中朝国境の三合鎮から開山屯(ケサントゥン)への道路で警戒にあたる移動式検問車両

                     新年号

                    C O N T E N T S

   第2回 北朝鮮人権侵害啓発週間を終えて  
  第1回 北朝鮮人権 仙台集会を終えて ・・・・・・・・・・  ケイト・ニールセン
  中国オリンピック前に浄化作戦 ・・・・・・・・・・・・・・・・  加藤 博
  1月 中朝国境実情  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 石田真一
  ビジネス化する脱北者支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  南 公平
  教育里子の申請書から見える子ども事情  ・・・・・・  渡 高志
  お知らせ  

 

  第2回北朝鮮人権侵害啓発週間を終えて  
   北の拉致、人権問題の取り組み広がる              

 平成19年12月10日から16日まで行われた第2回北朝鮮人権侵害啓発週間は、政府主催のイベント、国際会議、「救う会」と拉致議連共催の国際シンポジウム、北朝鮮難民救援基金(以後、救援基金と略す)、北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会(以後、守る会と略す)、特定失踪者問題調査会(以後、調査会と略す)、北朝鮮による拉致および人権侵害に取り組む法律家の会(以後、法律家の会と略す)のNGO4団体による国際会議、その他「守る会」や「調査会」が独自に催しを組織したこともあり、多彩で週間は内容のあるものとなった。

政府主催で拉致と人権侵害問題の行事
日本ではこれまで、北朝鮮の人権問題と言えば「拉致問題」であり、拉致問題が北朝鮮の人権問題であると考えられ、日本政府も北朝鮮の人権侵害問題を拉致問題に特化させてきた。これは世界世論とは違った認識となっており、世界の認識から孤立する傾向にあった。
しかし、今回の週間で、政府主催行事のなかで拉致問題と同時に北朝鮮の人権侵害問題を位置づけられたたことは、大きな前進と評価できる。拉致問題は北朝鮮政府による国家犯罪であるが、また深刻な人権侵害問題でもあることがようやく認識された格好だ。
事実上、北朝鮮の人権侵害問題解決が普遍的な人権問題であり、拉致問題を解決するには二国間問題だけで解決を図るのは難しく、国際的な枠組みで取り組まなければ解決は難しいという認識に近づいてきたのが特徴だろう。

大阪、仙台でも盛大に参加者が集う
NGOの行事は、東京だけでなく大阪や仙台などの地方にもおよび、広がりを見せ、これまでにない規模に発展したのは喜ばしい。
昨年までNGOが主導した観のあった北朝鮮人権侵害問題啓発週間の行事も、まだ限定的な観はぬぐえないが、政府が本腰で力を注ぎだしたことが盛況をもたらし、世論の関心を大きく高めた。  
平成20年度は、問題解決のために、さらに全国的な広がりで啓発週間の行事が取り組まれるのが望ましい。そのためには、少なくとも札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、京都、神戸、岡山、広島、福岡の主要都市で政府、地方自治体、NGOの協力による行事の取り組みを準備し、日本全国のメッセージを世界に向けて発信するのが必要である。それは問題解決の国際環境を変えるのに大いに役立つ。

8カ国から参加、文化行事も多彩に
国際会議、集会の参加者は、US、カナダ、ルーマニア、中国、韓国、日本、タイ、ビルマの8カ国に及んだ。参加したのは北朝鮮問題専門家、法律家、人権団体、救援団体、宗教団体、民主運動関係者が参加し、活発に意見表明が行われた。
これは、拉致問題、北朝鮮難民問題が東アジアの局地的な問題ではなく、国際的な問題であることを改めて示した。
また政府主催の行事には、声楽家、歌手など芸術分野からの参加者もあり、映画あり、トークありで魅力的な構成だった。またNGOは写真展、ラジオ番組の収録、講演会など意欲的な啓発キャンペーンだった。平成20年度の行事にはさらに多くの音楽家や芸術家の参加があって欲しい。

政府とNGOには調整努力が必要
平成20年度の第3回の人権侵害問題啓発週間を取り組むにあっての改善点の一つは、政府行事とNGOの行事の単独行事、共同行事の棲み分けを研究する必要性である。
第2回の取り組みのなかで、政府主催(法務省、外務省主催)の国際シンポジウム「北朝鮮における人権状況と国際社会の取り組み」は、NGOの行事と重なるところがあり、事前に双方の協議があってもよかった。今後の調整事項である。

期待される政府の財政支援
第二には、「北朝鮮人権法」の精神に従えば、政府、地方自治体がNGOの活動を支援することが期待される。NGOが最も苦慮しているのは、行事を行うに当たって外国からの招聘者の旅費、滞在費を賄う財政負担が大きすぎることにある。
また、行事の開催場所の確保や国際会議の性格上、同時通訳は不可欠であり、この費用負担も無視できない。政府からの支援、あるいは予算措置があってよいと思われる。

新たな提言
 12月14日、東京神田猿楽町の韓国YMCAのスペースYで行われた国際会議で出された新たな提言を紹介する。
これまで、参加者の中には、国際会議や集会はするが、現状分析や評論の域を出ていないと、救援活動に関わる人の間で現状を打開できない無力感、フラストレーションに支配されていたと思われる。
守る会の三浦小太郎代表は、以下のようにコメントしている。
「国連決議は、確かに北朝鮮の人権侵害を批判している。しかし、それ自体は特に各国政府に拘束力を持つものではないし、現実に中国やロシア、韓国なども6カ国協議主要国ですら北朝鮮の人権批判には全く弱い中、今直接的に北朝鮮政府を追い詰めるものではないでしょう。勿論、国際世論は重要ですが、同時に北朝鮮に[どのように言うことを聞かせるか]の提案が、政府や人権大使には必要ではないでしょうか」

金正日を国際刑事裁判所に提訴できるか
北朝鮮による拉致問題や北朝鮮難民問題、人権侵害問題の根源が金正日の独裁体制にあることを疑う人は、いなかった。そのためには何ができるのか、有効な手立てがあるのかということに関心が絞られている。
この課題に、明確な提起をしたのは、北朝鮮による拉致・人権侵害に取り組む法律家の会の須田洋平弁護士であった。
同弁護士は、『多くが70年代に行われた拉致事件の「強制失踪」状況は継続しており、現段階でもこの犯罪は持続していると見なすことができる。金正日を国際刑事裁判所(ICC)に「第7条 人道に対する罪」で訴追することに真剣に取り組むことができれば提訴できる』と可能性を提示した。
第9条の犯罪成立要件によれば、「犯罪成立要件は、第6条、第7条および第8条の解釈および適用にあたって本裁判所に提示される。これらの要素は締約国の会議構成国の3分の2の多数によって採択される」
つまり、ICCに加盟している国々の3分の2の賛成を取り付けなければならないという難関はあるが、取り組む価値はあると言う。
また、政府主催の国際会議で斎賀富美子人権大使は、「ICC加盟国の3分の2の賛成」に代わる代案として、国連総会で投票数の過半数を取れば、入り口論では、3分の2の締約国の賛成を得るよりはハードルが低くなる、と語っている。
国連総会で北朝鮮の人権侵害問題に対する非難決議が採択されたことから、提訴が採択される可能性が見えているとも言える。これは、関係者に期待と希望を抱かせるものとなっている。

<編集部注>
昨年11月30日、戦争犯罪や人道に対する罪を犯した個人を裁く国際刑事裁判所(ICC)の裁判官補欠選挙が国連本部で行われた。その結果、ノルウェー大使兼北朝鮮人権問題担当大使の斎賀富美子氏が当選し、本年1月から国際刑事裁判官に就任することになった。
 ICCはオランダ・ハーグに設置された常設国際法廷で、2002年7月に設立条約発効され、日本は昨年10月に加盟した。
 しかし、自国の兵士が訴追されることを恐れる米国をはじめ、ロシア、中国、東南アジア諸国は加盟していない。

   第1回 北朝鮮人権仙台集会を終えて
     多彩な顔ぶれ、豊富な内容、ホームページの運用始まる
                                   イト・ニールセン  
 「北朝鮮人権法」が制定されて2年目
にあたり、人権法が定めた北朝鮮
人権侵害問題啓発週間の記念行事が
12月16日、仙台市で行われた。
 北朝鮮難民救援基金、北朝鮮帰国
者の生命と人権を守る会、救う会宮城
の3団体が、「北朝鮮人権問題講演会
実行委員会」を結成し、取り組んだ
第1回目の行事となった。

 参加者の顔ぶれは多彩で、韓国、タイ、日本で活動している9名の講師が、それぞれの立場から、豊富な内容を持ち時間一杯をつかって討論に参加した。
 また仙台市が後援団体に名を連ねたこともあってか、宮城県議会と仙台市議会から多くの議員が顔をそろえた。また宗教界からは大和教団の教主様の参加も得た。
 市民約70人の参加者の立場、意見、経験は様々のようで、それから、国際的なレベルで働く人権活動家の話、北朝鮮の収容所で生れ育った人の経験、それを監視する警備員だった人の経験、命令を出していた立場の人間の話、タイ人の拉致被害者の甥の訴えなど、東北では、ほとんど聞く機会がない話が聞けたのは喜ばしい。
 北朝鮮に対して批判的である多くの日本国民が、北朝鮮の金正日政権と一般国民をはっきり区別しない傾向があるため、人道的な面から北朝鮮の人権侵害問題について考えるのが難しいのだろう。しかし、今回の集会で話された内容や、講師の様々の経験が、大きなエネルギーを与えたのではいかと思う。
それから、北朝鮮の問題に関る団体の目的や主な活動が違ったとしても、問題の解決するのには共通点を拡大、発展させ、それらを利用したり、国際的な協力をしたりすることの必要性が強調された。
今回の集会のフォローアップとして、参加者に2ヶ月に1回程度ニュースレターを送ったり、ホームページを運営する予定。  (http://sendaijinken.terapad.com)
 今年行われる第2回北朝鮮人権仙台集会を開くにあたっては、行事の財政に関して熟考すべきことが2点あると思われる。
まずは、民間団体が積極的にイベントを行なっているわけだが、政府や地方自治体からのいろいろな支援が不可欠だということである。
 第2には、それぞれの団体が積極的に募金することが必要だということである。
日本では寄付を求めることは、NGOの習慣になっていないが、今回の仙台での経験でこれは無理なことではないと分かった。身近なところから始め、企業の社長になった中学・高校・大学の同級生や先輩にアプローチすることはいいスタートではないかと思う。
今回は準備期間が短く、他の大きな企業や銀行などにお願いすることはできなかったが、次回試してみたいと思っている。
北朝鮮問題を解決するのに新しい考え方や活動が必要であることと同じように、NGOの募金の集め方に関しても考え直す必要があるだろう。
 今後、日本各地で行なう人権週間のイベントが広がり、より多くの人との意見交換ができるのを願っているところである。

   中国オリンピック前に浄化作戦
     著名人権活動家逮捕、脱北者狩を強化
                                      加藤 博   
北京5輪を前に中国でHIV感染者の
救援をする胡佳氏は、国家転覆扇動
容疑で逮捕された。関係者によると
昨年12月27日、20人ほどの公安部の
関係者が山東省曲阜の自宅を訪れ、
逮捕を通告、連行した。胡氏の携帯
電話は不通になっていて30日以後
連絡が取れてない。

 
 胡氏は中国各地のほぼ全ての民主活動家や人権派弁護士、欧米大使館員らと連携し、当局の弾圧状況をEメールで発信していたことが当局の癇に障っていたようだ。そのためか1昨年7月から昨年2月まで当局に拘束されていた。
これだけでなく、反政府活動家と見なされた人々に対する当局の弾圧は広範囲に及んでいる。
 強制中絶の被害者支援で知られ、マグサイサイ賞の候補者にもなっていた盲目の活動家、陳光誠が逮捕されたし、著名な人権派弁護士、高智晟も国家政権転覆扇動罪で執行猶予付きの有罪判決を受けている。
 さらに人権活動家の郭飛雄派は11月に非合法経営罪で懲役5年の実刑となっている。
強制堕胎の支援で知られる李和平弁護士は、身元不明の集団による拉致され集団暴行を受けている。
 中国では、民主・人権活動家の拘束が相次いでおり、北京五輪を前に影響力のある理性ある反体制派の知性を根こそぎ摘み取ってしまう浄化作戦を強化している。
 中国当局の弾圧は、民主化運動の活動家や人権活動家に対してだけではない。
 北朝鮮から生きる自由を求めて中国に脱出し、息を潜めている脱北者に対する脱北者狩りも頻繁に行われている。
 12月12日には、中国共産党幹部たちの避暑地として有名な河北省の北戴河の北東の秦皇島地域で北朝鮮難民を標的にした一斉掃討作戦がおこなわれた。
同地域の公安部は、40名の脱北者を逮捕したが、同地域の青龍刑務所に拘留した一人が刑務所の窓ガラスを割り、ガラスの破片で手首と喉を切り自殺した。
 自殺したのは、キム・ヨンジャさん、1957年5月7日生まれで46歳の女性。北朝鮮平安道平成市九月洞出身で、普通の家庭主婦であった。
 キム・ヨンジャさんは、北朝鮮に送還される見通しに絶望し、北朝鮮での集結所、国家安全保衛部での過酷な取調べと処罰に対する恐怖のあまり、自ら命を絶ったと思われる。
 当基金と連絡のある信頼すべき情報筋からは「中国公安(警察)の残忍な扱いに死の抗議をした」との報告であった。
 2007年12月15日、北朝鮮人権侵害啓発週間国際会議は、キム・ヨンジャさんの家族に対して深い哀悼の意を表明し、北朝鮮難民狩りの野蛮な作戦に対し、また北朝鮮での投獄、拷問、処刑がまっている強制送還に対し、中国政府に最大級の抗議をする書簡を在日本中国大使宛に送付した。また記者発表文をメディアに送った。

   2008年1月中朝国境実情
          農民は堆肥の強制供出を忌避、軍官は逃亡
                                       石田真一   

 中朝国境X村のシェルター責任者の金さん(40歳)の報告によると、2007年11月18日から12月25日の間、計118名の北朝鮮からの脱出者がシェルターに助けを求めて来たという。
 真冬に入ってから、北朝鮮の住民たちが一番苦労しているのは、食糧は勿論、真冬に備えての冬服であると言う。北朝鮮からの脱出者たちが着ている服を見ると、殆んど夏用の薄着姿で靴下は履いていない。豆満江は既に凍結して、夜はー20℃まで下がるこの時期に延辺では想像も付かないことである。
 シェルター責任者の金さんと北朝鮮咸鏡北道茂山から脱出してきた李さん(男性37歳)の会話のやりとりを聞いた。
「北朝鮮には靴下はないの?」
 「茂山には大きい市場はあります。中国の市場で売られているすべての品物が茂山の市場でも揃っています。品物の中では塩だけが北朝鮮産で、他の品物はすべてが中国産です。私たちみたいな庶民は手も出せない程の高い値段になっているので、なかなか買えません。市場には物を買う人より、物を売る人の方が多いです。配給もなく、国からの最低限の生活保障も無い状況で、皆が商売をやりながら生計を維持しているのです。」
 「李さんは商売したことはありますか?」
 「商売をしようとしても、自分にお金が無くては出来ません。お金が無くても出来るのは、自分が山野を開墾してその土地からとれた農産物を市場で売ることだけです。」
 「李さんは開墾地を持っていますか?」
 「持っているのは僅かですが、毎年トウモロコシとじゃが芋を作っています。トウモロコシは自分の食糧にして、じゃが芋は市場に持って行って他の品物と物々交換します。」
 「開墾地はだれでも出来ますか?」
 「いいえ、出来ません。人に知られないようにして、家から何十キロも離れている山の奥に開墾するのです。」
 茂山から来たもう一人の脱出者の女性・崔さん(30歳)の証言によると、北朝鮮の今の社会で暮そうとすると、体面であれ、法律であれ、すべて関係なく露骨に奪い取るか、盗むかしない。そうしないと暮すことが出来ない。苦難の行軍時期が10年以上も続いている今、生き残った人々は法を破ってでも暮らそうとしているのだ。苦難の行軍の時が未だに続いている以上、大きく酷い目に会ったから、住民たちはこれ以上じっと座っていられない状況になっている。お腹いっぱい食べられて、自由に暮らす事が出来るなら、どんなことをしても構わないと言う。
 新年初頭から自分が住んでいる茂山郡OO農村では、強制的に堆肥の供出の指示が出たために騒ぎになっている。新年は希望の初めであるはずなのに、こんな苦労の年初めは初めてだ、と崔さんは憤懣のはけ口を金さんに向けていた。
毎日住民たちが、手押車に堆肥を積んで直接農場に持って来なければならない。任務も一人当たり2トンずつの量で、その量も半端ではない。こんなに多い量となると、集めることができなくて、金ある住民たちは堆肥を買って収める場合もある。
住民たちは、堆肥生産課題があまりにも多くて、任務を到底完成することができないと、わめいているのだ。 ありもしない堆肥を無理やりに出そうとすると、結局堆肥代わりに一人当たり 5千ウォン(北朝鮮1万ウォン=33中国人民元)のお金を出さなければならないので、これは住民たちにはすごく大きすぎる負担だと言う。
 一月に中国へ脱出して来る人たちは供出する堆肥生産に困って逃げてくるが、何とか堆肥分の金を稼ごうとするが、成功するのは稀だ。

<写真説明>咸鏡北道茂山郡芝草地域の畑に出された堆肥、後ろに山林愛護のスローガン


 2007年11月××日には、少々肥え太った中年の男性と女性が金さんの家に訪ねて来て「私たち夫婦は北朝鮮の××市から脱出してきました。北京まで行く旅費を下さい。」と慌てた様子で助けを求めてきたと言う。
 金さんは、今まで来ている脱北者は皆痩せこけていて、最初に白いご飯を頼むのが普通だったのに、太っているこの二人の男女は他の脱北者とは違っていきなりお金を要求してきたので、その様子が不思議に思い事情を訊ねた。
 金さんの質問には答えていたが、詳しいことについては話さなかった。ただ、男性の方からは、自分は××郡に駐屯している軍の幹部で、韓国へ逃げるために北朝鮮から中国に脱出してきたと説明をしただけだった。
 この地域を早く離れなければならないので、早く旅費を出してくださいと、しつこく粘るだけだった。
 この二人の場合は普通の脱北者とは違って、北朝鮮に送還されるとどんなことが起きるのかという彼らの立場をよく理解している金さんは、自分の乏しい経済力から二人分の北京までの旅費を出してあげたかったのだが、必要な費用の全額はとても出せる状況ではなかった。可哀想だったが、150中国元を渡して、この村から安全に逃げる方法を教えて、家から送り出したという。
 シェルターに立ち寄った茂山市場の朴さん(女性53歳)によれば、商売も楽ではないと言う。
 2008年の一月に入ってからは、茂山市市場の物価動向は工業製品全体が20%〜30%値上がりしている。
 詳しい物価動向を見ると、1月の茂山の場合は、米は1,500ウォン/kg、トウモロコシは500ウォン/kg、大豆は1,000ウォン/kg、小麦粉は1,300ウォン/kgであった。
 市場には物はあるけれど、買う人はなかなかいないのが茂山市市場の現状である。

   ビジネス化する脱北者支援
       飢餓地帯を抜けても、韓国で極貧層に落ちる
                                       南 公平  

 延辺の朝鮮族の間で、韓国への出稼ぎブームが、熱病のように流行っている。「韓国へ行けば自由になり、金も稼げる」と中国に脱出してきた北朝鮮人はよく耳にする。
 自分たちも、韓国行きという願望に駆り立てられるのだが、彼らにとっては夢のまた夢の話なのだ。

ビジネス化する脱北者支援

 それでも、すでに脱北した肉親をたよって、ブローカーの手引きで脱北する人は後を絶たない。現実にブローカーのはたす役割は大きく、脱北支援がビジネス化している。そのうえ、脱北者支援は、不法行為を働くビジネスだと信じられているから、脱北者支援を行なっていると言えば、なにかうさんくさいもの、不法な忌み嫌うべきもの、反社会的な行為として中国や韓国社会では理解されている。
 何しろ非政府組織NGOは、中国の国内法律に違反し、逮捕、拘束の危機に遭遇してまで得た成果が、暗躍するブローカーの数十分の一以下とあっては、NGOの実績そのものが過小にしか評価されないという現実に直面しているのだ。

脱北者住民は最貧困層にな

 さらに、ブローカーが韓国へ送った脱北者たちが、必ずしも幸せな生活を送っているわけでもない。というのも、かれらは飢餓地獄からは抜けだしたものの、韓国社会へとけ込むのは容易でないからだ。それどころか相当な経済的・精神的苦痛を味わっている。
 政府からの援助で脱北者定着支援金として、入国時に住宅賃貸費用として750万ウォン(日本円で約75万円)を受け取り、以後は3か月毎に 120万ウォンが5年間払われるようだ。
 しかし、その中から脱北を手引きしたブローカーに 30万円ないしは 100万円を「韓国への安全通行」の対価として巻き上げられるので、かれらは支援金の支給期間内であっても1ヶ月4-5万円で暮らすどん底の生活を強いられる。脱北住民は韓国では極貧層にあり、必死に生きようとする新住民がそこから抜け出すことは容易でない。

この村の男と結婚しないか

今年1月に延辺地域の南坪である脱北女性Kさんは、4年前の2002年の冬、北朝鮮会寧から仲間の女性3人と脱北して来た。3人とも中国には親族もなく、頼りにする人は誰もいなかった。そこで、豆満江を渡って一番最初に辿り着いた村で助けを求めた。その村は20棟ぐらいの朝鮮族農家が住んでいる小さな山奥の村で、11棟の家族には30代から40代の男やもめが住んでいた。
 脱北女性3人は、隠れていた山から村に下りて、ある農家にご飯を求めた。その農家には40代の梁と言う男と年寄りのお母さんの2人暮らしだった。梁さんはすぐ彼女らの身分を理解し、その日の夜は、3人の脱北女性を自分の家に泊めて自分は隣の友人の家で夜を過ごした。3人の脱北女性は、その晩、生まれて始めて白いお米のご飯をおなかいっぱい食べることが出来たが、明日のことが心配になってきた。
 次の朝、ご飯を食べに家に戻ってきた梁さんに、3人は実情を説明し、毎日ご飯だけもらえればどんな仕事でもするから、この家に泊めてくれないかと頼んでみた。そこで梁さんは、「この村の男と結婚しないか」と戸惑う3人を前に話してみた。
結局、行く場所もない3人はその村の朝鮮族男性と結婚することになった。Kさんは梁さん家の隣に住んでいた鄭という男と結婚した。その時Kさんは26歳だった。
 嫁不足で40歳になってもお嫁をもらえなかった梁さんと鄭さん、もう一人の金さんの3人の男やもめは、突然空からお餅が落ちてきた幸せを味わった。
 延辺では、人民元一万元ぐらい出せば、人身売買ブローカーに頼んで、脱北女性を買うことは出来る。しかし、今までずっと農村で暮らしていた彼らには、一万元どころか10元も出せないのが現実である。それなのに、今この村には北朝鮮からの脱北女性7人が暮らしている。

自由に暮らせるところにいきたい

 その後、3人の脱北者妻は中国公安に拘束され、2回も北朝鮮へ強制送還されていたと言う。今Kさんには2歳の女の子が生まれていたものの、幸せな雰囲気はまったく感じない。常に中国公安の摘発に神経を尖らして生きていかなければならないからだ。一緒に脱北して来たもう一人の女性は心臓病になっているという。
 今の彼女の一番の夢は、「何処でもいいから自由に暮らせるところに行きたい」だった。

「牧師」「伝道師」が韓国行きを勧誘

 2000年ころから4年間、この村の教会には数え切れないほどの韓国籍牧師、アメリカ系韓国人牧師が尋ねてきた。村の教会で説教はしないようだが、脱北者支援活動のために来たと村の有力者に説明しているという。
 まず、村の教会に現れた脱北ブローカーはKさんに名刺を渡す。これまでやってきたブローカーのほぼ全員の名刺の肩書きは、「宣教師」もしくは「牧師」と書かれていたそうだ。そして、ブローカーは「かわいそうな脱北者を助けるために来た」と言う。挨拶が終わるや、ブローカーは脱北者の写真やビデオを撮ったり、それぞれの身上を聞き、「必ず支援する、お金を工面する」と約束する。しかし、今までに支援金をKさんに出したブローカーは誰一人もいなかったと言う。
 ブローカーが会った脱北者の中には、北朝鮮から逃げてきたばかりの痩せ細った母娘、両親を無くした子供、病気の高齢者と、すぐにでも助けるべき人たちが大勢いる。しかし、ブローカーは、働けそうで若い脱北者にだけにそっと声をかける

1万元を持っているか?

 「1万元(日本円で約16万円)持っているか?……」と。
 ブローカーに1万元払うことができれば、韓国に連れて行くというのだ。しかし、Kさんによれば、「1万元はあくまで手付けのようなもの。中国国内を移動する交通費という名目だ」と教えてくれる。脱北者がブローカーに1万元を現金で払うと、次に韓国に入国した際、支給される定着支援金で残金を払う契約をさせられる。価格は50万円前後から100万円を超すケースなどさまざまなようだ。
 最近、この様な契約は違法であり、ブローカーに対して脱出のために要した費用を支払わなくてもよいという判決が韓国の裁判所で出されたこともあって、「借用書」を書かせて脱北ルートに乗せるかどうかを決めるようになっている。

もっとひどいブローカーもいる

 Kさんは、もっとひどいブローカーもいると怒る。名前を聞くと、韓国、日本、アメリカでも名知られた確かにかなり著名な韓国人牧師だった。彼の話によれば、「その牧師は脱北者を面接し、若くて美人な女性を多勢、韓国に連れて行く」というのだ。別の脱北支援者は、「その宣教師は、若い脱北女性の金ばかりか体まで奪う」と話す。話を聞くうちに、この程度の話はこの牧師にかぎった話ではないと分かった。 
 もちろん、脱北者の支援・救援には金が必要だ。長く救援活動をするために、脱北者から実際に脱北にかかった費用を負担してもらうことも仕方ないと思う。しかし、脱北者の弱みにつけ込み、多額の金を巻き上げるばかりか、女性の人権まで踏みにじるような行為は許されない。

異なる脱北の手数料

 別のブローカーの話によると、脱北の手数料は200万〜1,200万ウォン(韓国ウォン)で、ルートにより異なるという。
 在外公館などの外国の施設に侵入する方法では、200万〜500万ウォン(韓国ウォン)が相場だ。
 東南アジアなど第3国を経由して韓国入りする場合は300万〜600万ウォン、飛行機で直接入る場合は1,000万〜1,200万ウォン(韓国ウォン)という。
 もちろん脱北者はそんな大金を持っていない。入国後に韓国政府から支給される「定着支援金」が狙われているのだ。
 ’07年4月10日付「The Daily NK」に興味深い記事が掲載された。
「脱北者救援と”法に基づく措置"どちらが優先?」と題し、ブローカーのホン某氏(仮名)と脱北者A(45女性)の間の、韓国入国を担保にした契約が無効という裁判所の判決が出たという記事だ。
 この判決でブローカーは500万ウォン(65万円)をふいにした。この記事には別のブローカーは実費を約200万ウォン(26万円)と話しているから、裁判に負けたブローカーは脱北者から実費の倍以上の料金をせしめようとしている。 
 しかし、この記事は脱北ブローカーを全面的に否定することには疑問を呈し、ブローカーは北朝鮮の住民の救援というレベルでは必要な存在としている。

NGOを名乗って脱北者を欺く

 今、NGOの北朝鮮難民救援活動は、難しい局面を迎えようとしている。
ブローカーが活発に活動している中で、厄介なことは彼らがキリスト教の「伝道師」「宣教師」「牧師」を名乗って、さも人道的な救援をするかのように装っていることである。キリスト教の伝道師や牧師であれば、社会的には尊敬された立場の人であるから、信用を得やすい。その立場を僭称し、社会的な経験に無知な北朝鮮人を騙すことは容易である。
 またNGOと名乗って脱北者を欺く。NGOを名乗るブローカーの大多数は、北朝鮮から脱出し、運よく韓国に到着し、一定期間の定住教育を受けた後、韓国パスポートを取得し中国で「脱北ビジネス」を展開する。中国は彼らが韓国に到着する前に隠れ住み, 脱北ルートを自ら体験したところであり、本人たちはかつてのホームグラウンドに活躍の場を見出すのである。かつての脱北者が新たに出てきた脱北者に韓国、あるいは日本に無事到着したときには、成功報酬を受ける「契約」を持ちかける。
 厳しく脱北者狩りをする中国公安の目を避け、安全の保障を得るためには、彼らの申し出は大きな助けとなっている。

ブローカーとNGOは同じ穴の狢!?

 一方で人道や人権の立場を鮮明にして活動をしているNGOは、NGOを名乗る「金目当て」の連中と同じ穴の狢とみなされている。
 第三国への移動中に、身分証も持たない脱北者がNGOのスタッフに、身分証のいるホテルに泊まりたいとか、ビールを買ってくれとか、高級な靴を買えとか、理不尽な要求をする。それは、脱北者が最終目的地に行けば、それは脱北者の借入金として清算されると理解しているからに他ならない。
 人道、人権NGOがそのような要求に応じている話は聞かないが、現実に韓国に定住した脱北者はそうした借金の支払いに応じている。
 中国公安当局者は、人道的な立場から救援活動をするNGOの人間も、ブローカーも金儲けのためにやっている人身売買をしている犯罪者と考えている。

きちんとした対応が韓国政府には必要

 韓国の脱北支援団体の関係者は、「政府がきちんとした対応をとらないので、ブローカーがのさばっている」と批判している。難民を助けるNGOが、難民を利用して金儲けをするブローカーと同列に論じられるのは憤慨にたえない。
北朝鮮からの難民を「不法入国者」「不法滞在者」とする中国政府の公式的な立場に変更がなされないのであれば、常に脱北者は闇 取引の存在としてあり続ける。
 韓国政府は、脱北者が闇社会で苦しむのを終息させるために、中国での身分の合法化を図る有効な手を打たなければならない。

   教育里子の申請書から見える子ども事情
                                     渡 高志    

 1998年から始まった当基金の教育里親制度も、はや11年目を迎えることになった。その間、韓国では10年の長きにわたって金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権による太陽政策、包容政策が続き、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)体制への事実上の支援政策が続けられてきた。しかしそれも、今年2月より、李明博(イ・ミョンバク)政権による実用主義、厳格な相互主義へと舵が切り替わる。はたして、韓国の北朝鮮難民政策も大きく変化するだろう。またそれは必然的に、北朝鮮難民救援活動にも大きな影響を及ぼすに違いない。
 この運動の転換点になるかもしれない今、この10年間の教育里親制度を振り返って見るのも悪くないだろう。
 ’98年から’03年まで、ほとんどの里子たちは身寄りのないコッチェビであった。と同時に、彼らは不法滞在者として中国当局による逮捕、強制送還の対象でもあった。
 そのため、教育里親制度では子供たちの教育や生活全般の世話を現地シェルターの責任者にゆだねるだけでなく、子供たちの安全も常に考慮してこなければならなかった。それでも多くの里子たちが逮捕され、強制送還され、里親たちは涙することが多かった。
やがて、残った里子たちも成長し、成人に近づくにつれ、中国や北朝鮮で彼らの将来を仮想することがいかに非現実的であるかが明らかになってきた。そこで、彼らを安全で、将来の希望をかなえることが出来るかもしれない第三国へ脱出させることが、私たちの緊急の課題となったのである。
 ’04年から、教育里子の多くが親と一緒に脱北してくる子供たちで占められるようになってきた。当然のことながら、子供たちの安全の責任と将来の展望は彼らの親にかかってくるようになったと同時に、親の判断によって我々の保護下から突然離れるケースも多くなってきた。時には、彼らがどこに行ったのかもわからず、途方にくれることもままあった。中には北朝鮮に帰った例や、中国国内をさまよって再び助けを求めてくるものもあり、その救援活動に大きな支援を注ぐことがあった。
 ’06年ごろから、北朝鮮難民女性と中国籍男性との間に生まれた子供たちが就学年齢に達し、教育里親制度に支援を求め始めた。この子供たちの父親は身体障害者や知的障害者であることが多く、生活能力のないものが多い。おまけに北朝鮮難民である母親は、人身売買や自身の安全のための便宜的婚姻で出産することが多く、子供を残したまま逃亡したり、中国当局に不法滞在者として逮捕され、子供と引き離されて強制送還されることも多い。しかも、この子供たちは法的にはっきりした中国国籍を持っていることは少なく、父親には子供たちに教育を受けさせる力や意思がないので、地域社会では大きな問題となっていた。
中国は父系主義である。したがって、その父から生まれた子供は中国国籍を与えられるべきであり、また人道主義の観点から、その母親には定住権を与えるべきである。
 この問題はそのまま中国の国内問題であり、その解決の責任は中国当局にある。それにもかかわらず、中国当局は子供たちの所属や国籍をあいまいなままにし、彼らの母親を逮捕し、強制送還し、子供たちと引き離している。
 本来、この子供たちは教育里親制度の下で保護され、支援される対象ではなかった。しかし現在、この子供たちが里子たちの56%も占めており、本来の教育里親制度の趣旨や精神が深刻な曲がり角に立たされていると、私には思われてならない。

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日本語=韓国語の翻訳ボランティア募集
    タイ語=韓国語=日本語で難民ハンドブックを作成

 中国とラオス、ビルマの国境を越えてタイ国に流入する脱北者の数は、年間でおよそ1000人を超えると言われています。
 タイは2000年まで、北朝鮮からの難民の受け入れの経験がなく、密入国者として逮捕しても韓国語を理解する警察官や入国管理局の調査官が、ほとんどなくコミュニュケーションが取れずに誤解やトラブル、摩擦が絶えません。
 タイ当局が北朝鮮難民を不法入国者として扱うのには、異議はありますが、北朝鮮に送還されることはなく、生命の安全は保証されています。タイ当局者と北朝鮮難民の間のすみやかな意思疎通と円滑な収容、定住地への送還の助けとなる冊子2千部を関係する団体の協力で作成します。
 この冊子作成のために2カ国語のできるボランティアを募集します。また、冊子の作成の費用として10万円の費用が必要です。御協力ください。

当基金理事長が参加する講演会
 第19回「拉致被害者と家族の人権を考える市民集会」〜拉致を語らずして人権を語るなかれ〜
 平成20年3月23日(日)
 午後1時30分開場・午後2時開演(午後5時30分終了) 
 場 所: 藤沢産業センター (JR藤沢駅北口より徒歩5分・藤沢郵便局隣り>
 講演者:飯塚繁雄さん(田口八重子さんの兄・拉致被害者家族会代表)
      青木直人さん(ジャーナリスト)
 荒木和博さん(特定失踪者問題調査会代表)
    加藤博さん (北朝鮮難民救援基金理事長)

カチン民族機構(日本)から感謝状
 1月13日、豊島区公会堂で行われたビルマの「カチン州の日」の祝賀集会で、北朝鮮難民救援基金に対し「カチン民族の発展と人権擁護に大きく貢献した」として感謝状と壁かけが授与されました。
 当基金が、ビルマの軍事政権から日本に逃れてきたミャンマー国籍の少数民族のカチン族の難民認定や、入管の収容者の仮放免に対する助言、貢献の労に対するねぎらいの意味があるものと思われます。