花束を君に
6
コージ、クレアの時が止まった。玄関には憤怒の表情をした身長2メートルの男がハルバードを持って立っているのである。(これは怖い)
「ア、アルベルト今日は夜勤のはずじゃあ…」
「に、兄様、ノックもなしで家に入ってくるなんて失礼ですわ!」
別に2人にやましいことはない。が、コージはまるで妻に浮気がばれた亭主のようにうろたえた。
自分の家に帰るのにノックは必要ない。クレアもあきらかに動転している。
「ふ、フフフフフ、忘れ物を取りに帰ってみれば俺の家にネズミが入り込んでいたとはな」
ジャキ!
アルベルトがハルバードを構える。隙の無い一撃必殺の構えである。
「落ち着いてくれアルベルト!俺は決してやましい事はしていない!一緒に食事をしていただけなんだ!」
「信用できん!!」
取りつくしまもない、むしろ時間が立つにつれ殺気が強まっている事がコージにはわかった。
「本当ですわ兄様、一緒に食事をしていただけですわ」
「クレアが嘘を付くとは!?貴様クレアをたらしこんだな、もはや奴裂きにしてもあきたらん。死ね!!」
クレアのフォローも火に油を注ぐだけだったが、時間稼ぎにはなった。コージはその間に台所にあった中華鍋を掴みアルベルトの必殺の突きを防いだのだ!
パキィ!!
が、その一撃で中華鍋は真っ二つに割れた。
「嘘だろ…」
コージは死を覚悟した。思えば短い人生だったがノイマン隊長の第3部隊は守りぬいたんだ、もう悔いは無い…そういえば大武闘会に出場する約束守れなかったな、ゴメントリーシャ。…大武闘会?コージはハッとした。
「ま、まてアルベルト、どうせなら大武闘会で決着を着けないか?」
「命乞いか?悪いが今殺さなければ俺の怒りがおさまらんし、第一意味がない」
「いいえ、兄様意味はありますわ!」
アルベルトはきっぱりと言い放ったがクレアが割り込んだ。
「どうゆうことだクレア?」
「今ここでコージ様を殺したら兄様は唯の人殺しですわ。ですが大武闘会でしたら殺してしまっても事故として処理されますわ!」
恐ろしい事をいう、が間違いではない。
「むう、確かに…」
クレアの提案にアルベルトは考え始めた。
「アルベルトさん事件です、急いで自警団事務所までお戻り下さい!」
そこに第1部隊の隊員がやってきた。
「ちっ解った今戻る。おいコージ、とりあえず大武闘会までは生かしておいてやろう。だが、もしその間にクレアにまたちょっかいを出したりしたらその場で真っ二つにしてやるからな」
とても自警団員とは思えないセリフを残し、アルベルトは仕事に戻った。
「た、助かった」
大武闘会までという期限はついたがコージはとりあえず命を繋いだ。
「お怪我はありませんか?コージ様」
クレアが心配そうに倒れこんでいたコージの頬を撫で、膝枕した。
「ああ、クレアおかげで助かったよ(えらい怖いこと言ってたけど)」
「もう、兄様は本当に乱暴ですわ!こうなったらコージ様、大武闘会で兄様を思いっきりやっつけて下さい。そして…(コージ様と私との仲を兄様に認めさせてください)」
「そして…何?」
「えっ、もう嫌ですわ、わかってるくせに♪」
バシッ
「イテッ」
弾みでクレアはコージの頭を平手で叩いた。
「あっ、嫌ですわ私ったら、大丈夫ですかコージ様?」
「ええい、クソッそういえば俺は忘れ物を取りにきたんだった」
アルベルトが苛立った様子で突然部屋に帰ってきた。
ゴン!!
「くおっ!!」
とっさにクレアが膝枕を外し、アルベルトにばれないよう立ち上がったので俺は叩頭部を床に打ちつけてしまった。
「ん?コージ、何をまだ俺の部屋でもがいている?さっさと部屋に帰れ!」
「あ、ああじゃあなクレアお休み」
「はい、コージ様お休みなさいませ」
「ええい、あんな奴に挨拶しなくていい!」
アルベルトの叫び声を聞きながら俺は叩頭部を押さえながら部屋に帰った。
「アルベルトに殺されないようにしないとって事はどっちにしろ優勝できる位強くならないと」
アルベルトは強い。もはやトリーシャの為だけでなく、自分の命の為にも大武闘会にでなければならないコージであった。