June 2002 No.028
北朝鮮難民救援基金NEWS

           CONTENTS
北朝鮮難民の駆けこみはこれからも続く………………………………会津 千里
スペイン大使館駆けこみ亡命者の中に私たちの里子がいた!………渡 高志
現地からの救援アピール・夏服を300着応援して! …………………李 長吉
難民問題で議員説明会…………………………………………………松浦 清
反応あった! アムネスティーへのアピール開始 ……………………白浜和歌子
北朝鮮難民は「食料難民」ではない……………………………………松浦 清
「脱北者―北朝鮮から逃げられなかった男―」出版 …………………編集部
編集後記…………………………………………………………………編集部

駆け込み事件はこれからも続く
誰も止められない流れ

会津千里

 今年3月北京にあるスぺイン大使館に北朝鮮難民25人が駆け込んで政治亡命を求めて以来、その数は止まる所を知らない勢いだ。
 スペイン大使館以後ドイツ、アメリカ、カナダの各国大使館、瀋陽の日本総領事館、韓国領事館と6カ国の在中国外交公館にまで駆け込み事件が広がっている。
 韓国領事館には五月雨式に、駆け込みが続き、24人が寝起きをするまでになり、本来の領事業務が麻痺しかねない状況に陥ってしまった。
「北朝鮮からの難民はいない」とする中国政府の公式見解は、エスカレートして、外交公館に政治亡命を求めて入った人間を「中国公安に引き渡し」を要求するまでに至った。
日本総領事館に駆け込んだ2歳の金ハンミちゃんを背負った母親が、中国の武装警察隊に地面に転がされ、ハンミちゃんが母親の背から離れ驚いてその光景を眺めている姿は、世界中のTVメディアに放映され、新聞もこれを取り上げた。
 中国の乱暴な外交特権を無視する行為と日本の領事が、無抵抗の母親とおばあさんに注意を払うのではなく、武装警察の帽子を拾って手渡す姿は、人間としての品性を疑うという論議にまで発展した。
 アメリカはその後、韓国領事館から逃げ込んだ北朝鮮難民を引きずり出し、それに抵抗した韓国領事に乱暴を働き負傷させた事を念頭において「中国は礼儀をわきまえて行動して欲しい」とまで強い不快感を示すまでになり、北朝鮮難民問題は国際問題となってしまった。
 アメリカ議会は、中国に対して北朝鮮を脱出した難民を送り返さないよう求め、国連難民高等弁務官(UNHCR)が北朝鮮難民が多く隠れ住んでいると言われる中国の東北三省(遼寧省、黒龍江省、吉林省)での実態調査を認めるよう求めている。
 アメリカ議会は、北朝鮮難民を保護する難民キャンプの開設を視野に入れた働きかけを関係各国、NGOに対して行う姿勢を見せている。
 こうした背景には、止まる事を知らない難民の外交公館に対する駆け込み事件によって、関係各国に高まる外交摩擦とナショナリズムが北東アジア地域の安全保障を危うくするものだという判断が働いていると思われる。
 「北朝鮮難民はいない」「中国の辺境に暮す北朝鮮人たちは平和に暮している」「たとえ送り返されてもたいした罰は受けない」という中国政府の公式的な見解が正しいのならば、どうして彼らは中国の辺防隊(国境警備隊)や公安の捜索や逮捕される危険を犯してまで外交公館に政治亡命を求めるのだろうか。
 中国政府の公式見解と全く正反対の事が東北三省では起きている。
その一つは公安局が密告奨励金を出して北朝鮮難民を逮捕、強制送還している。例えば吉林省延吉市公安局は市民に対して「公開書簡」という形の布告を出して、最高2000元、最低でも200元の奨励金を出している。この地方の都市の食堂の従業員の一ヵ月の給料が500−600元だという事を知れば、この制度がどれほど逮捕に力を注いでいるかが分かるだろう。
 延吉市の隣の龍井市公安局は、警察官一人当たり、1ヵ月に3人の北朝鮮難民を逮捕する事を義務づけている。
 北朝鮮から中国にやってくる脱北者は、食糧を得る自由を求めてやってくる。
 「犬でさえ白い飯を食っている」と驚き、「どうせ死ぬなら中国で腹一杯食って死にたい」という彼らの言葉の裏にはどんな事が隠されているのか。
 自分の生まれて故郷を棄て、異国の地で逮捕される危険を犯して中国にやってくるのは、北朝鮮では生きられないからだ。
 しかし、中国では脱北者を厳しく取り締まっており、たいほすれば北朝鮮に強制送還する。おくりかえされれば必ず迫害を受ける。
 北朝鮮は、許可なく国境を渡ったものに対して厳罰を課している。
 北朝鮮刑法47条が適用されている。
 「共和国公民が祖国及び人民に背いて敵側に逃亡するか、スパイ行為をするか、敵に援助するなどの祖国反逆行為をした場合には、7年以上の労働教化刑に処する。情状が特に重い場合は死刑及び全ての財産没収刑に処する」
中国で逮捕され強制送還されれば、刑法47条によって処罰される。
 初犯ではただちに厳罰という事はないようだが、北朝鮮に送り返されても生きる方法がないから、生きるために再び脱出する。そして捕まり2度目の強制送還になる。2度目は「寛大」な処置はしてくれない。1年間の労働教化刑に耐えられば、3度目の脱出をしなければならない。食糧が手に入れられないからだ。
 「情状が特に重い場合」となり、3度目の送還では、死刑となった例が多い。 2度の脱出と北朝鮮社会の批判を記した手記の著者、韓采元氏は「情状が特に重い場合」に該当した。
 中国公安に逮捕され、北朝鮮の国家保衛部(政治警察)に引き渡された。
 瀋陽の北朝鮮大使館で拷問を受けた後、外交官公用車で平安北道新義州に送られ行方不明になった。
 脱北者は誰でも捕まれば、自分がどんな運命を辿るか知っている。
 中国で取り締まりが厳しく行われ、「安全」に「平和」に暮していける空間が無くなってきている。
 北朝鮮でも生きていけない。中国に来ても逮捕される。生きるために中国以外の安全な地域に脱出するしか残された道はない。
 自力で中国の国境を超えて難民の地位を認めてくれる国に到達するか、近くにある大使館や領事館に駆け込んでいくしかない。
 中国に数万人の駆け込み願望を持った予備軍が待機している。したがって、外交公館に政治亡命を求める駆け込み事件は、中国の取り締まりが厳しくなればなるほど多発する。

 世界が注視している!
 ラオス、ミャンマー国境近くの中国側の町、雲南省洪景(ジンホン)で北朝鮮脱出者6人のグループが、5月24日から26日の間、案内人なしで中国国境を越えようとして中国公安によって逮捕された。
グループの中には2歳6ヵ月の乳児の李ソンヨンと母親の朴スンヒがいる。母親は1999年5月当時31歳で、妊娠3ヵ月で中国に脱出し、同年11月15日出産した。いつ逮捕されるかもしれないという恐怖から急いで中国を離れ、2000年11月22日に幸運にも韓国に到達する事ができたが、当時わずか12ヵ月の赤子を同伴する事はできなかった。そのために、子どもを置いて中国を離れた事に深く自責の念にさいなまれた。彼女は現在韓国市民の資格を有している。
 李ホンガン、48歳男性は北朝鮮の非合法キリスト教徒。彼の父親と2人の兄弟のうち一人はキリスト教の信仰を持っていたために処刑された。彼は75歳になる母親と一緒に暮していた。母親は元歌手で、北朝鮮政権の成立時から現在に至るまでクリスチャンの信仰を持ちつづけている。
 彼らの逮捕と処刑が差し迫っているという暗示で2000年4月北朝鮮から脱出した。彼がもし北朝鮮に送り返されたならば処刑される事は間違いない。
 5月29日、グループは雲南省の省都昆明に送られ、翌30日北朝鮮に送還するために、吉林省長春市に送られた。当基金は国際社会の素早い介入によって国際法に反した送還を止めさせるように呼びかけ、その結果アムネスティインターナショナルはじめ多くの人権諸団体やアメリカ議会が中国当局に彼らの開放と現在の状況確認を求めている.

このページのトップへ


スペイン大使館突入亡命25人の中に
私たちの里子がいた!

渡 高志

 なんと、あの25人の中に、私たち北朝鮮難民救援基金教育里親プログラムで保護し、援助していた里子のウノが混じっていたのです。
 あの映像はテレビで何回も流され、何度も見ていましたが、あれ?と思ったことはあってもまさかと問題にもしていませんでした。ご丁寧にも録画してもらったCNNニュースのビデオまで見、また本人と数ヶ月前に会ったにもかかわらず。なんと人間の記憶というものは不確かなものなのでしょう。つい最近、確かな連絡があって、ウノがあの中にいたことをわたしたちも確認したのです。

 ウノはビデオではずっと横向きに映っており、インタビューに答える母親をじっと見つめています。緊張しているというか、やや呆然とした表情です。今、彼は少年から青年へと激しい変化を見せる過渡期にいます。決行直前には、ウノも我々もお互い既知の何人かの人物とホテルの一室で顔をあわせ、写真までとっているのですが、互いに最後まで気がつかなかったのです。それほど緊張した時間を過ごしたのでしょう。

 ウノは90年代後半に家族と共に、飢餓を逃れて脱北してきました。そのときから、私たちは彼を援助してきたのです。あまり勉強は好きでなく、里親から贈られたサッカーボールで遊ぶのが好きな普通の少年でした。しかし、彼が過ごしたこの数年は精神的にも過酷な日々であり、出来事であったに違い有りません。

 ここに2枚の写真があります。決行直前に写した家族写真では、やや甘えるように母親にもたれかかっていますが、顔の表情は緊張して、目じりが少しキッとなっています。
 もう一枚は韓国到着直後で、全員で万歳をしている写真です。ウノは家族の後ろに隠れるようにして、顔が写っていません。何を思っていたのでしょう。ただ状況の変化に呆然としていたのかもしれません。しかし、私は何年も一緒に兄弟のように過ごした里子の仲間達のことを思い出していたのだと想像したいのです。

 今、ウノはソウル郊外のハナ院に収容され、外部と遮断されています。これから彼にどんな人生が待っているのかわかりませんが、果敢に自分の力で道を切り開いていける人間になってもらいたいと思っています。そして、ウノとは反対に逮捕され、北朝鮮に強制送還された里子の兄弟のことを忘れないようにしてほしいのです。

 でも、ウノ、おめでとう! 本当におめでとう! ウノに大きな大きなエールを贈ります。

このページのトップへ


現地からの救援アピール・夏服を300着応援して!
李 長吉

 5月末、中国現地における北朝鮮難民の取締が激化していることを伺わせる声が届きました。しかし、同時に、現地の協力者は少しもひるまずに救援活動を続けています。せめて私たちにできることは、夏服を必要としている約300人の子供たちに救援の手を差し伸べることではないでしょうか。

 先生、今日は。今日も北朝鮮難民救援基金の事業で大変ご苦労の多い事と思います。
 会員の皆さん方もお元気ですか ? こちらの脱北者たちを代表して、先ず皆様方に感謝の気持ちを申し上げます。とくに、こちらの山にいる  脱北者たちは、皆様の助けがあって無事でいます。
 これから季節は夏に向かい、夏にふさわしい服装が問題になってきます。今は警備が厳しくなっているので、着ている洋服によって(脱北者であるか中国朝鮮族かを判別する)強制送還になる場合がよく起りうるのです。
 今、こちらではとても緊張した体制に入っています。
 特に、中央公安局では、脱北者たちの事で中国の威信をかけて取り締まりを強化しています。吉林省公安局では、副省長を(延辺朝鮮族自治)州公安局に派遣し、監督しています。
 こちらにいる(中国朝鮮族)人たちが、脱北者を助けたため、一人二人と捕まっていきます。
 中国に来て(中国朝鮮族)嫁になり、子どもを産んだ北朝鮮の女性も捕まって連行されていきます。北朝鮮人を(労働力として)使っている労働現場(農場、炭坑などの鉱山、製材所など)をしらみつぶしに捜索しています。
 また新たに助けを求めてきた4人が、山の中で隠れています。毎日のように助けを求める人たちが私の家に来ています。北朝鮮国内に食糧を配給するのも不可能な状態で、悲しい感謝の手紙が来ています。
 拙い報告ですが、これで終わります。

        2002年05月28日 李 長吉
(原文はハングル、訳責:北朝鮮難民救援基金翻訳グループ)
( )内は翻訳グループが補って理解しやすくしたものです。

 私たちが支援している北朝鮮難民は、およそ300人いる。これらの人々は、多くが冬に中国に脱出してきたため、まだ冬服を着ている。そのため目立ちやすく、中国公安から逮捕される危険性がある。季節に合った服装をさせ安全に、快適に過ごさせてあげたいと、基金は6月の支援ミッションで各シェルターに夏服を300着を支給した。45万円の支出は、一人が一人の難民に1500円の募金をお願してまかないたいと思います。ぜひ応援してください。

このページのトップへ


難民問題で議員説明会
北朝鮮難民の現状報告と日本政府による救援を訴える

松浦清

 去る5月31日午後1時半より、難民基金は衆議院第2議員会館会議室にて、北朝鮮難民問題についての説明会を行った。会議室の確保や呼びかけなどでご協力いただいたのは衆議院議員で元労働大臣の甘利明議員。当日の参加議員は自民、民主、自由、社民各党の国会議員、及び議員秘書の方々が約25名。この説明会に先立ち、議員説明会のお知らせを基金会員が議員に配布したが、その折にも関心は高く、当日も参加者の方々は熱心に私たちの説明に聞き入ってくれたようだった。

 1時半に開会し、中平健吉代表が当会を紹介、4年前に、国際的にもあまり注目を浴びていなかった北朝鮮難民の救援の為に結成され、その後も地道な活動をさまざまに行ってきたことを簡潔に述べた後、特別にゲストとして参加したジャーナリストの石丸次郎氏が現地の状況報告と、日本の取るべき救援体制に対して提言。

 石丸氏は、難民の領事館駆け込み事件は、組織的な計画性をもったものというより、むしろ小規模な資金的にも苦しいNGOが、厳しい取締の中、難民を助けるためのやむにやまれぬ手段として取られた行動であることを説明し、北朝鮮難民の苦境と共に、日本が難民受け入れを積極的に認めることによってこの問題の解決に乗り出してほしいことを述べた。

 さらに、一部の俗論として「受け入れを認めれば直ちに大量の難民が押し寄せる」といった考えには根拠がないこと、むしろ、仮にそのような事態が有り得るとすれば朝鮮半島に大きな危機が訪れた場合のことであって、政治的な叡知によって避けられる問題である。海を隔てた日本に今すぐ難民が押し寄せることを危惧するより、現時点では難民キャンプの設営やUNHCRによる保護などに日本政府も力を尽くし、かつ難民のうち、日本への亡命を求める日本からの帰国者が存在すること、決してこの問題は日本にとって対岸の火事でないことを強調した。

 さらに、基金の松浦清が、現時点で基金に届いている東南アジア国境で逮捕され、強制送還されつつある難民家族の悲劇を緊急メッセージとして報告、瀋陽事件の5名の難民のほかにも、今この時にも多くの北朝鮮難民が強制送還されていること、そして送還後にはどのような悲劇が待ち受けているかを、北朝鮮刑法47条、また最新刊「脱北者」などを紹介して報告し、彼らはUNHCRで難民として認定されるべき存在であることを訴えた。同時に、中国側の公式発表(強制送還はしていない、また、北朝鮮に送り返されてもそれほど厳しい処罰は受けない)等は、基金が接して来た難民の証言や、中国側自身の市民への条例(取締の強化や難民を当局に報告した場合の奨励金の呼びかけなど)から見ても矛盾していることを述べ、最後に、議員への要望書を発表して報告を結んだ。

 難民を受け入れるか否かは難しい政治問題であり、報告後の議員との質疑応答も、正直な所充分にかみ合ったものとは言えなかったと思われる。しかし、参加議員のほぼ全員が、この問題を日本が考えなければならない問題として捉えはじめている手ごたえは感じられた。報告会後、基金スタッフは積極的に国会議員とさらに密な交渉を繰り返し、この問題を国政に反映させるために努力し続けている。日本政府が世界人権宣言の精神に立って北朝鮮難民問題に積極的に関与することを望んでいる。

このページのトップへ


反応あった! アムネスティへのアピール開始
白浜和歌子

 北朝鮮難民問題解決には、やはり国内外への積極的な情報発信が不可欠であり、当基金としても国際世論への訴求活動を展開するべきであろうとの認識が熟しつつあった。そんな折、縁あって私はつい先日、アムネスティ・インターナショナル日本の一員となった。その動機はアムネスティのネットワークを利用して北朝鮮難民人権蹂躙の惨状を国内外に広く知らしめ、この悲劇を一日も早く終わらせたいとの願いに他ならない。

 アムネスティ入会後、初めての当地域アムネスティ月例会で自己紹介代わりにひたすら北朝鮮難民の現状を話した私であった。出席者は一様にその知られざる惨状にショックを受けていた様子であったが、この月例会の直後にあの「中国瀋陽の日本国領事館突入事件」が発生。このタイミングには驚いた。幸運なことに、私が所属するこの片田舎(人口2万足らずの町)のアムネスティグループのリーダーが近頃まれにみる誠実な人物だったこともあり、今後このアムネスティグループでも北朝鮮難民救援活動をバックアップしようとの言質どおりこのリーダーは早速、アムネスティ東京事務局に対し「瀋陽の事件に関してアムネスティ日本支部としても何らかの声明文を発表するべきである、ここでアムネスティ日本が沈黙したままではその存在価値などない!」と繰り返し訴え続けてくれた。それが功を奏したか否かは定かではないが、この後間もなく5月13日にアムネスティ日本が、中国政府および日本政府に向けた要請も含めた声明文(下記参照)を発信してくれた時はやはり嬉しかった。

 当基金の先輩方によると、数年前までアムネスティ日本は北朝鮮難民に関する訴えには殆ど興味を示してくれなかったそうで、その当時から比べると今回の声明文発表という反応は大きな前進を意味するらしい。
またさらに、里子の強制送還、現地救援者逮捕に対する陳情を含めた情報を英訳してアムネスティ・インターナショナルのロンドン本部へも電子メールで送ったところ、ほぼ2週間後ロンドン本部の担当者からさらに詳細な情報を求める返信が届いた。期待していなかった返事が届いたので驚きと喜びが半々であったが、これは北朝鮮難民問題もやっと国際的に注目されるようになり、アムネスティ・インターナショナルの関心もここまで高まってきたという証かもしれないと心強く思った。

 中国瀋陽の日本国領事館突入事件のおかげで、アムネスティ日本の内部でも「日本の難民(亡命)問題を考える」といった勉強会が開催されるなど北朝鮮難民への関心の高まりが感じられる。

 最近の一連の外国公館への北朝鮮難民突入事件によって一気に高まった北朝鮮難民への関心を今後もさらに国内外で持続させなければならない。そのためにはアムネスティへ引続き当基金から情報発信を続け、さらにはアムネスティ以外にも多数ある関連国際機関へのアピール、国際NGOとの連携を強化するべく訴求活動を展開していく必要がある。当基金の一員として私もこれに最大限の努力をしていきたいと思う。

以下はアムネスティ・インターナショナル日本が5月13日に発表した声明文。


日中両国政府は亡命希望者を保護すべき
中国政府が瀋陽の日本国領事館へ庇護を求めた家族5人を拘束

 中国瀋陽の日本国領事館において、朝鮮民主主義人民共和国出身の家族5人が中国当局に拘束された。社団法人アムネスティ・インターナショナル日本は、もし5人が同共和国に送還されれば、重大な人権侵害の危険に晒されることを懸念し、憂慮している。

 アムネスティ日本は、2002年5月8日、中国当局が瀋陽の日本国領事館敷地内において、朝鮮民主主義人民共和国からの庇護希望者に対して行なった取り締まりを憂慮している。5人が強制送還されれば、中国が批准している「難民の地位に関する条約」第33条にある追放と送還の禁止(ノン・ルフ-ルマン)などをはじめとする国際人権基準にもとる非人道的な取締りであると考え、深い憂慮を表明するとともに、この家族5人が本国に強制的に送還されることの無いよう、中国政府に強く要請する。

 1999年以降、朝鮮民主主義人民共和国から逃れてきた人々が中国当局によって拘束・本国へ送還されるケースが増加し続けている。取り締まりにより拘禁された多くの人々は、あらゆる難民認定手続きの手段を封じられている。朝鮮民主主義人民共和国の法律では、許可なく出国することを犯罪と規定し、その刑罰として7年間の矯正施設収容から死刑までが適用されることから、5人が本国に送還された場合、これら罰則が適用され、恣意的な拘禁や投獄、拷問、虐待、場合によっては即決裁判による処刑、あるいは拘禁中の餓死・疾死などの人権侵害を蒙ることが懸念される。

 アムネスティは、現在までに多くの朝鮮民主主義人民共和国からの亡命希望者が中国に流入している問題を、国連難民高等弁務官や他の国際的な援助が必要な人道的危機にあたると考えている。

 朝鮮民主主義人民共和国からの庇護希望者に対する厳格な対応は、1970年代後半に流入したベトナム難民の多くに対し、庇護を与えていた事実とも対照的な政策である。ベトナム難民の多くは中国系ベトナム人だった。このことは、民族によって中国政府の政策が左右されることを示している。この事実は、中国が締約国となっている1951年の「難民の地位に関する条約」の第3条の定める差別禁止及び、人種差別撤廃条約などを始めとする国際人権基準の原則に違反することにもなり、中国当局に対し、このような差別的な政策を行なわないよう、要請する。

 アムネスティ日本は、再度、中国政府にこの政策を見直し、国連難民高等弁務官の援助により公正で独立した難民認定手続きがそれぞれにできることなど朝鮮民主主義人民共和国からの難民と亡命希望者の権利が確実に尊重されることを求め、そのような手続きが正しく確立されるまで、中国政府に対し、朝鮮民主主義人民共和国の治安当局が中国国内で行なっている活動を含む、身柄の拘束と強制送還を目的としたあらゆる活動を中止するよう求める。

 また、今回の事態において瀋陽での日本領事館の対応は、日本政府、外務省において、庇護希望者や難民に対する法的対応の認識が極めて浅く、その基本的手続きが未整備であることを内外に明らかにした。このことについて、アムネスティ日本は日本政府の難民政策が国際人権基準に照らして極めて限定的にしか、難民を受け入れない傾向と無縁ではないと考える。アムネスティ日本は、日本政府とりわけ法務省が難民手続きの整備をはかり、国際人権基準に適合する方向で現在の難民政策を変更すること、さらに外務省を含めた政府部内へその徹底をはかることを求める。

 現在、在外領事機関において、亡命希望者に庇護を与える権限・義務、あるいはそのような状況に対応するための国際的取り決めが存在していない。しかし、各国政府はこれまでも慣習的に領事機関において庇護を与えてきた。現在、領事機関における庇護希望者の数は増加傾向にあり、これら庇護希望者を保護する早急な対応措置が必要である。直面する重大な人権侵害から庇護希望者を保護することは、世界人権宣言をはじめとする国際人権基準に定められた各国政府の責務を果たすことになる。

 これまで、他国の領事機関が庇護を与えてきた事実からも、重大な人権侵害に直面し、庇護を求めて来た人々に対し、充分な保護を与えようとする日本政府の積極的な努力がみられなかったことに、強い遺憾の意を表明する。日本政府に対し、いかなる場合であっても、人々の基本的人権の保護について、とり得る全ての手段により、これを確保する努力を要請する。

このページのトップへ


北朝鮮難民は「食料難民」ではない
- 徐勝氏の発言及びクローズアップ現代に反論する -

松浦清

 6月4日朝日新聞朝刊に掲載された徐勝氏の論考「瀋陽事件『企画亡命』では解決できぬ」は、今回の瀋陽日本領事館駆け込み事件を、「緻密な根回しとシナリオで『企画』されたもの」とし、NGOが世界世論を盛り上げて中国に難民認定を迫るものであると述べている。同氏はまた、このようなNGOは難民への人道支援ではなく、反北朝鮮国際世論を極大化させ、北朝鮮を崩壊させようという政治的意図を有しているとし、難民問題の解決はこのような手段では紛糾を招くのみであり、大部分が食料(経済)難民であるこの問題の人道的、かつ平和的解決策は、北朝鮮の食料事情改善のための国際的支援であると論を結んでいる。

 同様の問題提起は、NHKの番組「クローズアップ現代」「ETV2000」等でも放映され、領事館への駆け込みを同じく「企画亡命」、北朝鮮難民を「不法入国者」と呼ぶと共に、より良き生活を求めて中国に脱出し、ブローカー等の援助のもとに韓国を目指している人々として描き出した。

 最も影響力が強く、しかも誤解を招きやすい番組として、まず「クローズアップ現代」でのいくつかの発言を中心に取り上げる。NHKソウル支局の望月氏は、韓国では地道に食料支援を行っているNGOは、このような企画亡命の手段により、かえって中国現地での援助活動が難しくなるとして批判的であることを述べた。これは一つの意見であろう。しかし、「政治的亡命者は多くない」「中国に来た人間(の多くは)は政治的亡命を求めてはいない」と続く同氏の発言は、明らかに北朝鮮難民を「食料(経済)難民」とみなす主張(これこそが彼らを難民認定から遠ざけているのである)に結び付けるものである。

 さらに、番組はその後登場するビデオジャーナリスト、チョ氏の発言を中心に展開する。同氏は、北朝鮮の密入国者は多くが生活苦から中国に来ているとし、事件以降も取り締まりはさして強化されてはおらず、人々は国境の川を渡って行き来している、「生活が苦しくてやってくる人に対しては、密入国が見つかっても(中国も北朝鮮も)大目に見ている。比較的寛大な処置が取られている。」という結論に達している。

 しかし、近日出版された難民自らの証言「脱北者」(晩聲社)に克明に記された、強制送還された難民を待ち受けている処罰、さらに現在まで難民救援基金が中国現地で接して来た難民の情況と「寛大な処置が取られている」状態には余りにも大きな乖離がある。

 多くの難民が何度も北朝鮮と中国を往復しているのは、何よりも北朝鮮国内に残して来た家族にいくばくかの援助を持ち帰るためであり「北朝鮮では生きられない」状態に彼らが追い込まれているからであろう。そして、「寛大な処置」とは、難民を匿う朝鮮族に多額の罰金を課し、彼らの密告を懸賞金をつけて奨励し、北朝鮮に強制送還することを指すのだろうか。そしてグッド・フレンヅのような、番組で言う地道な救援活動と食糧援助に専念しているNGOが、何故中国当局から逮捕され、厳しい取り調べを受けているのか。

 また、北朝鮮で寛大な処置が待ち受けているのなら、何故難民はあれほど逮捕を恐れるのか。残念ながら強制送還後拷問を受け、行方知れずとなった、先述の「脱北者」著者は今北朝鮮のどこで生存しているのか。私たちの聞く難民証言によれば、強制送還された難民は中国での行動と誰に接触したかを厳しく取り調べられ、韓国、日本のNGO、特にキリスト教関連のNGOの保護を受けた場合は、拷問、収容所送りなど特に厳しい処罰を受けている。

 最も重要なことは、北朝鮮刑法47条によれば、許可なく国境を越えた者はその行為事態が国家反逆行為と見なされていることだ(細部の言葉にこだわりたくは無いが、番組で何度も繰り返された「不法出国者」という言葉はそれ自身北朝鮮及び中国当局の側に立った見解である)。確かに難民の多くは飢餓から逃れるために国境を越えた人々である。しかし、飢えで死ぬ、それ以上の人権侵害が有るだろうか。そして、生きるために国境を越えること、そのこと事態が、国家反逆罪になる以上、彼らは「経済難民」ではなく、UNHCRにより保護されるべき存在であることは、恐らく真摯に救援活動を行っている全ての難民救援組織の共通認識であると思う。

 さらに番組の続きでは、4年間中国で潜伏しているとう言う北朝鮮難民の姿が映し出され、韓国NGOの手厚い援助を受けていること、ブローカーを通じた韓国亡命を望んでいることが難民自身の口から語られた。ブローカーは仲介者を通じて難民を韓国に向けて送りだし、到着後は韓国政府から渡される定着金の一部を謝礼として受け取るという。私見では、こちらのほうがよっぽど「企画亡命」と言うべきものではないかと思うのだが、この番組を見たひとには、難民がおかれている苦境、北朝鮮国内の飢餓と抑圧、強制送還とその悲劇が全く伝わらず、彼らは単により豊かな国を求める経済難民としか写らないだろう。極寒の地をろくな靴も無くさ迷って足指を凍傷で失った少年、栄養不良と病から失明した少女、救援が間に合わず病に倒れた人、そして、摘発を受け、鼻や手に穴を空けられたり、脚に金属のギブスをはめられて逃げられないようにして送還れて行く人達。さらに、北朝鮮で待ち受けている取り調べと拷問。彼らの姿は「寛大な処置」の一言の中で黙殺され、NGOの主導による企画亡命とブローカーの動きだけが強調されている。

 クローズアップ現代は、私の知る限り、これまで比較的良質な報道番組を制作して来たことと思う。だからこそ、この番組が悪しき影響と難民に対しての誤解を与えることを私は憂える(一部インターネットでは既にその結果が表れ始めている)。NHKには、この難民問題は東アジア全体で考えるべき緊急な人道問題であるという見地に立ち、より公正な報道をお願いしたい。
 徐氏の論考についての反論も、以上の指摘で本質的には尽きている。但し、いくつかの点だけは強調しておきたい。難民問題に取り組む個人、団体の中で、北朝鮮の現体制に対しては様々な見解や評価はあるだろう。しかし、非暴力的な手段(映像、証言など)を通じて、北朝鮮難民が適切な保護を受けていないという現状を国際世論に伝達することは、北朝鮮体制や中国の政策の是非とは別次元の、世界人権宣言の精神にのっとった救援行動である。徐氏自身、韓国民主化運動の戦いを、韓国政府の国家主権を越えた普遍的な人権運動として、国際的に展開することを呼びかけた一人ではなかったか。

 そして、かって韓国の政権が、北朝鮮の脅威に対抗するためには有る程度の国内の言論統制は必要だと言ったときに、それは民主主義と人権精神に反すると言って戦った徐氏が、なぜ今はそれ以上に深刻な北朝鮮の人権問題、緊急の救援を必要とする難民問題に対しては、韓国政府の現在の立場をおもんばかって消極的な姿勢に終始するのか。徐氏が提起するような現政権への食糧援助は既に長年にわたって国際社会が行って来ており、その援助物資が民衆に充分にとどかないからこそ難民の流出が止まらないという現実に、なぜ目を背け続けるのか。

 韓国民主化運動を、東アジア二十世紀の価値ある運動と思うからこそ、徐氏の見解はあまりにも残念である。

このページのトップへ


「脱北者 -北朝鮮から逃げられなかった男-」
ついに出版!

 この本は北朝鮮難民救援基金がプロデュースし、6月1日に晩聲社より出版されました。著者は韓元彩(ハン・ウォンチェ)氏です。
 著者は高い能力にもかかわらず、父が朝鮮戦争直後に越南(38度戦を超えて韓国側へ越境する事)したことにより敵対成分として処遇されていました。祖国での希望を失った家族は脱北を決意しましたが、2度も脱出に失敗。それにもかかわらず、家族5人でついに3回目の脱出に成功しました。ところが、彼らは北朝鮮国家保衛部から懸賞金をかけられ、追跡されていたのです。
 その頃、難民救援基金のメンバーが彼らと出会い、その後、当基金はかれらの韓国亡命にかかわる事となりました。この本の原稿はそのときに書かれたものです。彼は北朝鮮の体制を告発し、自分が体験した拘留場での非人道的な実態を世界に知ってもらうために、当基金にそれを託しました。
 しかし残念な事に、彼と夫人は亡命直前に中国公安警察によって逮捕されてしまいます。すぐに瀋陽の北朝鮮大使館に引き渡され、激しい拷問をうけました。そしてその後、北朝鮮に連行され、殺されてしまったのです。夫人も激しい拷問をうけた結果発狂し、現在では行方も知れません。ただひとつの救いは、彼らの子供たちが多くの人々の協力によって、なんとか無事に韓国に入国できたことです。
 この原稿はそれから数年かかって、やっと日の目を見ることができるようになったのです。この本は著者の叫びです。遺書です。
 お値段は1200円+消費税です。全国の書店で注文する事が出来ます。お近くに書店がない場合、メール、FAX、手紙等に住所・氏名・希望冊数をお書きの上、当難民救援基金にお知らせくだされば、直接、晩聲社より発送させていただきます。是非、ご購読ください!

FAX:03-3815-8127
私書箱:〒100-8691
    東京都郵便局私書箱423号
    北朝鮮難民救援基金宛て
E-Mail:nkkikin@hotmail.com
■ 結核治療薬を引き続き届ける
 4月中旬、 脱北者の女性の結核患者に、 6カ月投与分の治療薬(リファムピシン、イスコチン)の最終分を手渡した。また会員が折ってくれた千羽鶴(2度目)も届けた。
 本人は血色もよく大変元気になり、「寝たきりだったのが、立ったり座ったりできるようになったし、動く事が楽しくなった」と喜びを語っていた。
 これが、最後の薬だと手渡した時に、「もう会えないのですか」「感謝の気持ちをどう表わしていいか分からない」と言っていました。
 「薬を全部服用が終わったら、最終検査を受けてください」と伝えましたが、日本から来たドクターに会いたがっていました。

■ 北朝鮮国内への食糧配給続く
RN-01 5,6月分の配給予算として36万円=2万人民元を渡す。この他、種用トウモロコシ6000元、消毒薬2000元相当
RR-02 5月分の食糧配給費4,000元を渡す。

このページのトップへ


■第5回基金総会開催のおしらせ  関西支部

 第5回北朝鮮難民救援基金総会を下記要項にて開催します。今回初めて、総会を大阪で開く事になりました。
 会場は大阪城と大阪城公園に隣接した場所で、難波の宮跡がすぐそばにあり、博物館もできています。
 古代には難波津の岬であったところであり、かつて聖徳太子もそこに立って百済や新羅や高句麗の使節を迎えた華々しい地域でした。そしてまた、近世においては豊臣秀吉の本拠となり、元禄文化が花開き、その死後灰燼に帰した所でもあります。
会員の皆様の御来阪をお待ちしております。

日時:9月29日(日) 午後1:00〜4:00
会場:アピオ大阪(大阪市立労働会館) 207号室
    大阪市中央区森ノ宮中央1丁目17番5号
    TEL 06−6941−6332
交通機関:JR環状線または地下鉄中央線・長堀鶴見緑地線「森之宮駅」下車



■アメリカで大きな動き、モンゴルに北朝鮮難民キャンプ設営か

 6月21日の米国議会公聴会にて、北朝鮮難民キャンプをアメリカ政府の資金をベースに設営し、難民保護に乗り出すことを、この2月の国際会議にも参加された防衛フォーラム財団のスザンヌ・ショルテさんが提案。韓国の各報道によれば、この提案はかなり現実味を帯びているようです。
 もともとこのモンゴル・キャンプのアイデアは、当基金も2年ほど前から考え、モンゴル政府にも折衝しようとして来ましたが、その時はまだ時期を得なかったものが、今回このように実現に向けて進んでいることは大きな喜びです。私たちは早速ショルテさんに、この案を我々は支持しますというファックスを送りましたが、同時に、キャンプが設営された後は、さらに積極的な取り組みが必要となります。難民救援の具体的な実現策の一つとして、当基金も力を尽くそうではありませんか。

このページのトップへ