戦争の中の正義と悪
第6章 大攻防戦
「さて、会議を始める。ゼファー、作戦を頼む。」
前の戦いから三日経った日。ゼファーの予言通り、アルベザードからの攻撃は無かった。
自警団の中ではエンフィールドに攻めて来る軍に対する対策が練られていた。
「敵は6万程度と予想される。それぞれ一個大隊を2万に分け、ひとつを古代兵器を使う部隊、ひとつを対白兵戦の部隊、そして残りひとつをエンフィールド内へ進入し、攻撃を仕掛ける部隊と分けると予想される。」
「成る程な。二度も負けてまた真っ正直に攻撃してくるやつなんてそういないからな。」
「そこでだ。こちらはエンフィールド内の攻撃を重点に置いて戦いを展開しようと思う。」
トウヤの言葉に「そういうことだ。」と答えたあと、ゼファーは作戦を述べ始めた。
「ここにエンフィールドの地図がある。」
そう言いつつ、ゼファーはテーブルの上に地図を置いた。
「この中心地にある店……つまりジョートショップを中心に、東西南北にそれぞれ約5千に分けて攻撃するやり方を取ると思われる。」
「エンフィールド内はそれを各個撃破すればいい……か。」
「そうだ。それに対してこちらの戦力は総合戦力1万5千のうち、1万を当てようと思う。」
「それぞれ2千5百程度か……戦い慣れしてない奴が大体30%を占めてるからな……今まで以上に慎重にならなきゃいけないか……」
「ああ。中の指揮はトウヤとルシード、そしてメルフィが取ってくれ。」
「わ、私がですか?」
ゼファーの指名で、メルフィが驚いた声を上げる。
「んー、アタシやアルベルトよりはいいんじゃないの?」
「そういうことだ。それに通信担当という面でもお前が入らなければいけないのでな。」
「わ、分かりました。」
「外の指揮はリカルド隊長と俺が、聖霊機はシィウチェンとアーサーでやってくれ。作戦開始は敵がエンフィールドから南約10キロ地点に付いたとき!各員の活躍を期待する!」
ゼファーの言葉で、作戦室にいた皆が作戦の準備を進めた。
「とうとう……始まったな……」
大軍の影が見え始めたとき、アルベルトが呟いた。
「いいか。俺達は目の前にいる敵を殲滅させる事だけを考えていればいいんだ。エンフィールド内に入る敵のことを考える必要はない。」
「分かってるって!中にはルシードやトウヤがいるんだから!」
「そうだよ、ゼファー。アタシ達はアタシ達のやるべき事をやるだけ!」
ゼファーの用心する言葉に、カインとバーシアは「何度も確かめる必要は無い」といった感じで答えた。
「敵の指揮官は……ノール将軍とチェルス将軍か……」
「じゃあ中に入っているのはイリア将軍か?」
「いや、残り一人の将軍という確立もある。他の三人とは違い、あまり表舞台には出てないが……」
「どちらにしろ中に重点をおいた作戦だから大丈夫でしょ?」
「そうだな。それと出来る限り聖霊機や古代兵器の射程に入らないよう気を付けて戦うしかない。いくぞ!」
そして、リカルド率いる外の部隊がアルベザード直接部隊と衝突が始まった……。
エンフィールド内でも、アルベザードとの戦いが展開されていた。
「こいつらっ!うざいんだよ!」
ルシードは声と共に剣を振って、敵を次々と薙ぎ倒す。
その後ろで、フローネとシェリルが氷の魔法アリシクル・スピアで援護している。
「ルシードさん!エンフィールド内で指揮している指揮官は残り一人の将軍の確立があると報告がありました!」
「やはりな。メルフィ、トウヤ達が今戦っているところはどこかわかるか?」
「公園−ジョートショップの間です!」
「よし、メルフィとシェリルはシェフィールド邸付近にいるピート・ヴァネッサ・亮の援護をしたあと、ショート邸に行け!俺とフローネは由羅の家経由でリサ・エル・ビセットと合流した後、トウヤ達の援護をする!」
「了解!」
「わかりました!」
ルシードの言葉と共に、4人は素早く駆け出した。
「どうやら、もう少しで本命が来るようだね。」
槍で敵を倒しつつ、バーシアは遠くにいる巨大な形を発見した。
「ああ。古代兵器だ。しかし、その対策をしていないわけではない。」
そのリカルドの言葉と共に、エンフィールド側から空を飛ぶ巨大な影が突如として現れ、その古代兵器に攻撃をはじめた。
それと同時に、次々と巨大な物が現れて来た。
そう……アルベザード国王が己の戦力として組み込もうとしていた聖霊機達が、敵の戦力としてこの戦場に初めて現れたのであった……。
アルベザードの古代兵器からは、ビーム砲やミサイルが次々と発射され、その相手へと向かっていった。
しかし、発掘されたばかりで調整も何もしていないが為、聖霊機にこれといったダメージを与えることができていない。
「よし!俺達は左右へ展開し、聖霊機各機の援護をする!」
「了解!」
「わかったよ!」
それを見たゼファーがアルベルト達に行動を指揮する。
「ホンシェンコワンとテュッセルドフで接近戦を行う!フォルスティンは陽動!ドライデス・ゼイフォンそしてアハティは中距離から近距離の攻撃を!他の機体は援護を行え!」
「了解!ゼイン・ライフル!当たって!」
「ブライファング・リメイション!続いてっ!」
シィウチェンの言葉に、聖霊機各機も素早く動き出す。
ビシャールのゼイン・ライフルとオルベストのブライファング・リメイションが古代兵器に着弾した後、テュッセルドフとホンシェンコワンが素早く移動し、追撃を加える。
古代兵器を操る兵士たちは、接近してきた二機に標準を会わせようとするが、上空からフォルスティン……もといメルヴィの必殺技・ノーティラスの風をまともに食らい、命令を与えることすら不可能の状態にされる。
その隙を付いて、ゼイフォンとドライデス、そしてパリカールがビーム砲で追撃をかける。
「よし!こっちはエンフィールド入り口で防戦を開始する!」
「ゼファー、ちょっといいかい?」
ゼファーが次の指示を出している途中に、バーシアが口を挟んだ。
「どうした?」
「うん。このまま行くと多分、雨が降るよ。そうなると、動かない……もとい動けない連中の方が有利じゃない?」
「だからだ。聖霊機が足を滑らして、こっちに倒れたらどうなると思う?」
その一言で、バーシアも納得していた。
「こいつら一体全体何人いるんだかね……」
そう言いつつ、トウヤはため息を付いた。
「トウヤ!隙を見せちゃだめだ!俺達はここにいる連中を倒すことだけを考えていればいい!」
そのトウヤの隣で、ウィレツもため息を付いている。
「やれやれ……それじゃ、行きますかっと。」
そう言うや否や、トウヤは剣を鞘に収め、両手を前に出した。
「大地にすむ精霊イシュタルよ!トウヤ・ジン・クラシオが呼ぶ!無数の土の矢となりて、わが敵を射よ!ニィィィドル・スクリィィィム!」
その直後、トウヤの手から、無数の矢が出現し、次々と敵に刺さって、敵を倒していった。
しかし、ほんの数人を倒せただけで、これといった致命傷を与えることは出来なかった。
「ちぃぃ!やはり倒せないか!」
「トウヤ!」
「ルシード達か!」
ルシード達がトウヤの隣に来たその時であった。人間一人入れるぐらいの黒く、大きな玉が現れた。
「テレポーテーション……か?」
「どうやらコイツが最後の将軍さんらしいな……」
「その通り……我が名はヴァンゲス・ヴァルト。アルベザードだけでなく、近隣諸国の最強の魔術師よ……」
「ヴァンゲス……ヴァルト……」
偉そうに名乗る魔術師風の男を、ルシードは穴が空くほど彼を見ていた。
「ほぅ……ルシード・アトレーか……久しいな……」
その言葉を聞いたとたん、ルシードの瞳孔は一瞬のうちに見開いた。
「ヴァンゲス……そうか……思い出したぞ!恩師を裏切った忘恩の男が偉そうに出てくるな!」
「はん……あの女のやることは逐一癪に障る。人間など争いを忘れられぬというのにな……」
「途中まで恩師の考えについて行きながら!」
「ルシード。もしかすると……」
言い争いを横で見つつ、あることを思いついたトウヤは、ルシードに声をかけた。
「確信は持てないけど、アルベザードが進攻を始めたのは、こいつが国王を意のままに操ったからじゃないのか?」
「何!本当なのかい?」
「多分……多分だけど……もしかすると、コイツ、国王を殺すかも……」
「ほほぅ……よく分かったな……。」
魔術師の言葉に、トウヤの表情は一瞬に青ざめ、何かを思い出したかの様に、彼の横をすり抜け、さくら亭の方向へと駆け出した。
しかし、魔術師の横を通りぬけて、15メートル程度の所で、突如トウヤの動きが止まった。
「フレイム・ジェイルか……」
「小僧……敵の俺をそっちのけに、何処へ行こうとする?」
「うるせぇ!俺の勝手だろ!」
「貴様の探すのは……これか?」
そう言うや否や、ヴァンゲスはトウヤを縛っている手の逆を上げ、黒い物体を出した。
それが開くと、炎に縛られた女性が現れた。
「ユミール!」
「貴様ぁ!」
その全てが現れると、トウヤの悲鳴混じりの声とルシードの声が響いた。
「はぁーはっははははははは!この戦いも結局は我らの勝ちと言う訳だ!」
「冗談じゃないよ!誰かアンタみないな男に。」
「そうだよ。彼女だって助けられる方法だってあるんだよ。」
「ほう……?では……これを見てもそう言えるかな?」
その直後、後ろから人の気配がした。
「!恩師!」
「アリサさん!どうして……」
アリサはルシードやリサの声が聞こえていないのか、無表情で片手を上に上げた。
「アリサ・アスティア!この者達を殺せ!」
ヴァンゲスの言葉で、アリサは上げた手を下げ、その直後衝撃がルシード達を襲った。
「くぅぅ……嘘……でしょう……?」
「畜生……カーマイン・スプレットなんて反則だぜ……」
悔しそうにうめくルシード達を追撃しようと手を振ろうとしたが、その手が何かで止められているかのように、動かなくなった。
「させない……!ユミールを……みんなを殺させない!」
「バカか……トウヤ!逃げろ!」
ルシードの叫びも虚しく、トウヤはアリサのもう片方の手に首を捕まり、持ち上げられた。
「ぐ……こ……このぉ……」
苦しそうにもがき、手を外そうとしたが、その手から魔力が放出した。
「はははははははは!バカめ!相手はエンフィールドでも随一の魔術師だぞ!そんな甘い抵抗が通用するとでも思ったのか!」
「いや……一つだけある。」
「なに?」
唐突なルシードの否定に、ヴァンゲスはわざと驚いた表情を作る。
「これはまた下らない冗談を!ルシード!お前は完璧な状態でこの状態を打破できるとでも思うのか?」
「ヴァンゲス……覚えてるよな……恩師に教えて貰った、あの魔法をさぁ……」
その直後、ルシードは魔法を唱える体勢に入った。
「貴様……まさかあの魔法を!」
「そうだ……魔術師組合に伝わる最強の攻撃魔法のヴァニシング・セイント・ノヴァ……あの魔法を使う。」
「バカか!それを使うとお前は死ぬんだぞ!それこそ忘恩じゃないか!」
ヴァンゲスの前に、エルがそう叫んだ。
「エル……恩師が何故俺達にこの魔法を覚えさせたと思う?こんな状態になった時の為じゃないのか?」
「そうか……そうだな……」
そう言うと、エルも魔法発動体勢に入った。
「大丈夫……なのか?」
両腕に魔力を溜め始めた二人に、ウィレツが聞いた。
「もとよりヴァンゲスに当てるつもりだ。」
「心配する必要は無いんだよ。」
「貴様ら……本気で使うつもりか!」
ヴァンゲスの表情は恐怖に満ちていた。
「炎の精霊イフリートよ……的を破壊する力となれ……大地の精霊イシュタルよ……我らと我らの仲間を守る盾となれ……」
「はっ!しかし、俺にはまだ策はある!アリサやこっちの銀髪の女を盾にすればいいんだからな!」
「風の精霊シルフィードよ……魔力を移動させる風となれ……」
ヴァンケスの言葉を遮るように、二人は言葉を続ける。
「ルシード……エル……貴様ら……人質がどうなってもいいというのか?貴様らも貴様らだ!止めたらどうなんだ!」
「へっ……馬鹿野郎が……俺達は二人の策を信じてるんだよ!」
未だアリサの手の中にいるトウヤの言葉で、ヴァンゲスは魔力を溜め始める。
「水の精霊ウンディーネよ……魔力を物質となりて、我らの敵を倒せ!」
その時、まるで炎・水・風・土を象徴する4つ色の魔力塊がルシードの周りとエルの周りに現れた。そして二人の間に行き、それが混ざった。
そしてそれが光の玉となり、眩しい光を放っていた。
「ルシード!エル!トウヤ達は無事だよ!思いっきりやって!」
「何!」
いきなりのクルルの言葉に動揺したのは、ヴァンゲスだけでなく、今こそ魔力塊を放とうとした二人も動揺していた。
「さっきから物陰に隠れて状況を見てたんだよ!」
クルルの近くには、東に豪邸を持つバクスター家の嫡子のリオ・バクスターと教会にすむ少女、ローラ・ニューフィールドもいた。
「このガキ共が……まずは貴様らから消してやる!」
「動揺してるんじゃないよ!アタシ達をまず相手にしな!」
「俺達の魔力とテメェの魔力……どっちが強いか勝負だ!」
「このぉ……くらえ!カーマイン・スプレッド!」
「くらえ!ヴァニシング・セイント・ノヴァ!」
3人が魔法を唱えた直後、光が当たりを支配した……。
「ど、どうしたんだ?ありゃあ!」
ショート邸でイリア将軍の部隊と戦っていた亮達は、突然現れた光に動揺を隠せなかった。
「まさかあれは……ヴァニシング・セイント・ノヴァ……?」
シェリルはそう呟いた後、一つの結論に達した。
「亮さんメルフィさん!急いでルシードさん達の所へ行きましょう!」
「どうしたんだい?シェリルちゃん……」
あまり自己主張しない少女に、晃一郎はいぶかしげにそう答えた。
「いまの光はものすごく強力な魔法なんです。僕たちやフローネさんですら使えない魔法で、おそらく使えるのは、エルフ族でもごく僅かな人たちしかいません。それだけならいいんですが、これを使うと、使った人は確実に死が訪れるという魔法なんです。」
「強力すぎるが為の足枷……か。分かった。急ごう。」
「まて!そう言うことなら私も行こう!」
その時、敵であるイリア将軍がそう呼び止めた。
「敵とそう簡単につるめるかよ。」
亮は敵の突然の提案に、首を縦には振らなかった。いきなりのその提案を幼馴染みのように呑めるほど、彼はいい人ではなかった。
「そう思われても仕方がないが、私達将軍勢……少なくとも私と弟はヤツのやることに疑問を持っていた。」
「ヤツって……残り一人の将軍ですか?」
「ああ。あの男は、6年程度前にアルベザードに来て、素早い出世をした。そして将軍になった直後、国王が近隣諸国に進攻を始めた。ヤツとここ一連の戦争を関連付けない方が不自然だ。」
「ちっ。しょうがねぇ。いくぞ!遅れるんじゃねぇぞ!」
エンフィールド入り口で防戦をしていたゼファー達も、光の正体に気が付いていた。
「ゼファー!敵の部隊が投降してきたよ!指示お願い!」
「分かった。投降してきた者は、この場でしばらく待機してもらえ!」
「そうじゃなくて、その中にチェルス将軍達がいるんだよ!」
「分かった。連れてきてくれ。」
そう言いつつ、ゼファーは聖霊機メンバーに連絡を取った。
「ゼファーか。さっきの光は何だ。」
「そのことで行動変更だ。とりあえず、古代兵器を操っているヤツで投降するのがいるなら、こっちに連れてきてくれ。」
「了解した。みんな、分かったな!古代兵器はここで破壊したあと、リーボーフェンに帰還する!」
そう言った後、シィウチェンは通信を切った。
「貴様が軍師のゼファー・ボルディか。俺は……」
「ノール将軍とチェルス将軍ですね。」
「知っているなら話が早い。さっきの光の正体、貴様は分かっているはずだ。」
「そう言う、お前達もな。でなければ、わざわざ投降してくるわけはない。」
その言葉で、チェルス将軍は「バレていたか」と言う表情を作る。
「私の副官……ティートがエルフでね。先程の魔法の事はよく知っている。そしてそれを使わなければならない状況も理解しているつもりだ。」
「ほう?」
「成る程……」
ノールの言葉に、ゼファーもリカルドも興味ありげに声を上げた。
二人も、イリア同様アルベザードの状況を話し始めた。
「要は、国王は平和を望む反面、争いを求める心があって、そこをその魔術師につかれた……か?」
「そう言うことだ。」
「成る程な。」
「しかし、心配なのは、ヴァニシング・セイント・ノヴァを使った魔術師です。あの魔法を使った者は、死ぬ可能性もあります。」
ノール達の説明にリカルド達が納得した直後、ティートが始めて口を開いた。
「確かにな。あれを使ったのはおそらくルシードとエルで場所は、公園の近くだろう。ティート。来てくれ。」
「は、はい!」
光が収まった直後、ウィレツは立ち上がって周りの状態を見渡した。
公園側に子供が3人とトウヤとアリサと呼ばれた女性、そして自分の幼馴染み。自分の後ろにフローネとリサとビセット。
そしてトウヤ達の近くに、敵の将軍と、魔法を使った張本人達がいた。
「ユミール!トウヤ!大丈夫か?」
ウィレツは素早く幼馴染みとその恋人に駆け寄り、二人の体を揺すぶった。
「いててててて……」
トウヤは辛そうに立ち上がった。
「トウヤ!大丈夫か!」
「そんな事よりユミールは大丈夫なのか?」
トウヤの言葉で、ウィレツはユミールの腕を握った後、額に手を添えた。
「特に問題は無いようだ。……成る程……。そう言うことか……」
「そう言う事って、どういうことだ?」
「本人から聞いたらどうだ?それよりルシードとエルが心配だ。他の連中は俺達が大丈夫だから、恐らく大丈夫だろう。」
「トウヤ!ウィレツ!」
その時、晃一郎の声が響いた。
「どうした?」
「ルシードさん達!大丈夫なんですか?」
「気絶……しているみたいだな。」
トウヤはそう言いつつ、ルシードの体を触ってみる。
「とりあえず、生きてる。」
「嘘……でしょう?」
シェリルとクリスは、完全に顔が引きつっている。
「おい、シェリル。ヴァニシング・セイント・ノヴァを使うと、死ぬ魔法じゃなかったのか?」
「恐らく、死なない程度に魔力を押さえたんでしょうね。ものすごく頭のいい魔術師だわ。」
「それに二人がかりで使った分、魔力のコストが低くついたんだろう。」
ルシードとエルに集中していただけに、ゼファーとティートの出現にここにいた皆は驚いて、その方向を見た。
「ティート・レルツ。貴様らも投降したのか。」
「お前、投降したのかよ。」
「細かい事は気にするな。あんな光を見せつけられて、投降しないヤツはこのバカくらいさ。」
亮の突っ込みに、気絶している将軍の体を触りつつ、イリアはかわした。
その直後、ヴァンゲスの姿が消え、トウヤ達の後ろに飛んだ後、ヴァンゲスは魔法を唱えようとしていた。
「安心しろ。今は貴様らと戦うつもりは無い。だが、俺にはまだ戦力があると言うことを覚えておけ!」
そう言い残すと、ヴァンゲスはテレポーテーションで、姿を消した。
「戦力……人間じゃ無いだろうな。」
「そんなこと考えてる暇があったら、けが人の治療をした方がいいぜ。」
「そうだな。」
「大変ッス大変ッス〜〜」
気絶している人間達を運ぼうとしたその時、犬程度の大きさの喋る物体が現れた。
「テディか。アリサさんなら、ここにいるよ。」
「ああぁぁぁ!ご主人様〜〜!」
「アリサ……?まさか、20程年前、魔術師組合で活躍していた、アリサ・アスティア様ですか?」
驚いて、アリサに近づいていくテディを、見ながら、何かを見落としていると言った感じの表情だった、ティートが思い出した感じでそう叫んだ。
「ええ。どうもそうみたいですね。さっきの魔法を使ったルシードさんもエルさんも、アリサさんに師事してるんですよ。」
ゼファーに支えられて始めて意識が回復したフローネが、ティートに言葉を発した。
「明日意識が回復したらサイン貰っちゃお〜〜」
「そう言えば、その魔術師が何で、元弟子に操られるような事になったんだ?」
ユミールを抱きかかえつつ、トウヤはティートにそう聞いた。
「ヴァンケスの実力の付け方がハンパでなくて、あっという間にアリサさんを追い抜いた……でいいんじゃないですか?」
「ふぅん……」
納得したようなそうでないような表情で、トウヤは仲間達と共に仮病院へと足を運んでいった。
第七章へ続く
後書き
「戦争の中の正義と悪」の折り返し地点である、第6章、如何でしたでしょうか?
今まででは、恐らく一番長くなったと思います。
私的裏ヒロイン出ましたが、まだ裏ヒロインらしい活躍してないです(笑)
表ヒロイン(ユミール)ですらあまり活躍してない状況ですからしょうがないかもしれないんですが(泣)
アルベザード4将軍の内、3人が投降したが為、エンフィールドの戦力が少なくとも今までの二倍になったのではないでしょうかね。それに対してヴァンゲル将軍がどのような策でルシードやトウヤ達に攻撃してくるのか!(アニメの次回予告風に)
これを知っているのは私だけです!(当たり前だ!)
予測して、あたった貴方は超敏感で、超天才です!(これも当たり前!)
と言うことで、まだつづくので宜しくお願いします。