GREEN TEA TIME

小澤普照様(森林塾)に教えていただいた
緊急企画!ヒノキが危ない!?

ヒノキがケント州のBedgebury針葉樹木園で絶滅危惧種の一歩手前にランキングされていた!考えてみるとこれは由々しき事態であるっ!なぜならば、もしヒノキが更にすすんで絶滅危惧種になってしまったら、ヒノキを保護しなければならない。ということは、めったやたらに「ヒノキ風呂に入りたい〜!」とか、「うちのお風呂はTOTOのシステムバスだけど、せめて”ヒノキの香り”入浴剤を入れてお風呂に入るのが週に一度の幸せなの」とか、「やっぱし夢は大きくいつかは総ヒノキ造りの家に住む人生安定」なんて、言っていられなくなるではないか!?

ことの発端は同樹木園ツアーでもらったプリント。同樹木園に植えられている”World Threatened Trees”のリストだ。ランキングはIUCN(International Union for the Conserevation of Nature)によるもので、CU(=critically endangered。絶滅寸前)、EN(=endangered。絶滅危惧種)、VU(=vulnerable。絶滅危惧の一歩手前)の3段階でリストアップされている。それによると、同樹木園にある日本の木では以下のものが堂々の?ランクインだ:

ヒノキ(Chamaecyparis obtusa) (VU)
ヤツガタケトウヒ(Picea koyamae) (EN)
ヒメバラモミ(Picea maximowiczii var. maximowiczii) (VU)
ヒメバラモミ亜種(Picea maximowiczii var. senanensis) (VU)
コウヤマキ(Sciadopitys verticillata) (VU)
イラモミ亜種(Picea alcoquiana var. acicularis) (VU)
イラモミ亜種(Picea alcoquiana var. reflexa) (VU)

上記のほとんどが生息地が限定される種のように思えるが、ヒノキといえば木材用に林業で沢山植えられている印象がある。これは単なるイメージのもんだいなのかっ!?ほんとうはすご〜く少なくなっていたりして!?この重大事態に激しく慄いた私は、すぐさまWWWの荒波の中を葛飾北斎富嶽三十六景の小舟のように漂い、ついに、充実の森林サイト「森林塾」へ辿り着いたのであった!そして、祈るようなキモチで同サイトへメールを送ったところ、なんと、小澤普照様からメールをいただきました!!その内容をここに引用させていただきます:

ヒノキの件ですが、日本のヒノキは主として太平洋側に広く分布しています。しかし特に長野県の木曽地方や岐阜県の裏木曽地域に天然性のヒノキ林が集中的に存在しています。

木曽地方だけでいえば明治初期に約6万ヘクタール強あったヒノキの天然生林(概ね江戸時代初期大面積伐採の跡地に落下種子により成立した再生林で300年生程度の一定した樹齢で構成される)が現在約2万3千ヘクタールに減少しています。この辺が問題とされていると思います。減った部分は概ねヒノキの人工林として成長しつつあります。なお日本全体でヒノキの人工林は約250万ヘクタールという大面積を 擁しています。したがって人工林のヒノキ材を使用することは問題がありません。

世界最古の木造建築といわれる法隆寺もヒノキづくりであり、世界で6種類程度のヒノキの主力を日本のヒノキが担っていると考えられますが、今後は天然林(本来のもの)は保全措置を講じるとともに再生高齢林(300年程度の林齢です)の伐採も最小限に止める一方、人工林を長伐期化し天然のヒノキ林に近づける政策がとられつつあります。

江戸時代初期にはヒノキの大伐採によって少なくとも木曽では天然林は現在よりももっと少ない水準まで落ち込んだこともあるようです。

この辺はもう少し調べてみたいと思います。いずれにしてもヒノキはスギと並んで日本の気候にもっとも適 した樹木でもありますから戦後の一時期のような過度の利用や台風などによる大規模な災害から守られれば通常の環境に適応できずに衰退していくというようなことは考えにくいと思います。

小澤様、貴重な情報を有り難うございました。これで「いつかは総ヒノキ...」の夢も見れるし、能を観る時に舞台のことばかり気にせずに楽しめます(そんなにたくさん観たことあるのか!?)!いままであまり意識しなかったヒノキの恩恵を噛み締めている私です。

でも樹齢300年のヒノキの天然生林って威厳に満ち溢れたものなんだろうなぁ...。考えてみれば、今私たちがそういったすごい林を見られるのは、江戸時代の人たちのおかげってことですよね?ということは、西暦2300年ごろの人たちも同じような天然生林が見られるようにするのが私たちの努めってことですね!林業に従事する方々におんぶに抱っこするだけじゃなくて、都市部に住んでいる私たちも、ヒノキを身近に思うことからいろいろなことにつながっていくかも。ナラやブナなどの広葉樹が脚光を浴びているなか、街路樹にヒノキをつかってクールにクリスプに気取ってみるのもテでは?天然のヒノキチオールで気分爽快。街角森林浴も不可能ではないかも!園芸種もいろいろあるので、庭にもヒノキを一本!粋ってもんです。それから灯台もと暗しだけど日本の南にある台湾。明治神宮の鳥居(下の写真)にはタイワンヒノキ(小澤様によれば、日本のヒノキの亜種という説とまったく別の種という説があるそうです)が使われているそうですが、国際的に「国」として認められていない台湾国内の動植物の種の保存は手続き上、国際協力が非常に難しいそうです。戦前日本が台湾のみなさんにかけたご迷惑とともに、そんなこともちょっと気になるヒノキ模様でした。左の写真はBedgebury針葉樹木園で育てられている台湾の針葉樹 − おそらく コウヨウザン(杉木)(Chinese Fir)(Cunninghamia lanceolata)です。

IUCNの絶滅危惧リストに載っている日本の木はまだまだたくさんある可能性は大きい。ヒノキを含めた上記7種は「Bedgebury針葉樹木園に植わっているもの」というくくり。もともと在来種の少なかったイギリスだったら、いたるところに外国産の樹木を植えるのもわかるけど、国土の割に樹木の種類が驚異的に多い日本。後ろにそびえる山々に植わっている木のことを本気で考えないと、けっこうヤバかったりして!と、遠きイギリスの空の下より思いをはせる今日このごろです。

日本の森林をもっと知りたい方は、ぜひ 小澤様のサイト「森林塾」へどうぞ!


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