最後の手紙
拝啓
このごろやっと暖かくなってきたけれど、風邪なんか引かないで
元気でやっていますか?
今更僕が、君にこんな手紙を送るなんて驚いたと思います。
嫌でなければ最後まで、この手紙を読んでくれる?
あの日から、もう写真でしか君を見ることが無くなってしまったけど
今でも本当は君とやり直したいと思っています。
君を幸せにすることが出来たかどうか僕は今でも自信かないんだけど、
だけど、僕は君といた時間が一番楽しかった。
一体いくつもの時間を僕たちは過ごして来たんだろう
僕との時間はしあわせだったかい?
いつも君を泣かせてばかりいたような気がする。
反省することばかりで、今更だけどごめんなさい。
きっと、許してはくれないと思うんだけど言い訳も少しは聞いて欲しいんだ。
誤解だって解いておきたい。僕たちはすれ違ってばかりだったんだ。
だから、
そこまで書いてペンをおく。
手が止まる。ため息が出る。
「きっと、言ってもあなたにはわからないわ。」
そう言って泣いていた彼女を思い出す。
僕は、彼女に何をしてあげられたんだろう?
最後まで、なにも言ってくれなかった彼女。
彼女の涙は僕の手の平から滑り落ちる。
僕は彼女の涙を掬い上げることが出来なかった。
涙を流すことがない今、君はしあわせになれたんだろうか?
あした、彼女の好きだった花と一緒に書き上げた手紙を送ろう。
原案:T.NAGABUCHI 「INORI」
20010316UP