彼の言い訳、彼女の嘘

「おやすみなさい、今日はありがとう。」いつものようにお別れの挨拶。
明日も明後日も、ずっと続く毎日のこれは行事みたいなもの。
おやすみなさいの後は、お互いに何も知らない。このまま家に帰って、
あなたは眠るのだろうか?私の知らないあなたになっていく後姿を今日も見送る。
今は幸せ、きっと明日も明後日も。

夕方、だんだん窓の外が暗くなってゆく。急いで待ち合わせ場所へ…
携帯電話が鳴る。メールが届く。
『ゴメンネ。シゴトガオワリマセン。マタアシタ。』
返事を書く。『ワカリマシタ。マタアシタ』少し、つよがる。ほんとはさみしい。
自分に独り言を言ってしまう。だって彼の仕事は忙しい。
しょうがない、思ってなくてもしょうがない。だんだん、仕事より魅力がなくなっていく
自分に気付かされる。だけど、仕事と私を比べるのは、プライドが許さない。
だって、比べられるものじゃない。私と会うことが、仕事のように義務になるのなら
その恋愛はきっと寂しい。終わった恋愛。
だけど、彼の仕事は忙しい。だから、あえない時もある。
今は、寂しくても明日は幸せ、明後日だって…



「おやすみなさい。今日はありがとう。」いつものようにお別れの挨拶。
明日も明後日も、ずっと続く毎日のこれは行事みたいなもの。
おやすみなさいの後は、お互いに何も知らない。このまま家に帰って
君は眠るのだろうか?僕の知らない君になっていく姿をバックミラーに映す。
今は幸せ、きっと明日も明後日も。

夕方、だんだん窓の外が暗くなってゆく。もう、きっと間に合わない。
携帯電話でメールを送る。
『ゴメンネ。シゴトガオワリマセン。マタアシタ。』
返事が届く。『ワカリマシタ。』
よかった、やっぱり彼女は、優しい。だって、今日は仕事だから。
僕の仕事が忙しいのは、彼女も知っていることだし、仕事ならしょうがないし。
僕は、彼女の為に仕事をしているんだから。
彼女もそれはわかってる。
仕事が忙しいんだからしょうがない。会えない日だってきっとある。
今は寂しくても明日は幸せ、明後日だって…


昨日が今日になれば、明日が今日になる。
二人はいつものように待ち合わせも出来る。
「昨日は、ゴメンネ。仕事が忙しかったから」
「えっ、いいよ〜。仕事が忙しいんだったら、しょうがないじゃん。」
「お詫びに好きな物ごちそうするよ。」
「え〜、いいの!じゃあねぇ…」
昨日は、おしまい。
昨日の嘘も。言い訳も。
20000519UP
                    

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