赤のレジェンド1


 

 「この戦い、オーブに正義は無い!! 我々は同じアジアの同士として今まであえて黙認していたが

 今回のこの愚行にアジアという枠組み以前に、オーブの所業を人としての許されざる行為と見て取り、

 我々の正義に従い、オーブ連合脱退を宣言する」

 

 西暦という時代において、中○と呼ばれた国家の主席が唾を撒き散らしながら鼻息も荒く大声でオーブ

の悪を宣言し、自分の正しさをまくし立てている。

 その中○の主席と共に西暦と呼ばれた時代における北○鮮、そして韓○の主席もその場で賛同し、

ニタニタと笑いながら3人で手を握り合いオーブからの脱退、そしてプラントへの既存を宣言した。

 

「なにが我々の正義だ・・・」

 今握手をする3国の主席の背後でオーブ国家の旗が燃やされる映像が差し込まれていた。

その不愉快な映像を陰鬱な表情でみていたオーブ連合防衛司令官レドニル・キサカはそう呟いた。

 この映像が流れるほんの3日前、オーブ宇宙軍の第2次防衛ラインが突破された日にはこの3国は

オーブ連合国に名を連ねていたのだ。

そして緊急の会議があると外務大臣を呼びつけこうのたまった。

「我々3国の脱退を止めたければODAや援助支援金を3倍に増やせ!」

と。 絶句する外交官に

「今我々3国に脱退されればオーブ連合は取り返しの付かない事態になりますなあ」

と笑いながら言った。

 さすが西暦の時代からアジアのハイエナ3国といわれただけあって恥知らずな外交はお家芸であったようだ。

だがこの3国を馬鹿には出来ない。事実20世紀にアジアで最も繁栄した日本という国は、この3国に

『援助だ、賠償だ!』などとのたまわれて散々国から財を吸い取られた挙句国家が破産、その国の資金元根こそぎ

奪い去り吸い尽くしたのだ。

 最もその3国に寄生された国日本も世界一の借金大国でありながら、自ら借金をしてわざわざへこへこと頭をさげながら

金を差し出していたのだからマヌケを通り越してキチガイの極みであり、そんな無能外交を国が破綻するまで続けていたの

だから同情の余地はなかろう。

 そして吸い尽くすものが無くなった時、この3国が次のタカリ先として目を付けたのがオーブであった。

オーブ国家元首カガリ・ユラ・アスハはコレを断固として拒否。

その報復が今の状況であった。たいした正義である。

 映像が切り替わり3日前の宇宙戦の映像が流れる。

オーブ国主力モビルスーツムラサメを圧倒的な強さで次々と葬り去る黒いガンダム。

オーブ国の金満体質を象徴するかのような悪趣味の極みである黄金のモビルスーツがその黒いガンダムに

手も足もでず無様に逃げ出す姿。

そのたった一機の黒いモビルスーツを倒す為に戦艦4隻を使い襲い掛かったが赤いガンダムに阻まれ、

逆に4隻の戦艦が無残に破壊される。

流される映像が全くもって圧倒的であった。

 オーブ連合の中核をなすアジア3国の脱退にこの敗戦映像が今地球上全てに放映されていた。

 

地上の混乱は言うに及ばない。

 

 

 

――同時刻アークエンジェル

 

「やられたわね・・・」

 オーブ宇宙軍艦隊司令官マリュー・フラガは旗艦アークエンジェルの艦長室で溜息混じりに呟いた。

「ああ、まさか映像まで撮っていやがるとは、いやはや全くもって遊ばれてるな」

マリューの呟きに答えたのはオーブ軍モビルスーツ隊隊長、ムウ・ラ・フラガ。

「笑い事じゃないわ・・・カガリさん大丈夫かしら?」

「さて、元々信用出来ないハイエナ3国なんぞいらん・・・とはいえ、今抜けられるとどうなるか、これを引き金に

最悪過去のように世界から孤立しかねん」

 ほんの数年前、プラント議長ディランダルの元、世界は統一されかけたのだ。最後まで抵抗したのはオーブ、

そしてスカンジナビア王国のたった2国であった。

「ええ、誰だって自分の身が可愛いもの。恥という言葉を知らないあの3国ほどあからさまじゃなくても今後も脱退は

 増えるでしょうね」

「それを止めるには勝つしかないわけだが、実際の所勝算はあるのか?」

「あると思う?」

 苦笑としか言いようのない表情でムウを見つめるマリュー。

「そうだな、アスランが急病にでもなってくれるか、ここらで矛を収めてくれるか・・・」

「そうね、結局アスラン君を説得するか倒さなければ現状の打開は無理ね」

「幸いな事にアスランは前線にモビルスーツで出ている」

「幸い? 彼に勝てるパイロットなんていないわ。死んでしまった人を除いて」

「・・・」

誰のことを言ったのか、そして言っているのかお互いが理解しており、一度言葉が詰まる。

「だったらこれ以上防衛ラインを下げるわけにはいかないな。なんとか耐え続けて休戦に漕ぎ着ける。・・・難しいな」

「ええ。補給はともかく持久戦には兵の士気が最も重要だもの。でもこの戦いは誰も望んでいない。

だって、間違っているのは私たちですもの」

「・・・戦いたくないな」

「ええ、全くだわ。カガリさんでなければ私だってこんな戦い・・・参加したくないもの」

 

 

これは人殺しを守る為の戦い。

 

オーブの兵士達が命をかける価値の全くない、惨めな戦争であった。

 

 

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