争い無くす為に
木星圏へと偵察へ行っていたリューネとカトルが帰ってから一ヶ月がたった。
ラングラン王国では、ウェンディ・グラニア・イクナートの戴冠式の準備の大詰めを迎えていた。
「おーい!ファング!準備は出来てるか?」
会場へ足を運んだトウヤは近くに居る騎士に話し掛ける。
「ああ、王子ですか。後は酒をよういするだけですが……」
「問題があるのか?」
「ええ……買いに行かせたのがテュッティとベッキーなもので……」
「……誰があの二人に行かせたのさ。」
「ゲンナジーとミオとリューネです。」
ファングの言葉にトウヤはため息をつく。
「その三人にテュッティとベッキーの様子を見に行かせろ。」
「は、はい!」
トウヤの言葉で、ファングは走っていく。
「まったく……砂糖を買いに行っているだけならいいんだが……まぁ、ベッキーでもパーティで飲む酒を今飲むわけでもなし。心配する必要は無いが。……それよりも、ファングも丸くなったものだぜ。」
「トウヤ。何一人でブツブツ行ってるんだ?」
トウヤが一人で考え込んでいるところに、後ろから声がかかった。
「!ア、アムロ少佐!居たんですか?」
「居たんですかとは失礼だな。それより、どうしたんだ?」
「あ、ああ、パーティで飲む酒を取りに行ったやつがマズイってだけですのでご心配なく。そんなことより早い到着ですね。ブライト艦長とクワトロ少佐も一緒ですか?」
「ああ。二人とも宿にいるさ。俺は……まぁ、挨拶と様子見。」
アムロの言葉でトウヤも苦笑いを浮かべる。
「ライザ!」
「どうした?セニア!」
二人が話している間にセニアが遠くから慌てた風に声をかける。
「ちょっと、ベッキー見なかった?」
「ベッキー?テュッティと一緒に酒を取りに行ったが……それがどうかしたか?」
「え?ああ、これ……」
そう言いつつセニアは片手に持っていた瓶を二人に見せる。
「これ、ベッキーの飲んでるブランデーの!」
「そ、多分ベッキーが落としたと思うんだけど……」
「3人で一体何やってるのよ?もしかして悪巧み?」
「ん?何だ、アイとカスミか。」
トウヤ達が酒瓶を見て話している間に、アイが話しかけた。
「そっちこそ、何やってるの?」
「こちらの二人に、色々手伝って貰ってるんです。」
「あと、アカルディアのセリカ姫も手伝ってもらってますよ。」
「そうか。」
「セリカにも手伝ってもらってるなんて、シモーヌもロザリーも抜け目がないわね。」
セニアの冗談交じりの言葉にトウヤとアムロは笑い出す。
「それより、こっちで何をやってるんですか?」
「ああ、そうだ。シモーヌ、ロザリー……ベッキー達、帰ってきてねぇ?」
カスミの言葉に、トウヤが思い出したかのように二人に聞く。
「お酒運搬組ですか?まだ……だったよね?」
シモーヌは頭に手を当てつつ、ロザリーに聞く。
「多分ついでに砂糖を買いに行ってると思うけど……どうしたんですか?」
「ああ、ベッキーがブランデーを落としたらしいのよ。」
「そのベッキーって人の酒だって確証はあるの?」
「あるも何も、こんなに度の高いブランデーを飲むのは魔装機操者の中じゃ一人しかいないんだよ。」
アイの言葉に、トウヤはセニアから酒瓶を取り、それを見せる。
「……とりあえず、聞くけど、そのベッキーって人、男だよね?」
酒瓶に書いてあった度数を見て真っ青になりながらアイがトウヤに聞く。
「いや、レベッカ・ターキー通称ベッキーはバリバリの女性だが。」
トウヤの言葉に、アイ・カスミ・アムロの
3人は一瞬にして石化する。「女でも酒を飲む人はトコトン飲むんだよ。」
その
3人を見渡し、トウヤははっきり言う。「どうしよう。届けよっか?」
「頼む。こんな時に飲むようなヤツじゃ無いだろうし、どうせ飲んだとしても、被害はフォッカー中佐+α程度だしな。」
苦笑いを浮かべつつなトウヤの言葉に、何も事情の知らない
3人は、驚くしか方法は無かった。
そして2日がたって、ウェンディ・グラニア・イクナートの戴冠式が始まった。
会場の周りには、魔装機や聖霊機等の守備で固められ、いつ敵が来てもいいような状態であった。
「だけど……ここまで守備を固めて誰も来なかったらお笑い種ですね。」
魔装機ガディフォールの中で、ザシュフォードがため息をつきながらそう言った。
「木星の連中はともかく、アクシズは来るんじゃねぇか?まぁ、来ないに越したことは無いと思うが。」
ザシュフォードの隣で、ファング・ザン・ビシアスが騎士らしかぬ事を言う。
「私達の中でライザ様がアクシズの連中と戦ってきたんでしょう?そんな人が来る確率が高いって言ってるんだから、多分来るわ。」
ファングの言葉に、今度はエリスが言う。
「まぁ、僕達だけでなく、アカルディアや地上の機体がここに来てる以上、来ない確率は少ない……か。」
「そう言う事ね。だけど、その少ない確率が当たった場合の状況の行動をライザ様から聞いてるわ。全機に通信出来るようにして。」
テュッティ・ノールバックの言葉に、ファング達が周りの機体に通信をつなげる。
「こちら、魔装機神ガッデスの操者テュッティ。今日の戴冠式が終わった後の行動を説明させてもらうわ。」
深呼吸をして、一息付ける。
「敵の攻撃が無かった場合、ラングラン王国王位継承者の一人、ライザ様がアクシズとクロスボーン・バンガードに向かい、その両総帥と同盟をくみ、木星の進攻に備える……とのことよ。」
「こりゃ、敵が来なきゃいいって思ってられないな。」
テュッティの言葉で、ファングが苦笑いを浮かべる。
「アクシズが来た場合は、同じくライザ様がクロスボーン・バンガードと同盟をくみ、その戦力で木星を攻撃。そして地球でアクシズの進攻を止める。」
「た、大変そうだな……」
次はザシュフォードが呻いた声を上げる。
「木星の戦力が来た場合は、クロスボーンとアクシズの勢力と同盟をくみ、木星を叩く。との事よ。みんな、分かった?」
『新たな国王ウェンディ・グラニア・イクナートの下、全ての世界に永久の平和と繁栄を願って!ジーク・ラングラン!』
テュッティが周りに確認を取っている内に、トウヤの言葉が響いた。
「テュッティ!宣言が終わったみたいだ!」
「この当たりからよ……さぁ、どこが来るの……?」
ヤンロンの言葉で、テュッティがモニターだけに視線を送る。
「テュッティさん!敵機200機程確認!これはアクシズの機体だよ!」
「まず、様子を見て!攻撃を仕掛けてきたら、反撃を開始!」
ミオ・サスガの言葉でテュッティが指揮を執る。
そして、その直後、アクシズのモビルスーツが周りの予想を外さず、攻撃を開始した。
「敵機攻撃確認!各自の判断で反撃を開始!」
テュッティの言葉で各機が一斉に攻撃を開始した。
「どうやらアクシズの方が来たようだな。……どちらも来なければいいと思っていたんだが。」
戦闘の音を確認した後、トウヤは額の汗を拭いながらそう言った。
「だが、君はこうなることは予想できていたのだろう?」
「まぁ、そうだけど。」
万丈の言葉に、「でも、できれば来て欲しくなかったけど。」と思わせるような、感じで受け応えた。
「どっちにしろ、俺達も出た方がいいな。」
「頼む。セニア。こちらライザ、足を持ってきてくれ。」
『現在移動中!事故るとマズいから通信、切るわ!』
「了解。マサキ、ゲンナジー、フェイン、そう言うことだ。お前達は城に行った後、各々の機体で出撃……」
「トウヤ!あそこ!」
トウヤの言葉が終わらぬうちに、マサキがトウヤの後ろを指さした。
「ちょ、シモーヌ!」
「投げ飛ばされたのか!?」
「しょうがない……やるか!」
そう言うやいなや、トウヤは両手を前に出した。
「風に住まごう精霊達よ……風を呼びて、我が仲間を助けたもう……ウィング・レビテイト!」
その直後、トウヤの手から疾風が走り出し、シモーヌの方向へ飛んでいき、彼女をその風で包み込む。
そしてその風でゆっくりとシモーヌを地上に降ろしていく。
「すっごぉ〜〜い!」
「あ、あれが魔法か!」
「すみません、ライザ様。助かりました!」
初めて見る魔法に興奮するエルピー・プルとジュドー・アーシタの隣で、シモーヌはトウヤに礼を言う。
「気にするな。……ベッキーの状態はどうか?」
「まだ二日酔いみてぇ。自分の部屋で寝てるぜ。」
マサキの言葉でトウヤは「しょうがないな」といった感じでため息をつく。
「シモーヌ。もう少しでセニアが運転する車が来る。お前はそれで城に行き、魔装機ラ・ウェンターで再度出撃してくれ。俺はお前が乗っていたザインに乗って、指揮を執る!万丈さんはアムロ少佐やジュドー達とここにいる人たちの避難するための誘導を頼む!」
「了解!」
「分かった!」
「大丈夫なのかよ?!」
「当然!」
ジュドーの言葉に素早く答え、トウヤは倒れている魔装機へと走っていく。
「お待たせ!早く乗って!」
その直後、車が近くに止まり、そこからセニアが出てくる。
「了解!ラ・ウェンターも出す!整備、してあるか?!」
「当然!私がしない訳無いでしょう?」
「そうだな。よし!いくぞ!」
魔装機ザインが走り出した時の衝撃が収まった直後、車がフルスピートで走る。
「よし、僕たちも行こう!」
「よっしゃ!」
「流石はマサキたちを苦しめたアクシズってか……情報以上の能力出しやがって……」
ファングは攻撃してくるMSをかわしつつぼやいた。
「ファング!呑気な事を言ってる暇があったら、一機でも多く撃破して!」
「そうがなりなさんなって、テュッティよ。マサキやゲンナジー達にもいい所を持ってって貰わなきゃいけないんだし。そんなことより、シモーヌは大丈夫なのか?」
「みんな、大丈夫か!」
ファングの言葉の直後に、当のザインが前線に飛び出してくる。
「と、トウヤちゃん!?」
「な、何でシモーヌの機体に乗ってるのさ!」
突然のトウヤの声に、他の機体に乗っている者達が驚いた声を上げる。
「シモーヌにはラ・ウェンターに乗せる。他にフェインやマサキ達が来る!それまでここをしっかり防衛しろ!」
「りょ、了解!」
「よし、敵は……ガザC、ガザC改、ガザ
D、ズサ、ザクV、ザクV改、バウ、ドーベンウルフ、ドライセン、ゲーマルク、ハンマ・ハンマ、それとキュベレイは……後方に一機確認、やはりハマーンが指揮しているみたいだな。」「うわ、う、腕が伸びてくる!」
トウヤが敵の確認をしている内に、ザシュフォードの悲鳴が上がる。
その声にトウヤがその方向を見ると、ドーベンウルフの有線アームがザシュフォードの機体に襲いかかっていた。
「何をやっている!ザッシュ!冷静になれ!」
「で、ですが!」
「有線アームを持つ敵と戦った経験が無いわけではなかろう!冷静に先端を見て、それを回避しろ!」
「は、はい!」
トウヤの言葉で冷静に敵の攻撃を回避する。
「よし!そのまま反撃開始!後ろからの攻撃にも気をつけろ!」
「りょ、了解!」
「しかし……もうそろそろマサキ達も来る頃だというのに……テュッティ!」
「えーと……ジャオームとラ・ウェンターがあと2分で。サイバスターとノルスはあと5分らしいです。」
トウヤの言いたい事を察したテュッティはすぐに返事をする。
「サイバスターは4分……いや、3分半で来いと伝えろ!」
「りょ、了解!」
「ディアブロとオルベストは援護!ガッテスとビシャールは敵の陽動だ!他の機体は接近戦で勝負をかける!」
トウヤは回りの指揮をとりつつ、キュベレイへと機体を動かしていく。
その動きに気がついたのか、ハマーンはビームサーベルをとり、ザインへと向かう。
「ハマーン・カーン!」
「貴様が時期女王の弟ライザ・グラン・イクナートか。成る程、トウヤ・カザミとは偽名だったわけか。」
「どっちも俺にとっては本当の名前だ。名前とは他人に与えられるのではなく、自分で決めるもの……ダチの持論ではあるがな!」
「はっ!確かに、ひとつの真理ではある!」
鍔迫り合いをしながらも互いに隙を見つけようとするトウヤとハマーンの勝負にまず行動を起こしたのはハマーンだった。
機体の間合いを開け、すばやくファンネルをザインに向け打ち込んだ。
「成る程!そう来たか!」
ザインにつけられているレーザーソードを前面に押し出し、追撃体制に入っているトウヤに、そのファンネルを回避するのはおろか、切り払うことを試みるにも、それなりの損害を覚悟しなければいけない状況であった。
「ちぃ!そういやファンネルがあったっけ……だけど!」
それを瞬時に判断したトウヤは、そのままの体制でザインをそのまま前進させ、キュベレイへと向かっていった。
つまりは、相打ち覚悟でキュベレイを破壊しようという策であった。
「まさか、この男!死ぬつもりか?だが!」
トウヤの考えを察したハマーンも、ザインに向けてキュベレイのビームサーベルを振り下ろした。
そしてその周りに一瞬激しい衝撃が広がる。
「くぅ……このままでは負けてしまうか……魔装機の力を甘く見たな。マシュマーかキャラのエンドラVを呼べ!アクシズに帰還する!」
その指示をした後、ハマーンはキュベレイを後退させた。
「!逃げる?いや、見逃してくれるのか。各員!追撃はするな!別の箇所を守っている者達にもそう伝えろ!」
ハマーンの意図をそう判断したトウヤは、各員に命令をし、機体から降りる。
「トウヤ!お疲れさま。」
ユミールの笑顔で、トウヤもようやく普段の表情に戻る。
「お疲れも何も、これからが大変だからな。ユミール、これから大変だと思うけど……」
「うん。分かってる。私に出来ることだったら大丈夫だから。」
「ありがとう。」
この戦いの最初は、トウヤ達の勝利であった。
この直後、トウヤはザインに無理をさせてしまったことでその操者シモーヌと開発者セニアの雷を受けたことは、後の記録には残されることがなかったと言う。
第
3章へ続く
トウヤとマサキの次回予告
トウヤ「第二章も無事終わったな。」
マサキ「つーか、お前、ギレン入れてんじゃねえよ。」
トウヤ「何のことですかな?」
マサキ「ジークラングランだなんて、言ってることはギレンじゃねえか。」
トウヤ「成る程。確かに。それじゃあ、これから地球圏制圧するから留守番頼むよ。」
マサキ「違うだろ!次回予告が先だ!」
トウヤ「確かに。次回『争い無くす為に』は」
マサキ「『宇宙へ〜新しいクロスボーン〜』だ。君は、生き延びることが出来るか?」
トウヤ「お前もファーストガンダム入れてんじゃねぇ!」
後書き
いやはや、トウヤがギレン入れてますねぇ(爆)
これでトウヤの事を嫌いになる人って何人ぐらいいるのかなぁ(ドキドキ)
次回、予告通りにあの人が登場します。
某貴族主義が出るかどうかは内緒です。
と言うことで、次回お楽しみに!