NHKのサイトに書いた文章です(^v^)。
「地球の裏側」日本への想い
NHK番組「ワイドスペシャル 地球環境 いま私たちにできること」からメールでお知らせをもらったので、書いてみました。
よろしければNHKのサイトにも行ってご覧ください(^v^)。
はじめまして、佐藤万理と申します。現在ロンドンに住んでおりまして、樹木園芸お
よびエコロジーのコースを受けております。
今年前半は、イギリス有数の環境保全団体BTCV(British Trust for
Conservation Volunteers)にて環境保全の実技の資格(NVQ Level 2 in
practical conservation)を取得致しました。
「環境保護先進国」と呼ばれるイギリスで環境保全やエコロジー関係の活動に携わっ
ておりますと、「地球の裏側」の日本に想いをはせずにはいられません。
小さな国土でありながら日本ほど多様性に富んだ自然に恵まれている国はありませ
ん。それはひとえに、北は北海道から南は沖縄・与那国・小笠原まで、亜寒帯、温
帯、高山帯、そして亜熱帯という多様な気候を有しているからに他なりません。
南
の地方や島々には夏に高波を伴った台風が襲い、北部では冬に豪雪に見舞われ、国全
体として両極端の気候の影響を受けています。また日本列島が複数の大陸プレートの
境目に位置し、地震を伴う造山運動によって隆起した、極めて変化に富んだ地形を有
していることも、そこに住む動植物に多様性を与えている一因です。
そんな日本列島には、私たち人間のほかに、驚くほどたくさんの動植物が暮らしてい
ます。イギリスと比較してみれば、一目瞭然です:たとえば、植物でいいますとイギ
リスには在来種のマツは、ヨーロッパアカマツ一種類しかありませんが、対して日本
にはハイマツ、ゴヨウマツ、チョウセンゴヨウ、ヤクタネゴヨウ、クロマツ、アカマ
ツと、少なくとも6種類が在来種として生息してい
ます(「山渓カラー名鑑 日本の樹木」より。地域亜種や変種はカウントしませんで
した)。
一方動物では、世界最北端のサルであるニホンザルをはじめ、イギリスでは既に絶滅
してしまったクマやイノシシがいまでも生息しています。ムササビやモモンガといっ
た飛翔するリスをイギリスで見ることはできません。
また日本には、コウヤマキ、ナキウサギやヤンバルクイナなどの世界的にも大変貴重
で絶滅が危惧されている木や動物もたくさん住んでいます。
ところが私たちの大部分は、世界的にも類を見ないたくさんの隣人たちとこの国土を
共にしていることを、あまり気にとめていないようです。
リサイクルや省エネの知恵を絞ることはそれ自体非常に大切で重要なことだとおもい
ます。ただ、それらの行為の根本に、背後にそびえる山を、頭上に広がる空を、近く
の里山を、カヌーや釣り針の下にゆらめく水を、オフィスの窓から見える小さな公園
を、港に打ち寄せる波を、道路脇の街路樹を、そして目の前の庭に向ける熱く鋭い視
線が伴わなければ、そんな隣人たちの存在はなかなか見えてきません。
「エコロジー」という言葉はギリシャ語で「家(=オイコス)の学問」という意味で
すが、日本という「家」のなかには私たちヒトだけが住んでいるわけではありませ
ん。私たちの目に見えないものから大きなものまで、地中、水中、草の陰、木の上、
森の中、山の斜面、そして空の上に住んでいる何百万、何千万種類の同居人の存在を
気にもとめず、彼らについて詳しく知ろうとせずに、ただリサイクルや省エネを叫ん
でも、ヒト中心の自己満足な行為で終わってしまうような気がします。
また、「家」には複数の部屋があります。同じヒトでも、北の地方と南の地方、東の
地方と西の地方、都市部と農村部といった、その土地その土地の人々の考え方の違い
や自然や野生動物に対する気持ちの温度差があります。それらを厳しく受け止め、話
し合い、調整し合っていく必要があるでしょう。
また、「家」をひとつの国の枠を超えた地球全体としてとらまえた時、フローリング
の床の木がどこで伐採されてきたのか、授業で開いたノートの紙がどこから来たの
か、印鑑の象牙がどうやって採れたのかなどに思いをはせ、感情的ではなく冷静に考
えをめぐらすことも、世界第2位の超大国に住む私たちにとって大切なことかもしれ
ません。
日本の新聞やインターネットで知る限り、日本には植林に、動植物の観察や保護に、
各地の里山づくりに、河原や砂浜のゴミ拾いなどに、真摯に活動なさっている方々が
たくさんおられると感じています。私も、イギリスで勉強を終えたらそういう皆さん
に加わって、驚くべき生物と文化の多様性に富んだ日本という「家」が、動植物すべ
ての住人にとって理想の「家」に近づくように努力したいと思います。
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