森の中の木
誰もいないところへ行きたかった
あなただけがいればよかった
ほかに誰も要らない
だから二人で旅立ったはずだったのに
二人の部屋は抱き合っていても
不安になる
いつか 誰かが私たちを引き離してしまう
誰もいないことを二人で望んだはずだったのに
不安に駆られる私たちは都会の街をあるく
たくさんの人の流れに身を任せて
町の風景の一部でいることに
少しほっとする
たくさんの人波は風景みたい
この歩く人波が
それぞれの生活を持つ人の流れとは
思えない
ひとつの塊のよう
ひとつの風景のように
その風景の中に
自分を紛れ込ませる
このまま
風景にとけて
消えてなくなってしまっても
きっと後悔しない
二人でいると不安になる
きっといつか離れてしまう
風景に溶けて、誰にも見つからない
不安の無い二人だけの時間を
やっと見つけた気がする
20000622UP