「抜き足……」

扉に耳を押し付けて、外の音を探る。

……よし、気配は無い。

「差し足……」

扉が開いたら、すばやく外に出て周りを見まわす。

……よし、誰も来ないな。

「忍びあし!!」

そのまま駆け去るっ!

ガシッ。

「……あう」

いきなり背後から肩を掴まれる。

覚えのある感覚に、身体中から冷や汗が噴き出した。

「何処に行くのかな、カイトくん?」

「か……カザミ……先生?」

振り向いた先にいたのは、今の時点で最も会いたくない人だった。

「君さあ、自分が重傷だってわかってる?」

「わ、わかってます。一応」

そりゃあ、何度も傷口開いて怒られてますし。

「そう。で、何度も何度も、勝手に出歩いちゃ駄目って言ってあるわよね?」

「は、はい」

強硬手段とか言って、ベッドに縛りつけられそうになったこともありましたし。

「結構。で、今から何処に行くのかな?」

「……」

自分の顔がひきつるのが解る。

まずい。

口調は優しいけど……目が笑ってない。

 

 

 

 

     機動戦艦ナデシコ  Another Story

           「TIME DIVER」

               第6話

            出口のない『戦争』

 

 

 

 

愛。

哀。

藍。

「アイ」がいっぱい。

眼前に浮かんだモニターでは、いろんな種類の「アイ」の字が

重なっては消えていく。

あ、これは最近流行ってるらしいパズルゲームなんです。

別に変な意味はないので、そこのところよろしく。

……あ、4連鎖。

 

一応、最新型の戦艦ナデシコとしては緊急時以外は全自動なわけで、はっきり言って暇です。

そこそこ必要なのは通信士のメグミさんと、オペレーターの私。

舵取りしてる操舵士のミナトさんなんて、朝寝坊してます。

「そうなのよ。夜遅くって」

まあ、いいんですが。

暇なものは暇なんだからしょうがありません。

「ふああああ……。本当に暇だね」

ほら、艦長もそう言ってますし。

 

 

 

<第四級警戒体制>

そう書かれたモニターをオモイカネが表示させると同時に、艦内に低音の警報が響き渡る。

「敵、攻撃きます」

「えっ!?どこどこ!?」

艦長、いきなりのことに驚いてかなり慌ててます。

「げ、迎撃!!」

「必要ありません」

「え?」

私の突っ込みに、ぽかんとする艦長。

気にせずに、私はいつもの「作業」を始める。

と、いっても確認と復唱だけなんですが。

「ディストーションフィールド、正常に作動中」

中からじゃ当然わからないけど、これでナデシコはいわゆる『バリア』に包まれた状態になる。

正確に言うと『時空歪曲場』らしいですけど。

「敵の攻撃、フィールドに接触。弾き返しました」

「ふええ」

拍子抜け、というか、感心した様子の艦長がこちらを見る。

……別に私がやったんじゃないんだけど。

「サツキミドリ2号での戦闘以来、木星蜥蜴が本格的な攻撃を仕掛けてこないとなると

 おそらく、この艦の能力を把握するまで、少なくとも制空権の確立した火星まで、

 攻撃は挨拶程度のものになると思いますが……艦長はどうお考えです?」

いつのまにか私の真横にまで来ていた艦長にそう問いかける。

「あなた鋭いわね……子供なのに」

ぽかん、とした顔でそう呟く艦長。

「私、少女です」

 

 

 

「攻撃第二波。フィールド出力安定」

再び、どこからか放たれたビームを弾き返すナデシコ。

「そっか……火星まで私って暇なんだ」

ふぅ、と憂鬱そうに溜め息をつくのはいいんだけど、どうしてわざわざ

私の目の前に腰掛けるんだろうか。

「艦長、邪魔です。自分の席に着いてください」

「は〜い」

はあ、これじゃどっちが子供なんだか……。

「?」

艦長は何故か自分の席には戻らずに、じっとどこかを見ています。

視線の先をなんとなく追ってみると……メグミさん?

「艦長、どうしたんですか?」

さすがにメグミさんの方も気付いたようで、読んでいた雑誌を閉じてから

不思議そうにそう問いかけました。

「あ、いや、別になんでも。ただ、なんか嬉しそうだな〜って」

「えぇっ、やっぱり解ります?」

「へ?」

その反応は予想していなかったのか、逆に艦長が茫然としていました。

「艦長、まだこんなところに」

「あ、プロスさん」

その時、艦長のコミュニケにプロスさんから通信が届きました。

いつもの服装とは違って、今日は喪服を着ています。

「あなたがいないと始まらないんですから早く来てくださいよ」

「ああ、そっか」

「ちゃんと着替えてきてくださいね」

「はぁ〜い」

慌ててブリッジを出て行く艦長。

「あいたあっ!!」

……途中で何かに足にぶつけたようです。

まぁ、それはそれとして。

「メグミさん」

「何?」

「嬉しいことって、何かあったんですか?」

「ああ、そのこと」

その事か、と納得したらしいけど、その後メグミさんは何故か何も言わずに

じ〜っと私の顔を眺めていた。

「……何ですか?」

「ああ、えっと……ルリちゃんってさ、今何歳?」

「一応、11です」

それを聞くと、メグミさんは意地悪そうに笑って

「そっか。なら内緒」

と、言った。

「?」

「ルリちゃんも、もう少し大きくなったら解るよ」

「そうなんですか?」

「そうだよ」

……。

まあ、いいけど。

 

 

 

その日から2週間、敵が姿を見せない合間を狙って

ナデシコ艦内では先日の戦いの犠牲者のお葬式が行われました。

……と、いっても全滅に近かったサツキミドリ2号。

なくなった方の身体は宇宙に消え、ご遺骨が発見される事も滅多に無く

だからこそ、お葬式の儀式だけは念入りにするのが民間企業たるネルガル重工の方針だとか。

「ちなみに我が社では、社員契約に軍隊とは違った特典がついておりまして

 個人の宗教、思想の自由、特に戦争で頻繁に起こりうる葬式は、本人の希望を

 できるだけ実現することにしております」

だ、そうで。

 

 

 

「はあ、やっと終わった……」

「艦長、あたま」

ブリッジに戻ってきた艦長の頭には、葬式で使った衣裳らしい筒型の帽子が

のっかったままだった。

「はあ、これが艦長の仕事……?」

艦長がデスクに頭を突っ伏すと、帽子が音を立てて床に落ちた。

艦長の言った『仕事』っていうのは、簡単に言えば「お坊さん」です。

まあ、お葬式をする度にお坊さんや神父さんを雇ってたら、お金も馬鹿になりませんから。

だからそういう場合は。艦長がその代行を務めている、ということになってるんです。

少なくともネルガルでは、そうらしいです。

「まだまだお葬式の希望はあるそうですよ?」

「え?」

これは本当の事です。

「データ、ウィンドウ表示」

私の言葉に反応して、艦長と私の目の前に、その希望者のひとりのデータが表示される。

ええと……ドク=ホリデー、36歳。イギリス出身……ていうのはいいんだけど

どうしてガンマン風の服装なんだろうか。

『俺には葬式も墓もいらねェ』

「良かった……」

録音されていた音声の内容に、ホッと胸をなでおろす艦長。

『青い青い海に、骨の粉をまいてくれ』

「海なんてどこにあるの……?」

前言撤回。余計に手間がかかりそうでした。

「次、いきます」

次に表示されたのは女の人。

今泉敏子、21歳。あ、日本人ですね、この人。

『わたしの願い』

声が流れると同時に、画面が変わって『わたしのポエム』とかかれた手書きの映像になる。

『わたしは、天の川の星になって、みんなの幸せみつめたいの』

「気持ちはわかるけど……」

「お墓、星の形にしましょうか?」

次は……ドラキュラ?

ギャッピー=モトキ、年齢不明。ポーランド出身。

どうでもいいけど、どうしてわざわざこんな服を着てるんでしょうか?

『俺様の願いは、地球で一番の美女に首筋を噛まれて、

 血を一滴のこさず吸われることだぁあ!!』

……なるほど。

「艦長、地球一の美女ですか?」

「え゛……」

なんか、艦長固まってしまいましたが……まあ、いいか。

「個人的な葬式の希望者はまだまだいます」

そう言って、その一部を一気に表示させる。

あっと言う間に、私達は無数のウィンドウに囲まれてしまう。

「えぇっ、こんなに!?」

「ええ、こんなに」

「こんなにいっぱいお葬式!?」

「これもまだほんの一部。それだけいっぱい亡くなったんですね、この前の戦い」

まあ、コロニーが1つ沈んだんだから無理もありませんが。

「いっぱい亡くなったから、いっぱいお葬式」

「いっぱい亡くなったから……いっぱい……。

 私が出来る事って……お葬式……?お弔い……?」

呆然として、無数のモニターを眺めている艦長。

何やら深く考え込んでるみたいですが……。

「ああ、冠婚葬祭って言ってたから……結婚式も取り仕切るのかな?」

「え゛」

私達の会話を横で聞いていたメグミさんの、その一言が駄目押しだったみたいです。

 

「うわあああああああああああん!!」

 

艦長、泣きながら(?)ブリッジを出ていってしまいました。

「メグミさんって、イジワルですね」

わざわざ言わなくてもいいのに。まあ、本当のことなんだけど。

「そうかなあ」

「そうですよ」

「そうかなあ」

「そうですよ」

「そうかなあ」

「そうですよ」

「そっか……」

雑誌から目を上げて、中空をみつめるメグミさん。

「意地悪、か……」

 

 

 

「それで姉さんは瞑想室に篭ってるってわけ?」

「まあ、それだけじゃないですけど、大体はそんなところです」

私はここ最近、毎日のように仕事の休憩時間の間を縫ってにカイトさんの病室(?)に

お見舞いに来ています。

あ、別に変な意味ではなくて、担当医のシノハラ=カザミさんから直々にに頼まれたからです。

何でも「重傷人のくせに、目を離すと一体何をするかわからないから」だとか。

「ははは、まあ悩むだけ悩んどいた方がいいさ。悩めるのは今のうちだけだからな」

「……ところでカイトさん」

「何?」

「何でベルトでベッドに固定されてるんですか?」

言葉の通り、カイトさんは今ベッドの上に身体をベルトで固定されて、首ぐらいしか

動かせない状態になっていました。

「いやあ、まあ、いろいろあってね」

「いろいろ、ですか」

「そう、いろいろ。その結果、カザミ先生にこんな格好にさせられちゃったわけだけれども」

「……」

なんとなく事情が見えてきたような。

「困るよねえ。あの綺麗な顔した先生がこんな趣味もってるなんてねえ。

 だいいち、僕はノーマルなんだし。それに年上はちょっとねえ」

「はあ」

「人は見かけによらないっていうかなんていうか……ルリちゃんも気を付けな。

 あの先生に気を許すと何をされるかわかったもんじゃないよ。いや、ホントに」

ぷしゅー(扉の開く音)。

「何か言った?」

「いえいえ、誰もあなたの事なんか言ってませんよ?」

扉から入ってきたのはカザミさんでした。

……何か顔の所に青筋が立っているように見えるのは気のせいでしょうか。

「あらルリちゃん、こんにちは」

「こんにちは」

「先生、僕は無視ですかあ?」

「ごめんねえ、私って変な趣味持ってるもんでねえ。

 医者の言う事聞かない馬鹿な人の声は聞き取りにくいのよ」

「うぐ……」

あ、やっぱり聞こえてたみたいですね。

「別にいいじゃないですか。もう傷口はほとんど塞がってるんでしょう?

 そんなに神経質にならなくても」

「あのねえ、確かにあの重傷からの君の驚異的な回復力は認めるけど

 怪我や病気っていうのは治りかけが一番危ないのよ?」

よく聞きますね、そういう話。

「実際、何度も無断で外出する度に傷口が開いてたじゃない」

これは本当のことです。

私が見たのは1度だけですが、『暇つぶし』と言ってブリッジに遊びにきたカイトさんを

カザミさんが慌てて連れ戻して行ったのを覚えています。

「といってもなあ……。もう火星が近いってのに」

「予定はまだ1週間ぐらい先ですよ?」

私がそう応えると、カイトさんは真剣な顔になって

「そんな簡単にいくわけないだろ?」

と、言った。

……ベッドに縛られている状態でそんなこといっても全然説得力はありませんでしたが。

 

 

 

「……で、メグミさん?」

「何?」

「どうしてこんなことになってるんでしょうか?」

「さあ……私にもさっぱり……」

休憩時間が終わって、ブリッジに戻ってきた私を待っていたのは

数人のクルーに囲まれて身動きが取れなくなっているメグミさんと

私に向けられた武器(というかスパナ)でした。

「あはははは、メグちゃん、ごめんねえ」

「はは…ははは……」

こちらに銃を向けながら本当に済まなそうな様子で言うヒカルさん。

言葉は冗談みたいでも、手に持っている銃には説得力があります。

「なんか、クーデターって感じですね」

「そうだねぇ」

まあ、クーデターというにはお粗末すぎる気もしますが。

「艦長はどうしたんですか?」

「一応、呼んではおいたけど……」

「責任者出てこぉい!!」

ウリバタケさんの叫びが大きくナデシコに響いた。

 

 

 

「な〜にやってんだかね……」

ブリッジの様子は、病室にいる僕のところでもモニターを通して見る事ができた。

「平和なんだかそうじゃないんだか……、まあ、士気が低いよりかはいいだろうけど」

手元の端末からオモイカネに接続して、ナデシコ各所の映像をモニターする。

どうやらこの反乱は、主に整備班が扇動しているようだった。

格納庫のカメラの前では、一人の整備員がメガホンを抱えて何かを一生懸命訴えていた。

『我々はぁ、ネルガルの悪質な方針にぃ――!!』

「……」

……まぁ、反乱というよりもストライキみたいなものだったが。

(とにかく、僕の出番じゃないな)

そう結論を出し、これ以上やる事もないので(というか出来ないので)ウィンドウを閉じ、

一眠りしようと目を閉じかけたとき――。

『それ』は来た。

「……!!!!!!」

この……感覚は……!!

(思っていたより早い……!?先手を取られたか!!)

 

 

 

「ど、どうしたんですか皆さん!?」

しばらくして、慌てた様子で艦長と副長のアオイさん、テンカワさんとミナトさんが

ブリッジにやってきました。

私とメグミさんは艦長達の方に移され、ウリバタケさん達と向き合う形になる。

「いろいろな葬式をやってくれるのは解った。でも、俺達はそんなこと知らなかった」

ウリバタケさんが神妙な顔をして話し始める。

「だから、それは契約書に書いて……」

「今時、契約書よく読んでサインする奴いるか!!どうだ!!」

そう言ってウリバタケさんが突き出したのは、おそらくここにいる全員がサインしたであろう

ネルガルの入社契約書だった。

「うわ〜細かい……」

たしかに、細かい文字が紙一面にびっしりと書いてあります。

これじゃあ、読む気もなくなるわよね。

「そこの一番下のとこのちっちゃい文字、よく読んでみな」

リョーコさんが指したところには、他の字よりも更に一回り小さなフォントで

何やら文章が書かれていた。

「え〜、社員間の男女交際は禁止致しませんが、風紀維持の為、お互いの接触は手を繋ぐ

 以上の事は禁止……って何これ?」

「読んで字の通りだ」

「な、わかったろ?」

溜め息をつきながら、ウリバタケさんが続ける。

「お手手繋いでって、ここはナデシコ保育園か?

 いい若いもんがお手手繋いでで済むわきゃなかろうが!!俺達はまだ若い!!」

「……若いのか?」

テンカワさんの突っ込みに、ちょっと怯んだウリバタケさんだったが、

すぐに開き直って叫ぶ。

「若いの!!若い二人が見詰め合い、見詰め合ったら」

「唇が!!」

……ちなみに、合いの手を入れているのはヒカルさんです。

「若い二人の純情は、純が故に不純」

「せめて抱きたい、抱かれたい!!」

「そのエスカレートが困るんですよねえ」

突然、会話に乱入してきたのはプロスペクターさんの声でした。

どこにいるかと思えば、艦長席の前で、いつもの通りゴートさんと一緒に立っていました。

……どこからともなくスポットライトが照らされているのを除けば、だけど。

「貴っ様ああぁっ!!」

仇敵見つけたり、といった感じで叫ぶウリバタケさん。

「やがて二人が結婚すれば、お金、かかりますよねぇ。

 更に子供でも生まれたら大変です。ここはナデシコ保育園ではないですから、ハイ」

「黙れ黙れ!!いいか、宇宙は広い!!恋愛もまた自由だ!!

 それがお手手繋いで、だとぉ!!それじゃあ女房の尻の下のほうがマシだあぁあっ!!」

あんまりそういう事を少女の前で言わないで欲しいです。

「とはいえ、サインした以上は……」

「うるせぇ!!これが見えねえか!!」

そういってウリバタケさんが突き出したのは何故かスパナ。

それと同時に他のクルーもプロスペクターさんに、各々の持っている武器を向ける。

「この契約書も、見てください」

プロスペクターさんはというと、まったく怯まずに、皆に向かって契約書を突き出す。

「うぐぐぐぐぐ……」

お互いに睨み合った(?)状態で時が過ぎる。

銃VS契約書。

『ペンは剣より強し』っていうけど、それはこういうことをいうんだろうか。

……ちょっと違うかも。

 

 

 

その時だった。

(一応)重傷のはずのカイトさんが、その場に息を切らせて走りこんできたのは。

「オモイカネ、スクランブル!フィールドを最大出力に移行させろ!!急げ!!」

<了解>

「カイトさん?」

「カイト?」

不思議そうに呟く私と艦長にに気付いたのかはわからないけど、続けてカイトさんは

私達全員に向かって叫んだ。

「攻撃来るぞ!皆、何かに掴まれ!!」

その声と同時に、今までとは比較にならない衝撃がナデシコを襲う。

ほとんどの人達がそれに耐え切れずに尻餅をついてしまう。

「うおっ、な、なんだぁ!?」

「ルリちゃん、フィールドは!?」

艦長に言われてようやく我に返った私は、急いでオモイカネに接続して

現在の状況を確認する。

「正常に作動しています。けど……」

(カイトさんが最大出力にしてなかったら……墜とされてた!?)

その直後、正面モニターに映し出されたナデシコ前方の映像には、火星をバックにした

木星蜥蜴の大艦隊が映し出されていた。

「この攻撃……今までのものとは違う。迎撃が必要……!!」

その言葉と同時に、オモイカネから警告が入る。

<第二波、来ます!!>

再び、衝撃。

今回のは、先ほどの攻撃より、さらに規模が大きかった。

「「「うわあああああああ」」」

数人のクルーから悲鳴が上がる。

「姉さん!いや、艦長!!何やってるんだ!!」

「か、カイト?」

「はやく迎撃に移らないと、全員、死ぬぞ!!」

その言葉にその場にいた全員がはっとする。それは、忘れかけていたけど、当たり前の事。

 

そうだ、私達は、戦争をしているんだ……。

 

その中で、生死の境をさまよったカイトさんが言ったから、その言葉には

人一倍の説得力があった。

「皆さん、聞いてください!!」

艦長が、大声で、皆に訴える。

「契約書についてのご不満は分かります。けれど今はその時ではありません!!」

その間にも敵の攻撃は続いていて、何発ものグラビティ・ブラストが

ナデシコのディストーションフィールドに接触する。

「戦いに勝たなきゃ……戦いに勝たなきゃ……また葬式ばっかり」

あれ……?

艦長、何か様子がおかしくなってます。

と、いうか……これは……。

 

「私嫌です……嫌です!!どうせなら葬式より結婚式やりたぁい!!」

 

やっぱりいつもの艦長だった。

……まあ、らしくていいけど。

 

結局、そんなこんなで契約書の問題はうやむやになり

皆大急ぎで自分の持ち場に戻って行った。……戻っていくしかなかった。

 

誰も、こんなところで死にたくはなかったから。

 

 

 

「エステバリス隊、出撃!!」

艦長の声が威勢良く響く。

やっぱり、こういう時の艦長って、なんだかいつもと雰囲気が違います。

『おうよ!!』

『はぁい!!』

『ふっ……』

各々の掛け声と共に、次々と発進して行くエステバリス隊の面々。

 

 

 

「……生きて行く為には、戦いを終わらせるしかない。でも……俺は……」

『ダイゴウジ=ガイ、行くぞ!!アキトも続け!!』

「わかってる!!うおおおおぉぉ!!!」

 

 

 

こうして、ナデシコの火星領域での戦いは始まりました。

それにしても、大人達の契約って何か嫌です。

……大人にはなりたくない。

今日はそんなこと感じました。

 

 

 

 

「……カイトくん?」

 

 

「はうっ!!?」

 

 

 

 

――――――to be contenued next stage

 

 

あとがき

 

ジャンプ並です(サンデーやマガジンでも可。つまりは週刊ペースってこと)。

 

やっとここまで来ました。

ついに火星です。……と、いってもまだ着いてはいませんが。

今回はほとんどルリ主観。

カイトも割と出番は少なめですね。

 

補足として、ですが……。

前話から登場している女医の『シノハラ=カザミ』は、この小説だけの

オリジナルキャラとなっています。一応。

ほんとは、説明おばさんが登場するまでの穴埋め役だったんですが

いざここまで書いてみると……いや、なかなか良い味出てますね。

結構、よく動いてくれちゃったりしたので、今後も登場するかもしれません。

もしかしたらレギュラー化……するかも。

ちなみに彼女は設定年齢23歳。若い(?)です。若いんです(断定)。

どうでもいいけど、アキトの影が薄いなあ……。

いや、どうでもよくないか。何とかしないと……。

 

 

次回は火星領域の攻防戦。

と、いうわけで(どういうわけだか)アキトの見せ場を作ってやろうと画策中。

う〜む……普通じゃ面白くないからなぁ……。

ま、頑張ります。

感想メールも随時募集しておりますので、気が向いたらよろしく。

ではでは〜。

 

 

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