ヨーロッパアルプスに咲く花、エーデルワイスと近縁の白い花、
「早池峰薄雪草」を見に、岩手・早池峰山に登ってきた。
もう数日経つのに、日頃の運動不足がたたって、筋肉痛が治らない。
困ったもんだ。
恒例の「はなまき映像祭」は今年でもう15回目。
地元の仲間達と共に続けているささやかなドキュメンタリー映画祭…。
知る人ぞ知る、というよりも、ほとんど知られていない映画祭かもしれない。
今年は二日間にわたって六本のプログラムを上映。
お客さんの半分くらいが常連、という気楽な雰囲気で、
みんなとてもいい顔をしてたから、好評だったのだと思う。
「はなまき映像祭」に行くと、定番で必ず立ち寄る場所が何ヶ所かある。
まず、私の自主製作映画デビュー作『奈緒ちゃん』の名カメラマン、瀬川順一・浩両氏の墓参り、
いつも映画を観に来た人たちを誘って、花巻の近く東和町(旧 土沢)にある墓を訪れ、
手を合わせ、缶ビールで献杯する。
もう何人につき合ってもらっただろう…。
順一さん、浩さんも、見ず知らずの仲間達との出逢いを楽しみにしてくれているに違いない。
墓参りの帰りにいつも立ち寄るのが、宮沢賢治記念館の前にある「なめとこやま」というお蕎麦屋さん。
ご主人夫妻が年に一度の再会を心待ちにして、絶品のお蕎麦を食べさせてくれる。
宿は、毎年、大沢温泉という温泉宿の自炊部にお世話になる。
賢治もしばしば立ち寄ったといわれる温泉で、はなまき映像祭を始めた頃は、
ここの大広間でも上映をして、温泉に入ったり映画を観たり、という贅沢をしていた。
宿の近くにある高村山荘にも必ず足を運ぶ。
彫刻家・詩人の高村光太郎が、戦後すぐ東京から離れ、七年間ほど独り暮らしをした小屋が残っている。
この辺りの村里の佇まいが、たまらなく好きなんだ。
そして、毎年ではないが時々寄るのが、花巻から二時間近く車で山中に入ったタイマグラ…。
名作『タイマグラばあちゃん』(澄川嘉彦監督・伊勢真一プロデュース)の舞台となった森の中の小さな集落だ。
今年は映画にも登場していた奥畑充幸さん一家が営んでいる山小屋に泊まらせてもらい旧交をあたためた。
そして、奥畑さんの案内で早池峰山に登った。
「早池峰薄雪草」
「南部トウウチソウ」
「南部トラノオ」
「ミヤマ ヤマブキ ショウマ」
「ヒメコザクラ」
幸運にも、早池峰山でしか見ることができない高山植物のすべてを見れた。
どの花も小さく目立たないが、しっかり自分の意志を持って生きているという印象。
「しっかりせえよ」と言われたような気がした。
見たい、と恋焦がれていた「早池峰薄雪草」は、こちらの強い想い入れもあったせいか、
圧倒的な存在感で、ちょっとお澄ましして、小さく白い花を風に揺らせていた。
白い花はなぜ白い?
美しいものはなぜ美しい?
大切なことには、ほとんど理由がないように思う。
答えのない想いを抱きながら、映画を創り続けてきた。
これからも、答えのない想いの旅は続く…。