです。この国では人権問題に関する学会や研究会が、かなり以前からたくさんあるにもかかわらずです。
 特定失踪者問題調査会が、2002年の小泉・金正日平壌会談の、はるか以前から、拉致問題を提起してきたにもかかわらず、日本のアカデミズムは、これを正面から取り上げようとはしませんでした。むしろ、拉致疑惑に否定的な論調が主でありました。

日本のアカデミズムの巨大なベール

 チベット問題、ウィグルの問題にも似たようなことが言えると思います。日本のアカデミズム全体が巨大なベールのようになりアジアの人権と人道の上を覆っているように見えることがあります。そのベールはロシア(旧ソ連)から、北朝鮮、中国、モンゴル、ミャンマー、ベトナム、ラオス、民主カンボジア(ポル・ポト政権)の上にかかっています。これらの地域に関する人権情報は、明らかに、学術の場よりも現場で人権・人道活動に関わる団体や、報道関係者の下に蓄積されています。
 アジアの問題よりもパレスチナ問題、ダルフールなどアフリカの問題に眼を向けるべきだという声を耳にすることがあります。人権、人道問題について地域に軽重を付けることはできません。つけるべきではありません。しかし、アジアから眼を転じさせるために、他の地域の問題の深刻さを強調するという手法が取られてはいないでしょうか?
 ミャンマーを軍事独裁政権と呼び、それが旧日本軍部の負の遺産であるとの言説を聞きますが、なぜ、ミャンマー的社会主義の負の帰結がより深く考察されないのでしょうか。社会主義圏・旧社会主義圏のみに問題があると言うのではありません。ベールがかかっているということを言いたいのです。このベールを改めて見直してみると、それが中国を中心とみなしたとき、地政学的にその衛星国に位置する国々にかかっていることは、単なる偶然なのでしょうか。
 この日本にとって冷戦後のアジアの人権と人道ほど、このことを強く突きつけてくる場はないでしょう。「東アジア・東南アジアを中心としたアジア」に比重を置いた理由は、ここにあります。アジアの人権と人道をどのような比重で評価しているか、これは私たちのアイデンティティと関係性を持っているのです。

今日もアジアの片隅で

 「学会」というと何か高遠な理念を目指すように思われるかもしれません。私が「学会」で考えたのは、学問を根底から考え直したいと感じたからです。もし、私が「アジア人権人道学」の学問形成を目指すと高言したら、人権人道問題の現場で活動されている皆さんは、何か空々しいものを感じるのではないでしょうか。それは学者の自己満足である、それは学問のための学問である、と感じられることでしょう。

アジアの人権人道の現場から学問の在り方を再考

 私たちは、すぐに国家観や、歴史観で他者と相いれなくなってしまうことがあります。何でもすぐに国家観や、歴史観に原因があるのではないかと思ってしまうところがあります。何がより正しい歴史観なのか、何がより優れた国家観なのかを、過分に競ってしまうところがあります。
 しかし、人が幸福であるためには、必ずしも壮大な国家観や深遠な歴史観は必要ではありません。それどころか、その壮大なはずの国家観や歴史観が、どれほど多くの人々の幸福と祈りを、そして、絆を踏みにじってきたことでしょうか。
 学問や学者というものが、しばしば、知の卓越性や完成度を競い、排他的となり、党派性に凝り固まり、ついには人権と人道を見失った時代があったことを、冷戦後のアジアは余りにも多くの心身に痛みを深く刻み続けることによって、今も示し続けています。
 今日もアジアのかたすみで、人権人道活動家がその痛みに応えようとしています。
 私たち大学人は、その現場の一つ一つを知ることから、考えることを初めなければなりません。
 人権人道を学問的に探究するのではなく、アジアの人権人道の現場から学問の在り方を根本から再考することが必要です。

アジア人権人道学会とは

 21世紀のアジアでは「人の移動をめぐる人権・人道問題」が、諸国家間で、そして個々の国の社会の中で利害と文化の摩擦の原因となる。これは先進成熟社会に位置する日本とこれら途上国の間で人権のスタンダードをめぐる「人権・人道の南北問題」となるだろう。
 日本では旧来の単一民族的な社会イメージが共同体の規範を形成してきたが、現実には外国人の移入が年々、増大し、「21世紀の内地雑居」が進行しつつある。
その一方、年間の邦人出国者数は1700万人に及び、もはや、日本人の人権は、日本国のみを啓発や擁護の対象としているだけでは、日本国籍保有者の人権を守ることができない時代になりつつある。即ち、「国内人権問題の国際化」と「国際人権標準の国内化」を包含した新たな理念の創造が必要である。
本学会は、広義には、このような現状認識の下、「道義ある安全保障」という理念から、日本とアジア社会に共有・共感され得る新たな思想・文化の創造を目指すものである。そして、「人の移動をめぐる人権・人道問題」の解決において、我が国が名誉ある地位を果たすことを指すものである。
学会は、この問題について、@現場で活動する民間の諸団体、A当該地域の地域研究の専門家、Bこれに関わる公的な国内行政機関、Cこれに関わる公的な国際機関、D報道機関及びその関係者の間での連携を、学際ネットワークの機会の構築・提供する。
これにより、アジアの人権人道問題に関する@社会に対する啓発・広報を行い、A学術研究に対する助成獲得を通じ、人権人道活動を支援する。

   北朝鮮難民救援基金が
      東京弁護士会人権賞の受賞者に決定!
           : 


北朝鮮難民救援基金は、東京弁護士会から2008年度の人権賞を受賞することになり、以下のように、東京弁護士会事務局から記者会見および表彰式についてのご連絡をいただきました。
 記者会見は12月4日13:00に東京弁護士会6階の総務課で行われます。
 また、表彰式は1月7日(水)11:00から東京弁護士会2階「クレオ」で行われます。     
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2008年12月04日

第23回東京弁護士会人権賞受賞者       

特定非営利活動法人 北朝鮮難民救援基金
                     理事長  加藤 博
1998年9月設立
2003年5月 特定非営利活動法人認証


 北朝鮮難民救援基金は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)から第三国に脱出した難民に対し、彼らの安全を図り、生活を支援し、さらに「難民の地位に関する条約」に基づく難民として処遇されるよう、その保護、認定・永住を実現するための活動、及び北朝鮮国内の民衆に対して食糧の援助を行うことを目的とした団体である。
 北朝鮮難民救援基金は、すべて個人の募金で活動資金が支えられている組織であり、特定の政治思想に縛られることなく、また特定の政党、政治団体、宗教団体の支援を受けない非営利民間団体である。北朝鮮国内の状況がますます逼迫するなか、純粋に北朝鮮による政治的、社会的抑圧、飢餓と貧困に苦しむ人々の生命と人権を守るための活動を続けている。
 その活動範囲は、脱北者を匿うシェエルターの運営、脱北した子どもたちに教育を施す「教育里親プログラム」、援助物資が北朝鮮市民に直接届く方法での支援、韓国、日本、アメリカへの移住の援助、日本に帰還した脱北者の定住支援、諸々の国際会議の主催、運営など多岐にわたる。
 最近では2007年に発生した北朝鮮国内の集中豪雨被害で脱北者となった人々に対しシェルターを提供し、食料、薬品の等の配給を行った。
 2008年には、胡錦涛中国国家主席の来日に際し、脱北者に対する人権弾圧の中止を求める中国政府宛ての声明文を他の人権団体と共同で発表するなど、積極的な活動を行っている。
 北朝鮮の人権侵害問題は、国連総会でも三年連続で取り上げるなど国際的に注目され、関心が高い。
 北朝鮮難民救援基金の活動についてはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を初めとする国際機関との連携を初めとして、アメリカ、フランス、ベルギー、ドイツ、イギリス、カナダ政府、EU議会へのロビー活動を展開している。これらの活動は、諸外国のNGOからの評価も高い。またBBCを始め、海外メディアからの取材を頻繁に受けている。

   中朝国境最近情況/2008年11月
     冬服が売れない、魚はぜいたく品
     食糧難の到来を予感し金をため込む
     国境に瀋陽軍区部隊を増強
                                     南 相南 :

 11月16日、咸鏡北道茂山市で会った中古服の商売をする崔順姫(50歳)さんは、昨年に比べると今年は商売がぜんぜん駄目だと深刻に語る。
昨年だと、11月初旬ならもう冬服を買いに人々が市場に集まり、足を踏む場もないほど混んでいる。だが、今年は気候も去年より早く寒くなっているにも関わらず、服を買いに来る人々がかなり減っている。
 毎日の商売の僅かな利益で毎日の暮らしを立てている崔さんにとって、これは大打撃である。一日に服が一着でも売れないと、その日の食料が手に入れられないからだ。一日に服一着売るのが精一杯だという。一着も売れない日も多いので途方にくれている。
 北朝鮮では、女性たちが市場で商売して一家の生計を維持しているのがほとんどであるから、女性たちの嘆きが恨み節に聞こえる。市場の女たちはだれもが、今年の冬を越せるか否か、瀬戸際なのだと必死に買い手に声をかけて購買意欲を誘っている。
咸境道清津市から海産物を運んで、茂山で卸売り商売する鄭(47歳)氏も泣き言を並べる。

茂山物価 2008年11月15日調査 

 米     1500       トウモロコシ  700 
 小麦粉  2500   塩       1000 
 食用油  8000  大豆     2000
 もち米   2000  りんご    6500
 砂糖    2500  卵(個)    500 
 豚肉    4500  単位:北朝鮮ウォン/ kg


 10月末から清津の近海では豊漁で、魚価も安いのに市場で魚を探す人があまりいない。他の食糧値段が上がったことに比べれば、魚の値段はそれほどでもない。人々は魚が贅沢な食料だと思って、手を出さないのだそうだ。
「魚を買うお金がどこにあるのか?魚を買うお金があるのなら、とうもろこしでももっと買って置いたほうがましだ。例年より厳しくなってくる今年の食糧難を予感して皆がお金を使うのを惜しんでいる」と鄭氏は言う。

脱北事情に変化 − 脱出時期が早まる
北朝鮮から中国への脱北事情に変化がある。河が凍らなくても渡り始めている。
 毎年川が完全に凍る時期、12月終わり頃から3月末頃までが脱出時期だ。しかし今年は少し事情が変わっている。豆満江の流れがまだ氷結してもいないのに、10月末から11月中旬にかけて、中国へ脱出する住民が増えているのだ。川が完全に凍ると脱出には便利だが、それなりに厳しくなり、脱出が難しくなる。
 私がこれまで見ている脱北者はいつも何かに怯えている様子だが、このごろ見る顔の表情には何かゆとりが感じられる。万端準備したうえでの脱出に思えるのだ。

警察の取り締まりも時期早まる
 例年12月末から始まる中国側の脱北者の集中取り締まりも、今年は11月から始まっている。両江道恵山市と鴨緑江を挟んだ対岸の中国側の町、長白県から中国の内部の都市、瀋陽、北京へ移動する道路には既に複数の警備用のチェックポイントが設けられている。国境警備だけではなく武装警察も動員されている。すべての車両を止め、乗っている全員の身分証検査を行っている。
 都市間をつなぐ乗り合いバスに乗る時も乗務員が乗客の身分証を確認してから乗せるのだ。これまでにない厳格な対応が気になった。これでは中国の身分証を所持していない脱北者は、中国内部への移動がかなり厳しい状況である。

瀋陽軍区の部隊が国境に増強
 注目すべきことは、11月に入って人民解放軍瀋陽軍官区の部隊が中国北朝鮮国境沿いに増員が続いている。動きは目立たない、密かな動きだ。国境最前線の国境警備隊(辺防隊)武装警察隊、公安、その後ろに人民解放軍といった布陣になっている。移動はもっぱら夜間に小規模に繰り返し行われているようだ。
 これまで国境の村々に小隊規模の配置はあったが、今回は山の中に待機しているが、どれだけの兵員がいるかは村の誰も知らない。また、駐屯している地域への接近は出来ない。国道から山道に入る分岐点に兵士が歩哨にたっている。
 村人は近く北朝鮮で何かが起こるのに違いないと噂しあっている。中国政府も既に必要な対策は取ったと理解するのがよいのかもしれない。そして、脱北者はいよいよ国境を渡ることは出来なくなる日が近づいているのかもしれない。

金正日総書記のTV番組一色に染まる
 咸鏡北道羅津先峰経済特区に進出していた中国の貿易会社の社長が11月末に延吉市に戻り語ったところによると、11月からテレビ番組は、ニュース以外の番組がなく、すべて金正日総書記の活動ニュースを24時間流している。○○軍部隊を視察、○○サッカーの試合を観戦、○○を慰問といった過去のすべての番組を繰り返し放送している。
 人々は、「総書記がすでに死んでいるかもしれない」と密かに噂しているが、真偽の程は確かめようがない。当局が「死亡説」を打ち消し、社会不安を打ち消すために取っている措置が裏目に出ているようだ。
 
北朝鮮入国ビザを制限
すでに安定的な経営に入っていた貿易会社であったが、12月からは、会社の派遣要員は1社につき1人に制限され、ビザも1人にしか発給しないと通告されている。この会社に何か問題があったわけではない。
丹東にある中国側の貿易会社も同様の措置が取られている。
 この背景には、「新たな経済政策」が来年の2月には出されることと関係がある。しかし、この経済政策をめぐって権力内部の争いがあり、そのあおりを受けて、貿易活動を制限しているのだと言う。
 後継者問題をめぐる争いがこれに関係している。北朝鮮国内の人民保安省(社会安全部)が担ぐのは長男の金正男、労働党と労働党の組織指導部の副部長で金正日総書記の義弟である張成沢氏が担ぐのは、次男の金正哲組織指導部長だという(*)。
この問題の決着がどのようになるかは予測ができないが、関係者の間で重大な関心を持っている。後継者を決められないまま倒れたというのが第二経済委員会(軍需物資調達)関係者の話だ。

食糧の全面輸出禁止
 また、中国から北朝鮮へのコメ、麦、トウモロコシなどの穀類の食糧輸出は全面的に禁止された。それが、いつから始まったかは明確ではないが、11月初めにはすでに実施されていた。
 それでも輸出が許可さている食料品は加工食品に限り認められている。これまで個人が北朝鮮国内に持ち込める食糧はコメ200kgと限られていたが、北朝鮮側の入国ビザの厳しい制限で事実上全面禁止と同じ効果がある。
 そのかわり、急にロシアとの穀物取引が増え、ロシア人の姿が羅津先峰経済特区に目立っている。

<注>*日本や韓国のメディアでは、金正男を担ぐのは、金正日総書記の妹・金敬姫とその夫の張成沢のグループで、総書記と高英姫の二男・金正哲を押すのは社会安全部だとされる。

   聞き取り 脱北定住者の今(U)
        夢は、頑張ってヤキトリ店のオーナーに
          北に送還されたら銃殺刑、に身震い
                                     聞き手:加藤 博 *

 滞在ビザが切れてオーバーステイになるのに30日を切っていた。金春成は、先行きの希望のない顔をしてうなだれていた。
 彼は、韓国の申社長の紹介で基金の事務所に来たと説明した。しかし彼自身は、申社長に会ったことはないし、韓国に先に定住した母親が世話になった人道支援家なので間接的にしか知らない。申社長の名前がどれだけ役立つのか半信半疑なのだった。
 「申社長」は、人道支援家の間のコード名で本当の名前ではない。彼とは、ベトナムルートを使って孤児たちを安全圏に運んだ時の知り合いで、彼の紹介であれば、無理な頼みでも聞かなければならない。
 安心材料は、彼のビザが失効するまでまだ30日あることだった。

送り返されれば、厳罰の可能性
 それに、彼が北朝鮮からの出身で、「非合法的」な出国者であり、送り返されたならば死刑を含む厳罰に処せられる可能性が濃厚であるという状況のために、入国管理局が配慮してくれ、滞在許可が出る可能性もあることだった。
 入国管理局に対して事情説明をし、本人の嘆願書を提出してから、入国管理局での聞き取り、審査が毎月1回程度のペースで12月まで5回、毎回朝9時から午後6時まで行われた。
 同行する基金のスタッフも通訳もくたくただった。

仮放免、身柄は自由になったが
 結果は、彼が偽造の中国パスポートで日本に入国したこと、偽造パスポートを行使したことが罪に問われた。
 しかし、その罪で入国管理局に拘留されることはなかった。「仮放免」との裁決がおり、身柄は自由となった。
身柄は自由だが「仮放免」の身分では、仕事をすることが公式的には禁じられている。
 彼が一番困ったことはこのことだ。彼は働く意思はあったし、健康だった。彼の労働意欲を押しとどめることは難しかった。
 しかし、働けば違反行為で処罰されるし、最悪の場合、逮捕収監される恐れもあり、そのジレンマに苦しんだ。

警察官の職務質問にキレそう
 彼の話す日本語は申し分ないが、秋葉原では警察官に職務質問されたことがあった時に激しい争いになった。
 その時、仮放免の書類を見せたが、警察官はそれを理解せず、書類を持ったままなかなか返さないので、春成は腹を立てて警察官に「あなたは日本語が読めないのか」となじった。
警察官は、中国国籍と書いてあった書類を見て「お前のような奴は、日本にいる資格がない。早く中国に帰れ」とバカにした口調で命令した。
 彼はその時、本心から警察官を殴りたかったと語った。
 しかし、その時必死に自分に言い聞かせ、それ以上の論争をせずに、「もういいでしょう。書類を返してください」と、今度は丁寧に頼んで、仮放免書類を受け取った。
 それが今でも、彼には忘れられない事件だったと、会うたびに語っている。
私は彼に「絶対に争うな」と戒めている。(完) 

   北朝鮮難民救援基金
      第11回総会報告と会計報告                      :

 10月12日午後2時から、東京の文京シビックセンターにて、連携関係にある国際NGOからの代表、2人の脱北定住者を迎えて第11回総会が開かれました。
 今総会は基金定款第26条に基づき、出席者数と委任状数、あわせて正会員の5分の1以上の出席によって成立しました。
 物故された支援者の冥福を祈り1分間の黙祷の後、活動報告、財政報告、そしてそれぞれの方針が提起されました。
 今年度は、韓国の李明博政権誕生によって10年の長きにわたった太陽政策が終止符を打たれたこと、また今総会直前には米国のブッシュ政権による北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除、北朝鮮の金正日総書記の脳卒中による独裁体制の揺らぎなど、北朝鮮難民をめぐる国際的状況に大きな変化があったことを踏まえ、出席者によって議論され、方針案が承認されました。
 続いて、監査報告が了承され、最後に新任の2名を含め理事9名が選出され、総会は閉会となり、そのあと、脱北者による「私の脱北体験」の証言が行われ、すべての行事が終了しました。 

         2007年度特定非営利活動(2007年9月1日から2008年8月31日)に係わる
      事業会計貸借対照表(単位:円)            事業会計収支計算書(単位:円)

    科     目  *     金     額  *     科     目  *     金     額   *
T資産の部     T収入の部    
流動資産 2,970,561   会費収入   292,000  
固定資産  498,000   寄付金収入 13,531,051  
資産合計 3,468,561  3,468,561  雑収入      581  
U負債の部     当期収入合計(A) 13,823,632 13,823,632
流動負債 4,041,968   U支出の部    
固定負債      0   事業費    
負債合計 4,041,968  4,041,968 安全確保事業  1,855,892  
V正味財産の部     生活支援事業  1,892,010  
前期繰越正味財産  251,647   教育支援事業  1,738,755  
当期正味財産増加額 -825,054   広報事業  1,564,625  
正味財産合計 -573,407  -573,407 事業費合計(B)  7,051,282  7,051,282
負債及び正味財産合計    3,468,561 管理費(C)  7,597,404  7,597,404
      当期支出合計
(B)+(C)=(D)
  14,648,686
      当期収支差額
(A)−(D)
   -825,054
      前期繰越収支差額 (E)     251,647
      次期繰越収支差額
(A)−(D)+(E)
   -573,407

 

   お知らせ                                            

■一緒にワン・ワールド・フェスティバルで楽しもう!
12月20日(土)、21日(日)の2日間、大阪国際交流センター(アイハウス)で行われるワン・ワールド・フェスティバルに参加します。
 国際協力に関わるNGO、財団法人、政府機関などがブース出展する関西最大のイベントで、基金としては今年で2回目の参加です。
 開催時間は20日が10:00〜17:00、21日は10:00〜16:00です。
 当日の受付などを手伝ってくださる方を募集します。
お時間のある方はご連絡ください。連絡先は北朝鮮難民救援基金のTEL/FAXかメールアドレスまで。

■白菜、大根、トウモロコシ、トウガラシのタネが必要です
購入予算1万元=15万円の支援を!
 今年の春、咸鏡北道清津地域にトウモロコシの種250kgを支援しました。種子は中国産のものでしたが、優良品種であったため、元々ヘクタール当り 6トンの産量でしたが、今回は7.5トン出たと、報告して来ました。
例年とまったく同じ状況で農作業していましたが、この品種は背が高くて実も大きく育ったと、うれしい気持ちと 感謝のあいさつを送ってきました。
 新年にも続けて種子を送ってくれることを要請しています。北朝鮮は野菜の値段が高くて小さな畑でも、とうもろこしの代わりに野菜を栽培すると値は高くつくので、もっと食糧難の解決に役立つと言います。 
しかし昨今、北朝鮮住民の小農地に対する管理が厳しくなっています。政策では、来年から自留小農地に全部木を植えるように指示が出ています。小農地があったから、今まで食糧の調達がなんとかできたものの、木を植えろというのでは死ぬしかないと心配しています。不満の声は高まるばかりです。
 北朝鮮の農民の自立精神を励ましたいと思います。ご協力をお願いします。

■新しいパソコンとただいま格闘中
 以前あった事務所のパソコンが駄目になったため、最新のOS(基本ソフト)の入ったパソコンを2台、Gさん、Oさんから寄付購入していただきました。感謝します。
しかし、IT操作に不慣れなため、古いOSでのソフトやファイルとの不具合がうまく調整できず、今回のNEWS60編集にあたっても、早く慣れなければとあせりつつ悪戦苦闘してしまいました。時間ができたらじっくりやるつもりです。