争い無くす為に
パルマー戦役直後、ラ・ギアス世界・神聖ラングラン王国王女のセニア・グラニア・ビルセイアは悩んでいた。
16年間生きていた中でこんなに悩んだことは無かったと断言できるほど悩んでいた。
もうこれでもかと言ってもいいほど悩んでいた。
その理由は、10年前にシュテドニアス共和国でテロに合い、自分の叔父にあたるレニス・エンロードによって地球世界に飛ばされた従兄弟にあたるトウヤ・カザミことライザ・グラン・イクナートの専用機体となる銀色のノルス・レイ(元々モニカの専用機であったが)のとある武器をつけるかどうかであった。
「やっぱり……ウェンディに泣かれるわよねぇ……」
溜息とともに呟かれたセリフは10年前に自分がトウヤにしてきたことを思い浮べてのことである。
その出来事……自分がトウヤをイジメた思い出である。その内容というのが、トウヤの玩具をセニアが奪ったりそうでなかったり。その結果が、トウヤのあだ名に「泣き虫ライザ」と言われる程になっていた。
今となっては笑い話になっているし、今のトウヤは自分が惚れるほど外見的にも内面的にも「いい男」になってるうえ、ティターンズという悪の(ミオが言うには)組織から指名手配されるほどの「凄い連中」の1人のため、そうはならないというのは分かってる。
しかし、これから自分がやることは流石にそのトウヤをも泣かせるような武器であることは重々承知している。しかしメカフェチな自分の気持ちを抑えることも出来ないでいる。
二つの感情がメビウスの輪となって悶々と自分の周りで回っているのだからタチが悪い。
そうなった原因は一つ。自分の親友の1人にて、土の魔装機神操者である、ミオ・サスガであった。
『セニア〜!ノルスを改修するんだって〜?』
思い返せば昨日。この時だけは彼女の言葉を無視するべきであったのかも知れない。
『ええ、そうよ。だけど参ったなー。ライザのプラーナって、殆ど魔力張りの威力を持ってるんだもん。プラーナコンバーター探すのに骨折れちゃったわ。』
『そんでさ、セニア。付けて欲しい物あるんだけど。』
『なに?』
もしくはこの時、即座に断るべきだったのかもしれない。
『ノーズバルカン……もといノルスバルカン。』
そのセリフとともに、彼女の顔がにやけていたのは分かっていたのだ。
「どうした?何思いふけってんだよ。」
女性からは嫌でも優しく聞こえる声で話し掛けてきたのは自分が考えていた当の本人。
「い、い、いたの?」
「何上ずった声だしてるんだ?」
トウヤの声は完全に呆れている。しかし、彼の才能のひとつの鈍感のお陰(?)で自分の考えは見破られてないとホッとセニアは一安心になる。
「そ、そんなことより、地上の機体には『ばるかん』とか言う武器があるんですって?」
「ああ、基本的にモビルスーツ……とくにガンダムにはつけられて……まさかお前……俺や姉さんのノルスに付けるつもりじゃねぇだろうな……しかも鼻のところに。」
そのトウヤの言葉にセニアからギクという巨大な効果音が響く。
「ななななななな、何で、何で何で、何で分かったのぉ〜〜?」
「冗談のつもりだったのに、オメ、本気だったのかよ。」
「ちょ、貴方、誘導尋問にかけるなんて酷い!」
「あんなのに引っかかるほうが悪いんだろうが。……付けるのはいいが、条件がある。」
「え?いいの?」
親愛なる従兄弟にOKを貰ってパッとセニアの顔が明るくなる。
「条件があるって言ったろ。鼻じゃなくて頭につけろ。ガンダムも確かそうだったからな。それとお前のノルスにもバルカンつけろ。」
「やった〜♪」
んで、マサキにサイバスターを届けることになりました。
「ロンド・ベル確認っと、よーし、ノルスバルカンお披露目の時が来たぜ!」
「よーし、いっけ〜♪」
セニアの声援を背に受け、トウヤはノルスを上空500メートル程から急降下しつつ、メカザウルス・ザイの一機にバルカンで打ちまくる。その直後、激しい爆発音が上がり、その機体は哀れ(?)撃破された。
「すっげぇ〜!ラングランの機体ってバルカンもすげぇのか……」
「セニア!オメ!なんだよこの威力!メカザウルス一撃じゃねーか!」
バルカンの威力に興奮するリュウセイを横目にトウヤはサイバスターに乗っている従兄弟に文句を言う。
「え?バルカンってもしかして威力弱いの?」
「当たり前だ!使った本人が心臓停止するところだったぞ!」
「ごめんなさいごめんなさい。威力下げますから許してください。」
「……ラングランの王族は凄いな。クワトロ大尉。」
「君のガンダムにアレ、搭載してみたらどうだ?アムロ大尉。」
「遠慮しておくよ。」
(俺がいない間に凄いモン出来てたな……)
(よかった……私アレ使わなくて……)
トウヤとセニアの漫才の間に、ラングランのイメージをぶっ壊されたのは沢山いたとかいなかったとか。
それでアクシズが立った情報がセニアの耳に入ったその日、セニアはまたもや悩んでいた。
これでもかと言うほどやっぱり悩んでいた。
17年は生きているであろう彼女の人生の中でトップ3に入るといっても過言で無いほど悩んでいた。
その原因はわかっていた。
ヒイロ達ウィングチームの為に作られる新しいガンダムの中で、一つだけ出来ていない武器があったのだ。
それは五飛のアルトロンガンダムレイの近接武器であった。
セニアには、この新しいガンダムに「ラングランらしさ」というのを出そうと考えているのだ。
「ラングランらしさ」……つまりセニアはガンダムに守護聖霊を付けようとしているのである
彼女に言わせれば、『ラ・ギアスじゃないし、魔術的な攻撃してくるやついないし、守護聖霊なんてガンダムのパワーアップぐらいにしかならないんだけどね〜』とはいってるが、彼女なりの「拘り」と言うのが存在するのである。
ウィングゼロレイには「空」、ヘビーアームズレイには「炎」、デスサイズヘルレイには「刻」、サンドロックレイには「光」の守護聖霊を付けた。だが、アルトロンレイだけには守護聖霊すらもまだ決定していないのである。
「どーすんのよ、どーすんのよ〜〜。」
完全にセニアは頭を抱えていた。隣にいる大親友、セリカ・ラニアード・メスティナも完全に頭を抱えていた。
「二人とも、何頭を抱えてるんですか?」
その二人に声をかけたのは、トウヤ曰く「酔っ払いその二」ことレベッカ・ターナーだった。(ちなみに言うと、「酔っ払いその一」はロイ・フォッカー少佐だったりする)
「聞いてよ、ベッキー!アルトロンレイの近接武器と守護聖霊が決まらないの、決まらないのぉ〜〜」
「何ベッキーに泣きついてるんですか。」
よよよとレベッカに泣きつく二人に冷たくツッコミを入れるのは、やはりトウヤ曰く「恋する女のクセに男運は悪い女」と酷い言われ様(シモーヌファンの皆さんすみません)のシモーヌ・キュリアンだった。
「いい武器のネタがあります。」
そのセリフとともに、シモーヌは科学者風に変なポーズを決める。
「何何何何?何の武器なの?」
「プラグマティックブレードのパチモン。」
好奇心旺盛になっている声が、そのシモーヌの言葉で凍り付く。
「プラグマティックブレードって、まさかアレに付けられていた……」
「そう。悪魔の魔装機、イスマイルの何故か槍に似ている剣です。」
そのセリフとともに、シモーヌの瞳はキラーンと怪しく光る。
「暴走、するんじゃないかしら。」
「しないと断言できます。なにせあの坊やは『正義は俺が決める!』、『弱いものが戦場に立つな!』などと言っていますから。それでアルトロンレイを暴走させたら皆からの笑いもの……つまり意地でも機体の制御をしなければなりません。」
そのシモーヌの態度にレベッカは(なーにカッコ付けてんのよ)などと思ってみたりする。セリカとセニアはシモーヌに完全に怯えまくってる。
「私から言わせれば、デスサイズヘルレイに付けられているあの時限爆弾風の武器の方が怖いわ。あれ、『刻』のモビルスーツでしょう?」
「確かに。下手に分身やら何やらでスピード上げて炎属性の機体に爆弾がぶつかりでもしたら……」
シモーヌの言葉に、レベッカが同意する。
「確かにそうだけど、あれは時限爆弾って名前じゃないわ!タイムボマーって言う立派な名前があるんだから!」
「あーはいはい。」
怒るセリカにやや投げやりなレベッカ。
「だけど普通はあれ、ヘビーアームズレイに付けません?」
「『刻』は時間に関するんでしょ?」
「まぁ、そうだけ……もしかして、タイムボマーだから?」
「うん。」
レベッカの言葉でセニアとセリカは同時に頷く。
「て言うより、ヘビーアームズにウィングゼロとサンドロックがあんまり変わってないような……」
「そんなこと無いわよ!ヘビーアームズレイは隠し腕ゼインライフルが装備されてるし、サンドロックレイは剣からブレストファイアー射出できるし、ウィングゼロレイはゼロシステム搭載じゃなくてデュカキス搭載なのよ!ついでに言うと、デスサイズヘルレイのビームシザーズは元々ガッデスが最初使っていたトライデントを使ってるから、ビームトライデントとしても使えるのよ!」
(マジかよ……)
自身タップリなセニアの言葉に二人は思いっきり不安な表情になっていた。
ちなみに言うと、アルトロンレイには、シモーヌの提案が完璧に参照され、守護聖霊は「闇」になってしまいましたとさ。
The END(いいのか?)
後書き
今作のコンセプトは第三章で詳しく書けなかった私のオリジナルロボットの詳しい説明をギャグ使用で……だった筈なんですが、やっぱり笑えませんね。
でも、基本的に文中にあるのは実際そういう風にしようと思っています。
ツッコミ、入れてくれるとありがたかったりそうでなかったり(どっちよ)
ではこれで。