【編集現場から本を紹介】
あたたかいお金「エコマネー」
──Q&Aでわかるエコマネーの使い方

加藤敏春編著+くりやまエコマネー研究会
定価1300円(〒310)
四六判・並製・302ページ
ISBN4-531-06361-9
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善意を発揮させてくれる通貨
 環境問題や介護問題だって、ゴミがあれば拾ったり、老人の話し相手になるなど、今までやっていることにプラスαすればいいのではないかと思う。それをしやすくするツールがないだろうかと思っていた。
 つまり、お金になるとか、ならないとかは関係なく、さわやかな気分で互いに助け合うことを助長させてくれるツールはないだろうか。

Q&A形式でわかりやすい
 そんなことを思って、地域通貨について調べてみると、もう既にそういった試みがたくさん行われていることが分かり(例えば
日経新聞2001年6月3日)、その中で僕の理想をかなえてくれそうなのが「エコマネー」だった。経済産業省の方がプライベートに提唱している考え方だ。参考書は当時まだ一冊しか出ていなくて(今は4冊)、日本経済評論社から『エコマネー』という本が出ていた。でもそれは、エコマネーの概念と歴史的な位置づけをしているけどどうすればいいかは、よく分からなかった。そこで、著者の加藤敏春氏にメールをお送りした。「エコマネーの考えは良いと思うのですが、実際はどういうことをするのですか。そういう本があれば読みたいのですが」と。
 その後、お会いしましょうと言うことになって、本書が出ることになった。Q&A形式でとてもわかりやすく解説していて、僕にはもう疑問はないぐらいよく説明されている。きっと、どなたにもわかりやすいことだろう。

二十一世紀を救うツール!
 エコマネーは、中村桂子氏(生命誌研究館副館長)が言うように「貨幣経済に呑み込まれている悩みの解決につながりそう」(
毎日新聞「今週の本棚」全文記事2001年4月8日)とか、「エコマネーこそ、これまでの資本主義的市場の働きを補完するもの、あるいは場合によっては取って代わりさえする、新しい強力な仕組み」(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター所長公文俊平氏)とか、言われる。
 それほどパワフルなツールなのだ。本書に出てくる北海道の栗山町では既に二度、流通実験をしていて、寝たきりのお年寄りも小さな子どもも、人にしてあげる喜び、してもらう喜びを味わったことがレポートされている。
 
助け合いがエコマネーの真髄
 ボランティアをもう一歩進めて、お互いに助け合うことが必要。「日本では、ボランティア活動は、サービスを提供する人が一方的にその善意を提供するものとして限定的に考えられがちですが、エコマネーは、あるときサービスを提供した人が次のときにはサービスの受け手となる、そのプロセスが繰り返し行われるというように、そこに双方向性を生みだします」
 この助け合いがエコマネーの真髄だろう。実際これが社会で普通になれば、あなたのお金の量が今までと同じでも、何倍もの文化的・人情的で、なおかつ環境保護や福祉にも役立つ生活ができるのではないかと思う。
 ぜひ多くの地域、会社、グループで本書を参考にエコマネーを使っていただき、大いに自身のコミュニティを活性化していただければと思う。
(編集者・記)

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不況、環境問題、高齢少子化問題など今世紀の難問を解決するツール。新しいコミュニティづくりを支援する「通貨」。100以上の地域で導入され、人と人との「信頼」をつなぐ、あたたかいお金「エコマネー」の使い方・考え方がすべてわかる!

エコマネーって何?
 エコマネーって「21世紀を救う新しいお金」なんだけど、なかなか一言で言うのはむずかしい。でもエコマネーを簡単に説明してみると……。
●お金に代えられない善意を交換する通貨。
●日本で100以上の地域がすでに導入。
●エコマネーは地域やコミュニティの人たちが発行する。
●誰でもはじめられる。
●温かい心をつなぎ、人と人との「信頼」をつなぐ。
●地域社会やコミュニティを元気にする。
●自分のしてあげられることをサービスすればエコマネーがもらえる。
●エコマネーは普通のお金に換金したり、お金の代わりに使うことはできない。

ユートピア
 エコマネーの考え方は僕の理想にとても近いものがある。みんながそれぞれ自分のやれることを進んでしてあげ、逆に自分がやれないことは他人に頼む。お金があるなしに関わらず、お互いが助け合って生きてゆく。そんな世界があればいいのになあと、夢をえがいていたのだ。
 確か一年半ぐらい前、僕の友だちの中で「地域通貨」という言葉が話題に上るようになった。それは、NHK特集で「エンデの遺言」という番組をきっかけにしていた。作家エンデがお金について根本的な問いかけをしていた。その番組の説明によると地域通貨は第1次大戦後、極度のインフレの中でたくさん出現し、経済を正常に戻そうとする画期的な試みだったという。そして利子を生まない新しいお金が人間の活動をまともにするのに必要だということだった。僕もそういうお金があればいいなあ、と思った。

知識を共有する?
 話は変わるが最近、会社関係では不況を打開するため「ナリッジ・マネジメント」という言葉を使って、みんなが教え合って、知識を共有していこうと言い始めている。なぜ、そんなことをいまさら言うのだろうかと思うのだが、なかなか教え合ったり助け合ったりしないものらしい。だってコンピュータ技術者の中では、教えないで知識の独占をしていないと、解雇されるかも知れないと言うのだ。なぜかと聞くと教えて分かってしまうと会社は自分を必要としなくなるからだと言う。
 だったら、「善意」を交換できるようなお金みたいなものがあれば、教え合いっこをしやすいだろうと僕は思った。

【目次】1章「あたたかいお金、エコマネーって何?」(イントロ編)/2章「なぜ、エコマネーなの?」(理由編)/3章「エコマネーはどのようなもの?」(解説編)/4章「エコマネーをどのように導入するの?」(実践編)(ここまではQ&A形式でさまざまな質問に答えていますので、とてもわかりやすいと思います)5章「エコマネーはどのように導入されたの?」(ケーススタディ編)/6章「エコマネーの語り部との対話」(対話編)/「エコマネー資料集」(資料編)。できるかぎりイラスト、図表や写真なども入れて編集しました。

※エコマネーについては→http://www.ecomoney.net/ecoHP/top.html が参考になります。
またエコマネーの考え方については『エコマネーの新世紀』(勁草書房)が詳しいです。ウエッブ書店のbk1に著者の加藤敏春氏のインタビューが出ていて、なぜエコマネーを考えたのか、これまでの地域通貨とどう違うのかが書かれていてわかりやすかったです。

【加藤敏春】プロフィール
国際大学グローバル・コミュニケーションセンター教授。1954年新潟県生まれ。77年東京大学法学部卒業、通産省(2001年1月より経済産業省)入省。84年米国タフツ大学フレッチャー・スクールにて修士号を取得する。まちづくりをライフワークとし、起業、地域社会の情報化、コミュニティの形成に関与する。1997年より21世紀型コミュニティを構築するあたたかいお金「エコマネー」を提唱。2000年度「日本マルチメディア大賞」を受賞。また、エコノミストとしても活躍し, 2000年度東洋経済「高橋亀吉記念賞」最優秀賞受賞。主な著書に『マイクロビジネス』『エコマネーの世界が始まる』(講談社)『エコマネーの新世紀』『エコマネーはマネーを駆逐する』(勁草書房)『「超」企業』(日本経済評論社)『創業力の条件』(ダイヤモンド社)などがある。環境gooで「web講義」を掲載中。
ホームページ=http://www11.u-page.so-net.ne.jp/cb3/tkatoh/

【くりやまエコマネー研究会】プロフィール
1999年9月, 加藤敏春氏とのご縁から北海道栗山町で発足。2000年2月〜3月、エコマネー(クリン)を使って第1次実験。同9月〜11月、第2次実験。2001年9月より第3次実験。将来はインターネットも活用して本格導入を予定。サービスは介護、環境、子供などの分野のほか、コーディネーターによるマッチングも行っている。第2次実験ではおよそ9000のサービスが登録されており、質・量とも世界最先端。
ホームページ=http://www.mskk.gr.jp/ecomoney/


★★エコマネー・地域通貨に関する参考書★★
エコマネーの世界が始まる
加藤敏春著/定価1785円/四六判・上製・234ページ/ISBN4-06-210494-6/講談社刊/bk1で買う アマゾンで買う

21世紀の「新しいお金」。従来の市場経済の尺度でははかれない価値の多様性を評価して流通させる「あたたかいお金」について、その方向性とビジョンを語る。
エコマネーの新世紀 “進化”する21世紀の経済と社会
加藤敏春著/定価2310円/四六判・上製・357ページ/ISBN4-326-55039-2/勁草書房刊/
bk1で買う アマゾンで買う

信頼を媒介とした新しい通貨エコマネー。地域コミュニティ活性化の切り札として期待されているエコマネーの理念と仕組みを解説した理論書。
エコマネー ビッグバンから人間に優しい社会へ
加藤 敏春著/定価2310円/四六判・上製・432ページ/ISBN4-8188-0999-3/日本経済評論社刊/bk1で買う アマゾンで買う

いま日本で最も必要とされる環境、福祉、コミュニティ、文化などに関する事柄で地域通貨を交換しようと考えた、著者独自の21世紀型社会構想「エコマネー」を世に問うた最初の本。

マネー崩壊 新しいコミュニティ通貨の誕生
ベルナルド・リエター著 小林 一紀/福元初男共訳/定価2415円/四六判・340ページ/ISBN4-8188-1305-2/日本経済評論社刊/bk1で買う アマゾンで買う

単一化の方向に向かう貨幣部門のマネー経済化の流れと、多様化に向かうボランティア経済の流れの相克の中で、本当のお金が甦る!(解説・加藤敏春)
だれでもわかる地域通貨入門 未来をひらく希望のお金
森野栄一監修 あべよしひろ・泉留維共著
/定価1680円/B6判 ・
174ページ/ISBN4-89474-011-7/北斗出版/bk1で買う アマゾンで買う

一定の地域の中で、信頼に基づいて流通される「地域通貨」を解説し、これまでの通貨の歴史と問題点、世界各地で使われている「地域通貨」を紹介。
エコマネーはマネーを駆逐する ―環境に優しい「エコマネー資本主義」へ
加藤敏春著/定価2400円/四六判・424ページ/ISBN4-326-55043-0/勁草書房刊/
bk1で買う アマゾンで買う

崩壊しつつあるグローバル資本主義に代わる新しい資本主義を提唱。デフレを克服し、持続可能な環境に優しい社会を実現するにはどうしたらいいのか?

なるほど地域通貨ナビ
丸山 真人・森野 栄一編著
/定価1890円/B6判 ・
208ページ/ ISBN4-89474-019-2/北斗出版/bk1で買う アマゾンで買う

日本での地域通貨の実践にまつわる体験談や世界の地域通貨の実情について語るほか、現在と未来へのビジョンについての対談などがある。

エンデの遺言 根源からお金を問うこと
河邑厚徳・グループ現代共著/定価1574円/四六判・261ページ/ISBN4-14-080496-3/日本放送出版協会刊/bk1で買う アマゾンで買う

「老化するお金」「時とともに減価するお金」など現代のお金の常識を破る思想を紹介。作家エンデに導かれて、「暴走するお金」の正体を探りに旅立つ。99年放送のNHK番組をもとにした単行本。
地域通貨ルネサンス まち起こしマネー戦略
トーマス・グレコ著・大沼 安史訳/定価2940円/四六判・381ページ/ISBN4-88023-342-0/
本の泉社刊/bk1で買う アマゾンで買う

現在世界各地に広がり、地域経済を潤す「地域通貨」とは一体何か。新しい交換メディアの仕組みと働きを詳しく述べ、それが地域の人々と地域経済をどう力づけていくかを解説する。