「新作が完成したんだ・・・」と言うと、

「え?」と言い返される。

でも本当に出来てしまったのだ。

タイトルは『ゆめのほとり−認知症グループホーム 福寿荘−』。

前作『妻の病−レビー小体型認知症−』に引き続き、認知症がテーマだ。


実は『妻の病』の撮影と並行して、

北海道・札幌にある認知症グループホーム 福寿荘の

おばあちゃん、おじいちゃんたちの日々を記録していた。

ここのところ次々に作品を発表するので、

「何だか、生き急いでるんじゃないの?」と、まわりの奴は言うけど、

そおいう訳でもない。

完成のあてもなく撮り続けて来た撮影済みで未編集の映像が、

編集室にたんとたまっていて、そのワンカットワンカットが、

「今度は俺を映画にまとめてくれぇ〜!」と、いつも声を上げている。

そんな映像群のひとかたまりが物語になり、映画『ゆめのほとり』になったのだ。


で、『ゆめのほとり』はどんな作品かと言えば・・・、

とても説明しにくい映画なのだ。いつものことだけど。

何故、自分で自分が創った映画を説明できないのか?

と、不思議に思うかもしれないが、私は自作の紹介が、とても苦手だ。

自分のしていることが、よくわかってないんだな、多分。

認知症のグループホームを舞台にした、おばあちゃんおじいちゃんたちの映画だけど・・・。

「本作は認知症について解説する映画ではありません。

 認知症を生きる一人ひとりと向き合う物語です」

と、試写状の案内文に書いた。


認知症という病を見つめる以上に、人間を見つめよう。

ただただ寄り添い、耳を澄ませてみよう。

そんな想いで創り上げた作品だ。

『ゆめのほとり』は『妻の病』同様に、

認知症という奥深い闇の入り口に佇む映画だと思う。

まずは、入り口に立つことを大事にしたい。

いつも思っていることだけど、今回も、

わかった風なこと、聞いた風なことだけは言うまいと思ってまとめた。

映画を観る一人ひとりが、映画のなかの一人ひとりを

どう観るのか、どう感じるのか、どう考えるのか・・・。


画家で絵本作家のいせひでこさんが、試写を観て、

映画の感想を書いてくれた。


─ おばあちゃんたちに会って、監督は絵描きになった。

 『妻の病』が肖像画のように描かれたタブローなら、

 『ゆめのほとり』は儚い今を捉えたスケッチ帖だ。─


ほんのひとときのスケッチ、ひとときのユートビア。


認知症の人は“何もわからない人”ではない。

“本人なりの思いや願い・できる力を秘めている人”

“喜怒哀楽を共にしている人”だ。


これからボチボチ試写会が始まる。

慌てずにじっくり観せていこう。

きっと又、アレコレ批評されると思うけど、

メゲずにやるべし。

今は、ただただ生まれ出た新しい映画、

新しい「いのち」を祝福したい。


映画『ゆめのほとり−認知症グループホーム 福寿荘−』完成にカンパ〜イ!!



※2015年6月5日(金)第19回 ヒューマンドキュメンタリー映画館 日比谷(東京・日比谷図書文化館)映画『ゆめのほとりー認知症グループホーム 福寿荘ー』完成上映会 開催 ①14時〜(トークゲスト:武田純子さん)/②18時30分〜(ライブゲスト:ママクリオ)

(予約優先制)問合せ TEL:03-3406-9455 メール:ise-film@rio.odn.ne.jp(いせフィルム)


 

春、新作完成!

伊勢 真一