TIME DIVER 第16話 中編・・・・・・ですむといいなあ(汗)

 

 

 

戦場と化した聖夜の街で、2つの巨人が対峙していた。

 

ひとつは連合軍所属、デルタ=フレサンジュの駆る深紅のプロトタイプ・エステバリス。

時に忘れられた、過ぎ去った存在。

旧名、『撫子』。

 

 

そしてもうひとつは、エステバリスに似て、非なる存在。

白と、4本の腕。

それは純白の、神々しい色を放ちながらも

その姿は悪魔のごとき禍々しさを放ってもいた。

機体照合結果――『不明』 

だが。

 

 

「……何のつもりだ、貴様」

 

 

「――あなた方がしていることの理屈は分かりますよ。

 けど、それでもここは『彼等』の時間だ。そういう、ことです」

 

 

「素体の意識に飲まれたか? ――愚かな」

 

 

「彼の意思であっても、これは僕が望んだことでもある」

 

 

「……所詮は擬体。相容れぬと判っているのに、か」

 

 

「僕は僕です。あの時、僕自身で、そう、決めました」

 

 

「引く気は?」

 

 

「ありません。そして――あなたには、ここで、退場していただきます」

 

 

「勝てるとでも?」

 

 

「……勝ちます。そうでなければ、いけない」

 

 

「……よかろう。端末Bに障害が発生。修復の余地無しとみなし

 ―――削除を実行する」

 

 

 

 

 

 

そして――

 

 

 

捻れた運命が、交差する。

 

 

 

 

 

 

 

     機動戦艦ナデシコ  Another Story

           「TIME DIVER」

               第16話

               『連鎖

 

 

 

 

 

 

―――遡ること三十分前

 

 

「――止めないの?」

エリナはその言葉に、余裕を持った表情で首を横に振った。

「戻ってくるわ。……あの子、あのままじゃ本当に半端だもの」

口元に僅かに笑みが浮かぶ。が、それがいけなかった。

「随分と――入れ込むのね?」

「な、何言ってるのよ!?」

見られていたらしい。

からかうように言ったイネスの言葉に少し慌ててしまう。

 

 

数分前までこの場にいたアキト(メグミも)いない。

あの後、CCがボソンジャンプのトリガーであると仮説を立てていると

説明した所までは良かったのだが、その後がいけなかった。

 

数日前に行った生体実験、その機体が最悪のタイミングで帰還してきたのだ。

――最新鋭の技術で造られた耐圧フレームが、鉄屑の塊と化して。

怒りを隠そうともしないその言葉と共に、彼は去っていった。

 

 

「そうかよ……要するに、俺とイネスさんは

モルモットってわけかよ!!汚ねえよ、ネルガルは!!」

 

 

(――モルモット……そう思われても仕方が無い、か)

実際、こちらの考えがどうあれ

自分たちが彼にさせようとしていたことは、世間から見ればそうなのだろう。

無論、彼女の中には『失敗』という言葉は無かったが。

「ふふふ……それより」

「?」

突然、口調が変わったイネスの言葉に耳を傾ける。

「さっき木星蜥蜴が生体ボソンジャンプの技術を得る前に、って言ってたわね

 つまり……彼等も私たちと同様に、どこかで相転移エンジンやチューリップを

 手に入れたに過ぎない、と」

それはそうだろう。

なぜなら――そうとしか考えられないからだ。

そうでも無ければ、この短期間で地球軍を凌駕するほどの戦力があるはずがない。

エリナは再び口を開こうとするが、その言葉は

「フィールドジェネレーター、破壊!!」

――という施設の駐在員の叫びによって止められた。

 

 

「チューリップ内部より、巨大なディストーションフィールド発生!!」

「ボース粒子、大量に検出!!」

次々とモニターに表示される『異常』の二文字。

(何なの、これは!?)

さすがのエリナも未知の状況に慌ててしまう。

それもそうだろう、こちらが何かの行動を起こした後の異常ならまだ納得できる。

しかしまだ私は、いや『私たち』は、何もしていないはずではないか――?

するとその場に、ゆっくりとイネスが現れた。

落ちついた様子で……まるでこうなることがわかっていたように。

「実験機がもしも……敵の母星まで到達していたとしたら?」

イネスは、はっきりと、自分に言い聞かせるように呟く。

「気付くわね。地球側の生体ボソンジャンプ実験に。

 そうなれば考えられるのは――実験の妨害、そして、破壊」

失念。

その通りだった。

何故、忘れていたのだろうか。

こちらが考える事は

『あちら』も考えていて当然なのに――。

「――来るわ!!」

暴走を始める施設内のチューリップ。

その中心が光に包まれ、何かが跳んでくる。

 

次第にその輝きは何かのカタチを成して

「そ、そんな!?」

 

その、姿は

「これは――?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

声に引き寄せられるように、イネスの意識は覚醒していく。

ああ、この声を知っている。

昔、いつものように傍にいた、懐かしい、コエ。

 

自分は、この声が      だった――

 

「……父さん?」

目を開くと、そこには自分の義父であるデルタ=フレサンジュの姿があった。

「体、動くか?」

「……ええ、大丈夫よ。一人で起きれるわ

そう答えてデルタの手から離れる。

少しふらついたが、立てない事はない。

「で、そこの女史も無事かい?」

「何かついでみたいで気に食わないけど……まあ無事よ」

その言葉の先を見ると自分同様に気を失っていたのか、エリナが座り込んでいた。

落ち着いて周辺を見渡してみると――まあ、想像通りの光景が広がっている。

気を失っていたのはほんの数分だったらしい。

研究所は半壊。

おそらく重要なデータ類は殆ど使い物になるまい。その為の破壊なのだから。

生存者は……おそらく自分たちだけだろう。少なくともあの場にいた者は助かるまい。

そこでふと、思考が停止する。

 

何故、私たちは助かった?

 

おそらくその張本人であろうデルタにその旨を尋ねると

「答えは、コレだよ」

と、ポケットに入るほどの小さなものを投げてよこした。

――ああ、なるほどね。

それをひと目見て、納得する。

「父さん、勝手に人の部屋を荒らさないでって言っているでしょう?」

「悪い。部品が一部足りなくて

 まあそのおかげなんだから今回は黙認してくれ」

「??」

横で聞いているエリナは事情が飲み込めないらしい。不思議そうな顔をしている。

「何なの、それ?」

ディストーション・フィールド発生装置ってところね。個人用の、だけど」

「そんなもの……いつのまに!?」

「趣味みたいなものよ。でも完成には至らなかったけど……。

 ホント、このコストで使い捨てじゃあ使えないわね」

その言葉の通り、装置は煙を吹いていた。

未練も無くそれを投げ捨てるイネス。大丈夫、データは記録済みだ。

……しかし、一体幾らかかったのであろうか?

「さて、と。これで懲りましたか? ネルガルの社長秘書さん?」

「!?」

話の矛先が自分に向いた事に驚いたのか、又は内密にしていた自分の経歴を

言い当てられた事に驚いたのか、エリナがはっとした顔でデルタを見る。

自分の経歴を知っているものはそう多くは無いはず……。

――そうだ、この男は軍の!!

「その通り。軍から派遣されたナデシコの、ひいてはネルガルの監視役だ」

いつもながらの軽い声でデルタが答える。

「軍に内密で不法な生体実験を繰り返し、挙句の果てにはこの騒ぎだ。

 いくらなんでも言い逃れはできんぞ」

「……」

エリナは答えない。いや、答えられない。

この場での不用意な発言は、ネルガル全体の存亡に関わる。

そして次の言葉を発した時、更にデルタの目が鋭くなった。

「しかも、君たちはこの戦争の『舞台裏』とその『役者』を知っている。

 ――実に興味深い事実じゃあないかな?」

「……!!」

その言葉にエリナの動揺がさらに大きくなる。

イネスは口を出さずに、その光景をじっと静観していた。

 

沈黙。

 

先に口を開いたのはやはりデルタだった。

火に包まれていく街のほうを見て言う。

「まあ、いい。今はそれどころでも無いだろうしな。重大な節目だ。

 話の続きは後ほどアカツキ君も混ぜて行うとしようか」

2人に背中を向けて歩き出す。

 

「精々君たちは、君達自身のロール(役割)を演じることだな」

 

イネスが再び声をかける暇も無く、デルタはその場から姿を消した。

「……大丈夫?」

いまだに座り込んでいるエリナにイネスが手を差し出す。

エリナは「ありがとう」と答え、その手を借りてなんとか立ち上がった。

「戦時下の捕虜の気分っていうのが、少しわかった気がするわ……」

「そう。良かったわね、いい経験になって」

皮肉は受け流されてしまったようだった。

「……何者なの? 彼……あなたの父親って?」

思っていたことをそのまま言葉にする。

しかし、イネスは応えない。

「確かに、軍の命でネルガルを監視していたっていうのは分かるわ。

 けれど……それにしたって彼は知りすぎている!!

 一介の将兵が知りえる事じゃないのよ……!!」

「そんなこと」

イネスが不意にポツリと呟く。

しかし、その先は誰の耳にも入る事は無かった。

 

 

 

―――そんなこと、分かるはずが無い

   私も、昔からあの人のことだけは、わからなかったのだから―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎上する市街。

その街を、2体の巨人が闊歩している。

「――何あれ!?ゲキガンガー!?」

ビルとビルの間にある小道に身を潜めていたヒカル機から、そんな叫びが漏れる。

そう、数分前に突然現れた敵――木星蜥蜴の新兵器らしき巨人は

詳細こそ違うものの、アニメに出てくる『ゲキガンガー』そのものだった。

「くっそ、蜥蜴の奴ら。夢壊すようなことしやがって!!」 

その大ファンであるガイが、空中で敵の様子を伺いながらそう毒づく。

彼にとってみれば、正義の象徴であるゲキガンガーが敵である事は許せないのだろう。

「連合軍は……全滅か!!」

同じく上空で敵の様子を伺っているアカツキ。

周辺にいる味方機は、既にナデシコから緊急発進したエステバリスしか

残っていないようだった。

 

「敵は小規模ですが、グラビティ・ブラストを持っています」

ナデシコのブリッジで敵新兵器の解析を行っていたルリが全機にそう報告する。

ドックで補給中だったナデシコ自身も、緊急発進していつでも行動が取れる状態にあった。

「皆、気をつけて!!」

ユリカがそう叫ぶ。

……クリスマスパーティでの衣装のまま言っても説得力は無かったが

今はそんな状況でも無い。

敵は、全くの未知の兵器だ。どんなことをしでかすかも分からない。

すまん遅れた。私の機体の準備は出来ているか?』

その時、今まで不在だったデルタからの通信がブリッジに届いた。

場所は――――浮上しているナデシコのちょうど真下らしい。1台の車が止まっていた。

「教授、ご無事でしたか!!」

ユリカが少し安堵した表情になる。

「中佐の機体は既にスタンバイしています」

『上出来だ。そのまま地表へ誘導射出しろ。こちら側で搭乗する』

ルリの言葉に、デルタも手短に答える。

「了解」

そのやり取りの後、すぐに格納庫へと連絡。デルタの機体が無人のまま発進した。

 

 

 

 

 

 

『――戦闘の妨げとなりますので、くれぐれもカワサキ地区への車を使った移動、

 興味本位での見物行動等はお控えください。次に――』

避難区域とは少しはなれた洋風レストラン。

カウンターの奥に置かれているTVモニターからはそんな情報が流れていた。

画面が変わると、よくは見えないが敵の兵器が写し出される。

そのレストランの一角に、アキトとメグミはいた。

「ナデシコの事は忘れて、あたしとクリスマスしてくれる約束でしょう!?」

いつの間にかTVの奥に向いていた意識が、メグミの非難の声によって引き戻される。

「でも……」

そう簡単に割り切る事も出来ない。

あそこでは、まだみんなが――――

「戦いたいですか?」

口調が変わる。今のメグミは、明らかにアキト責めていた。

「……そうじゃないだ。でも俺、火星で……

 これでナデシコがなくなったら俺――――守るものが無くなっちゃう……」

そう、呟く。

自分でも情けないこと言っているな、と思う。

「あたしじゃ、駄目ですか?」

「え?」

「あたしを守るじゃ駄目ですか?」

俯いていた顔を上げると、メグミが真剣な瞳でこちらを見つめていた。

「見てください……皆、楽しそう」

促されて周りの席を伺う。

すぐ近くで戦争をしているというのに、客は何組も入っていて、

――皆、笑っている。

「のんきに見えます?――でも、みんな必死なんです。

 みんな自分たちの場所で、自分たちの幸せを守る為に、必死なんです!!

 戦っているです!!」

メグミが、必死に訴える。

(自分達の、居場所……)

どこかで、聞いた気がする。

「戦争してるからって、偉いわけじゃない!!

 ひとりの女の子を守って生きるのも、地球を守って生きるのも、

 同じ戦いでしょう!?」

目前の女性の瞳には、涙さえ浮かんでいる。

そう、だよ。

別に、あそこでなくても、戦える。

同じ、戦いの、はずだ。

なのに―――

                                     『なあ』

 

(え?)

 

                          『アキトの居場所は、どこだ?』

 

あるはずのない、声が、聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ああああああああっ!!!!」

リョーコの重機動フレームが一体の巨人に向かって街路を疾走する。

しかしあまり接近することは出来ずに

巨人から発せられているディストーションフィールドによって

壁にぶつかってしまったように停止してしまう。

「くっ――フィールドが、なんああああああっ!!喰らええっ!!」

それでも何とか勢いに任せて砲塔の部分を巨人に向け――

「!?」

発射した瞬間、敵の、その姿が掻き消える。

うわあああああっ!!」

背後から、衝撃。

消えたはずの巨人は、いつの間にか背後に出現していた。

どうやらその巨人のフィールドに弾かれたらしい。

「リョ―コ!?」

援護のため、ヒカルが巨人に向かってライフルを連射する。

フィールドに阻まれて届くことこそ無いが、気を引く事には成功したようだった。

巨人の頭がヒカル機の方を向き――

「!?」

また、消えた。

そして、後方に敵機反応。

それが表示される前に、ヒカルの今までの経験が自機前方に移動させていた。

そのすぐ後方を、巨人の頭部から発せられたレーザーが薙いでいく。

「何あれ!?わけわかんないよ!!」

さすがにいつものおちゃらけた様子も無く、ヒカルが叫ぶ。

それもそうだろう。

敵の攻撃は激しい上に、こちらからの攻撃はひとつも当たらないのだ。

『デルタ機より、全機へ通達!!』

ヤマダ、アカツキ機と共にもう一体への攻撃を行っているデルタから通信が入る。

『敵機は単独でボソンジャンプが可能のようだ!

 無理に近づかずに遠距離からの攻撃に徹しろ!!

 ジャンプのパターンさえ読めれば、勝てない相手ではない!!』

んなこと言ってもおっ!!」

「そんな暇、与えてくれないみたいよ」

必死になって敵の攻撃を避け続けるリョーコとイズミ。

 

 

 

「――ちっ!!アカツキ、ヤマダ両名、聞こえたか!!

 やはり陸戦だけでは分が悪いらしい。私はあちらの援護に向かう。

 無理はせずに敵の侵攻を抑えることだけを考えろ!!」

『了解!!』

『まかせとけって!!』

2人の返事を聞く前にデルタは機体を転進させる。

空戦フレームなら敵の射程外である上空から牽制することもできるが

陸戦のみとなると、やはり分が悪いらしい。

ちなみにデルタの駆るプロトタイプの場合は、それぞれに特化した能力こそないものの

ほとんどオールマイティに活動できる。

その分、機体構造が複雑、しかもハイコストであった為に

現在のフレーム制が採用されているのだ。

(意外と手ずらせてくれる……!!

 しかし妙だ……。こいつらはこんなに『手強かった』のか!?)

そんなデルタの思惑と共に、紅き機体が戦場を駆けた。

 

 

 

 

 

「ちっ……さすがにこのままじゃ……」

リョーコがコックピット内で舌打ちする。

敵の新兵器の単体ジャンプ能力のせいで、どうしても彼女達は後手を踏んでしまう。

つまりは一方的に攻撃を受けるだけなのだ。

『皆さん、落ち着いてください!!』

その時、新たにナデシコのエステ隊に配属されたイツキ=カザマの声が耳に入る。

『私が前に出ます!!』

「お、おい!?」

リョーコが止める間もなく、その言葉の直後

イツキの乗る重機動フレームが敵新兵器に向かって突進する。

『繋がっていれば、いくら瞬間移動されても同じ事です!!』

敵の背後につき、ジャンプされる前にアンカーを放ち

そのままその胸部に取り付く――――

 

砲塔を敵に密着させ、何発も攻撃を繰り返すイツキのエステバリス。

 

「……!?いけない!!

 あれがもしボソンジャンプなら、生身の人間は耐えられない!!」

遠くでその光景を見ていたエリナが叫ぶ。

 

消える敵兵器。イツキのエステも、共に。

 

再び姿を現した敵は、イツキの零距離射撃のダメージが大きかったのか

背後のビルに倒れこんだ。

その場にはイツキのエステバリスの姿もあったのだが――――

 

『おい、新入り!?新入りぃ!?』

『無理よ……コックピットが、無い』

 

その言葉の示す通り、コックピットの部分が、まるで溶けたように消失していた。

 

『カザマ、離れろ!!』

「!?」

側面から、何かが高速で飛来し、敵に激突した。

そのあまりに強い衝撃に、アンカーごとイツキのエステバリスは振り落とされてしまう。

「――っつ」

意識が飛びそうになるのを何とか堪えたイツキは

即座に機体を転進し、敵の射程外へと逃れる。

「おい、新入り!!無茶すんじゃねえ!!」

「生き残ってこそなんだからね」

「勇敢と無謀は意味が違うわよ」

とたんに怒るような安心するような3人娘の通信が入ってくる。

「すいません皆さん。でも、大丈夫です」

苦笑いを浮かべながらイツキはそれに対応する。

が、その心中は――――

(やはり無理だった……!あの人の言うとおりに動いてしまっている……!!)

そんな、不安で。

 

 

 

 

「残念だが、その流れはもう『知って』いる」

体勢を立て直し、こちらに向き直ろうとする巨人を冷たい目で見据えながらデルタが呟く。

「『それ』では何も変わらない。なら、これも必要なことなのだよ!!」

言葉を終えると同時に機体に加速をかける。

僅かに敵の攻撃が機体を掠めるが、さほど気にする事ではない。

(跳ぶ!?)
再びこの機体――撫子の最大の攻撃である体当たりを仕掛けようとするが

その直前でどうにか踏み止まる。

その直後、目前まで迫っていた巨人の姿が掻き消えた。

(――そっちか!!)

が、デルタはせずにそのままエステを別の方向に加速させた。

『お、おい教官!?』

『どこ行くの!?』

リョーコとヒカルの困惑した声。

確かにはたから見れば意味の無い行動であろう。

しかし、結果はすぐに。

 

『―――――――!?』

 

予測通り、進行方向に反応。

再び現れた巨人は回避運動を取る暇もなく、

デルタ=フレサンジュの駆るエステバリスの攻撃を受けた。

 

 

 

 

 

「敵兵器、沈黙しました」

ルリのその言葉に静まりかえるブリッジ。

それもそうだろう。リョーコ達4人が守りに徹しなければならなかったほどの敵を

それこそ、ものの数秒で行動不能にまでしてしまったのだから。

「教授……凄い」

「さすが、というべきですかなあ」

ユリカとプロスペクターが感嘆した様子で呟く。

しかしまだ終わってはいない。

敵はまだ、もう1機いる。

 

 

 

 

(……この武器は、体に悪いな)

コックピット内で目を閉じ、俯きながらデルタはそう思う。

その身体は、明らかに『軋み』をあげていた。

(私でさえ、これだ。採用されなくても、無理は無い、が)

今は、そんなことを言っている場合でもない。

――もう一つが問題なのだから。

時間が、無い。

静止していたエステを再び起動させ、問題のもう一機の巨人へと向かおうとする。

 

そこに、自分が今しがた行動不能にした巨人が目に入った。

その頭部が。

 

 

 

記録によると、後の『鍵』となる、白鳥九十九がいるはずの、場所。

 

 

 

「……とどめだ」

冷徹に、ライフルをコックピット部分――頭部へと向ける。

そして

躊躇無く発射した。

 

 

 

 

 

 

これで

 

 

 

 

 

 

 

 

またひとつの『可能性』の芽が、生まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――させないよ!!

 

 

 

 

 

 

「何!?」

突然、射線上に現れた機体によってライフルの弾がはじかれる。

その機体は射線を沿って、そのまま突撃してきた。

「っ!?」

間一髪のところで機体を浮上させ、新たに現れた――恐らくは敵であろう

機体と距離を取るデルタ。

『今度は何だ!?』

『また新しいのが出てきたの?』

『蜥蜴さんからのクリスマスプレゼントってやつなのかしらね……』

新たな敵機の出現は3人娘も気付いたらしい。三者三様の言葉が耳に入る。

しかし

『『『――!?』』』

その姿を見たとき、3人が3人とも息を呑んだ。

 

 

 

 

 

―――記憶と同じ、白き機体

 

 

様装は変わり果て、見違えてしまっていても

 

 

その姿、機体の動きに表れるその佇まい

 

 

   そして、その圧倒的な存在感は

 

 

『彼ら』にとって忘れることのできないもので―――

 

 

 

 

 

 

カイトさん……!!」

カイト!?」
ナデシコのブリッジで、ルリとユリカが同時に叫ぶ。

『ある者』の、名を。

「ちょ、ちょっと!!あれって間違いないの!?」

ミナトでさえも、目の前の状況が上手く把握できないでいた。

「ルリさん、解析の結果を」

その場でいち早く我を取り戻したプロスペクターが、ルリに返答を促す。

「―――間違いありません」

少しの時間、オモイカネと接続したルリの返答は『肯定』だった。

「外装が所々変わってはいますが……基本的なフレームの構成は

 火星でカイトさんが搭乗していたものと同一です」

その結果に、再び艦橋内が騒然とする。

「前にサツキミドリにいた、デビルエステとかじゃあ……」

ジュンが、まだ信じられないという表情で問いかける。

ちなみにデビルエステとは、木星蜥蜴の兵器によって電装系を掌握された

無人のエステバリスの事を指している。

以前、リョーコ達と合流した際に交戦したものだ。

「……確かな事は言えませんが、おそらくは違います。

 それに――――――」

最後まで言葉を続けられず、押し黙るルリ。

気を利かせたらしいオモイカネが、解析の過程で得た

1つの情報をウィンドウで表示させた。

 

 

 

『搭乗部 熱源反応…… 

 生体反応…… 有 

 識別記録 解析

 照合中……

 照合中……

 照合中……

 照合中……

 照合中……

 照合中……           該当 一件 』

 

 

 

 

皆が、その名に目を見開く。

それは、誰もが望んでいたもので

―――そして、あってはならないものだった。

 

 

 

  『ND―001 SUB OPERATER

         MISUMARU=KAITO 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――to be contenued next stage

 

 

あとがき

 

土下座。

 

すいません。ものごっつ更新遅れてしまいました。

しかも終わってません続いてます。ぬむう。

 

んで、内容の方。

オリジナル設定でまくりの回です。

自分でもいろいろと混乱して何が何やら。

果たして読んでくれている方々に上手く伝わっているのかどうか心配でたまらんです

まあ、ここまで来た以上はやりますが。

ああ、そういや彼が本編で復活しましたねえ。まだプレですが。

 

 

んではまた次回。

次は……外伝かもなあ。

感想は相も変わらず募集中です。

ではではあ〜。

 

 

                       H14、7、29

 

 

 

 

 

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