ものづくり 模型編 M60A1
工作のおもしろさ
・ 同じM60でも,イスラエルの兵器はどうしてこんなに独創的なのでしょうか。リアクティブ・アーマー(装甲の一部が爆発することによって,成形炸薬弾からの防御効果を得る)を装着することで,全く別の戦車のようになってしまいます。シャーマンにしてもセンチュリオンにしても,ついイスラエル軍仕様にしてしまいたくなる私です。
工作のポイント
・ 車体はタミヤのM60A3(1/35)を用いています。以前にモーターライズで販売されていたものに対して,車体上部と砲塔を,全面改修したものです。泣き所はキャタピラでして,キットに付属しているキャタピラをイスラエル軍で使っている写真はお目にかかれません。同じタミヤのサージェント・ヨークのキャタピラを使用すればOKです。
・ リアクティブ・アーマーは,C’Sモデルのホワイトメタル製のパーツを使用しています。このパーツの接着には,ゼリー状の瞬間接着剤が便利でした。
・ 細部のディテール・アップにはバーリンデン・プロダクツのM48−M60コンバージョン・セットを使用しました。
・ 今回はウェザリングを中心に述べてみたいと思います。順序としてはウォッシイングをする,ドライブラシによってハイライトをつける,パステルで砂漠の埃を再現する,といったところです。
・ ウォッシングとは,溶剤に薄く溶いた黒に近い色を,モデルの表面に塗って,実車が風雨にさらされて汚れた感じになっている状態を再現する技法です。薄く溶いた塗料を塗れば,凹部に塗料はたまり,この部分を暗くしてくれます。その他の部分の塗料は様子を見てティッシュ等で軽くふき取ってやると良いと思います。この技法を用いる際の注意点としては,当たり前のことながら,モデルに最初に塗った車体色の塗料を溶かしてしまうような溶剤を使ってはまずいということです。今回,私は実験的に油絵の具とテレピン油を用いてみました。戦車に塗った基本色の塗料はタミヤのアクリルカラーですが,もし,ミスター・カラーなそのラッカー系の塗料を基本色に用いたならば,テレピン油がラッカー系の塗料を溶かし,大変なこととなってしまいます。テレピン油は乾燥が大変遅く,あまりお勧めできるものではありませんでした。
・ ドライブラシとは,筆に塗料をつけた後,紙などにその塗料をぬって,できるだけ筆先についている塗料を落とし,筆先がほとんど乾いた状態で,モデルの凸部や,角などにこすりつけることによって,その部分を浮かび上がらせる技法です。したがて,用いる塗料は戦車の基本色よりは明るい色を用いることが基本です。筆先の塗料は,乾燥していないと,ただ塗料を塗っただけという感じになりますし,乾きすぎていると,色がつきません。この微妙なバランスの文章表現は難しく,まずは,経験からそのバランスを覚えてみてください。また,ドライブラシ用に筆先を短くした筆も模型店等で見かけますので,使用してみてください。
・ 最後に,パステルを用いた汚しです。レバノンの砂漠地帯の砂は写真で見るととても赤く見えます。こうした乾燥した汚れには,パステルを用いることが最適だと思います。パステルを紙ヤスリの上でこすって,パステルの粉を作り,それを筆にとって,車体の下部を中心に塗っていきます。これで完成という事もできますが,モデルに後から触れるとパステルが落ちてしまいますので,定着用につや消しのクリアー塗料をスプレーしています。ただし,クリアーカラーを塗るとパステルの色は若干変化しますので,あらかじめ試しておくことをお勧めします。
参考資料
イスラエルのM60だけを掲載している資料はあるのでしょうか?もしあったら教えてください。以下の本ではイスラエル仕様のM60の写真を,比較的多く見ることができます。
・ イスラエル 機甲師団とレバノン紛争 戦車マガジン別冊
・ IDFの鉄騎士たち 戦車マガジン別冊
・ ISRAEL’S ARMOR MIGHT(洋書/CONCORD社)
M60のモノグラフです。
・ M60 PATTON IN ACTION(洋書/SQUADRON社)
・ M48/M60 PATTON(モデルアート社)
イスラエルのM60A1の1/35の図面が掲載されています。
・ PANZER 1988年9月号
と,ここまで書いて思ったのですが,はたして現在これらのパーツや資料は手にはいるのでしょうか。実はキットを組み立てたのがずいぶん昔なものですから,こんな無責任な記事になってしまいました。次回は手に入るモノですから御安心を?