G3ボード実験:
 「じ〜さん」って何だ?!と言われる方。「じ〜すり〜」と呼びます。ドイツ人は「げ〜どれい」と呼ぶかも知れませんが,日本人ならお茶漬けです。

 PowerMacが使ってるPowerPC60xシリーズのうち,今まで603eと呼ばれたCPUの後継CPUがG3=PowerPC 750です。同時に604eの後継はマーク5と呼ばれていました。CPU単体で見るとマーク5の方がパワーがあり,アップルは「自分がマーク5を,互換機メーカーへは非力なアーサーを」という切り分けでいたようなのですが,本来非力な筈の750はパソコンというシステムに合わせて作ってあったため,うまく使えば266Mhz程度で350Mhzのマーク5を軽く抜き去る総合性能を発揮しました。アップルは慌てて互換機路線を葬り去り,自分でG3Macを作るようになりました。
 750とマーク5の大雑把な違いは,750がPentiumのような2次キャッシュ回路を備えている所。加えてタグRAM(キャッシュに既にデータがあるかどうかを判断する情報の保存場所)をCPU内部に持っており,キャッシュヒット判断とメインメモリへのアクセスを即座に切り替え,CPUが無駄に待っている時間を減らせるようになっています。ただし,このキャッシュに使える高速SRAMがまだ高価。
 今回買ったPowerLogixのPowerForce G3 275は,ごまかし無し,CPUと同じクロック275Mhzで動く高速SRAMを1Mbyte積んだヤツで,一説によるとこれだけで20万円。CPUはオマケ。Appleを含め,他社のG3は値段を下げるためにもっと低い周波数で動く安いSRAMを繋ぎ,CPUの半分程度の周波数で駆動するようになっています。G3カードの中では最速になります('97 12月現在)。そいでは実働開始。機種はPowerMac8500/132。


ボード上の2次キャッシュを抜く:普通はバックサイドキャッシュ1Mbyteに対してボード上の2次キャッシュの方が少ないので,バックサイドキャッシュは必ずボード上のキャッシュ内容と同じかそれ以上を記憶する事になります。挿したままにしておくと,バックサイドキャッシュに情報が無いと判断してメインメモリへアクセスする前に,当たる筈の無い2次キャッシュをまたチェックするため,せっかくの無駄を省くシステムを生かしきれずに性能が落ちます。買った時は高かったけど抜くったら抜くんだ(泣)。以下はキャッシュ無し,CPU単体での性能を示す物です。Ziff-DavisのMacBench 4.0を使いました。表組みは画面に入るよう少し加工しています。


 浮動小数点演算は2倍に上がるものの,整数演算では132Mhzよりちょっと増し程度。クロックが2倍以上なのに無印604に10%増し程度の整数演算能力しか無いというのは情けない。
※604 132hzの方はボード上2次キャッシュ512Kbyte込みでの性能でCPU単体ではありません。


キャッシュを有効にするここでキャッシュを有効にします。一度PRAMリセットをしないとシステムディスク無しの「?フロッピー」マークが出ました。さぁ,どうだ?。
 元のシステムを100%にした図になっちゃって分かりにくいかも知れませんが,整数演算が途端に上がりました。scoreで見ると360から1035。じつに2.8倍です。ベンチマークルーチンそのものがキャッシュ内に丸ごと収まってしまったと考えると納得できる数字です。実際のプログラムが単純な処理の繰り返しで,余りデータを吐き出さないタイプであれば凄く速いという事です。これに合わせて浮動小数点演算も速くなっています。


モトローラ算術ライブラリ機能拡張を入れる:米モトローラからPowerPC(750?)用に最適化された浮動小数点演算ルーチンが提供されているので,これをインターネットでダウンロードして入れてみます。


 Current Systemになっている方が「マスライブラリ有り」です。更に浮動小数点演算が1.5倍になりました。元の604 132Mhzと比較すると3.7倍という数字になります。これで3Dも速くなるといいんですが。 


アプリケーション実働テストMac Bench 4.0では仮想デスクトップを使った各種有名アプリケーション(マイクロソフトword/excel,アドビ製品)を実働させて速度を計るという事が出来ます。ひとりでにメニューを開き,文字列を打ち込んだりスクロールしたり検索置換したりというのを勝手にやるテストです。これ見てるとパソコンが空恐ろしく感じます。

 内蔵グラフィックス系なので,CPUのパワーアップがグラフィックスもパワーアップします。ただ,これを見るかぎりでは233Mhzの604eカード(最近49,800円で売ってました)を入れても同じくらい出そうな気がします。キャッシュ内に完全に収まるベンチマークが異常に速いだけで,実働となるとクロックぶんのアップにしかならないようです。1次キャッシュの多い604e比で考えれば,クロックアップぶんにさえなってません。


Adaptec 2940UWを挿す:750ボードと相性が悪いと言われるUltra Wide SCSIカードの2940UWを挿して,起動してみます。挿してすぐは,またも「システムが見つからない」マークが出ましたが,PRAMリセットをやると起動は出来ました。ただ,起動後B's crewでドライブするHDDが自動マウントされません。手動でマウント後は問題無く使えますが,起動の度ごとにマウントしなければなりません。つまり,こういうドライブを起動ディスクとして使っている人は起動できなくなる虞があるという事です。やはり問題ですが,これはボードが悪いのか,それともドライバが悪いのか,これしか持っていないので切り分けが出来ませんでした。
'98 5/12日現在,Adaptec社ホームページにアップされたPower DomainコントロールパネルVer3.0Jとボードファームウェアに交換するとマウントされるようになりました。


オーバードライブしてみる:さて,あらかた特性も解ったので最後にオーバードライブもやってみます。搭載キャッシュは製品として少なくとも300Mhzまでは耐える筈なので,1:1駆動でバスクロック優先,最大45Mhzに設定してみます。このときCPUは292Mhzで駆動されます。バスクロック2.5MhzとCPUクロック17Mhzアップでどの位の効果が出るか?。

 結果は非常に素直。単純なベンチマークはCPUクロックアップぶん程度しか効果が出ません。外部と殆どやりとりが無いのでバスクロックはほぼ無関係と言うところ。対して外部とのやりとりを行うアプリケーションテストではバスクロックアップぶんとCPUクロックアップぶんの両方が反映されたという感じです。しばらく使ってみましたが,全く問題も起こらず,放熱フィンも冷たいままなので,これで使うことにしました。ちなみにバスクロックを維持したまま,もう一段UPの315Mhzでは,キャッシュかCPUかが耐えられなかったようで,起動中に止まりました。

所見:良くも悪くもベンチマーク向きのCPUボードで,肥大化するアプリケーションをこなすには,キャッシュ不足。また,大量のデータを受け流すビデオ編集等ではキャッシュの効果も薄く,素顔のままの750が見えてしまう(あまり見たくは無いわな)事になりそうです。そのうち3Dのレンダリングもテストしてみましょう。

これにて一件落着。 


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