銀色 2000年8月31日発売


…どんな願い事も叶うという不思議な銀の糸…
(マニュアルから抜粋)

「AIR」が鈍器で殴られるような痛さの物語なら、
「銀色」は傷口を刃物でえぐられるような痛さの物語でした・・。

という訳で、今回のオススメは、
ねこねこソフトさんから発売されているビジュアルノベル「銀色」

“「ビジュアルノベル」として徹底的に「映画」を意識したつくり”
と銘を打っているだけあって

横長フルスクリーンで字幕のようにテキストの表示される画面構成
音楽用CDとしても活用できる重厚な音楽
日本語、英語の二ヶ国語音声(二ヶ国語よりもねーちんの声を・・)

そして、皆無なゲーム性・・

と本当に徹底しています。
そして、それはゲームとして考えれば完全破綻しています。
最初から最後まで ひたすら一本道です。
基本的にキーとなる選択肢が、全編を通して10個ほどあるのですが、
それさえ間違えなきゃゲームオーバーにはなりません。


しかし、そんなことは些細な問題です。

フルオートモードなんて物がついていることからもわかりますように
「銀色」真価は、そのシナリオにあります。

という訳でここからは、シナリオ全四章+αについて語らせてもらいます。
※ここからは、ネタバレ有りで行きますのでご注意を・・

●第一章 逢津の垰(おうつのたわ)
時代は平安…
色街から、なんとなく逃げ出したヒロイン。
垰で野党をし、なんとなく人を殺す毎日の主人公。
…そんな生きている実感も無い二人が、
出会った事から始まる切なく悲しい物語。
(マニュアルから抜粋)

号泣ものでした・・・(ToT)

前半は、繰り返しがくどくてちょっとうんざりでしたが、
クライマックスは、涙なくして観られない悲しい展開でした。

瀕死の傷を負ったヒロインが、どんな願いでも叶える銀の糸に対して
「私は、まだ生きたい」と願うのではなく、
「こんな私でもね、生きた証しが欲しい・・」と願うのです、
生きたいという願いよりも、生きた証しをとしか願うことのできなかったヒロイン・・
か、悲しい話だ・・(T_T)

そして、最後の主人公の独白・・
こっちは、何もいえない・・
とても言葉では語れない・・
ホントに号泣ものでした・・(ToT)


●第二章 踏鞴の社(たたらのやしろ)
時代は鎌倉…
山合いの里に、今日も鉄を燃やす踏鞴の煙が広がる。
そんな静かな里の小さな社。
特に何かを祭っている訳でもない神社にやってきた、
地方領主の息子の主人公。
そこで主人公は一人の斎宮と出会うのだが…
(マニュアルから抜粋)

おキヌちゃん(GS美神極楽大作戦より)物語でした。
というか、あまりに似過ぎ・・全ての面で・・

この章の展開なのですが、
オープニングにうつされたこの章のクライマックスとおぼしきCG
そして、ヒロイン狭霧の
「自分にしか出来ない役目があるとしたら、とても素敵な事だと思いませんか?」
という台詞から
展開が見え見え・・

思ってたんですがね、
実に意表をついてくれました。
クライマックスには、本編の主人公同様に凄まじい脱力感がありました・・
演出や文章の書き方が
すっげぇぇぇぇ上手い痛感させられました。

●第三章 朝奈夕奈(あさなゆうな)
時代は大正…
仲の良い姉妹。平凡だけど幸せと呼べる日常。
そんな二人を本編ストーリーが複雑に絡み合っていく。
…そして、結末は以外な方向へ…
(マニュアルから抜粋)

こっわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・

まさかこんな恐怖の物語だとは予想だにしませんでした・・
ねーちんのパラノイアっぷりには、
本気で背筋が寒くなりました・・
選択肢で本気で悩みましたもん怖くって・・・

ただ、結末はかなり強引で、
その後、ヒロインと主人公はどうしたんだ?って感じです。
小説「銀色」では、主人公が家の権力で使って事件をもみ消したとなってましたが・・いくらなんでもそれは・・

●第四章 銀色(ぎんいろ)
時代は現代…
家業の喫茶店を手伝うヒロインは、
誰にも『言えない』秘密と哀しみを背負っていた。
本人さえも、その原因が『銀色』に関係しているとは
考えてもなかったのだが…
(マニュアルから抜粋)

この(↑)あらすじに座布団を一枚!!
上手い書き方だ、理由はやってみればわかりますよ(笑)

第四章は、えらく中途半端なところで終わりました。
最初は、「本気か!!」とスタッフロールに思わず悪態をついてしまいました。

が、最終章 錆の存在とその内容によって
ライターさんの術中に落ちていた自分に気がつきました・・

●最終章 錆(さび)
前半は、一章のヒロインの誕生話で、
後半四章の続き&銀の糸の終焉の物語でした。

きっつうぅぅぅぅぅぅうぅっ・・
一章のヒロインの誕生話なんですがキツイ話です。
実際にあったかもしれないような内容だっただけになおさら・・
この物語を読んだ後に、再度、一章をやると
号泣指数が飛躍的に上昇します・・

そして、ラストなのですが、
ベタなハッピーエンドにこれほど感涙したのは初めてです・・
最後のたった一つの幸せな結末・・
ベタなハッピーエンドがこんなにいいものだったなんて知らなかった・・


◆エンディングの解釈(ネタバレ指数が高いので隠し文字です)
銀の糸の消滅時に流れ出した各章のヒロインたちの幸せな光景
結構、いろいろと解釈が出来るんですが、
私的な解釈としましては、あの光景は、
“銀の糸が願いを叶えるために支払われた代償”
が銀の糸の消滅に際して吐き出されたものと考えます。
幸せを糧に不幸な願いを叶えてきた銀の糸・・
その最後の最後に銀の糸がもたらした、たった一つの幸せな結末・・
それ故に「よかったですね」なのではないのでしょうか?


最後に・・
すげえよ オマケシナリオッ!!
音楽、CGともにオマケ専用のものが多数あるし
なにより内容が怖いもの知らずだ・・
(集○社やエニッ○スにばれたらただじゃすまんだろアレは・・)

○このソフト絶対HDD容量が約900Mってのはキツイよ・・
○ねこねこソフトさんCDは「DISK」じゃなくて「DISC」だと思うんですが・・